サカサを倒しても意味はない。
いや、むしろ倒す意味もない。コイツと過ごすことが今回の継承の儀式だと理解し、数日が経過してしまった。元の時代に戻るときは一瞬だが、過去も未来も現在も書き変わることがある。
現にサカサはしとりばあちゃんは134歳まで生きたと話している。オレのときは20ぐらい早くにしとりばあちゃんも亡くなっている。
「ボクが言うのもアレだけど。境くん、女の子にモテているだろう」
「モテててはいるな」
「分かるよ。ボクなんてしょっちゅう上履きの匂いを嗅がれていたからね。アレは怖かった。火気の子が代わりにボコボコにしたけど」
「美人は苦労するぜ」
当たり前みたいに言ってるが、ドン引きだ。
「ちなみに嗅がせてたのは三番目のお兄ちゃんね。理由は手近で臭いの触りたくないからだって」
いやー、困るよねと笑うサカサ。
コイツは麻痺してるのか?と困惑しつつ、アホみたいなことを言うサカサにデコピンしておいた。せめて、乙女の尊厳は捨てるなや。
いや、捨ててはいないのか?
「で、そのお兄ちゃんは?」
「ボクの靴下を虐めっ子の口に詰めたり、延々とボクの良いところを話したりして退学になったと思ったら教員免許取って今もボクの事を論文にしてるよ」
「……すまん。なんて?」
「シスコンってすごいよね」
じゃあ、たまに感じる視線は幽霊じゃなくて、そのシスコンお兄ちゃんによるものか。しとりばあちゃん、オレはどうしたらいいんだ。
ん、斬れば分かること
しとりばあちゃん.........。
いつもと変わらなくないか?と悩みつつ、言われたようにオレは斬るかと手近にあった杓文字で壁に斬りかかると男が現れた。
「え?お兄ちゃん、なんで?」
「オレはお兄ちゃんだからだ」
訳が分からない。
いや、オレもイブキに近づくヤツがいたら、こうなるのか?とまだ幼くて可愛い妹の事を思い出す。奈落の呪縛を越えた糸色家の男は、だいたいあほだからな。
「で、どうなの?」
「お兄ちゃんだ」
「いま、その話はしてねえよ」
「妹を守る、俺はお兄ちゃんだぞ!!」
「なんなんだよこいつ!?」
「5日間の滞在だ。ラッキースケベで貴様はサカサのお風呂を1回は覗いただろう!!」
「覗くか!?未来が見えるんだぞ!?あと妹にそんなこと思うかよ!」
「ふざけるな!お兄ちゃんなら妹とイチャイチャしたいと思うはずだ!この初恋拗らせクズの糸色顔好きの唐変木が!!」
「ぐぬぅう!?」
こいつ、言ってはならないことを!
「……ばかばっかり」