オレの右拳を受けて地面に倒れた桃太郎を見下ろし、ゆっくりと笑う。
「どうだ。気分は晴れたかよ」
「嗚呼、清々しい気分だ」
オレの差し出す右手を握って立ち上がった桃太郎は楽しそうに笑い、月に打たれて狂っていた目が元の威風堂々とした日本一の眼差しに戻っている。
「呑舟を探してたよな。吉備団子で支配するのはやめとけよ、旦那がいるんだからよ」
そう言いながらようやく駆けつけてきた月光達は珍しく怪我しているオレと桃太郎を見比べ、イデヤは「桃太郎に勝ったのかよ」とドン引きしていた。
失礼なヤツだな。
毛玉吐いてたくせによ。
そんなことを考えながら鉢かづきに話しかけて、吉備団子を食べさせて持ち帰ろうとする桃太郎が見え、ゲンコツを桃太郎の脳天に叩き落とす。
「ちょ、なにしてんの!?」
「桃太郎の吉備団子を食うと美味すぎて何でも言うことを聞くようになるんだよ。イデヤも月光も食わされて変になってたからな」
「何でも言うことを聞くように…」
天道とイデヤの視線が巾着に向き、気絶した桃太郎に一斉に飛びかかるのが見えた。イヌとサルとキジは微妙な顔でそれを見ている。
「エンゲキブも工藤も下がっとけー。ドギツい妄想が頭の中で犇めいてやがる。月光も下がれ、良からぬ妄想がお前にも向いている」
「なんでだよ!?」
オレの言葉に自分の身体を守るように抱き締めて、全員に視線を向けるも犯人が分からず、エンゲキブの近くに寄っている。
犯人、そいつなんだけどな。
まあ、そんなことを言ったりはしないけど。
兎に角、月光に良くないことが起こるのは防いだ。チルチルに戻るときは、もうちょっと待ってくれ。そうしねえと未来の道筋が崩れるんだ。
面倒臭いな。
「で、どうするんだ?」
「とりあえず、吉備団子で二人は黙らせた。エンゲキブと工藤、コイツらに命令し……オレでも変な妄想するのはやめてくれないか?」
工藤を見ると顔を赤くしていた。
いや、そんな風に思われていたのかとちょっとだけビックリしたというのもあるが、流石にそんなに想われると照れるんだがな。
「……工藤、流石に思念を送るな」
「お、送っていないわよ!?」
「ああ、そうか?」
可愛らしく顔を真っ赤に染めた工藤の言葉に「トショイイン様、どのような」とワクワクする鉢かづきは意外とイイ性格をしているな。
流石に、それはやばいとオレでも分かる。
「どんなこと考えてたの?」
「エンゲキブさんもなの!?」
「だって気になるんだもん!!」
なんか姦しくなってきたな。