夜。
荒々しく峠の道路を突き抜ける車と場所を見つけ、ガードレールを飛び越える車のフロントガラスを踏み、全力で蹴り戻して転落事故を覆す。
「天道、怪我してないか?」
「て、テメェ!才賀!?ういてるのか!?」
「いや、乗ってるんだよ」
慌てて車を降りてきた月光とは別に出来た友達の高木天道の言葉に応えてやりつつ、スリップしたときに裂けたホイールと壊れたフロントガラス、エンジンの取り替えに苦悩する天道が見えた。
まあ、それはそれだ。
「そ、それよか今の見たかよ」
「ああ、十中八九でシンデレラのカボチャの馬車だろう。ただ、ガラスの靴は御伽噺と違っているのは間違いない」
「ガラスの靴だぁ?んなもんより、どうやってお釈迦になったオレの車を運ぶのかだ!」
「レッカーは頼んどいたさ。ちょーっとオレだけじゃ面倒な相手みたいだからな」
オレの言葉に天道は目付きを変える。
矢文を送ってきたヤツもそうだが、さっきの「御伽噺の登場人物」────シンデレラも気になる。アイツのガラスの靴はイヤな気配を発していた。
となると、怪しいのはサージェスの保管する「糸色景の画集」だ。アレには明治時代では考えられない不思議な発明品が多く乗っている。
「才賀、追うならオレも手伝うぜ。あの野郎、この俺をノロマだって言いやがった!」
「走り屋への挑戦ってわけか」
シンデレラのガラスの靴。
……そういえばサージェスにもガラスの靴を保管している話しは聞いたことがあるが、アレも関係しているのと考える。
未来を視る。
次に現れるのは、夜波埠頭。
「天道、月光も呼ぶぞ」
「あァ!?俺だけで十分だろうが!?」
「相手は三人だ。車、お姫様、怪物、車はお前じゃなきゃ倒せないし。お姫様は月光、怪物はオレじゃなきゃ戦い難い奴らだ」
「……三対三のタイマンか」
「オマケに言えばトップクラスの速さだ。流石のオレも馬車の速さには追い付けん」
そう言うと天道は「確かにな。テメェは速いが車には追い付けねえ」と理解し、三人同時に相手する事を納得してくれた。
あとは月光と鉢かづきに連絡して、対応してもらえるようにしないといけない。「天女と麦つかい」の方はギリギリ間に合っている。
「(エンゲキブ、わざとだな)」
未来を視る目は、たまに過去を視る。
面倒な事にシンデレラの代役をエンゲキブが務めているみたいだけど。ありゃあ舞踏会じゃなくて、武闘会と間違えているな。
「天道、車の代用はあるか」
「最速のヤツだろ。組んでやるッ」
「流石、楽しみにしとく」