烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年7月④

 ホームルームが終わって「さあ、部活!」って訳でも無くて、夏休みの予定が書かれたプリントを渡されて、かつ、ホワイトボードを使った烏養コーチによる夏休みの時間やらスケジュールの説明が行われる。

 

~練習の流れ

 

 ・1日練習の場合

 7時30分集合

 8時~11時 練習

 11時~14時 昼休憩、座学

 14時~18時 練習

 

 ・半日練習の場合

 7時30分集合

 8時~11時 練習

 11時~ プール

 

 他に、東京合宿、インターハイ、ロンドンオリンピック、中学生への部活体験会と説明会、疑似東北大会とかって書いてある。ざっくり言うと、週1以上で休み、週1半日、1日練がほとんど、お盆とか模試みたいな用事で日程が埋まってる。

 意図してることの大体が分かる。

 夏30度以上だと部活停止になるから、1番暑くなるタイミングを狙って休憩させたいんだろうし、水着準備しろって言われてたからプールでのスタミナ強化だろう。

 あと、実はインターハイとロンドンオリンピックの日程がほぼ被ってるんだよね。ここで強いチームの技術を色々盗んでいこうって感じかな。

 

「さっそく練習の流れについて説明していくぞー。

 比較的涼しい時間を使って練習したい、かつ夏休みだからって生活リズムを崩しちゃいけねえよな? ってことで朝早めからスタートだ。あともしかしたら7時集合にするかもしれねえ。とは言っても朝練よりも遅いだろ? 大丈夫だと思ってる。

 そんで気温が高くなりすぎると部活中止にしねえといけねえ。だから、最初から11時から14時の間を座学やら昼飯の時間に当てる。あと夏休みの宿題とかな。どうせ家だとやらねえ奴いるだろうしよ」

「「「っ!?」」」

 

 うん、大丈夫。予想通りだ。

 夏休みの宿題って聞いて田中先輩とノヤ先輩、翔陽と影山が挙動不審になった。俺手伝わねえからなー。

 

「プールだけど、トレーニングと疲労回復の面から目茶苦茶優秀だ。幸い烏野には屋内プールがあるってことで水泳部が昼休憩する2時間ほど貸して貰うことになってる。夏だし使うぞ」

「「「……オス!!」」」

 

 おー、プールだー。

 そして、田中先輩とノヤ先輩、翔陽、山口あたりが「清水先輩とやっちゃんと一緒にプール!?」とかってキョドってる。バーカ。そんなわけ無いでしょうが。

 

「清水と谷地はシャワー使わせて貰えるよう頼んであるから気が向いたら使えな。プールはどっちでも良い」

「シャワーだけ使わせて頂きます」「わ、私も……」

「それが良いと思う。つーわけだ、浮ついてんじゃねえぞ?」

「「「……お、おす!!」」」

 

 市民プールでも誘ってみろっての。

 

「他の予定な。

 東京合宿は良いとして、インターハイとオリンピックがあるから勉強する良い機会だ。色々見て盗んで貰うからな。バレーIQ高めていこう」

「「「はい!」」」

「中学生への部活体験会と説明会もそのままだ。

 来年以降の部員勧誘のために説明会とか部活見学の日を設ける。インハイ予選ベスト4ってことで烏野に興味を持ってる中学生と親御さんから問い合わせが来てるから、部員確保のために今から頑張っていくぞ」

「「「はい!」」」

 

 スポーツ推薦出せないからこういう地道な取り組みが必要だよね。そのうち烏野部員による小・中学生向けのバレー講習会とかやんのかね。

 

「次に疑似東北大会な。

 お世話になってる音駒、梟谷、森然、生川みたいに、岩手、福島、山形、秋田の学校が集まって練習試合をやる予定だ。ジジイと俺の伝手を使ってな。この機会も活かしていくぞ」

「「「はい!」」」

「週に1回以上は休みを入れるけど、なんだかんだでバレー漬けの夏休みになると思う。怪我とか熱中症には気を付けろよ。

 無理した結果故障して練習に参加できません、が一番やっちゃ駄目なことだからな。水分補給とかしっかり飯食えよ。で、お互いに注意喚起していこう」

「「「はい!」」」

「じゃあ夏休みスタートだ。気張ってけよ」

「「「オォーッス!」」」

 

 夏休みが始まる。

 

 

 

 バレー漬けの練習が始まって数日。遂に森然高校での長期合宿が始まる。

 深夜に烏野を出発して適宜サービスエリアで休憩しながら到着。烏野ほどじゃないけどそこそこ自然が豊かだ。

 常識的な範囲で森然高校の敷地に入って駐車場で待っていると、梟谷のバレー部専用のバスと生川のバスが到着した。音駒は電車とバス移動らしい。1時間かからないくらいで到着するもんね。

 

「ヘイヘイヘーイ!! 到着したぜー!!」

 

 バスの中にいても聞えてくる木兎先輩の鳴き声で、烏養コーチが苦笑しながら俺達に準備を促して降りる準備を始める。

 

「「「おはよう御座います!」」」

「「「おはよう御座います!」」」

 

 梟谷と生川の人達もバスから降りて準備を始めては挨拶が続く。音駒の皆さんもゾロゾロとやってきて挨拶をしていった。

 ……それにしても人数多いな。前回の合宿は音駒以外の学校は時間と場所の都合でベンチ入りメンバーしか来てなかったけど、梟谷も生川も40人以上いるんじゃないかな。……30人? 普通か。1学年13人ならそれ位になるし。もっと多いな。

 

「場所案内してやるよ」

「助かる」

 

 そんな感じで音駒の皆さんと一緒に移動することになった。

 

「なあなあ! スカイツリー何処!?」

「……えっ、スカイツリー?」

「あっ! あれが東京タワーか!!」

「え゛っ……。あれはー、うん、普通の鉄塔だね」

「「日向勉強しろよ!!」」

「おまえ達も言えねーだろ!!」

「「「ぎゃふん!?」」」

 

 翔陽は相変わらず元気。騒々しいとも言う。ていうか、ここ埼玉だぞ? 勉強が足りないかもな、孤爪先輩ドン引きしてんじゃん。ちなみに灰羽と犬岡達は爆笑して黒尾先輩に突っ込まれた。

 

「ぶつけてるから貰う」

「んー……」

「月島って寝起き悪いよね?」

「だねー」

 

 寝ぼけてる月島からボール籠をひったくって、山口と一緒に背中を押していく。

 

「身長があるとバスとか大変だよなー。190cm近くあると服とかも大変そう」

「180cmでも無いときはあるかなー。あとたまに頭ぶつける。あと小学生とかから『君子供料金じゃないよね?』って何度言われたことか……」

「あー、大変そー」

 

 バレーは身長ないとやっていけないスポーツだけど、背が高い人の日常生活は大変そう。

 

「猫又も身長伸びてるじゃん。この3ヶ月間で伸びすぎ。最初は清水先輩と同じくらいだったのにさ」

「いーだろー」「呼んだ? 山口」

「っ!? いっ、いえ……!」

 

 自分の名前が聞えたからか、清水先輩とやっちゃんがこっちのほうに来た。田中先輩とノヤ先輩、あと山本先輩がガルガルしてる。そういう所ですよー。

 

「月島君大丈夫そう?」

「もうちょっとで起きると思うよ。谷地さんは大丈夫?」

「バスで長時間移動って今まで無かったからちょっと身体が重いかな」

「あー、俺もかも」

「ちゃんとストレッチしないとね」

「「はい!」」

 

 お。田中先輩達の標的が山口に移った。先輩方? こういう気遣いが出来ると女子から好かれるんですよ?

