転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件 作:図画工作で使うトイレットペーパーの芯
「政治的理由でコンコンと理詰めされた……」
どうやらユルルは俺と婚約関係を続けることに乗り気……というわけではないが、少なくとも破棄する気は無いらしい。
ホッとするような、これで良いのかと悩むような。
「それならそれで寝取られずに済む方法を考えようか」
タイムリミットは2年。
何としてもそれまでに寝取られを阻止しなければいけない。
「『修行』『会話』『依頼』『買物』『デート』。好感度を上げるにはこの五つから行動を選ぶ必要がある」
だがここは現実だ。
原作なんて無視して突拍子もない行動を取ることだってできる。
それが裏目になって嫌われる可能性もあるけど。
「自分から行動しない限り状況が好転することは無い」
二度目の人生。悔いなく生きたいじゃないか。
推しが寝取られずに幸せに生きて欲しいと願うのは傲慢か? 大臣のちんぽによがっていたユルルの表情は、気持ちよさそうではあったが幸せと言えるのか?
「あかんだめだ、大臣のちんちん思い出したら吐き気してきた」
推しの寝取られる姿を五万回以上見てきたのだ。
最早俺の中で大臣の下腹部はトラウマと化している。
俺はブンブンと振り払うように頭を揺らすと、グッと拳を握って早速行動に移ることにした。
「よしっ、とりあえずユルルとお忍び街デートだッ!!」
◆◆◆
「ユルルさーん、遊びましょうー!!」
「まったくあなたは……家人に呼びかければ良いものを」
「……早くない?」
呼びかけた数秒後にはバチバチに着飾ったユルルが現れた。俺じゃなきゃ見逃しちゃうほど恐ろしく早い登場である。
何なら少し息を切らせている気がする。
「遅いといつまで経っても呼び続けるでしょう? そんなの恥ずかしいに決まっています」
「流石に10回くらいで諦めるぞ」
「十分呼び続けてますが、それは」
雪だるま作ろうって誘ってないだけ良いじゃん。
とはいえ恥ずかしい……まあそうか。お年頃だもんな。
「それで、今日は何の用ですか。たまたま……ええ、たまたま暇なのであなたに付き合うことも吝かではありませんけど」
まだ何も言ってませんが。
だが、チラチラ俺を見ながら前髪をイジるその姿は中々に可愛らしい。意図は読めないけど。
まさか乗り気ってことは無いだろうしな!
とりあえず俺は、王城の宝物庫からかっぱらってきた変身の魔導具をユルルに手渡してニコっと笑いながら言った。
「お忍び街デートと洒落込もうぜ!!」
「でーと……とはなんですか?」
「仲良い男女が遊びに出かけること!!」
『デート』の項目があるのにデートの概念が無いんかい。
一瞬逢引って言おうと思ったけど……なんか……ほら、生々しくなるじゃん? 違いますって即座に否定されたら悲しくなるし泣くし。
「ふむ……いいでしょう。もう少し早く言ってほしかったですけど。……可愛い姿だけ見せたいので」
「なんて?」
「ばかあほまぬけ」
「暴言のオンパレード。俺のガキ語彙が移ってない?」
めっちゃ睨まれた。
よく分からないけど不興を買ってしまったらしい。
「そんじゃ行くか。今日はアレだ。俺は大人だぜ」
「あなたに女性をエスコートできるんですか?」
「おうよ。任せろ」
前世じゃまともな恋愛経験が無いからな。
正直エスコートなんてよく分からんが、誰よりも俺はユルルのことを知っている自負がある。前世の情報もそうだし、今世で培ったユルルとの絆──は無いか。
少なくともエスコートとは、相手を楽しませたいと思う感情を行動に移すことだと思う。……デートの概念が無いのにエスコートは伝わるんだな。よくわかんねぇ。
そんなことを考えながら俺達は近くの街に向かった。
