「ん、大分強くなってきた」
「ちくしょお……また勝てねえ」
2万7000回ほどイメージをぶつけ合って勝負したというのに、オレのイメージはしとりばあちゃんの生み出すイメージを乗り越えることは未だに出来ていない。
いや、勝つ日も増えてきた。
1万回勝負を挑めば10回は勝つ。
しかし、しとりばあちゃんと剣路じいちゃんは16歳で子持ちという事実にも驚いたけど。まさか日清戦争の真っ只中に転移していた事実に頭を押さえる。
いや、オレの格好は不味い。
学ランって軍服に似ているのだ。オオイミに勝つために必要な準備とはいえ流石にしとりばあちゃんに時間を割いてしまっている。
いい加減に次に進まないとダメだ。
「しとりばあちゃん、悪いけど。次の場所に行かないとだめなんだ。そろそろしとりばあちゃんがオレに教えようとしていることを教えてくれ」
「教える?もう教えたよ?」
「はいい?!」
「ん」
「ど、どれだ?」
「負けても立つ勇気。怖くても進める勇気。守るために振り絞る勇気。覚悟は学んでるなら、あとは勇気を持って進めるように鍛えるだけだよ」
そう言ってしとりばあちゃんは笑うとオレの頭をワシャワシャと右手で撫でてくれた、……未来だと左手ばかりだったけど。
今のオレなら変えられるはずだ。
「(いや、オレならできる!)」
不思議そうに小首を傾げているしとりばあちゃんにドキリとする。糸色景に似ているし、オレの母さんも似ているから、やっぱり良い意味で苦手だ。
「(よくよく考えると初恋が高祖母ってすげえな。いや、しとりばあちゃんも高祖母になるけど、ひとえばあちゃんと曾祖母ちゃんだけは赤い目だ)」
アレは目の力が強すぎるのもある。
「ん、見つめられると照れる」
「境?」
「剣路じいちゃん、誤解だ。オレも好きな子はいるから不埒な考えは向けてない」
「ん、けんちゃんは心配しすぎ」
オレがいるのに剣路じいちゃんはしとりばあちゃんに抱きついて、イチャイチャする。二人とも16歳だから若いのは分かっている。
しかし、めちゃくちゃに腹が立つな。
そんなことを考えていると、オレの身体に蛮竜が突撃してきて上手くキャッチすると、身体が別のヤツのところに向かい始める。
「またな、じいちゃん、ばあちゃん」
「気を付けろよ、境」
「ん、また来てね」
「おう!」
二人の言葉に笑って目を閉じ、開ける。
爽やかな風が吹き抜ける。
どこかの高校の外階段だ。
「おや?他校生が、何故ここに?」
コツンと靴音が聞こえ、階段の上を見上げる。
綺麗な女が立っていた。
青い目と気配で分かる。
「お前、糸色か?」
「フフ、その口ぶりだと継承の儀式だね」
コツン、コツン、と靴音が聞こえる。
オレの目の前にやって来た少女は思ったより小さくて糸色景や母さんみたいに綺麗だ。
「如何にもそうだと答えよう。
「糸色境だ。糸に色を刻む境界線のサカイだ」
「いとしき、さかい。フゥン?君がね」
コツン、とまた靴音が聞こえる。
「良いね。気に入ったよ、ボクが相手しよう!」