 

「それにしても流石私立。大きいよね」

「生徒数も2500人越えてますからね」

「ひえっ。烏野の5倍以上……!」

 

 梟谷もそうだけど1学年1000人近いとかもうやべーわ。流石関東圏。森然ってバレー以外の部活も強いからそりゃ生徒数多いよなー。

 

「ま、迷子になりそうです……!」

「案内板あるから大丈夫じゃない?」

「極力1人にならないようにね、仁花ちゃん」

「はい!」

 

 勝手にフラフラしないようにしないと。まあ、マナーだけどさ。

 

「……影山と日向なら迷子になるでしょ」

「あ、ツッキーおはよ」

「ん」

 

 月島覚醒。伸びをするとだんだん起きてきたっぽい。

 

「月島君大丈夫?」

「うん。……持つよ」

「え? いいよ、軽いし」

「そういう訳にはいかないでしょ」

 

 月島がやっちゃんが持ってた救急箱を奪い取って運んでいく。ボール籠持てや、おおん?

 

 

 烏野が使って良い教室に着いて荷物を置いて、着替えたりと練習の準備をしてから第一体育館に向かっていく。

 私立だから体育館の数も凄い。各部活専用の体育館があって、吹奏楽部専用のホールもあるとか。そりゃ良い結果残すわ。

 到着した第一体育館も広くて綺麗で空調もあるとか私立すげえっす。3面張ってあるし。あばばばば。

 前回みたいに先生方とマネージャー達と向き合うように並んで座る。右から森然、生川、梟谷、音駒、ウチ。

 控えのメンバーも集まってるからすげー人数。ウチが13人、音駒が21人、他の3校が30人越えで100人近くいる。あと20人くらい父兄の方々も。

 

「気を付けー! 礼!!」

「「「お願いします!!」」」

 

 森然がホームってことで、小鹿野先輩が号令を掛けて合宿始まりの挨拶となる。ホワイトボードを使って、森然の笹川先生が代表して話すみたいだ。

 

「えーっと。森然高校男子バレー部監督の笹川です。梟谷さん、生川さん、音駒さん、烏野さん、遠路はるばるお越し頂き誠にありがとう御座います。

 今日から1週間の長期合宿です。梟谷さんは29日からのインターハイに向けての追い込み、他の4校は春高予選に向けての強化練習なので、1つでも多くの事を学んでこの合宿を終えましょう。

 気温も大分高くなっていますのでこまめな水分補給と休憩はしっかり取るように。身体に違和感が生じたら無理せず休んで下さい。怪我をしないように気を付けていきましょう」

「「「はい!」」」

 

 笹川先生がホワイトボードを触って更に説明していく。

 

【1日の流れ

 7時~9時 朝食

 8時20分~ 各学校でアップ

 9時~12時 他校との交流も兼ねた基礎練習

 12時~14時 昼休憩

 14時~18時 試合形式

 18時以降 フリー時間

 22時 就寝

 

 ※①体育館の利用時間は7時~20時まで ②夕食の時間は18時~20時半まで ③お風呂は18時~21時まで】

 

「ホワイトボードを見て下さい。これがざっくりとした1日の流れです。

 せっかくの長期合宿なので他校との交流も踏まえています。特に午前中の練習は学校関係なく対人やスリーメンなどの基礎練習をするので、積極的にコミュニケーションを取っていきましょう。これも練習です。

 ただ、100人近い人数が一度に練習することは出来ないので、第一体育館と第二体育館の2コートをレギュラー優先、第二体育館のもう1面と第三体育館をそれ以外のメンバーで使用する形になります。

 一つの体育館に大人を2人以上常駐させるので何か困ったことがあればすぐに相談して下さい」

「「「はい!」」」

 

 コミュニケーションを図る練習も兼ねてるし、それ以上に基礎練もあるからきっちいぞー。笹川先生の説明は続く。

 

「午後の試合形式も同様です。

 レギュラーは第一体育館で、その他のメンバーは第二体育館で試合形式の練習を行っていきます。18時を目安に1日の練習が終わって、後は自主練習なり夕食なりお風呂なり自由時間にしてください。食堂や脱衣所等にもそれぞれのルールがあるのでしっかりと守ること。

 高校生らしく節度を持った合宿にしましょう。くれぐれもトラブルを起こさないように。

 縄跳びや音を出して良いのも7時からです。周りのことも考えて行動しましょう」

「「「はい!」」」

 

 一通り終わったから挨拶かと思ったけど、笹川先生の話は続いた。

 

「そして、今ユニフォームを着られていない人達へ。

 今回の合宿はレギュラーのサポートをさせるために来させたのではありません。ユニフォームを着られるように自己研鑽をさせるための合宿です。貪欲に時間を有効活用して下さい」

「「「はい!」」」

「そして、今ユニフォームを着られている人達へ。

 油断してレギュラー落ちをするようなことが無いように。ここにいる全員が限られたレギュラーの席を狙っていますからね」

「「「はい!」」」

 

 そして、笹川先生が父兄の方々を見て、その人達が前の方に出てきた。

 

「君達が合宿に集中できるようにと父兄やOBの方々が食事や洗濯などサポートして下さいます。挨拶やお礼などしっかりと行って下さい。くれぐれも失礼の無いように。

 君達がバレーボールに集中出来るのは多くの方々の協力があってこそですよ。それをしっかりと理解した上でバレーボールに打ち込みましょう」

「「「はい!」」」

 

 全員立上がって、小鹿野先輩が号令を掛ける。

 

「気を付けー! 礼!!」

「「「お願いします!!」」」

 

 一礼したら、笹川先生がまた話し始めた。

 

「ここにいる全員がこの合宿中成長できるように祈っています。

 それでは、レギュラーの皆さんはここに残ってそれ以外の皆さんは第二体育館で指示を聞いて下さい。合宿頑張りましょう!」

「「「はい!」」」

 

 そりゃそうだ。誰だって試合に出たいんだし。

 

「気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 挨拶が終わって、レギュラーじゃない人達と主に監督がゾロゾロとここから去って行った。残された俺達はまた先生達の指示を待つ。

 

「キャプテン集合!」

「「「はい!」」」

 

 ん? なんだろ?