変身の魔導具を起動すれば、どこからどう見ても普通の平民に偽装完了だ。
放蕩皇子なんて言われてる俺はともかく、伯爵令嬢のユルルの身に何があったら困るからな。
「……街には久しぶりに来ましたね」
「確かにな。あ、でも第四皇子は花街に毎日通ってる、って噂はされてるみたいだけど」
「……行ったことがあるのですか?」
「まっさかぁ。意外と皇族はそういうとこ厳しいんだぜ」
俺の破天荒な行動を許してくれる父上でも、花街に出入りしてたら流石に死ぬほど怒って行動を制限してくると思う。
自由と思われがちだが、血統を重視するウチの家系においては女遊びや不貞は嫌悪されている。
真に愛しているのであれば平民との結婚もできるが、その場合は皇族特権である一夫多妻が一夫一妻になるシステムらしい。
結構愛に生きてる一族で割とおもろかったりする。
だからこそ……寝取られた時のレヴィくんは死ぬほどショックだったんだろうなぁ……そりゃ愛に狂って『調教』ボタンが実装されるのも分かる。
「まあ、レヴィ様がその手の場所に入り浸っている姿は想像できませんね」
「だろ? 俺の行動範囲は基本王城だし」
どことなくホッとしてるような気がする。
婚約者が不貞を働いていたら一大事だもんな。政治的に。
俺は納得しつつ、気を取り直して自信満々に先導する。
「今日はね。プランを考えてきたんだよ」
「と、いうと?」
「無計画に歩き回るのは大人らしくないだろ? 計画通りに動いてこそ大人のデートというものさ」
ふっ、と笑いながら髪をかき上げる。
ニカッと歯を見せるとユルルは苦虫を噛み潰したような表情をした。なんでや。
「レヴィ様に大人は似合いませんね」
「酷くない!? ほら!! プラン遂行してから判断しようぜ!」
「……まあ、いいでしょう」
よし、とりあえず着いてきてくれそうだ。
俺の
このプランに落ちなかった女の子はいないとか言ってたから信用できる。……でもあいつも童貞だったよな? まあいいか。
「まずは街外れの庭園で紅茶を飲みながら──」
意気揚々とプランを披露しようとした瞬間、市場のほうからやけに通る声が響き渡ってきた。
「──さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!! 魔法都市レヴィアスから取り寄せた至極の一品!! 暴れ馬の特訓用に作られ、振動と暴走の魔法術式を込められているその名は──ロディオ!! 今なら銅貨3枚で体験できますよぉ!」
そこにはハリボテの馬があった。
……うん、うん。
「ロデオマシンじゃねーか!!」
前世でも見たことのあるロデオマシンがあった。
上下左右に動き回るマシンに乗りながらバランスを取る遊具だが、俺は前世でも乗ったことがなかった。
それに『振動』と『暴走』の術式という何とも男心がくすぐられる言葉。
「……やりたいんですよね?」
「い、いや、今はデート中だから……」
とはいえ俺の視線はロデオマシンに固定されていた。
すると、トントンとユルルに肩を叩かれ、何だか酷く嬉しそうな顔で微笑んだ。
「いいですよ。私もレヴィ様がやってるとこ見たいです」
「──よし!! じゃあやる!! 見ててくれ!! 完璧に乗りこなしてやるよ!! ──おっちゃーん!! やらせてくれー!!」
ユルルが見たいってんなら仕方ねぇよなぁ!!
俺はニコニコ笑顔でおっちゃんにお金を払って、ロデオマシンにライドイン!!
「お、良い乗りっぷりだなぁ兄ちゃん。こういうよく分からないもんは怖がって最初は誰も乗らねぇんだがなぁ」
「いやいや、こんなワクワクするもんは乗らなきゃ損でしょ」
こんなことしてたらまた呆れた目でユルルに見られちまうぜと思って振り返ると、どこか生暖かい目で俺のことを見守っていた。
だが目が合うとすぐに冷たい瞳に変貌した。
なんなんだろうか。可愛いから良いけど。