「マスター、来たぜ」
カランカランと鳴るベルの音を聞き、切の姉ちゃんが通っている行きつけの喫茶店「アモーレ」に入ると、「いらっしゃい」と聴こえる。
「今日は何の用だ?」
「オレのご先祖様の身体、乗っ取ってやがるのはアンタらの仕業なのかよ。ショッカー」
「生憎、ソイツは違うな。相手は月だ」
月ぃ?とオレは真昼の空を見上げるも月なんて見えず、マスターにからかわれているのかと考えたが、そんなことするヤツではない。
「ゲンジロウ、どうした?」
「ツカサ、お前に客だ」
「よう、ツカサさん」
「……帰るわ」
逃げようとする優男───楯敷ツカサの肩に腕を回し込み、イヤそうな顔を向けるツカサに「お前、また過去に来て何する気だよ」と言ってやる。
「ゲンジロウ、助けろ。ヤンキーに絡まれた」
「無理だな。ソイツは、シグマ的なヤツだ」
シグマって、だれだよ。
「シグマはシグマだ」
「まあ、そりゃあそうか」
パッと手を離して、ツカサとマスターに話してコーヒーを出してもらう。
……ん、やっぱりマスターの淹れてくれるコーヒーは美味いな。それにしても、ツカサの後ろでオレを睨むシゲルの睨まれるのは不本意だ。
「シゲル、やめとけ。こいつに喧嘩を売ったらマジで組織ごとブッ壊される」
「そこまではしねえよ。精々お前らが産まれてきたこと後悔させてから斬首するだけだし」
「「「極悪非道すぎるぞ、テメェ」」」
そんなことを言ってくる三人を無視して、オレは優雅にコーヒーを飲みつつ、ふと視線を感じ、ツカサを見つめてやる。
未来を視ると殴りかかっている光景が見えた。
「東島丹三郎ねえ?」
「え、なんだそれ?」
「お前を殴るヤツが見えた。世界を移動するのも良いけどよ、バカみてえに強いヤツと当たったらオレも混ぜろよ。戦闘員ぐらいやってやる」
「いや、それは断る」
オレの提案を断ったツカサの頭をぶん殴っておいた。避ける先にパンチを繰り出したから自然と当たり、悔しそうにするツカサを見下ろす。
「大人のお前が、ガキのお前に嫉妬するなよ」
「……うるせえよ」
交さんに怒られて拗ねてやがるし、節操なしに世界を渡って変なことを繰り返すからだ。まあ、それを面白がっているのもオレなんだがな。
「これが歴代最強って」
「なんだよ」
「妙に勝ったのデマだろ」
「引き分けだ。あの人に勝つときは、二つの糸色が元のひとつにもどるときだ。その未来はもうとっくに見えている」
そう言って小銭がないので、札束を置いて喫茶店を出る。次にやるときは、もっと後だな。
楽しみだぜ。