 森然の小鹿野先輩、生川の強羅先輩、梟谷の木兎先輩、音駒の黒尾先輩、最後にキャプテンが前に出て、笹川先生と何か話してはジャンケンをしていた。「なにやってんだ?」と思ってたら、森然の荒川コーチがその理由を話し始める。

 

「ボールを使わないアップだけは各学校でやるつもりだから、負けた2校が第二体育館に移動させるためにジャンケンさせてる。ちょっと待ってくれ」

 

 なるほどね。各学校でやり方も違うだろうし、そこに時間を割きたい訳でもないよね。

 

「だあっ! クソ!!」「あー……」

 

 どうやら黒尾先輩と小鹿野が負けたっぽくて、音駒と森然が第二体育館に移動してアップをするように決まったみたいだ。多分だけど、明日以降はローテーションでやっていくんじゃないかな。

 5人のキャプテンがまた列に戻って、笹川先生が話し始めた。

 

「はい。

 では音駒さんとウチが第二体育館ですね。残った3校は第一体育館を使ってアップを取りましょう。40分くらいアップを取ったら学校関係なくボールを使った練習に入ります。移動開始!」

「「「はい!」」」

 

 烏野は入口側のコート、梟谷が真ん中のコート、生川がステージ側のコートでアップを取るように決まってるみたいだからささっと移動していく。

 

「おし。じゃあいつも通り始めろ。暑いからすぐ身体温まると思うけど、ちゃんとストレッチしろよ」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んで、キャプテンが号令を掛ける。

 

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 まずはコート5周からだ。

 

 

 アップが終わってまた音駒と森然の皆さんも戻って次の練習の説明に移る。笹川先生が前に出た。

 

「はい。アップも終わったことなので次の説明に入りますね。

 簡単に言うと、各学校2、3人でばらけて、違う学校のコーチとキャプテンと副キャプテンに合流して練習するって形です。

 難しいと思うので、例を挙げながら説明します。呼ばれた人は立上がって下さい。返事は無くて構いません。

 小鹿野、名栗、島府、関口、生川の七沢君、森田君、梟谷の猿杙君、早川君、小見君、音駒の福永君、灰羽君、烏野の縁下君、山口君、猫又君」

 

 あ、呼ばれた。

 ……なるほどね。これで簡単なグループ分けをして、森然の練習方法で練習しようって事か。リベロはリベロで分ける。なるほどなー。

 

「呼ばれた14人とウチの荒川を加えて午前中の練習を行います。普段とは違うコーチの指導と普段とは違うメンバーなのでしっかりと声を出してコミュニケーションを取るように。

 ……と、そんな感じです。他にも生川チーム、梟谷チーム、音駒チーム、烏野チームと分けて、毎日違うグループで練習します。

グループ割りはこちらで行うので、皆さんは自分がどのグループなのかを確認して練習に挑んで下さい。何か分からない点が有る人」

 

 梟谷の赤葦先輩が手を挙げて、指名される。

 

「梟谷学園2年の赤葦です。ポジションに偏りがある可能性も出てくると思うのですが、その時はどうするのでしょうか」

「質問ありがとう。

 基本的にリベロ以外はポジション関係なく一通り熟して貰う予定です。あとスパイク練習は練習試合の前にやるつもりなので、レシーブとかサーブ、ブロックなど色々なコーチの指導を聞いて、いいとこ取りをして下さい。『この情報は有益だ、これは取り入れなくて良いかな』って具合にですね」

 

 あー、満遍なくやろうって感じか。翔陽ヤバイじゃん。……いや、人の事気にしてる余裕無いけど。

 

「とは言っても、即席のチームで試合形式の練習をやろうとしている訳ではないので、慣れてない人とコミュニケーションを取る練習だと思って下さい。主にスリーメンとかが多いのでね」

「分かりました、ありがとうございます」

「他には? ……大丈夫そうですね。それではグループ分けを発表していきます。森然チームは移動を開始して下さい」

 

 後ろに荒川コーチがいるからパパッと移動して、森然のマネさん含めて16人で一旦集まった。

 

「森然高校のコーチの荒川です。まずは第二体育館に移動するぞー」

「「「はい!」」」

 

 烏野で使ってるドリンクとタオルを持って移動を始める。

 

「縁下さん宜しくお願いします。猫又も」

「やべー、緊張する」「おー」

 

 縁下先輩も山口もめっちゃびびってんじゃん。ウケる。

 ドリンクとタオルを持って第二体育館へ。……大和先輩に捕まった。

 

「ウェーイ、宜しく」

「お願いします、大和先輩」

「3年の猿杙です。……大丈夫? 烏野の2人顔死んでるけど」

「「だ、だ、大丈夫です……」」

「大丈夫じゃないよね?」

 

 ほっときゃ大丈夫でしょ。

 そして灰羽も合流した。

 

「繋護がいる! 良かった!! 1年の灰羽リエーフです。宜しくお願いシャッス!」

「おーっす」

 

 自己紹介の流れになってきたけど、荒川コーチが「改めて自己紹介する時間設けるからパパッと移動するぞ」って言ったからまずは移動に専念する。

 

 

 第二体育館に到着して中に入っていく。……こっちも3面張れてる。ひー、すげー。でもユニフォームを着られていない人達はここにはいなかった。第三体育館にいんのかな?

