転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件 作:図画工作で使うトイレットペーパーの芯
ずっとふんわりしていたこの世界でやるべきこと。
日々を徒然なるままに、面倒事から逃げ続けてきた俺がやらなきゃいけないことがようやく見つかった。
ふ、ふふ……きっかけが大臣のちんぽとは嫌だがな。
まさか普通に気絶してしまうとは思わなかった。
「今の大臣はユルルに何もしていない。助けを呼んでくれたのもあの人だし、邪険にするわけには……いや覗きは犯罪ですよ……」
俺のことを放蕩皇子だと思っている大臣は、市井に流れる女遊びをしているという噂を信じたのだろう。
だから貴族専用浴場の秘密を教えてくれた。
羨ましいと言ったのも、今となっては若干含みがあるような気がしないでもないが本音に違いない。
「とりあえずごめんなポジンチ。助けを呼んでくれたことへの恩返しに報告はしないでやるけど、あそこの壁は改修するぞ」
流石に知ってしまったら無視はできない。
罪の無い婦女子の裸体を覗き見するような卑怯な真似はさせてはいけないし──
──大臣はただのオ◯ニー用として使っているが、敵対貴族の妻を盗撮し、弱みの種として脅す──このような、政治的利用もされかねない。
なんだろう……ある意味男として素直な使い方をしてる大臣のことを庇えはしないけど同情するよ……ちょっとだけな。
「……さて、やることが増えたな。今まで通りユルルへのアプローチは継続しつつ、並行して俺の地位を上げる必要が出てきた」
今の俺は"放蕩皇子"の呼び名の通り、貴族間でも市民間でも風評被害含めて最悪の好感度と言っても差し支えが無いだろう。
こんな状態じゃ何をしても信じてもらえないし、皇子としての地位が低い以上は第一皇子の派閥にいる貴族に邪魔されることは目に見えている。
「味方を増やすべきだな」
別に俺は皇帝になりたいわけじゃねぇ。
誰にも手出しできない地位と言えば皇帝ではあるが、その地位ゆえにユルルの身に危険が起こる可能性が高い。
「となれば……目指すべきは
この世界の『親王』は謂わば役職である。
直接皇帝から『お前を親王にする』という宣下を受ける必要があり、主なやるべきことは皇帝の補佐だ。
何らかの都合で皇帝が国務に迎えない際に一次的に国務を代行したり、他国に足を運んで親善大使として友好関係を深めたり──などなど、皇帝に信頼してもらわないとアウトな役職である。
「歴史書をちょびっと読んだ限り、歴代でも皇族が親王を宣下されるのは珍しいことじゃない。十分チャンスはあるはずだ」
問題は──親父がそろそろ退位しそうということ。
元々50になったら皇帝退位して隠居する!! って宣言してたし。
「兄上かぁ……大して関わり無いんだよなぁ……」
第一皇子──ラビリス。
質実剛健、真面目を着飾ったような性格。
皇帝として皇帝になるために生まれてきた男。
……みたいな感じだったのは憶えてるし
皇帝に気に入られる必要があるのであれば、俺が媚びを売る相手は必然的に兄上になる。
「放蕩皇子なんて言われてる俺のことどう思ってんだろ」
確実に良い印象は無いだろうな!!
むしろ嫌われてるまである。
「ええい!! あれこれ考えるのは得意じゃねぇ!! 行くか!! 兄上のとこに!!」
頭で考えるよりも行動するほうが得意だ。
前世からそうだったが、下手に今世で地位を手にした結果何だか悪化してるような気がするのは気の所為だと思いたい。
そんなことを思いながら俺は、夜の王城の薄暗い廊下を全力ダッシュして兄上の私室に向かった。
ものの数分で到着した俺は、扉の前でごくりと生唾を飲む。
面と向かって話すのは何年ぶりだろうか。
緊張するし、胃がキュッとなった。
だがユルルを守るためなら俺は何だってできるんだ。
コンコンとノックをする。
「……二回ノックはトイレの空室確認だ。礼がなってないということはレヴィだな。入れ」
「そんなバレ方ある!? 酷くないか兄上!!」
緊張がすっ飛んだ俺はツッコミしながら部屋に入る。
簡素な机とベッドしかない皇族らしくない部屋にいたのは、黒い寝間着を着た眼鏡のイケメンだった。
血縁を感じさせる金髪碧眼。
ツリ目でフレームの細い眼鏡をかけた細身のイケメン──うんやっぱ完全にTL漫画に出てくるドSイケメンだよな、どう考えても。
「王城に住んでいる人間で正しいノックの知識が無いと推測できるのはお前だけだ」
「野良の暗殺者かもしれないじゃん」
「暗殺者はノックなどせん」
「確かに」
