「お菓子の家ってか」
「人食べる家だな」
「乙女のエンゲキブに譲るわ」
「こんなに食べたら太るわよ!?」
オレたちを飲み込んだ「ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家」の中を歩く。流石に刀が汚れるのはイヤなので服から出すことはない。
しかし、どうするかね。
「甘いものは無理だ」
「あたしもカロリーがちょっと」
「私もあんこ以外は…うっときて」
「月光と鉢かづきとエンゲキブは無理か。天道、オレとお前で食べるしかないぞ」
「まあ、落ち着けよ。まずは間取りを確認するほうが優先だ。あとエンゲキブとハチカヅキは頭がクリームで濡れないようにオレらの服を被ってな」
そう言って天道はシャツを脱ぎ、エンゲキブに被せ、確かに髪がベタついたらかわいそうだと思い、オレも鉢かづきに学ランと刀を預ける。
さて、どうしようかね。電話しようにもオレは持ってないし、エンゲキブと月光も今は持っていないし、天道は壁の向こう側に忘れてる。
「爪楊枝でも良いから棒があればな」
「某の太刀でもか?」
「流石だぜ、一寸法師!」
学ランに乗って滴るカスタードを飲んでいた一寸法師の差し出す爪楊枝サイズの刀を受けとり、右手で掴む。親指と人差し指で挟み、構える。
「大丈夫なの?あれで」
「エンゲキブ殿、境様の剣域に被ります故、もう少しばかり後ろに下がられよ」
「懺斬り」
目の前のスポンジケーキとマシュマロ、ワッフルを切り分けて氷菓子のお皿に盛り付ける。ケーキを食べて、口許を押さえる。
残りは一寸法師にあげた。
「……くどいな。和菓子のほうが好きだ」
「おう。俺だ、ちょっと頼みがあってな、バカデケえお菓子を貰ったからよ、テメェらもこいや」
天道の携帯も見つかり、窓の外を見ると暑苦しそうな奴らがお菓子の家にかじりつき、食べ始めるのが見えてきた。
「男だって甘いものは大好きなんだぜ?」
「つぶ餡派だな」
「才賀様、よもや敵だったのですね」
「鉢かづき、こし餡派だったのか」
ちょっとだけ見つめ合い、あんこは美味しいというところに着地した。オレも気に入ったヤツとケンカなんてしたくないからな。
みんなで食べ進めるお菓子の家から落ちてきたヘンゼルとグレーテルの二人はしっかりと月光が金棒でぶん殴って元に戻してくれた。
アイツら、子供を食おうとしてたからな。
無事に止まってくれて、良かった。マジでヤバかったらオレだけで丸ごと斬ってたからな。天道の仲間にあとで親戚の経営する菓子屋に連れていこう。
食い尽くしそうだな、大丈夫だよな?
あ、食い尽くされるな。