 準備が終わると早速集合がかかってミーティングに入る。

 

「はい、森然高校コーチの荒川です。笹川さんの説明通り、半日だけですがこのメンバーで練習をしていきます。宜しくお願いします」

「「「お願いします!」」」

「じゃあまず自己紹介から。小鹿野から時計回りでいこうか。学校、学年、フルネームでいいかな。ほい」

「はい! 森然高校3年の小鹿野大樹です。皆宜しく」

 

 小鹿野先輩が一礼したら皆で拍手。

 俺含めて13人が自己紹介をしたら、最後に森然のマネさんの番だ。

 

「森然高校2年の大滝真子です。宜しくお願いします」

 

 大滝先輩の自己紹介が終わると皆で拍手をして、荒川先生がまた話し始めた。

 

「今日半日、この16人でやっていきます。

 では、キャッチボールから。普段関わりが無い人と積極的に、そして、どんどん名前を覚えていきましょう」

「「「はい!」」」

「じゃあペア作るところから」

「「「はい!」」」

 

 キャッチボールの2人組を作ることになって、「どうすんだ?」って思いながら周りを見渡したら森然高校の名栗先輩と眼が合った。

 そして、小鹿野先輩から「自分と違う学校のメンバーとな!」って指示が入って、名栗先輩とお互いに近付いていく。

 

「やろうか。お願いします」

「お願いします!」

 

 そういうことで、俺は名栗先輩と対人をやることになった。

 他のペアもだんだん決まっていて、山口は小鹿野先輩と、縁下先輩は小見先輩と、灰羽は関口先輩とやるみたいだ。

 そして、直井先生と黒尾先輩、海先輩を中心とするチーム音駒の皆さんも次々にやってきて、烏野からは東峰先輩と木下先輩が体育館に入っていく姿が見えた。あと音駒にマネージャーがいないから梟谷のセミロングのマネさんがつくみたいだ。秋紀先輩とじゃれてる。

 

「キャッチボール!」

「「「いよーっし!!」」」

 

 こっちコートに俺と名栗先輩、七沢先輩と早川先輩、灰羽と関口先輩の3ペア、ネットを挟んだあっちコートで山口と小鹿野先輩、縁下先輩と小見先輩、島府先輩と福永先輩、大和先輩と森田先輩の4ペアついて、小鹿野先輩のかけ声と共にキャッチボールが始まる。

 

「さあ皆さん!」

「「「ハイ!」」」

「声だして!」

「「「ハイ!」」」

「いっきーまっしょーお!!」

「「「ハイハイ!!」」」

 

 割とメジャーな掛け声だ。あるあるだよね。

 

 

 パスを始めるまでは灰羽も余裕そうにしてた。でも3分間ボールを落としちゃいけないオーバーパスが始まってから地獄が始まる。

 

「はい、ボール落ちたから最初からー」

「「「……はい!」」」

 

 チーム荒川のどこかのペアがボールを落として、もう1回始めから。これで3回目だ。頑張れ灰羽!!

 翔陽もそうだけど、こういう基礎練習を疎かにしてるうちは伸びませんよ!!

 

 

 対人に入ってもそう。

 ネット際の選手からエンドライン側の選手にスパイクを打ってレシーブを1回でも落とさないで連続10本ってノルマをやっても気を抜くとあぼん。あと1本って所でミスするとあばばばば。頑張れ山口と灰羽!!

 終わる頃には1時間半以上が経っていた。本来なら50分かからない。

 

「時間かけすぎだぞ。慣れてないメンバーだからってもっとスムーズにやらないと。今のままじゃ全国制覇なんて夢のまた夢だ。1回戦敗退が濃厚だな」

「「「……はい!」」」

 

 きゅうけーい!!

 

 

 7人ずつに別れて移動パスだったり、コーチがスパイクを打って1人目がレシーブしたらもう1人が二段トスって練習だったり、スリーメンだったりと、ボールを落としたら最初からって条件が加わったレシーブ練習をしているとあっという間に半日が終わった。山口と灰羽が燃え尽きてる。

 

「半日お疲れ様。普段とは違うメンバーで緊張感があった中、しっかりとコミュニケーションを取らないといけない事の難しさっていうのは身をもって体感したと思う。自分のチームでも同じだぞ?

 勝つためにはチームが一つになって協力し合わないといけないって言うのを再認識するように。そして自己主張をしっかりとする。いいな?」

「「「はい!」」」

「午後からは試合形式だから敵かもしれない。でも、せっかくの合宿を学校関係なく切磋琢磨してほしいと思います。ご飯とかね」

「「「はい!」」」

「気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 刺激あって楽しかったなー。大滝先輩も含めて仲良くなれたんじゃないかな。現に朝の時よりもワイワイしてるし。

 

「灰羽ー、山口ー、大丈夫かー」

「「お、おす……!」」

 

 足プルプルじゃん。午後大丈夫かよー。

 俺は俺で大和先輩と島府先輩、七沢先輩とお話中。

 

「にしても、さっすが〝庵里の化け猫〟だな」

「結構余裕そうじゃん」

「ビーチでランニングやるもんなー」

「そうですね」

 

 海岸が近いこともあって、ランニングとか色んなトレーニングを海岸でもやったおかげでスタミナとか基礎能力は目茶苦茶身についた。ありがとう園田先生。おかげで頑張れてます。……あ。

 

「そういや、中総体そろそろですね」

「「「あ~」」」

「推薦候補目星付けてるんですか?」

 

 音駒は公立だから駄目。でも他の3校は多分やってると思う。

 

「一応なー。ベスト8以上と関東大会が中心になると思うけど」

「「同じく~」」

 

 あー、そっか。ウチも部員確保できるように頑張っていかないと。

 

「烏野、人増えると良いな」

「13人って凄いよなー」

「まあこの4年結果残してないですしね。しょうがないです」

「ユニフォーム着られるって言う点は良いよな~」

「当然ですけど、ちゃーんとコーチの考えてる水準に達してないと試合出られないですけどね」

「そりゃそうか」

 

 そうですよ? 出られるように必死こいて武器作ってるんですから。

 

 

 食堂で昼食が載ったトレーを持って席に着くと、月島と珍しく翔陽が机に突っ伏してる様子が目に入ってくる。山口も席に着いた瞬間ダウンした。一方で影山は目がイキイキしてた。

 

「どしたの、この2人」

「月島は『声だせ』って言われてスタミナ切れ。日向も目茶苦茶扱かれたらしい」

 

 月島と山口は声出せってよく言われてるもんな。それで月島もやり直し食らったか。

 

「へー。影山はどこのグループだったんだよ」

「俺は木兎さんと赤葦さんの所だ。梟谷の滝沢コーチだな」

「おー、どうだった?」

「めっちゃ良かった」

「合宿来て良かったじゃん」

「ああ」

 

 練習試合じゃなくても影山なら刺激受けると思ってたんだよなー。あと純粋に何処の学校行っても影山ならレギュラー入りすると思う。

 「頂きます」って言って昼食を食べ始める。うん、美味しい。

 

「やっぱ皆うめーな」

「そりゃ全国に行けるチームだし」

「負けてらんねえ……!!」

「中学とかでこういう合同練習会って無かったの? 俺はあったけど」

 

 そう尋ねると、影山は少し唸って記憶を引き出していく。

 

「どっちかというと練習試合の方が多かったな。覚えてる限り無え」

「……北一はわざわざ合同練習会とかやらなそうだよね。庶民に時間使わなそう」

 

 お、月島復活。ちょっと声掠れてるか。

 

