「で、才賀。お前も知ってたクチか?」
「主語を話せよ、主語を」
ズルズルとラーメンを啜るオレを睨み、昨日の出来事について問うてきた月光を見据える。ぶっきらぼう。口下手。威圧的。そういうところも岩崎月光だ。
「御伽噺の話なら知ってたし。伝えたろうに、今さら聞き返してくることか?」
「そりゃあそうだろうが!?毎日ラーメン食いに来るヤツが『御伽噺の奴らが来たらよろしく』とかワケわからんこと言っとるんだぞ!?」
「……確かに、言えてるな。けど、関わらないとか言ってた癖に、お前は子ブタとオオカミは正しく返してやったろう」
「グッ…ぬぅぅ…」
ケラケラとオレは席に座ったまま笑って月光を見上げ、目の先を見詰める。もうすぐ鉢かづきが飛び込んでくる時間だな。
「月光、また御伽噺が来るぞ」
「んな、早々に来るかよ」
「月光様ぁーーーっ!!!」
「そら、来ただろう」
そう言うと月光は「な、なんでだあ!?」と騒ぎ、オレは鉢かづきの頭から落ちそうになった手のひらサイズの侍を受け止め、カウンターに移動させる。
一寸法師、オレも好きな話だ。
「忝ない、剣士殿」
「へぇ、オレが剣士だって分かるのか?流石、鬼退治の一寸法師だな」
「ッ、某を知っておるのか!?」
「おう。剣を目指した理由の一つはアンタだ、でかいヤツに勝つために腹ん中に入ったアンタは最高にカッコいいと思うぜ」
まあ、ウソで娶ったのはダメだと思うが。
「そっちに御助力願えば良いだろう!」
「うん。良いよ、手伝うぜ」
オレの言葉に月光は物凄くイヤそうな顔を浮かべ、ケラケラと笑ってしまう。先読みした光景に笑みを向け、オレはゆっくりと丼を置く。
「今回はオレが相手するよ。鉢かづき」
「しかし、極印を持たぬ貴方では」
「大丈夫だって、行こうぜ。一寸法師」
「う、うむ!」
一寸法師を頭に乗せて、店を出ようとする足を止めて、オレは鉢かづきを見据える。
「三秒後。黒電話が鳴るぜ」
「は?お前何を」
じりりりぃんっ、じりりりぃんっ…!
「────言って……マジかよ」
「エンゲキブ様ですわ。もしもし?」
「じいちゃん、ラーメン美味しかったぜ」
「また食いに来いよ、ぼうず!」
「来るよ。美味しいからね」
そう言ってオレはラーメン屋岩崎を出て、ジャケットを脱ぎ、タンクトップ一枚になり、腰元のベルトに添えた右側の鞘具に納めた邪紅を抜く。
「見つけたぞォ!!一寸法師!!」
「うわあああっ!?さっさと逃げろよ〈
「
「御意に!!」
振り落とされる「鬼の金棒」に刀身を持たない黒と赤色の刀柄、邪紅刀を突きつけ、その破壊力と紙上の者の持つ「思念の力」を吸い上げる。
地面に僅かなヒビを作り、オレの目の前に赤く朱く紅く染まった邪紅の刀身が顕現し、月光や鉢かづき、エンゲキブ、一寸法師、鬼が目を見開く────。
「遠くにいる者は噂に聞き、近くにいる者は寄ってこの
「いっちょ、絵本を読もうか♪︎」
にんまりとオレは鬼に笑みを浮かべた。