転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件 作:図画工作で使うトイレットペーパーの芯
「とりあえず楽しかった」
デートを終えて帰ってきた俺の一言目がコレだった。
最後の方はもう好感度とかどうでもよくて、ただただ楽しかった。
──こういう感じだから寝取られんのかなぁ……!!
「うおおおおお……童貞に女心とか分かるかよ……!」
俺の間違いじゃなければユルルも楽しんでいた……と思う。流石に長い付き合いだし、演技の笑顔と本当の笑顔の区別くらいはつく。
基本的に笑わないユルルだが、デート中に微笑んでいた場面も少なくなかったし。
「……俺が破滅するのはまだ良い。でも、ユルルが破滅するのは嫌だ。不幸が決まってる寝取られを許容してたまるかよ」
逆に幸せなNTRってなんだ……?
政略結婚したけど地元の幼馴染と駆け落ちして合体したとか──う、うおぁぁああああ!! 政略結婚ワイ!! 絶望!!
い、いや、少なくともユルルに仲の良い男がいたって話は聞かない!! 幼少期から関わりがあるから、流石にそこは大丈夫だと思う……けど!!
「ふぅ……嫌な思考が無限に湧き出るな。風呂でも入ろ」
こういう時は熱い風呂でサッパリするに限る。
今からメイドに頼んでソロ風呂するのも申し訳ないし、ここは王城の貴族専用浴場にでも行くとしよう。
意外と人少ないし。
「──お、貸切じゃーん」
だだっ広い風呂に一人はテンションが上がる。
異世界ということで衛生環境が心配になるが、意外とこの世界は上下水道は整っているので問題は無い。
浴室は清潔魔法で常に綺麗な環境に置かれているし。
「らー、らららー」
しっかり体と頭を洗ってからドボンする。
前世で好きだった歌を口ずさみながら至福の時間を過ごしていると、ガラガラと扉が開いた音が聞こえた。
どうやら貸切の時間は終わったようだ。
俺は閉口して目を瞑る。流石に他の人がいる前で歌い続ける勇気が俺には無い。……ハッ、その勇気があればユルルにもっとアピールできるのでは……!!
いや違うな。
その勇気の出し方は迷惑系YouTuberとかのソレだ。
「うーむ、一体どうすれば……」
頭を悩ませていると、少し離れたところに人の気配を感じた。
「おや、レヴィ様でしたか。お隣失礼しますな」
「ッ、お、おお、ポジンチ大臣か。久しいな」
俺は現れた人物に思わず動揺してしまった。
それは転生を果たす前から知っていた存在だったからだ。
でっぷりと肥えた腹回り。
バーコードになりかけた薄毛の頭。
強い権力と出世欲を兼ね備えたその男は──
──絶賛会いたくないランキング第一位、ユルルを最初に寝取った帝国の大臣、ポジンチだった。
ゲームでは完全に蔑称として"チンポジ大臣"と呼ばれている。
「レヴィ様こそ、ここに来るのは珍しいですな」
「ま、まあ、気紛れかな?」
そういえば記憶が戻る前の俺は、なぜか直感的に貴族専用浴場に行くことを避けていた気がする。
どれだけ面倒でも他の浴場に足を運んでいたが──もしかして、俺の魂に刻まれたNTRの苦しみの元、ポジンチに会いたくないがゆえの行動だったのかもしれない。
「ここは良い。静かで落ち着きがある」
「あー、確かに、な。わざわざ貴族専用とはいえ公衆浴場を利用する人間は少なそうだし」
「ええ、私が来る際も大抵は貸切なものです」
「それはそれは、邪魔してしまったか?」
「いえいえ、レヴィ様とは一度腰を据えて話してみたいと思っていましたから」
そう言うポジンチの表情には悪意の欠片も無かった。
……もしかして俺は誤解していたのかもしれない。
ユルルを寝取る敵だと考えていたが、こんなにも純粋な笑みで俺と話したいと言ってくれる人間が果たして悪人なのだろうか。
もしかしたら寝取ったのにも理由があった可能性がある。考えたくはないが、あの股の開き具合からユルルが誘った可能性だって──グハッ!!! 考えたくないよぉぉ!!
……ふぅ、一先ずフラットな目で大臣を見よう。
好色でイヤらしいみたいな噂が大臣にあるわけでもないし。ずっと警戒心を抱いているのも失礼な話だ。
「そうか。放蕩皇子なんて言われてる俺と話したいだなんて珍しいな」
「ほほほ、だからですよ。私は……少し羨ましいですがね。しがらみに囚われている私と違って自由に羽ばたける身であるあなたが」
「まあ、各省を束ねているあなたがしがらみの中にいるのは必然か。……なんて、答えれば良いか分からないが」
「あぁ、別に嫌味ではありませんよ。大臣としての業務もやり甲斐がありますから」
ただの純粋な憧憬だったらしい。
勉学から逃げ続けている俺と違って、大臣になるためには多くの修練を積む必要があったことだろう。時には私生活までも犠牲にして学び続けなきゃいけなかったはずだ。
こんな大層な人間のことを警戒していたなんてまったく俺は失礼だな。ゲームはゲーム、現実は現実じゃないか。
「──だからね、やはり時折ストレスが溜まるのですよ。抱えきれないムラ……悶々としたものがね」
「……ん? まあ、それも当然だな」
今一瞬聞き捨てならないことを言わなかった?
気の所為か。
「こんなこと、放蕩皇子のあなたにだけ言えることですが──あちらの壁を見てください」
俺は言われた通りになんの変哲もない壁を見る。
……何だか嫌な気がする。
「アレに魔力を注ぐとね──おや残念、今は誰もいないようですが──女湯を覗き見ることができるんですよ!!!」
──俺の大臣への信用値が1万ポイント下がった。
ニコニコと純粋な笑みを浮かべていたはずの大臣は、今や気色悪い性欲に塗れたニヤニヤした笑みに変貌していた。
普段誰もいない浴場。
一人、女湯を覗き見るおっさん。
この場で
「ほ、ほほ、想像したら……おっとすみません」
ふと何も考えずに隣を見た。見てしまった。
人間、動くもの、大きなものに自然と目線が吸い寄せられるというが──俺が見たのは簡潔に言うと、大臣のちんぽだった。
「はっ……はっ……はっ……うっ……ぐぁっ……」
突如蘇るトラウマ。
気持ちよさそうに大臣のちんぽを受け入れるユルルの姿。嬌声をあげ、快感から笑みを浮かべているユルルの見たくない表情。
そう、俺は大臣の護国ちんぽを見てしまったことでフラッシュバックを起こしていた。
「れ、レヴィ様!? 大丈夫ですか!? 今人を呼んでまいります!!」
ドタドタと慌てて去った大臣。
幸いだったのは、彼がノンケだったことだろう。
「や、ヤツは信用できない……! ユルルに目をつけられたら終わる……!!」
この世界がエロゲの世界だというなら、常識が通ずることなくデカいちんぽが勝つはずだ。痛いだの入らないだのそんなの関係ない。
デカいちんぽが勝つ。それは絶対的な
「な、なら、俺はッ! ユルルが誰の手に汚されないようにッ!! 名声を高めてやる……ッ!! 俺がユルルを護国ちんぽから守るんだ……!!」
この世界でやるべきことが見つかった。
誓いを発した俺は、そのまま意識を失った。
※大臣は童貞です。