「うおらあっ!!!」
オレの右パンチが戦骨に決まり、ようやく殴り倒すことに成功した頃には、オレと戦骨の周りには誰も居らず、合戦場とは思えないほど静かだ。
「いやー、参った参った。殴り合いで負けたのは何時ぶりだ?椿や對、結羅、阿毘、下手したら崩や心結心結にも怒られるな」
ゴキゴキと身体の軋みを治す戦骨の頑丈さにおれはこめかみを押さえ……こいつ、ハーレム築いてたのかよと頭に抱えてしまう。
うちの家系で浮気や不倫がすんごい遺伝子レベルで嫌われてるのって、コイツの影響なのかと溜め息を吐く。しれっと御門院や火影忍軍の名前も出たな。
いや、やめておこう。
深く考えると頭が痛くなりそうだ。
「で、お前は誰なんだ?」
「……オレの名前は糸色境だ」
「ああ、對と俺の子孫か。納得の強さだな」
にんまりと笑った戦骨は立ち上がって、蛮竜を引き寄せると「今日の合戦は終わりだ。お前も来るか?」と言われ、着いていくことにした。
蛮竜はまだオレを飛ばさない。
───つまり、まだやることはある。
そんなことを考えながら戦骨に着いていく。いきなり走り出したかと思えば空を飛ぶ巨大な妖怪が見えた。初めて見る訳じゃないが───。
アレが衾か。
「元気そうじゃねえかよ、衾ァ!!!!」
「ひぃぎぃいあぁあぁあっ!!?蛮竜、また蛮竜が戦骨が来やがった!いでえぇよおぉ!!?ハラワタ斬られたッ、あの痛みがきたあッ!嗤うなァ!おれを嗤うなッ、やめろぉ!?声が聴こえるぅ!!!来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るなぁぁぁ!!!!」
「ハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
空に逃げようとする衾の腹に蛮竜を突き立て、ねじり込んで霊気を爆発させる戦骨。悲鳴が木霊し、逃げる衾を追いかけ、片足と頭の六割、胴体の四割をぐちゃぐちゃにした戦骨は満足そうにしている。
もはや虐めに見えてきた。
いや、衾を無視していたらこの先の村も壊滅しているし、なんか大変なことになるのも分かるが、よくみもまあ、あんなに楽しそうに攻撃できるな。
流石にかわいそうに見えるぜ。
「おのれは悪魔か」
「悪魔じゃねえよ、人間だ。ちなみに嫁は六人いる」
グッと親指を突き立て、ピコピコする戦骨の頭をスパンと叩いて溜め息を吐く。こんなのでもオレのご先祖様ではあるんだよな。
マジでどうにかならんかと考える。
しかし、オレの強さの要因なのは事実だ。もしかしたら、蛮竜はコイツと関わることでオレがさらに強くなると確信しているのかも知れないと考える。