阿紫花命。旧姓は才賀命。
糸色流舞踊5代目。
サージェス財団元科学部門主任。
才賀グループ元総務取締役。
短命の多い「二つ目の糸色家」の血筋だが、世界を救った実績を持ちながらも当人は普通に恋する乙女のまま戦場を駆け抜けて、出会いと別れを繰り返した。
オヤジとの馴れ初めは未だに分からん。
糸色家の女性は「ちょいワル」や「ダメな男」に傾倒しやすく、母さんは殺し屋の男にトキメキを感じ、マジでゴールインしている。
糸色家の男は総じて「生真面目な女性」や「意思の強いヤツ」に惹かれやすい。オレが工藤に惹かれるのも、きっとそれが理由の一部だ。
「境さんの言っていたのは貴女ですね。初めまして、阿紫花境の母の阿紫花命です」
「……初めまして、カグヤのママ役。糸色景の身体を借り受けている月の王国、ハチツルギの剣士。トヨウケビメと言います。まさか『からくりサーカス』の解決者に会えるとは読みきれなかった」
「おう。お前に未来を掻き回されるならオレにも出来るだろうたと思ってな」
「つくづく天才ね」
呆れたように、そう話すトヨウケビメと。「えぇ、うちの子は天才なんです」と、ニコニコと笑う母さんの姿に何とも言えない気持ちになる。
それは、いいんだけどな。
マジで母さんは緊張感がない。
いや、あるんだろうけど。のほほんとした、こんな雰囲気でバトルは出来ず、オレは溜め息を吐いて、母さんのやろうとしていることを聞く。
「糸色景様の御体。辻褄合わせですが、ギィ・クリストフ・レッシュさんと会話して、仲良くしていたのは貴女ですね。トヨウケビメ」
「
「フフ、その身体は人を殺した臭いも悪意の臭いもしませんもの。糸色景様の御心は、やはり清廉で涼やかに落ち着いているんですね」
清廉で涼やか?と母さんの言葉に過去を視る。
「ひぃんっ」とか「ひぃんっ」とか、ずっと変な鳴き声で半泣きになっているし、相楽左之助にとんでもないプレイを強要され、断れずに泣く。
わりと受け身な性格である。
いや、そういうのもあるのだろう。
問題ないところだが、記憶をかき消す。
「……えっち」
「境さん?」
「母さん、誤解だ」
アレは不可抗力だ。