転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件 作:図画工作で使うトイレットペーパーの芯
「わたくしが、あなたという、婚約者が、ありながら、不貞を、働くような、軽い女だと、思うのですか?」
「誠に申し訳ございませんでしたァッ!!」
わざわざ言葉を区切りながらガンギマった瞳で詰めてくるユルルは、怖いなんて言葉じゃ表現できないほど恐怖に満ち満ちていた。
俺はその場で即座に土下座をかましながら平謝りをした。
そうだよな……そうだよな……!!
好感度が低いのに「お前は処女か?」とか冷静に考えてイカれポンチの発言すぎるわ!!
くっ……NTRの恐怖からつい変なことを口走ってしまった。
「
「今ダニって言った?」
「言ってません」
絶対言った!!! ってか仮ってなんだよ仮って。
こちとら英才教育のほとんどをサボりながらユルルに絡み続けたエリート第二皇子ですが? ……ハッ、そんなことしてるから好感度が低いのか。
記憶上の俺は俺らしく勉強嫌いだったようで、貴族教育とか数多の勉強の類を尽く逃げ出してユルルの生家まで遊びに行っていたらしい。
……記憶あっても多分同じことするわ。
「ってか男性女性関係なく失言したら謝るだろ。今のは完全に俺が悪かった。許して……くれない?」
「そんな子犬のような目つきで見ないでくださいよ。……ハァ、レヴィ様が突拍子のないことを言い出すのは今に始まったことではありませんし……水に流しましょう」
よっしゃ!! 寛大なユルルに惚れ直していくぜ!
にしても……マジで俺の知ってるゲームのユルルとは似ても似つかない性格だな。まあ、俺が転生したことで起こったバタフライ・エフェクトみたいなもんだと思うようにするか。
記憶を取り戻したからにはこの世界で生き抜くしかない。
いつまでもゲームのユルルと比べたら失礼だし。
──とはいえNTRは確定事項だと思うしかないけど!!
あのエロゲは異常だ。どんなルートであっても必ずユルルが寝取られシステムになっている。
よくよく考えればパッケージ的にユルルが寝取られないと物語が始まらない……ってのは分かってる。分かってるんだよ。
じゃあ1年間イチャイチャシーン見せたのなんなん!?
好感度ゲージを他ヒロインのように設定して希望を見せたのはなんでなん!?
そのアへ顔はなんなん!?
イチャラブエロシーンはなんだったん!?
……ということで俺はNTRされる確信を抱いている。
だって原作のレヴィはスパダリだ。
あのユルルをメス顔にするくらいにはスパダリだ。
なのに寝取られた。
外的要因があると思ったほうがいい。
そして俺は低スペだ。
家柄だけ恵まれた無教育の無知蒙昧だ。
原作より寝取られる確率は高いだろう。
……寝てすらいないけど。ハハッ。
「それで、なんでレヴィ様は突然そんなことを言い出したんですか? わたくしは何か疑われるようなことをしましたか?」
「いや……その……なんか変な夢を見て……」
「夢ですか。ほぼ四六時中一緒にいるというのに、現実よりも夢の方を信じるのですね」
「ほ、ほら、夢だとしても婚約者が他の男のものになってるのは……なんというか、ショックだろ」
しどろもどろになる俺と怜悧な瞳を向けるユルル。
どこか先ほどよりも口調がトゲトゲしいのはなんでだろう。
「それなら──今のうちにあなたのものになりましょうか?」
不意にユルルは微かに笑いながらずいっと近づいてきた。
ふわりと良い香りが漂い、俺は彼女の蠱惑的な笑みに見惚れ──即座に肩を掴んで無理やり距離を離して言った。
「──婚前交渉はダメ!! 絶対!!」
……なんというか、意識的じゃなくて魂から出た言葉だった。
「ふふ、口癖ですね。分かっていましたよ」
ユルルはクスクスと口元に手を当てて笑う。
