「イタタ……と、まあ、こういう感じなのさ」
そう言って手足に湿布を貼って、肉離れや筋肉痛を和らげる軟膏を塗るサカサを見る。こういう感じ。つまり、多重人格に近い憑依だな。
「黒い電王と同じだな」
「黒いでんこう?」
「独り言だ」
オレの言葉に小首を傾げるサカサ。
良い意味でも悪い意味でもサカサは人目を惹き付ける。況してや糸色家の人間だ。否が応でも悪意や害意を抱く人間に狙われる。
おまけに、本人はあの性格だ。
そりゃあ、こんな田舎に引っ越すわけだ。
今の当主なりに考えて、ここに寄越したか?
「で、ボクと継承の儀式はするの?」
「するつもりだったんだがな」
「フフン、ボクはか弱いからね。優しく扱って貰わないと困るよ」
「なんで得意気なんだよ」
サカサの言葉に呆れながら、オオイミと決着をつけるためにサカサと継承の儀式は必要だ。少なくとも今より更に強くなるためにはな。
「オレが言うのもアレだけど。無理なら断れよ?」
「……断ったら、帰っちゃうだろう。折角、時代は違えど家族に会えたんだ。せめて一緒に生活してくれても良いじゃないか」
その言葉に溜め息を吐き、サカサの頭を撫でる。
「な、なにするんだよ」
「いや、思ったよりアホだと思ってな」
「学年トップですがぁ?!」
アホみたいに騒ぐサカサの張り手を手のひらで受け止め、怒っているサカサがまた憑依させようとするのを止めて、オレはサカサをあぐらの中に座らせる。
「こうしときゃ寂しくねえだろ」
「は、ハレンチですわ!?」
口調がおかしくなってきたサカサの顔は真っ赤に染まり、年相応の可愛さが出ている。まあ、そういうこともあるんだろうとオレは納得し、サカサの頭を撫でてやる。
サカサは恥ずかしそうに顔を隠す。
「不埒だ。ハレンチだ。へんたいだ」
「酷くねえか」
「だ、だって、こんな……男の人に後ろから抱き締められるなんて初めてだし、境くんは変にボクを気遣うから戸惑うんだよ」
「オレの時代じゃ普通だ」
「不誠実だよぉ」
そんなことを言うサカサはやっぱり切の姉ちゃんの娘なのだろう。オレの知っている姉ちゃんにそっくりな反応だった。
マジでまだ生まれるのか。すげえな。
帯刀のおっちゃん、大丈夫なのか。
「ところで、境くん。さっきから硬いのが当たってるんだけど」
「オレの刀だな。ほら」
「お初に御目に掛かる」
「兄上、顔が怖いぞ」
「然り然り」
「............なんかボクが悪いみたいじゃないか」
なにがだ?とオレはサカサを見る。