転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件 作:図画工作で使うトイレットペーパーの芯
「うおぉぉぉおお!?!? ヤバい思ったより激し──いってぇぇ!!」
「馬上で喋ってたら舌噛みますよ、って遅かったですね」
ぶるんぶるん激しく揺れるロデオマシンに乗ること数分、俺はものの見事に振り回されてしっちゃかめっちゃかになっていた。
何だかユルルの声が聞こえたような気がするが、『振動』は揺れすぎだし『暴走』は暴走しすぎだし、マシンに振り落とされないように必死だった俺の耳には入ってこなかった。
「うっへぇぇええ!!」
──揺れること更に数分。
「ハァ……ハァ……死ぬかと思った……」
膝をついて息を切らせる俺の目の前にいたユルルは、なぜだかそっぽを向いて小さく肩を震わせていた。
くっ……見るに堪えないってか……!
意外と難しいんだぞコレ!!
こんなに耐えただけすごいっておっちゃんは言ってたしな。
「よし、ユルル。お前の番だぞ」
「へ? 私もやるんですか?」
ユルルは鳩が豆鉄砲を食らったような表情をした。
ふっ、逃げられると思ったのか? もうデートプランは完全に崩壊してしまったんだ。悪魔の誘いをしてきた報いを受けることだな!!
それにユルルにやらせるのも理由がある。
俺はこそっと耳打ちをした。
「そっか……普段馬術の訓練をしてるユルルなら上手くできると思ったんだけどな……残念だけど逃げるなら仕方ないか」
実はこの世界のユルルは非常に負けず嫌いである。
というより俺に負けるのが割と屈辱らしい。それもこれも好感度の低さゆえだと思うが、今回ばかりは好都合だ。
わざとため息たっぷりで厭味ったらしく言うと、ユルルはひくっと口角を歪に上げ、怒りのこもった瞳で睨んできた。
「──へぇ、安い挑発ですが乗ってあげましょう」
「お、おい、嬢ちゃんもやるのか? 今見てただろうけど、大の男でも吹っ飛ばされそうな危険な魔導具だぜ……?」
「問題ありません。普段から暴れ馬……ふふ、
「ど、どうなっても俺は責任取らねぇからな!! それ!!」
おっちゃんはユルルのことを心配して止めようとしたが、何やら含みのある言葉で納得させたようだ。暴れん坊ってなんのことだ?
それよりも無事にユルルを乗せることに成功したか。
俺がユルルをわざと挑発させたのは、遊びの楽しさを知ってもらう一環だ。まずもって俺よりも運動神経抜群かつ、馬術が卓越しているユルルであれば怪我はあり得ない。
だからといって、普通に言ってもユルルは『貞淑な女性』として振る舞っているせいで受け入れて貰えない。
だから安っぽい挑発で乗る理由を作ったのだ。
「──おおすげぇ!! あの嬢ちゃん、あんな揺れてんのに体の軸が一切ぶれてねぇ!! なんて体幹だ!!」
「うおおお……揺れてる……揺れてるな……ごくり……」
「おい誰だうちの婚約者エロい目で見たやつゥ!!!」
ったく、油断も隙もありゃしねぇ。
確かにロデオマシンのお陰……ごほん、せいでユルルの立派なお胸がバルンバルンと揺れているが、性的な目で見るなど言語道断──は無理か。見るよ、エロいもん。
とはいえこれ以上衆目の目に浴びせるのも、NTRの機会を増やすだけだ。幾ら変装の魔導具を使っていたとしても、襲いかかってこようとする奴らはいるからな。
そんなことを考えていると、涼しい顔でロデオマシンから降りてきたユルルが、乱れた髪を直しながらスッキリした表情で俺のところまで来た。
「楽しかった?」
「……悪くはありませんでした」
「素直に言えばいいものを……いてっ」
「一言余計なんですよ、ふんっ」
脇腹をつねってきたユルルがそっぽを向いた。
何をしてもどんな行動をしてもユルルの可愛さは色褪せることが無い。何ならリアル感がある分、デレデレだったゲームのユルルよりも可愛く見えてきた。
「それで、次はどうするんですか?」
「もうデートプランは良いや。お互いに行きたいとこ行こうぜ。次はユルルの番」
「ふふ、では焼き菓子の専門店に行きましょう。新作が美味しかったと家人が言っていたので気になってました」
「お、いいね。運動の後に甘いもんはマストだぜ!」
折角考えてきたデートプランがお釈迦になったというのに、俺はどことなく満足感のようなものを覚えていた。
それは隣で歩くユルルの声が弾んでいたからだろうか。