会話をしながらジッと兄上の様子を伺う。
完全なる無表情なせいで俺に対する感情がまったく読めない。
少しは嫌われてるかどうかを確認できるかなと思ったが、そんな能力があれば今頃ユルルに好かれてるわボケ。
「お前が私の部屋を訪ねてくるとは予想ができなかった」
「あぁ、うん。あんまり関わり無いもんな俺ら」
「……そういう話ではない」
絡み無い人間が部屋まで来るとは思わないよな、ってことかと思ったら全然違うらしい。
心なしか頭痛が痛いみたいな表情をしてる兄上である。
「……まあいい。何の用だ」
話自体は聞いてくれるらしい。
俺はこういう頭の良い人間には結論から言ったほうが良いだろうと、笑顔で宣言した。
「ちょっと諸事情で権力が必要になったんだよね」
「……ほう。ゆえに私を殺し、次期皇帝の座を狙うと?」
なんでそうなる!? いや……皇族が権力欲しいって言い出したら普通は皇帝の座を狙うことになるのか……面倒だな。
内心でため息を吐きながら、どこか剣呑な雰囲気が辺りを包み込んだところで──全身を使って拒否を示した。
「……なんだそのポーズは」
「全然違いますよのポーズ。普通に考えて兄上殺したって次期皇帝が俺になるわけないじゃん」
「ふっ、己の立ち位置を理解しているらしい」
張り詰めた空気が途端に霧散した。
初めて兄上が笑っているところを見た気がする。何が面白かったんだろう。全力拒否のポーズかな。
「俺が言いたいのはアレだ。親王の座を狙おうかなって」
「あぁ、なるほど。……婚約者絡みの話か」
「説明するまでもなく理解されるの辛いっす」
一を聞いて百を知るを実践されてる件について。
「お前が自発的に動く時は婚約者が絡んでいるだろう。……大方、婚約者を守りたいが"放蕩皇子"の己に守る力が無い。だから親王になって手出しできないようしよう、といったところか?」
「ハイ……正解です……」
「今のうちから私に直談判するとは面白い」
おや、それに関しては勘違いしてるようだな。
「あ、今日来たのは単に兄上が俺のことどう思ってるのかな、って確認しに来ただけだよ。親王なんて大事な役職の未来を俺に約束するとは思えないしな」
「ふむ……それは予想外だ。前までのお前であればもう少し短慮に事を急いていたはずだが」
兄上を目を丸くして俺を見つめた。
……なるほどな。確かに記憶が戻る前の俺だったら、直接兄上に「親王にしてクレメンス!!」と直談判していた可能性が高いだろう。
だが記憶が戻ったことで頭の良さは変わっていないが、ある程度俯瞰して物事を見ることができるようになったと思う。
ゲームという最強の知識ソースがあるのも一つの要因だ。
「親王って皇帝の懐刀みたいなもんだろ? 兄上なら慎重に選びそうだし。だから今日は親王になりたいよー、って意思表示と兄上からどう思われてるのか確認したかっただけ」
「……一考の余地はある。お前のコミュニケーション能力と行動力には一目置いている。特に他国との融和を結ぶ際に、お前のような人間は一人いて良いと思っている」
「意外と評価されてて驚きなんだなこれが」
どうやら好かれてるか嫌われてるかはさておき、俺のよく分からないポテンシャルを評価してくれていることは素直に驚いた。
俺に興味が無いと思っていたし。
「──だが、今のお前では到底任せることはできないな。良い心境の変化があったと見えるが、単純に能力不足だ」
「まあ、ですよね」
正論オブ正論だ。ぐうの音も出ない。
能力に関してはここから勉強してつけたいと思っているし。
一旦諦めて出直そうと思った俺だったが、顎に手を当てた兄上が少し口角を上げて言った。
「お前を次期親王に据えても良い。だが私の出す試練をクリアすることができたら、だがな」
「まじですか!!」
「あぁ、言っておくが、それに並行して知識をつけることは言うまでもなく必要だ」
「もろちん!!」
「ん……?」
あっぶね口が勝手に。
試練と聞いて身構えるものがあるが、知識も能力も0の状態で『地位』への糸口が掴めた。あまりにもデカい収穫だ。
「そうだな……では最初の試練を伝えよう」
ごくり、と唾を飲む。
なんだろう。素手でクマを倒せとか言われんのかな。
ユルルへの愛の力があったらいける気がする。
「2週間後の建国記念パーティーにて、お前は皇位継承権を狙っているという前提で、私の派閥に属している貴族を味方につけろ。勿論、手段は問わない」
「ほえ……?」
おれに……このおれに寝取れと仰るのか……!!!
ユルルとのイチャイチャもあるしギャグもあるよ
お気に入り高評価よろしくねん。