店頭のテレビに映る巨大なオオカミの姿に食べかけのアイスを噛み砕き、当たりの棒をゴミ箱に捨てて、オレは此方に走ってくる子ブタを手のひらで受け止める。
「よう。楽しそうだな、オオカミ」
「何だァ?テメェ」
のっそりと信号機の上に立つバカを見上げる。オオカミとは思えないほどデカく黒く染まった体毛。小さな二匹の子ブタとオオカミ。
三びきの子ブタとオオカミ。
ガキの頃に母さんがよく呼んでくれた童話だと懐かしみつつ、鼻息荒く向かってきたバカなオオカミの下顎を蹴り上げ、オレはオオカミのがら空きの腹を殴り、力任せに地面にぶん殴り倒す!
「グッ、ガフッ…?!イデェエッ!!?」
「イテェのはお前だけじゃねえよ」
手のひらに乗る二匹の子ブタを見下ろし、ズタボロで今にも聴こえそうなコイツらを好き勝手に弄び、痛め付けていたオオカミを見詰める。
─────直ぐに夜空を見上げる。
テメェも来いよ、月光!!
オレの視線に気付くよりも前にキレた月光の拳がオレの背中に迫っていたオオカミの脳天を殴り、再び地面に向かって叩き潰す。
「コンバンワだな、才賀」
「店番サボったのか?月光」
ニヤリと笑うと「うるせェ!それよかテメェは何してたんだよ!」と言い返され、月光に向かって二匹の子ブタを差し出して、ソイツらを預ける。
「持っとけ。大事な御伽噺だぜ」
「待てよ。おもしれぇケンカしてたクソ犬をぶん殴るのオレだ。才賀、テメェは引っ込んどけ」
「テメェら、ふざけんじゃねえェ!!」
……ケンカを売る相手が違うだろうと呆れながら、息を吸い込み、竜巻と突風を起こすオオカミをオレ達は見上げ、睨み付ける。
「才賀、お前が一ぴき預かれ!」
「……マジで、予想通りのヤツだよ。お前はさ」
「ケッ。くっだらねぇぜ」
「そう言うなよ。友達だろう?」
ケラケラと笑いながら、オレは胸ポケットに子ブタを入れ、ゴキッと拳を鳴らす。邪紅と清白を使ってやりたいが、真上の二人が来るしなァ。
「月光様、私を使ってくださいませーーーっ!」
「うるせえっ!引っ込んでろ!!」
月光に蹴り飛ばされるエンゲキブと金棒を受け止める位置に立ち、迫り来る突風から守るように背中を向け、二人の事を庇うその間に月光は子ブタを庇い、ビルのガラスを突き破り、飛んでいく。
瓦礫を頭や身体に受け、足だけが見える。
「ゲッちゃん!!」
「だ、か、ら、その呼び方はやめろ!!」
───が、直ぐに立ち上がった。
オレも行くか。
オレに見える未来は見定めた。
「手伝うぜ、月光」
「要らねえよ、退け」
「ばーか。コイツはオレと子ブタ兄弟のケンカだ」
「なら、オレも同じ立場だぜッ……!」
ニヤリと月光は笑った。
まあ、そうなるよな。
お前は、そういう男だ。
「〈
「臭い息を吐いてんじゃねえよ、痩せ狼!」
右拳を振り抜き、二重の極みを撃つ。貫通する衝撃波がオオカミの背中を突き抜け、ビルの一部を粉砕し、血反吐を吐くオオカミのデカい牙を掴み、へし折り、悲鳴を上げるよりも早く殴り倒す。
「月光!」
「命令すんじゃねえ!」
オレの肩を踏みつけ、飛び上がる月光の顔に三日月が浮かび、力任せに振り抜かれた頭突きがオオカミの身体を正し、元に戻していく。