牢屋のドアを蹴破り、長身痩躯が立つ。
「月光?」
「違う、チルチルだ!」
天道の困惑にはだかの王様が否定を加えた瞬間、チルチルの両手は巨大化し、俺達を押し潰そうとする。が、オレは片腕を突き上げ、張り手を受け止める。
「温いぜ、チルチル」
「ハッ!やっぱり、読み手で一番危険なのはお前だな」
コツコツと爪先の尖った靴を鳴らし、オレの目の前に立ったチルチルを見据える。無駄に顔の綺麗なチルチルの左拳を避け、顔面に頭突きを見舞う。
「天道ォ!他の奴らはテメェに任せる!さっさとソイツらも倒して月光と落ち合えよ!」
オレの言葉に頷いた天道を押し退け、壁を粉砕しながら城の外に飛び出す。
「は、離せ!」
「見えてんだよ、タぁ~コッ!!」
「フガッ?!」
空を飛ぶ物になろうとするチルチルの顔面に二度目の頭突きを叩き込み、チルチルの首を掴んだまま地面に投げ落とす。正直、女の子を殴るのは気分悪い。
だが、コイツを止めるのは月光だ。
あくまでダメージを与えている風を装って、コイツと月光の戦うところを止めないといけない。そのために、オレはやることもやってきた。
いや、そうなりたいんだ。
「どうした、チルチル!」
「チッ。やっぱり、嫌いだぜ。お前なんて」
「そうだろうな。初めて、青い鳥を読んだときに気付いたからな。けど、返してもらうぜ、オレのばあちゃんの身体もその頭の帽子もな」
「この帽子は俺のモンだ!!」
変幻自在に身体の形を変えるチルチルの変化させ、ブーメランやランスに手足を変身させ、オレの事を襲うチルチルに右こぶしを叩きつけるふりをする。
「荒々しいなぁ?」
「アブラカタブラ!」
「列車なんざ効かねえよ!」
巨大な列車に変身して突撃してきたチルチルの顔面に三度目の頭突きを見舞う。あんまり顔に傷をつけてやりたくないんだがな。
「アブラカタブラ!」
「レシプロ飛行機か」
ドルドルとエンジンを吹かす旋回するプロペラを鷲掴み、押さえ付ける。アラビアンナイトで最強の魔法使いなのは知っているけど。
絵本の最強だろう?
「こちとら数百億の生命の犇めく地球を飛び出し、銀河の果てまでも最強の糸色境様だぜ!!オレに勝ちたきゃ強さを見せ付けな!!」
「~~~~~~ッッッッッ!!!!シェヘラザード!!コイツの力を消せ!」
その言葉が響き渡ると歌が聞こえる。
「死ねッ!!読み手!!」
「阿呆が。オレの強さはお前の数千京倍だ」
チルチルのドリルに変化した腕を掴み、地面に投げ落とす。怒りと嫉妬で崩れた強さなんて無意味だ。