ハーメルンの笛吹男を送り返したが、聞き耳頭巾のヤツはまだ絵本に帰っておらず、女の子を追いかけ回している事だけは見えた。
主人公も堕ちれば堕ちるな。
まあ、そんなヤツをぶん殴る月光の姿も見えたし。オレは後始末と、警察に顛末を教えるだけだ。オヤジに言ったら面倒臭がる事態だ。
「才賀、なにしてんだよ」
「ネズミ取りだ」
「ネズミだぁ?」
「ハーメルンの笛吹男はネズミを笛で誘導できる御伽噺だからな。本の中からネズミを操っているんだが、威圧して止めているところだ」
「……バケネズミだな」
「だれがバケネズミだ、くぉらあっ!!」
ネズミの中からボロ布を纏った男が現れ、飛び掛かってくる未来を視て、横に退く。
オレの代わりに抱きつかれた天道はこの世の地獄のごとき悪臭に包まれて、雄叫びを上げ、自分の鼻を必死に押さえているが、口で呼吸して、吐いた。
まあ、そうなるわな。
「何やってんだよ、ネズミの兄さん」
「何って才賀ちゃんよ、このビビビのねずみ男に黙って楽しい金儲けしてそうな悪い子を問いただしに来たんじゃねえの」
「金儲けはしてないぜ、慈善事業だ」
「ちぇっ、今回はハズレかよ。まあいいや、この前みたいに何か奢ってくれよ」
「断る。今、未来で食い逃げした」
「未来で食い逃げしたぁ!?いつだよ!?」
そりゃあ、未来だろ。
天道はただでさえ暑苦しい顔を更に暑苦しくさせて悶えてばかりだ。仕方なく、ルパンに借りてた「ばら色の人生/
「し、死ぬかと思ったぜ」
「うーん、バラの香り」
「ネズミもとりあえず絵本に帰ったし、ネズミの兄さんも下水に帰ってくれ」
「なんだよ!」
「いや、このコレクションって本当はくさい臭いを無臭にするんだよ。それなのに、バラの香りになるってことはかなりヤバい」
そう言うと天道は自分に降りかかる未来を想像し、絶望しているので「まあ、銭湯にいけよ」と伝えて、エンゲキブには黙っている約束をした。
さらばだ、天道。
ソッとアイツだけコレクションの効果を外したら銭湯から蹴り出されていた。
まあ、そうなるよなとオレも納得しながらネズミの兄さんに「滅さんなら相手してくれるんじゃないか」とだけ伝えた。
滅さんはなあ、糸色の女性にしては珍しく男運がすこぶる悪くてよく泣いているし。結婚したのに、童顔すぎて父娘扱いされるんだよな。
まあ、それも愛だと思おう。