「だぁむですとろぉい」
オレの持つ「赤ずきん」の絵本を飛び出してきた赤ずきん本人の言葉を聞く。生憎と子供を斬る趣味はないし、なによりコイツを解決するのは月光達だ。
「あなた、悪い人?」
「悪い人は絵本を読まねえよ」
「ふぅん?そうなの……お日様の香りがするわね」
クンクンとオレの匂いを嗅いで、ワインとパンの入ったバスケットを持って飛んでいく赤ずきんを見送り、赤ずきんもオオカミも猟師も消えた絵本を読む。
「ダムデストロイ」
くたばれ、くそやろう、か。
赤ずきんの言う言葉じゃねえな。
そんなことを考えながらムカつくぐらいに頭の中に見える光景に溜め息を吐く。赤ずきんは「雷砲」と「五雷指」を何処で貰ってやがるんだ。
「まあ、考えるまでもなくだな」
糸色景の身体を使って、月打ちの相手を自由に決めることが出来るのかと考える。可能と言えば可能だ。少なくともオレの知り得る過去現在未来の全てであの頭脳に張り合えるのは一人だけだ。
世紀の発明家にして慈愛の舞踊家。
オレの母親、阿紫花命───。
オレの母さんだけだ。
ドクトル・バタフライは人間じゃなくてホムンクルスなのでノーカンだ。そもそもあの人は糸色景の知り合いで、科学を一緒にしていた。
ハッキリと言えば最高の頭脳だ。
「……母さん、勝手に家を出たから怒ってるんだよ。いや、オレだけに錬金術師どもの勢いを寄せてることに申し訳無さを感じてるのか」
「───随分とデカい独り言ですねぃ?」
「オヤジ、もっと早めに出てこいよ。景気良く全身に迫撃砲並みの弾丸が来てたぜ」
「あたしを殺す気かよ、ドラ息子が」
「撃たれても死なねえだろ」
「生憎、あたしはシロガネじゃないんでね。女房の熱い口づけで起きているだけでさぁ」
それでも十分だろうと白髪の増えた阿紫花英良、オレのオヤジを見据える。今日、ここに来て遠目からオレを眺めているのは知っていた。
「
「オレは月を斬る」
「……成る程、糸色の宿命か」
「母さんもおばあちゃんもおばさんやおじさん達だって自分の宿命を乗り越えた。今回は、オレだ。過去現在未来において最強なのはオレだけだ」
あの月の王様だって救ってやるさ。
そのために過去に戻ることもあるが、全てはオレの視る未来に繋がり続けている。怖いものも楽しいことも纏めて引っくるめてオレは受け止める。
「あ、それともう一つあるぜ。糸色で奈落を倒せるのは巓の姉ちゃんの娘、糸色賛だけだ。悪因悪果、全部ぶん殴ってくれる」