「まー、中学によって変わるか。それはともかく月島大丈夫? 午後平気そう?」

「……やるっきゃ無いでしょ」

 

 休めば大丈夫そうだな。なんか闘争心出てんじゃん。その調子その調子。

 

 

 昼寝も挟んで午後の部になった。レギュラー組が第一体育館に集まっては笹川先生から説明を受ける。一方で、現時点でユニフォームを着られてない組は第三体育館に移動していった。

 

「はい、では午後です。予めお伝えしたとおり試合形式の練習ですね。アップとサーブ、スパイクをやってから実際に始めます。

 2巡して3巡目は15点マッチで大体時間かなと思っています。上達できるように考えてバレーをするように」

「「「はい!」」」

「そして、負けたら裏の坂道でダッシュです。結構な角度があるので辛いですよ~」

 

 さっきキャプテンから伝えられた場所だ。外履きに履き替えるのが面倒くさいから勝ちたい。……いや、勝つんだ。

 

「では午後も頑張っていきましょう。小鹿野」

「はい! 気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 よーし。アップだー。

 

 

 前回と同じローテーションで試合を進めていく。

 1試合目は森然が審判で、ステージ側が音駒と烏野、入口側が生川と梟谷だ。ベンチでミーティングを行う。

 

「さっきの注意事項忘れるなよ。新しいことは1セットに付き3回の挑戦権をデフォルトで持ってて、成功すればその権利を失わなくて良い。失敗したら失う、だぞ。試合を壊さないためだ。いいな?」

「「「はい!」」」

 

 コートにいる6人が新しいことやって3回ミスっただけで18点失う。そうなると試合が成立しない。

 インターハイに向けての最後の調整という名目で来てる梟谷はもちろんのこと、他の学校だって何かを得るために来てるわけだから自分勝手なことをやると「時間の無駄なので烏野さんとは試合しなくていいですか……?」なんてことになりかねない。

 そういった意味での【新しいことは3回の挑戦権】って取り組みを入れている。例えば強化版変人速攻だったり、サーブだったり、ノヤ先輩のジャンプトスだったり、シンクロ攻撃だったり。

 俺の場合はシンクロ攻撃で、影山も助走に入って攻撃5枚。挑戦しがいがあるねぇ。

 

「この合宿中で成功率あげてこうぜ。目指せ9割だ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 前回は1巡目と2巡目でリベロの入れ替えを決めてたけど、この合宿では途中起用を試してみるってことらしい。全試合出られるように準備しとかないと。

 ……あ、そうじゃん。

 ガッチガチに固まってるやっちゃんに話し掛ける。

 

「やっちゃん大丈夫?」

「ひゃ、ひゃい! ……ね、ね、ねこ君!」

「最初っから出来る人なんかいないんだからね。ミスしたら『あ、サーセン。ミスりましたー』くらいで大丈夫」

「お、おおお、おす!」

 

 大丈夫かぁ?

 今回の合宿からアナリストとして練習してて「この選手はこのコースが得意だ、苦手だ」とか「崩れたらエース頼み」とかって分析の練習をしていくやっちゃん。ドリンクとかの準備は俺達でも出来るから勉強ができるやっちゃんには是非他校の分析に力を入れて欲しい。

 

「谷地さんアナリスト頑張ってね!」

「ひ、ひひ日向と影山君も新しい速攻頑張って!!」

「おう! やるぞ影山!」

「ああ!!」

 

 仮眠を取ったことで翔陽は復活した。やっぱ寝るのが一番よ。

 

 

 【25-20】で音駒に負け。

 裏の坂を走ってきてミーティング。

 

「実践だと上手くいかねえ所もあんだろ。これはもう反復練習しかねえ。

 焦んなよ。挫けんなよ。少しずつやってくしかねえからな。上手く出来てる所もあんだからよ」

「「「はい!」」」

 

 俺もシンクロ攻撃を3回やって2本成功。もうちょっと助走を始めるタイミングやらトスの高さと速さを考えていかないと。あとやっぱり意表付けるね。

 

「じゃあ次審判だな。適当に割り振ってけよー」

「「「はい!」」」

 

 俺は主審か副審だろうな。

 

 

 生川戦、【21-25】で負け。

 森然戦、【22-25】で負け。

 梟谷戦、【25-19】で負け。1巡目が終了。

 

 音駒戦、【26-24】で負け。

 生川戦、【23-25】で負け。

 森然戦、【25-27】で負け。

 梟谷戦、【25-23】で負け。2巡目が終了。

 

 音駒戦、【15-12】で負け。

 生川戦、【14-15】で負け。

 森然戦、【14-15】で負け。

 梟谷戦、【15-11】で負け。3巡目が終了。

 

 12セットやって全敗した学校があるんだってー。ウチだよ……!!

 

「見て欲しいのは勝敗以上に試合の内容だからな。大差で負けてる訳じゃねえんだ。全員がレベルアップすれば梟谷にだって勝てる。心折れるなよ」

「「「はい!」」」

「じゃあフリー時間だ。食堂とか風呂の時間は決まってるから集中しすぎないように。

 あと1週間あるからな。無理に自主練しろとは言わない。自分の身体と向き合いながら有意義に時間を使ってくれ。それと何処で何やってるかだけは俺か武田先生に必ず伝えること。じゃあ1日目お疲れさん。

 武田センセから何かあるか?」

 

 次に武田先生。

 

「そうですね。烏養君が言ったように、『何処にいるか。何をしているのか』は僕と烏養君に伝えて下さい。他校での合宿と言うことを念頭に置いて行動するように」

「「「はい!」」」

「じゃあフリー時間だ。俺は第一体育館に残ろうと思ってるから適当に使ってくれ」

「「「はい!」」」

 

 キャプテンが号令を掛けて烏野としても一旦締める。

 

「気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 さて、どうすっかな。

 サーブやっときたいし、トス練もしときたいし、あとトレーニングもやっときたい。19時ちょいまでやって今日は終わりにしよう。録画したデータを移動させないといけないし。

 おっと? そんな風に思ってたけど、渉と秀一、信典がこっちまで来た。

 

「おつー」

「おつー」

「4対4やろうかーって話出てるんだけど繋護もやらね?」

「オッケー」

 

 渉達とバレーやりたいねーって話し合ってたから渡りの船だ。ステージ側のコートに集まってるからそっちに移動。

 その前に翔陽が絡んできた。

 

「何!? 梟谷の人と試合!?」

「いや翔陽と影山速攻の練習すんでしょうが」

「そうだけど! そうだけどさあ……!」

「二兎を追う者は一兎をも得ず、だぞ。速攻ダメダメだったんだから練習しろっての」

「うぐっ……!? やるぞ、影山!」

「おせー!!」

 

