だむですとろい。
くたばれ、クソヤロウ。
だむですとろい。
くたばれ、クソヤロウ。
そんな言葉に惑わされず、月光は駆け抜けて、バカなりに自衛隊を止めるために土下座までした。男の頭は軽くない。況してやツッパリの頭は兎に角、重い。
その頭を前にイデヤと工藤も動きを止める。
ここだ。
イデヤ、お前の分岐は此処だ。間違えるな。
オレの見つめる視線の最中、イデヤは振り上げた剣を鞘に納め、月光の目の前に座り込んだ。工藤とエンゲキブは少しだけ離れた場所に座り、赤ずきんは訳も分からず、傷だらけで佇んでいる。
「待ってやる。ただし、にげるなよ」
「逃げねえよ。アカズキンだ」
「……読み手のくせに、へんなの」
そんな会話を見ながらオレは上段に構えた木刀を振るい、また上段に木刀を構える。ちょうど、この場所に出てくるヤツをぶん殴るためだ。
「アカズキぃぃぃ……!!!」
「よう。クソオオカミ」
オレの目の前に飛び出してきた赤ずきんのオオカミに木刀を振るい、脳天を叩き割る。霧散して絵本に戻ったバカなオオカミと、唆したエンゲキブのママ役を見る。
「あら、また倒したのね。流石だわ」
「お前、やっぱり月打ちを自由に出来るな」
「半分、不正解ね。未来の見すぎで、目の前が疎かになっているわよ」
そう告げた刹那、オレは真横からの飛んでくるヒールの爪先を避けたはずが、腹に蹴りが突き刺さる。別の未来を見せて、攻撃しやがったのか!?
「フフ、当たったわね」
「……ペッ、糸色景は糸色家では珍しく武術の才能は一欠片も無かったって聞いていたんだがな」
「珍しくないでしょう。『大衆よ、我を見よ』」
「『大衆は、真実よりも、自分たちが信じたいと願う甘美な嘘を好む』なんて哲学者が言っていたが。そうかい、その強さは糸色景の偶像を練り固めたのか」
「合格♪︎次の手は読めるかしら?」
「チッ!蹴るなよ、タイトスカート!」
「あら、視線が下に向いているわよ?」
「やりにきぃ!!」
「『大衆は考えることをしない。それゆえ大衆を支配することは容易である』。秀でた貴方も大衆よ」
その言葉と共に放たれた蹴りを受けきり、頭突きを見舞う。避けられたが見えたぜ、ばあちゃんの身体を無理やり動かしていやがる。
「確かに人は一人じゃ生きていけねえよ。だが、オレの名前は糸色境だぜ。糸を色づける境だ。糸色家の辿り着く究極の一」
ゆっくりと月を指差す。
「おばあちゃんが言っていた。俺の進化は光より早い。全宇宙の何者も俺の進化にはついて来れない。お前の見せる未来すらもオレは踏み越えてやる!」
「流石、この身体の子供達ね」