あり得ざる御伽噺は夢か幻の絶境   作:SUN'S

76 / 81
憑依合体 序

「イタタ……と、まあ、こういう感じなのさ」

 

そう言って手足に湿布を貼って、肉離れや筋肉痛を和らげる軟膏を塗るサカサを見る。こういう感じ。つまり、多重人格に近い憑依だな。

 

「黒い電王と同じだな」

 

「黒いでんこう?」

 

「独り言だ」

 

オレの言葉に小首を傾げるサカサ。

 

良い意味でも悪い意味でもサカサは人目を惹き付ける。況してや糸色家の人間だ。否が応でも悪意や害意を抱く人間に狙われる。

 

おまけに、本人はあの性格だ。

 

そりゃあ、こんな田舎に引っ越すわけだ。

 

今の当主なりに考えて、ここに寄越したか?

 

「で、ボクと継承の儀式はするの?」

 

「するつもりだったんだがな」

 

「フフン、ボクはか弱いからね。優しく扱って貰わないと困るよ」

 

「なんで得意気なんだよ」

 

サカサの言葉に呆れながら、オオイミと決着をつけるためにサカサと継承の儀式は必要だ。少なくとも今より更に強くなるためにはな。

 

「オレが言うのもアレだけど。無理なら断れよ?」

 

「……断ったら、帰っちゃうだろう。折角、時代は違えど家族に会えたんだ。せめて一緒に生活してくれても良いじゃないか」

 

その言葉に溜め息を吐き、サカサの頭を撫でる。

 

「な、なにするんだよ」

 

「いや、思ったよりアホだと思ってな」

 

「学年トップですがぁ?!」

 

アホみたいに騒ぐサカサの張り手を手のひらで受け止め、怒っているサカサがまた憑依させようとするのを止めて、オレはサカサをあぐらの中に座らせる。

 

「こうしときゃ寂しくねえだろ」

 

「は、ハレンチですわ!?」

 

口調がおかしくなってきたサカサの顔は真っ赤に染まり、年相応の可愛さが出ている。まあ、そういうこともあるんだろうとオレは納得し、サカサの頭を撫でてやる。

 

サカサは恥ずかしそうに顔を隠す。

 

「不埒だ。ハレンチだ。へんたいだ」

 

「酷くねえか」

 

「だ、だって、こんな……男の人に後ろから抱き締められるなんて初めてだし、境くんは変にボクを気遣うから戸惑うんだよ」

 

「オレの時代じゃ普通だ」

 

「不誠実だよぉ」

 

そんなことを言うサカサはやっぱり切の姉ちゃんの娘なのだろう。オレの知っている姉ちゃんにそっくりな反応だった。

 

マジでまだ生まれるのか。すげえな。

 

帯刀のおっちゃん、大丈夫なのか。

 

「ところで、境くん。さっきから硬いのが当たってるんだけど」

 

「オレの刀だな。ほら」

 

「お初に御目に掛かる」

 

「兄上、顔が怖いぞ」

 

「然り然り」

 

「............なんかボクが悪いみたいじゃないか」

 

なにがだ?とオレはサカサを見る。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。