シンデレラの事を追い掛け、高速電車に襲い掛かる彼女の蹴りを顔面で受け止める月光の腕を掴み、レールに落ちて轢かれる前に引っ張る。
「死ぬ気かおのれは?!」
「死なねえよ!」
オレに言い返してきた月光とバトンタッチし、オレと邪紅と清白、一角の迅速は月光達とシンデレラのレースを見守る事になった。
電車を運転する操縦士に「悪いな、邪魔した」とだけ伝えて、走り出した二つの車を見据える。未来を視ずとも分かるが、勝つのは月光だ。
「境様、蔵書館より伝言です」
「癋見か。思ったより速いな、流石だ」
「異能大家の当主たる境様の御命令ならば容易き事です。二言、申し上げます。蔵書館に収めていた御伽噺が飛び出してきたそうです」
「どれだ?」
「『エンバーミング』です」
よりによってフランケンシュタインの怪物達の事を書き記した書物が月打ちされたのかとドン引きしながら、フランケンシュタインまみれになる。
下手したら殺人も起こるぞ。
「被害……ってか。賛と奇もいるだろ。アイツらには頼まないのか?」
「賛様は身分を隠し、奇様はニュートンアップル女学院の初等部を卒業したばかり。まだ子供ですので戦闘は危険と巓様は判断しました」
「成る程、同意する。癋見、フランケンシュタインの集まりそうな場所をリサーチしてくれ、もしものときは核鉄も使って構わない」
「境様の御心のままに」
そう言うと飛び去る癋見。アイツは堅苦しいんだよな、普通に話してくれる未来も見えているが、頑なに敬語を使ってきやがる。
いい加減にやめていいんだがな。
オレってそんなに話しにくいか?なんて考えながらエンゲキブと競争しているシンデレラの姿に笑い、オレも満足している。
「境様、よろしいので?」
「良いんだよ、未来は良い方に変わる」
邪紅刀の問いかけに答えながら月光達に近づき、「よう。勝ったのかよ」と煽ればバッドサインを向けてきたので親指を突き立ててやった。
「まあ、女の子は強いからな」
「だなあ」
「けっ。バカ女のせいでつかれたぜ」
「流石の天道様も疲れたぜ」
そんなことを話し合いながら、絵本の中へと帰り、また此方に戻ってくるシンデレラの姿を未来で視る。いつだって、誰かの笑顔を見るのは素敵だ。
「ところでよ、月光。その顔面の三日月は何だよ」
「鉢かづきに頭突きされた痕だ」
「あれでかよ、やべえな」
「せめて拳だったら決まったよな」
ウンウンと三人で頷き合いつつ、天道がシンデレラに車の整備会社を紹介し始めた。
ありなのか、そういうのも。