まさかオレが本条家の姉ちゃんみたいになるとは思わなかったと思いながら、胸を支えるように歩きつつ、谷間に邪紅刀と清白刀を差し込む。
学ランの裏側だと締め付けるから仕方ない。
コイツらも役得だろうと思いながら歩いていき、屋敷の庭も兼ねた場所に立ってお湯を被る。流石に刀は遠くに置いてからお湯を被っているぞ。
「んじゃま。やるか?」
「ああ、サクッと次に進みたいからな」
ゴキリと拳を鳴らす。
「うぉらあっ!!」
「ぜりゃあっ!!」
足を止めての打撃戦。
オレのベストショットが何発、何十発と直撃しているのに倒れる気配のない戦骨のタフネスに呆れながらもパワーを底上げするのに持ってこいの勝負だ。
「もっと力を込めろ!!テメェごときの拳骨で俺が死ぬわけねえだろうが!!」
「がはあっ!?」
顎を殴り上げられ、戦骨に言われる。
───力を込めろ?
ちゃんと力を込めて打った筈だ。
そんなことを考えながら戦骨を殴っていると、ようやく自分の違和感に気付いた。ベストショットと思っていたオレのパンチは手加減しているのだ。
「ちょっとタンマだ。いや、止まってくれ」
「良いぜ、止まってやる」
戦骨に言われた事を確かめる。
全身全霊のパンチを打ち込もうとした瞬間、確かにオレは動きを緩める。蛮竜がまだオレを戦国時代に留める理由はコレか。
実際問題。
宇宙最強のオレと渡り合えるオオイミ相手に手加減してしまうパンチは弱点に成り得る。いや、実際にオレは戦骨のヤツを倒しきっていない。
「一旦、意識を全身に向けてみろ」
「……こうか?」
「爪先から拳に向かって力を流せ」
「遠心力と円運動か」
ゆっくりと螺旋を描くように拳を打つ。
────刹那、重さが増した。
空気が割け、武家屋敷の塀が砕け、山の中腹まで空気の圧が飛んでいく。無駄な力を抜いて、余計な事を考えずに打った。
「……は、はは、マジか。こんな簡単に力が流れて、道理で全身全霊のパンチが打てねえわけだ。戦骨、ありがとうな。次は本気で殴り合える」
「おう、期待しているぞ。クソガキ」
ゴキゴキと拳を鳴らす。
「「死ねやクソボケェ!!」」
お互いの顔面をぶん殴り、蹴りが、肘が、膝が、頭突きが、抜き手が、かかとが、腕が、肩が、背中が、あらゆる部位を攻撃に用いて殴り合う。
今までの攻撃が遥かに重くなった。
「流石、オレと對のガキだ!」
「オレの親父と母親は阿紫花英良と才賀命だ!!」
「ソイツは結構だ!!」
更にラッシュの速さを加速させ、オレの拳が戦骨をぶん殴り、吹っ飛ばした。昨日ともさっきとも違う、正真正銘のベストショットだ!!