 烏養コーチに「あっちのコートで試合形式やってます」とだけ伝えて移動開始。

 

「10番ってサイドアタッカーの方が良いんじゃね? ブロック壊滅的じゃん」

「分かる? 今の所サーブも二段トスもレシーブもダメダメだからミドルじゃないと出せないんだよ。将来的にはレフトかライトじゃないかなーって思ってる」

「目の前ウロチョロされるのマージたたき落としたくなる」

「ハエかよ」

「それが狙いなんだよなー。イライラするでしょ?」

「「「する!!」」」

 

 そんな会話をして到着。森然の千鹿谷と13番、名前知らない2人がスパイク練習してた。

 

「連れてきた」

「連れてこられました。烏野1年の猫又です。宜しく」

「森然1年で7番の千鹿谷栄吉です。宜しく」

「同じく森然の1年で13番の森本重光です。宜しく」

 

 7番の方が千鹿谷君で、13番が森本君ね。

 

「長谷川誠司です。栄吉と重光と同じ中学だった」

「俺も3人と同じ中学で、澤田翔太って言います」

「と言うことで、チーム庵里対チーム勝谷で勝負だ」

 

 勝谷中か。埼玉の中学のベスト8とか4だったと思う。中1年の時に練習試合をしてたようなしてなかったような。少なくとも俺は出てないはず。

 

「15点マッチ、デュースなし、ペナルティは?」

「日中やってるから良いでしょ」

「じゃ、そういうことで」

 

 秀一と千鹿谷君がジャンケンして千鹿谷君が勝った。

 コート中央に4人集まって軽く打ち合わせ。

 

「ま、楽しんでこーぜ。こういう機会滅多にないし」

「「「おー」」」

 

 セッターの秀一、ミドルの渉、レフトの信典、リベロの俺。中学3年間一緒にやってきたしなんとかなるでしょ。

 

 

 【15-14】、【15-12】、【15-13】と3セットやって全勝。お風呂入って夜ご飯を食べたらあとは寝るだけだ。烏野に割り当てられた教室で布団の上で日課の勉強をして眠気を促す。

 風呂から上がったばっかりの翔陽は俺の勉強道具を見て露骨に嫌な顔をした。

 

「こんな時まで宿題!?」

「は? 宿題じゃないし。つかもう終わってる。これ違う奴」

「えっ!?」

 

 いや、そんな驚かなくても。そこまで量多くなかったじゃん。短縮授業で部活終わるのも早かったんだし、課題やる時間はいつもよりあったでしょうが。

 

「おまえも頑張れよ、日向」

「た、田中さん……!」

「田中も人のこと言えないだろー」

「縁下よ。これまでの俺だと思ってちゃあ困る」

「「「マジか!?」」」

 

 田中先輩が宿題を持ってきてる、だと!? ……空欄多いな。これ始めたばっかなのか?

 と、思ったら、田中先輩が縁下先輩に土下座した。

 

「田中、どうしたんだよ……?」

「お願いします縁下さん、俺にベンキョー教えて下さい。全然分からねえっす。8割以上正解じゃ無いと受け取って貰えねえんだ」

「……お、おう」

 

 夏休みとか冬休み以外でも適当に答え書いて提出ーとかやる人いるもんな。

 俺の他にもキャプテンとかスガ先輩をはじめとする勉強してる組を見てアワアワしてた翔陽が、英語のリスニングを頑張ってる影山を見つけて遂には崩れ落ちた。

 

「なんでお前もベンキョーしてんだよ、影山!!」

「ああ? もう補習食らいたくねえし。

 合同練習の時に、赤葦さんから『外国リーグに行きたいなら英語話せるようにしとけってVリーガーのOBに言われた』って聞いたんだよ。『英語はやってて損はねえ』って。

 あと英語の解説聞くのも楽しくなってきてんだよ、これでも」

「っ!?」

 

 そうだそうだー。もっと言ってやれー。実力テストあるの知らないだろ、翔陽。

 あと、分かるようになってきたら楽しいよね。勉強に限らず。うん。それにしても影山が英語に興味持ってくれて良かった。教えた甲斐があったぜ。

 

「日向も負けてらんねえな!」

「す、すみません、ベンキョー道具何も持ってきて無いです」

「筆箱も?」

「……はい」

 

 …………。

 泣きついてきても俺知ーらね。頑張れよー。さて、あと15分くらい集中しますかね。耳栓装着っと。

 

 

 烏野高校の清水潔子と谷地仁花、梟谷学園の白福雪絵と雀田かおり、森然高校の大滝真子、最後に生川高校の宮ノ下英里の6人はマネージャー用に割り当てられた教室でお菓子パーティをしていた。

 

「それでは、無事1日を乗り切れたことを祝してー」

「「「かんぱーい!!」」」

 

 森然高校がホームの為、現役生の大滝真子が音頭を取って、女子マネージャー6人による女子会が始まった。

 

「仁花ちゃん生きてる?」

「生きてます! 今日で学校の構造覚えました!」

「「「おお~、やる~」」」

「とは言っても行った場所しか覚えてないですが……」

「ウチらもそんなもんだよ。体育館周りと洗濯機の場所、あと売店」

「私もそう。2年目だってのに、たまーに知らない場所聞かれるんだよね。演劇部がどこで練習してるか? 知らないよ、そんなの! なーんてね」

 

 全校生徒2500人以上を越え、それぞれの教室や部活の練習場所を確保するとなるとそれはもう広大な土地が必要になる。少なくとも烏野高校の10倍以上は有るのでは無いだろうか。

 

「潔子ちゃんは? もう慣れた」

「そう、だね。なんとなくかな。でも広すぎて落ち着かないなー、綺麗だけど。流石私立ってずっと思ってた」

「烏野はどう?」

「良い意味で音駒よりも趣があるかな……」

「なるほど」

 

 つまり、よく言うと風情があり、悪く言うと古くさい。そんな意味が清水潔子と谷地仁花の2人から伝わってきた。

 

「写真とか無い?」

「あるよ」

「じゃあ自分達の学校紹介でもしようか」

「サンセー!」

 

 6人は自分の携帯電話を操作して、校舎や近所の写真をお互いに見せ合う。中でも烏野の写真は関東圏の4人を引きつけた。

 

「……凄い。烏野って山じゃん」

「田舎でしょ?」

「木兎とかが言ってたけど、烏野の方にも行ってみたいよね~」

「……関東の人からすると楽しめそうな場所無いと思う」

「そうですよね……」

 

 清水潔子と谷地仁花は仙台や烏野周辺を頭に浮かべて都内と比較する。交通の便や遊び場所を考えるとどうしたって都内には敵いっこない。

 