どうやら記憶を失くしていたのに、俺はユルルのNTRに魂から怯えていたらしい。婚前交渉を良くないと思っていたのは、きっとNTRの要因の一つに『男の味を知ってしまった』という可能性があったからだ。
昨今の貴族界において婚前交渉は別にタブーではない。
貴族の婚約関係はかなり厳重だから、よっぽどのことがないと婚約破棄など起きようがないし、それなら別に婚前交渉をしてもどうせ結婚するからええやろみたいな風潮がある。
だが俺はNTRの恐怖と──あと普通に童貞ゆえのヘタレでユルルに手を出すことができなかったんだと思う。
今でも……うん、無理です。特に好感度が低いって分かってるのに無理やり迫るのはNTRリスクを高めるだけの悪手だし。
ユルルも俺がヘタレなのを分かっているから、わざわざ場を和ますために冗談を言ってくれたのだろう。
……まあ、迫ってくるのがエロすぎたので、後でオシコリ申し上げることは決定事項だが……。
「このヘタレ」
「え、今なんか言った?」
「いえ何も? それより……また社交教育サボったんですか? わたくしのほうにレヴィ様を何とかしてくれと手紙があったのですけれど」
何かを誤魔化すように早口で言うユルル。
多分悪口を言ったのだと思う。知らぬが花か。
それよりも今日ユルルが来たのはそれが理由かな。
昨日の俺はまたも授業をサボったらしい。
社交教育ってことはダンスのレッスンかぁ……記憶を思い返してみてもアレが一番苦手なんだよな〜。
なんというか、恥ずかしいというか。
社交界のダンスってことはパートナー……つまりユルルと踊ることがほとんどなんだけど、結構ガッツリ接触するじゃん。
真の童貞の俺にとっては腰に手を回すだけで心臓バックバクの超絶緊張状態に陥るほどだ。
だからダンスのレッスンを避けていたのだが……まあ、ユルルに迷惑をかけるくらいなら真面目に授業受けるか。
記憶を取り戻した俺の精神年齢は大人オブ大人。
肉体に引っ張られてるせいでガキみたいな思考が無限に湧くが、それはそれとして普通に物事の分別はちゃんとつく。
「分かった。とりあえず次のパーティーまでにはちゃんと踊れるようになっておくよ。これ以上放蕩皇子って言われるのも嫌だしな」
「……ダンスだけは絶対に嫌だって言ってたのに珍しいですね。まあ、わたくしの足を踏まないなら何でも良いですよ」
「その節は大変申し訳ございませんでしたァ!」
そういえば前回のパーティーでユルルと踊った時に思いっきり足を踏んじゃったんだっけか。それもあってもうパーティーとか行きたくない!! 行く意味ある?? って駄々をこねてた記憶がある。
……ま、周りのご令嬢も俺がダンス下手くそってことを知ってるから誘われなくて良いんだけどね。
なにせNTR事件さえ起きなければそのままユルルと結婚することになるだろうけど、皇族の俺はハーレムが公認されている。
ユルルのケツをひたすら追いかけて何も教育を受けていない俺は『放蕩皇子』だの蔑称を付けられているが、裏を返せば側室になれば特に制限されることなく悠々自適な生活を送れる──という噂が出回ってるせいで、俺はそこそこ優良物件扱いされているらしい。
ただ現状は、足を踏まれたくないし、露骨に側室狙いだってことがバレたくないのかダンスに誘ってくるご令嬢はいないけど。
ってか妾とか作る気ないけど。
俺はユルル一筋!!
だからこそNTRされたら終わる!!
……いや、でもユルルが嫌々結婚するって状況が今なのだとしたら、それは望んでない状況に他ならない。
貴族ってのは親のエゴで結婚させられるものだ。
俺はユルルのことが好きだし、叶うのなら結婚したい。
それでもユルルが心の中では嫌がってるのであれば、NTRをかまされるよりも辛いかもしれない。
「なあ、ユルル。俺のことが嫌いなら婚約破棄しても良いんだからな」
「は??」
なんかさっきと同じ状況になったゾ!!!
次回、ユルル視点。
クソボケバカがネガティブなのは大臣のちんぽがトラウマだからです。