「随分と顔面が腫れたな」
「じいちゃん、いてえよ」
そう言ってオレは剣路じいちゃんに言う。
オレの血筋的なじいちゃんは心弥じいちゃんだが、剣路じいちゃんも心弥じいちゃんも、こんな危ないばあちゃん達と結婚した事実に尊敬すらしている。
「さっちゃんは強いのに弱いんだよ」
洗濯物を干すしとりばあちゃんは背中に赤ちゃんをおんぶ紐で縛り、子育てをしながらオレの稽古を見てくれる。双子の赤ちゃんって、明治時代だと災いの元とか言われてた気もするけど。
あんまり気にならないもんなんだな。
「だあ!」
「イデデ……」
「ん、抱っこするのは上手だね」
「
「妹は大事にしないとだよ。私はひとえが北海道で巫女をしているから会えなくて寂しいし、会えるときに会えないのは寂しいんだよ」
そう言って、しとりばあちゃんは笑う。
よじよじとオレの頭に登った赤ちゃんは女の子で、剣路じいちゃんは物凄く可愛がっているし、しとりばあちゃんの背中の男の子はヨダレを流している。
すごく可愛いのは分かるさ。
こんなに愛してもらえるのはどの時代も変わらない。オレも母さんとオヤジに大事にされているし、オレも息のことは大事に想っている。
本当に優しい人達だ。
オレは恵まれている。
「(……なんとなく分かってきた。最初は手加減を止めることを覚えた。今は怖さを知って、それを克服して、穏やかな時間を過ごせるようになってきた)」
強さの種類が違うんだ。
オレの強さは独りだけの強さだった。
戦骨に学んだのは闘争の覚悟だ。
しとりばあちゃんは守るための強さだ。
もっと、オレは強くなれる。
「ん、さっちゃんはまだ子供だから仕方ない」
「そういうしとりばあちゃんは何歳なんだよ?」
「十六歳だけど?」
まさかの年下かよ!?と双子の赤ちゃんと剣路じいちゃんを見ると「オレも十六歳だぞ」と言われ、明治時代の闇深さに頭を押さえる。
いや、これが普通なのか?
「明治時代ってすげえなあー」
「ん、父様が帰ってきたら挨拶する?」
「いや、相楽左之助に会うときは蛮竜が示してくれるよ。少なくとも今のオレの修行相手で継承の儀式の相手はしとりばあちゃんだ」
「私に勝つ気なの?」
「おう。オレは宇宙最強の糸色境様だからな!」
「うちゅー?」
「空の上にある場所だ」
「ん、遠くまで行けるんだね」
しとりばあちゃんと剣路じいちゃんは不思議そうに空を見上げる。この頃ってまだ気球がどうのこうのって時代だったよな。
……糸色景って、宇宙船。
いや、やめよう。
なんかやばい気がする。