「あら、才賀くんだったかしら?」
「……ああ、エンゲキブのお母さんか」
「えぇ、こんにちは」
ハーメルンの笛吹男を絵本の中に封じ込めて、ネズミの兄さんにタカられた帰り道。月の明かりに照らされたエンゲキブのお母さんに会った。
切の姉ちゃんに似ている気がする。
いや、胸は似てないな。慎ましい
姉ちゃんとおばちゃんがおかしいんだ。未来の賛だって自分の胸にコンプレックスを抱いているし、過去の景さんだってコンプレックスを抱いている。
「不躾な視線ね、だめよ?」
「っ、すみません。どうにもエンゲキブのお母さんの顔が、オレのご先祖様の糸色景にそっくりだったんで見ていました」
「フフ、そう?そっくりかしら」
「ああ、魂だけが違うぜ」
オレの言葉に目を細める糸色景の姿───いや、オレのばあちゃんの身体を乗っ取っている、エンゲキブのお母さんを名乗る女の事を見下ろす。
しかし、この女の未来は見えない。
「アンタ、何者だ?」
「私は、あの娘のママ役というだけよ。あと自分のご先祖様にアンタ呼びは感心しないわね。ああ、それと私を追うより先に片付けなさいね」
その言葉と同時にオレの視界は今まで感じたことのない。いや、一度も体験した事の無い勝ち筋の見えない戦闘パターンが広がっていた。
……エンゲキブに聞くのは、ナシだな。
下手したら月光を巻き込むし、天道のヤツも巻き込んで面倒臭いことになる。
「……にしても。オレのご先祖様の身体を乗っ取ってやっていることはママ役ってどういうことだ。お前らはどうおもう?」
「は、我は悲哀を感じましたが」
「あの目は達観であろう」
「然り。諦めの感情なりや」
今度、墓参りのときに聞くか。
ひとえのばあちゃんとしとりのばあちゃんに聞けたら良かったんだが、あのまま下手したら人身御供みたいになってたもんな。
そんなことを考えながら「癒やしの力」を目に使ってオーバーヒートしそうだった目を癒やす。ママさん、マジで何が目的なんだよ。
「ママ、ここにいた!」
「あら、月光くんとはもういいの?」
「うん、大丈夫だった!」
笑顔で帰っていくエンゲキブと、ママさんを見ていたら考えるのが面倒臭くなってきた。あれはもう味方って考えよう、糸色景の身体はいつか取り返す。
エンゲキブが悲しむかな。
「月光と天道とケンカするか」
考えても分からねえときは運動だ。
動けば面倒臭いことは考えなくて良くなる。そうと決まればラーメンを食ったらアイツらとケンカする。