「田んぼとか見たこと無いから見てみたいな。お祖父ちゃん達も関東圏だし」

「カエルの鳴き声とか凄いんでしょ?」

「それはもう」

 

 この時期はカエルの合唱が延々と続く。そう宮城県出身の2人が言うと「たくまし~」と感想が帰ってきた。

 

「そう言えば潔子ちゃんも仁花ちゃんもカブトムシ触ってたか」

「ひいっ。私虫無理!」

「東京はあんまりいないよね。こっちはわざわざ採集する必要ないくらいには目にするよ」

「そこら辺はここと似てるか」

「でもミヤマとかアカアシ採れるって西谷達が喜んでる」

「……それは珍しいの?」

 

 ミヤマクワガタやアカアシクワガタなどの比較的涼しい地域でしか見られない種類のクワガタがいるという知識を彼女達は残念ながら持ち合わせておらず6人揃って首を傾げる。

 もしこの場に西谷夕や日向翔陽、猫又繋護がいれば、「めっちゃ珍しいですよ!!」と語っていたことだろう。

 こうして、マネージャー6人の夜会は進んでいく。

 

 

 ……ん。意識が戻ってきた。蝉とか誰かの寝息といびきがより鮮明に聞えてくる。

 んーっと……、そうだ。今森然で合宿なんだっけ。そうだそうだ。だんだん思い出してきた。合宿2日目頑張っていきましょー。良し、顔洗ってこよ。

 

「おいしょっと……」

 

 安全確認のためにも「何処で何をしているか」を明確にするために各学校で持ち運びができる小さめのホワイトボードがあって、【猫又 洗顔と散歩 5時45分】って書くように言い渡された。戻ってきたら消す。

 まー、森然広いしね。迷子になったらやべーやべー。

 皆を起こさないように立上がってホワイトボードに記入したらタオルと歯ブラシセットを持って廊下に出る。

にしても校舎綺麗だなー、俺はちょっと落ち着かない。慣れれば大丈夫そうだけど。あと結構涼しい。蚊がやばいけど。蚊取り線香渡されて良かったわ。

 

 

 顔洗ってちょっと散歩してから教室に戻ってきた。

 簡単にストレッチと理系科目の公式をまとめたプリントを眺めていると、彩音ちゃんから【おはよ~、2日目頑張ってね】ってメッセージが届いた。【2日目頑張るー、彩音ちゃんも頑張って】ってメッセージを送り返したらスタンプが返ってきた。来週からテストだって言ってたからその勉強も兼ねてるのかな。

 

「……おはよ。相変わらず朝早いな」

「おはようございます」

 

 縁下先輩が起きて伸びを始める。珍しく翔陽と影山はまだ起きてない。初日からバテてたらやばいだろっての。

 

「顔洗ってくる」

「いってらっしゃーい」

 

 欠伸を連発してる縁下先輩を見送ってストレッチを続けていく。……うん、大丈夫だな。時間まで続けていよう。

 

 

 あっさごはんー!!

 ってことで、7時と同時に食堂に向かった。いぇーい、1番のりー。……食堂ひっろ。何人分だよ。

 

「おはようございます!」

「はい、おはよう。朝早いわね~。いっぱい食べて……。あれ……? 猫又先生なんか若返りました?」

「いやね~、お孫さんでしょ。ねぇ?」

「はい、孫です」

「……血って凄いわね」

「よく言われます」

 

 色んな人にそっくりだって言われるし。

 

「夏バテ起こさないようにね。しっかりと食べて下さい」

「はい!」

 

トレーを持って料理を載せていく方式だから、ごはん、コンソメスープ、目玉焼き、トマト、納豆、ヨーグルト、バナナ、オレンジジュースをトレーに載せて適当な角っこの席につく。

 

「頂きます」

 

 続々と食堂に来るバレー部の挨拶を聞きながら朝御飯を食べ始めると、灰羽と翔陽、音駒の3年生3人がトレーを持ってやってきた。

 

「ここ座っても?」

「おはようございます。どうぞ」

 

 海先輩が左隣、その左隣が黒尾先輩。俺の前の席に翔陽、左斜め前に灰羽、俺から見て灰羽の左に夜久先輩が座った。

 

「「「頂きます!」」」

 

 翔陽と灰羽が揃うとすげーな。一気に騒が……賑やかになった。あ、犬岡と芝山も来た。音駒色になる。

 犬岡と芝山は俺の右側にある別のテーブルに座って朝ご飯を食べ始めた。

 

「今日の割り振りどんなですかね? 黒尾さん海さん教えて下さい」

「自分で確認しとけよ」

「いいじゃないですかぁ!」

 

 このトマト美味しいな。灰羽と翔陽、犬岡がギャアギャアしてるけど知ーらない。

 

「飯くらい黙って食え!!」

「コーリューですよ! コーリュー!」

「灰羽って進級できそうですか?」

「残念ながら厳しそうだ」

 

 やっぱり? 交流ってちゃんと言えてないよね。ま、頑張れ。

 

「リエーフ聞いてくれよ。繋護ったら合宿なのにベンキョー道具持ってきてんだぜ?」

「えー、合宿に集中しろよー」

 

 …………。こいつらさあ。

 

「黒尾先輩達どう思いますか?」

「まー、1年から進路考えろってなかなか難しいよな」

「繋護って進路決めてるのか?」

「んー、実家戻ると思うので関東の大学ですね。国立か私立かは未定です」

「国立も狙ってるのか。そりゃ今からやらないとだな」

「黒尾さん、コクリツってなんすか?」

 

 …………。マジかよ灰羽。

これには海先輩もドン引きしてる。いや、音駒から国立に進学する人って少ないけどさ。ゼロではないけどまず少ない。都内に住んでたら知っとけよ。

 

「音駒と烏野は公立、梟谷と森然、生川は私立。それの大学版だ。進路相談あったろ?」

「あー。ありましたね」

 

 灰羽達の将来が心配だ。ま、関係ないけど。

 

「国立を目指すなら、センター試験ってので足切り食らわないような点数を取らないといけないから必然的に勉強しておかないといけないんだよ。主要五科目受けねえといけないんだ」

「げっ」

「バレー推薦あってもある程度の成績は必要だぞー」

「「「げげげっ」」」

 

 まあ1年から進路が明確に決まってる人の方が少ないでしょ。

 

 

 食休みをして、8時30分になったら各学校アップをしてそれぞれ割り振られた場所に移動する。

 今日はチーム音駒だ。第二体育館の真ん中のコートでやる。

 音駒からは黒尾先輩、海先輩、犬岡、野良先輩。

 梟谷からは大湊先輩と秀一、リベロの藤澤先輩。

 森然からは中田先輩と瀬川先輩。

 生川からは仙石先輩と湯河先輩。

 烏野からは成田先輩と影山、最後に俺。

 マネさんは梟谷の雀田先輩だ。今の音駒にマネージャーがいないからもう1人の先輩と持ち回りでやるらしい。

 

「昨日1日やっただろうからなんとなく流れは分かってると思う。色んな人と練習してお互いに頑張っていこう」

「「「はい!」」」

「じゃあキャッチボールから。ペア組んでけー」

 

 さあ、誰とやろうかな。……おっと?

