「二刀流、楠!」
「っと。ヒラメシールド!」
楠木の如く拡がる斬撃を放つ。
が、オレの剣はバカデカくなったヒラメを捌くだけでヒラメとタイの身体には斬撃は届いていない。マジで面倒臭いタイプの野郎だな。
クソ、さっきの蹴りで左目が痛てえっ。『癒やしの力』で治すのに2秒は掛かる。あの浦島太郎も自分が助かるためにオレの後ろから離れねえし。
マジで迷惑すぎるぜ、クソがよ。
「〈読み手〉にしてはやるな」
「タイよ、褒めるのが下手だぜ!」
「魚類が調子に乗りやがって!」
オレの振るう剣撃をタイの鱗を放って防ぎ、タイの身体をこん棒みたいに振り回して、殴り掛かって来やがる。動こうにも動けねえ。
左右に動けば浦島太郎が抱きついてくるし、上に飛べば浦島太郎が足を掴んでくる。前に進めば追いかけてきて、オレの間合いが潰される。
「グッ、クソダラァ!!梅の木ィ!!」
「おお!?」
「十倍の速さになったか!」
ちくしょうが、腕が痺れるッ……!
今もオレの真後ろで「助けてくれ、助けてくれ」とうるさく言葉を繰り返していやがる浦島太郎に、だんだんと苛立って邪紅と清白を地面に突き立て、後ろに振り返りながら浦島太郎をぶん殴る!
「ピーピーうるせぇ!!テメェも男なら動けッ、歩ける足があるだろうが!!!カメを助けた時の度胸はどうしたゴラァ!!」
ゆっくりと刀を引き抜き、振るう。
「オラ、行けよ。あっちにいる白髪のヤツが月光条例の執行者だ。んで、戻ってくるときは覚悟決めろよ、浦島太郎!」
オレの言葉に逃げるように走り出す浦島太郎を追いかけるカメを無視し、タイとヒラメみたいな魚人もどきを切り裂き、絵本の中に切り裂き、押し返す。
「境様、御目をお治し下され!」
「治すのに2秒は掛かる。アイツらがそれを待つように見えるのかよ?」
「我らを使うのです!」
「我らが思念は無尽蔵なりや!」
「…頼むぜ、清白」
邪紅を太ももまで迫る海面に突き立て、右手を左目に添えながら『癒やしの力』を使い、蹴りで受けた傷を完全に直し、過去と未来を見通す。
「───桜花、その剣戟は梅の木の更に十倍だ」
オレの振るう剣撃は建物ごとタイとヒラメを名乗った魚人もどきを切り刻み、乙姫だけを残して完全に「浦島太郎」の登場人物を押し返した。
「……さて、と。斬る前に聞くぜ」
「なんじゃ。読み手」
「お前の探す薬は人にも使えるのか?」
「如何にも」
「(成る程、道理で邪魔するわけだぜ)」
あの女も自分に使われるのを見越してやがるな。
本当にオレより先を見ていやがるぜ。