 

「〝庵里の化け猫〟、お願いして良いか?」

「お願いします」

 

 森然の瀬川先輩に声をかけられてなし崩しにやることになった。もー、中学卒業したっていうのにいつまでその名前で呼ばれるんでしょうねー。

 

 

 ほぼほぼレシーブ練習だった午前中を乗り越え、お昼ご飯も食べ終わったら午後の部。多分OBの人達20人くらいが運動着姿でいて紹介される。

 

「はい、笹川です。有り難いことに各学校のOBの皆さんが練習試合をして下さいます。

 また6チームということなのでほぼほぼずっと試合形式での練習をできます。1セットでも多く数を熟していきましょう! よろしくお願いします!」

「「「はい!」」」

 

 知り合いはー? いないかな。いや嘘。音駒のOBもいる。直井先生と烏養コーチの同い年じゃん。……お、眼が合った。後で挨拶しとこ。

 

「では始めて行きましょう。各学校移動して下さい」

「「「はい!」」」

 

 

 そして迎えた試合。

 1巡目

 音駒戦、【27-25】で負け。

 生川戦、【26-24】で勝ち。

 森然戦、【23-25】で負け。

 梟谷戦、【27-25】で負け。

 OB戦、【25-21】で負け。

 

 2順目

 音駒戦、【25-22】で負け。

 生川戦、【24-26】で負け。

 森然戦、【26-24】で勝ち。

 梟谷戦、【25-22】で負け。

 OB戦、【25-19】で負け。

 

 2勝8敗で今日は終わった。ちなみにOBチームは全勝。やっぱ強えー。

 

「点差は離されてねえからな。あと試して欲しいこともだんだん上手くいってきてる。色々なチームと戦ってもっと成功率を上げていこう」

「「「はい!」」」

「じゃあフリー時間だ。何処でなにやってるかだけは伝えてくれ」

「「「はい!」」」

 

 さーて、何しようかなー。

 

「ヘイヘイヘーイ!! ツッキー!」

「今日も頼むぜ~、ツッキー!」

「ツッキーって止めて下さい」

「ん? 何か言ったか? あ、さーむら! ツッキー借りてく!」

「あと繋護も」

 

 ……俺も? よく分からないけど、ま、いっか。行って来よう。

 

「『どこで何するか』を伝えないといけないので教えて貰っても良いですか?」

「第三体育館でブロック練習だ!」

 

 なるほど? じゃあ行く価値あるな。

 

「そういうことなので、コーチ、行ってきます」

「おう。月島も猫又も色々学んでこい。夕食と風呂の時間間違えるなよ」

「はい!」「……はい」

 

 スパイクレシーブやらせて貰えるなら好都合だ。頑張ってこよー。

 キャプテンとかスガ先輩みたいにシンクロ攻撃を練習するグループ、東峰先輩と木下先輩みたいにサーブ練習をするグループ、翔陽と影山はやっちゃん込みで強化版変人速攻の練習。

 そんな感じに別れてフリー時間となった。

 

「お、俺も木兎さんと黒尾さんと練習したいです!」

「神業速攻は良いのかよ? ……良いんですか? 烏養コーチ」

「黒尾達は良いのか? 単純にお守りだぞ?」

 

 ちょっとー? その言い方は無いんじゃ無いですかー?

 

「せっかくの合宿ですし。なあ木兎?」

「おお! 影山のトスも打ってみてえっす!!」

「じゃあ先輩達に揉まれてこーい」

「山口も良いですか?」

「おう! 来い来い!」

「っ! ありがとうございます!!」

 

 そんなこんなで黒尾先輩と木兎先輩、月島、翔陽、影山。山口、俺の7人で第三体育館で練習することになった。……と思ったけど、赤葦先輩と灰羽と夜久先輩も合流した。

 全員で10人か。ちょっと中途半端だな。

 

「5と5に別れて実践形式、で良いんじゃねえかな。セッター2人、リベロ2人、ミドル5人、サイド1人だし。俺がサイドいくわ」

「烏野1年ポジションかたまりすぎだろ」

「それなー。と言うことで、ポジション毎にグーパーで別れよう」

 

 木兎先輩は黒尾先輩と。

 セッターは赤葦先輩と影山。

 リベロは夜久先輩と俺で。

 あとの4人でグーとパーに別れた。俺はパー。

 

「パーしゅうごー!」

「「「はい」」」

 

 黒尾先輩と赤葦先輩、月島、山口、俺。グーは木兎先輩と夜久先輩、灰羽、影山と翔陽。

 

「……あっち強くないですか?」

「ん~。ま、やってみなきゃ分からないでしょ。

 赤葦バックプレイヤーで良い? 前衛は俺とツッキーとグッチー」

「グッチー……!?」

「え、山口だからグッチーで良いかなって。嫌だった?」

「いえ! 全然!!」

 

 名付け方雑すぎー。でも嬉しそうだからいいや。グッチーって呼んでやろ。

 

「俺レフトで、ツッキーがセンター、グッチーがライト、赤葦がバックライト、繋護がバックセンターかな。なにか意見ある?」

「ありません、大丈夫です」

「うるさい4人を黙らせてやろうぜ」

「「「はい」」」

 

 さっきから「ヘイヘイヘーイ!!」って夜久先輩以外の4人が雄叫び上げてすげーことになってんだ。夜久先輩だけがなんか浮いてる。黙らせてやろ。

 

 

 15点マッチ、デュースなしで1セット毎にメンバーを入れ替えて3セットやって終了。

 

「ある程度人いるとやっぱり良いな。またやろうぜ」

「「「はい!」」」

 

 学校関係なくチーム作って練習試合をしたいところでもある。ただ、梟谷がインハイへの追い込みだからやらないんだろうな。チームとしての完成度を高める方を優先しないといけないんだろうし。

 

「おーし、じゃあ飯だー!」

「はぁ? 風呂からでしょーが!」

 

 長引きそうだから先行こ。お疲れ様でした。




〝SPORTS BULL(スポーツブル)〟のようなスポーツメディアがあると思って下さい。本作では春高などの中継をこの時期から中継されています。「バーチャル春高バレー」で検索してみて下さい。
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