烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年7月⑤

 合宿3日目。

 朝の身支度を終わらせて烏野に割り当てられた教室に戻ってくると、珍しく田中先輩が起きていて俺のスマホを見てワナワナ震えてた。メンドクセーことになりそうだ。

 

「田中先輩、おはようございます」

「……繋護君よぉ。この〝Ayane〟ってのは誰だい? 随分親しそうじゃないか? んん?」

 

 あー、スマホ見られたのか。別に良いけど。いや良くねえわ。

 

「え、彼女です。というか、勝手に人のスマホ見たんですか? 人としてどうかと思うんですけど」

「えっ、おっ。……すまん。たまたまメッセージ見えちまった。すまん。

 ていうか、彼女だとぉ!?」

 

 思いのほか田中先輩の声が響いて、それが目覚まし時計の代わりになったみたいで寝てる烏野の皆が起き出した。特にノヤ先輩。

 それはともかくちゃんと謝るのすげーわ。こういう時逆ギレしてくる奴もいるし。

 

「どうしたんだ龍。朝から大声出して」

「聞いてくれよノヤっさん! 繋護の奴、彼女いるんだってよ!」

「……? っ!? 何ぃ!?」

 

 ガバッと勢いよくノヤ先輩も起きて「潔子さんという人がいながら彼女だとぉ!?」って俺の方に詰め寄ってきた。

 ノヤ先輩のこの行動が決定的となって、キャプテンとかスガ先輩達が完全に覚醒した。

 

「……田中、西谷うるさい」

「時間考えろよ。まだ6時前じゃんか」

「「お。おす……」」

 

 割とガチ切れしてるキャプテンとスガ先輩が2人に注意してもう一度布団を被った。「ここじじゃなんだしよ」って言いだした田中先輩とノヤ先輩に廊下に連れて行かれる。

 

「潔子さん、やっちゃんというものがありながら彼女とはどういうことだい?」

「そもそも逆です。幼なじみなので産まれたときから一緒でした」

「「幼なじみ!?」」

 

 「幼なじみって何だっけ……?」とか言ってる2人にどんな質問が来るかを考えていたら、秋紀先輩と蒼太先輩が俺達3人を見つけてこっちの方に近付いてきた。

 

「繋護に田中と西谷じゃん。何してんの?」

「あっ! 同中の2人はコイツに幼なじみの彼女がいるって知ってましたか!?」

 

 田中先輩がそう尋ねると、秋紀先輩と蒼太先輩は顔を見合わせては頷く。

 

「え、うん。普通に」

「試合の応援とか来てたし。インハイ予選も見に行ってるはずだけど。なあ?」

「はい」

「「っ!? そ、そんな……!?」」

 

 ちゃんと来てたし。写真も撮ってたし。

 なんかすっげえショックを受けてる田中先輩とノヤ先輩を放っておいて蒼太先輩と秋紀先輩と談笑していく。

 

「言ってなかったんだ」

「こうなるの目に見えてましたからねー」

「まー、俺達もそうだったか。……それはさておき、繋護と他の烏野って仲悪い?」

 

 ……? そんなこと無いと思うけど。

 この話題でもショックを受けたらしい田中先輩とノヤ先輩が復活してどういうことかと詰め寄った。

 

「いや、繋護って基本名前呼びじゃん? 今も田中のこと田中先輩って呼んでるし。思えば、烏野の連中のこと名前かあだ名で呼んでないなーって。なあ?」

「はい。なので繋護って心開いてなくねと」

 

 そう言われると、スガ先輩、ノヤ先輩、翔陽、やっちゃん位か。

 

「小中じゃないんだからそんなこと気にしませんよ。ねえ? ……えっ」

 

 ショックで半泣き状態なんだけど、田中先輩とノヤ先輩。そんな気にするか?

 

「田中先ぱーい? ノヤ先ぱーい? 大丈夫ですか?」

「……彼女の事もそうだけどよ、心開いてねえかもって思うところがあるんだよ」

「俺達先輩なのによ」

 

 ……メンドクセー。と言うか、この2人もこういうメンタルブレイク起こすんだな。

 

「いやだって同中だから3年以上付き合いありますし。そこら辺ですよそこら辺。……ちょっとー? 秋紀先輩と蒼太先輩も笑ってないでなんとかして下さいよ」

「ほらー!! 今も名前呼び! 片桐も片桐じゃ無いしよ!」

 

 メンドクセー。ストレッチしたいんだけど。

 

「と言うか、ノヤ先輩はあだ名じゃないですか。そんな気にしないで下さいよ。ね?」

「【烏野、実は仲悪い説】実証したな」

「そうですね」

「「~~~~っ!?」」

 

 部屋戻って良いかな。田中先輩とノヤ先輩は半泣きで使い物にならないし。秋紀先輩と蒼太先輩は笑っておちょくってるし。朝から散々だぜ。

 と、そんな時にキャプテンとスガ先輩が欠伸をしながら教室から出てきて、トラブってるように見えてる俺たち5人の方に来た。

 

「澤村と菅原はよーっす」「おはようございます、澤村先輩と菅原先輩」

「おはよう木葉君、片桐君」

「おはよう。……なんか起きた? 田中と西谷が迷惑かけてるっぽいけど」

 

 キャプテンとスガ先輩が烏野3人を見比べて困ったような表情をする。俺は何も悪くないですよ。

 

「大地さん、スガさん! 繋護が俺達に心開いてねえっす!」

「なんだって?」

「同中の奴は名前呼びだったり彼女いること隠してたり……!」

「ねこに彼女? 知らなかったのか?」

「「えっ!?」」

 

 まーたショック受けてるよ、この2人。

 

「なんで知ってんすか!?」

「道宮から聞いた」

「っ!?」

「ていか、いくら幼なじみでも他県から試合の応援には来ないだろ」

「「っ!?」」

 

 口から泡吹きそうな位ダメージ受けてるじゃん。今日は駄目そうだ。それより早く解放して下さい。

 

「烏野って面白えな~!」

「ちょっとー? 秋紀先輩が変なこと言うから田中先輩とノヤ先輩おかしくなっちゃったじゃないですか」

「……そういえば、猫又って同じ中学の人には名前で呼んでるな」

 

 今度はキャプテンも!? メンドクセー。メンドクセ!!

 

「あ、トイレ行きたいの忘れてました。自分はこのへんで」

「そういやそうだった。蒼太ー行くぞー」

「はーい」

 

 え、散々引っかき回しておいてそれかよ。じゃあ俺も。

 

「ストレッチしてきまーす。あと朝御飯も」

「ああ……」

 

 俺知ーらね。さっさと逃げるか。

 

 

 とは思っても、出歩けない以上教室で鉢合わせることになる。田中先輩とノヤ先輩の暴走は収まっていなかった。加えてキャプテンとスガ先輩も。

 ストレッチしてるところに田中先輩とノヤ先輩が押し寄せてくる。

 

「俺のことは龍先輩と呼べ」

「分かりました。龍先輩」

「~~っ!! 良し!」

「俺のことはー。……うん、今までで良いな」

「じゃあノヤ先輩で」

「~~っ!! 良し!」

 

 他のメンバーが俺達3人の不思議な光景を見ていて、東峰先輩の「何やってんだー? あの3人」って質問が耳に残る。

 

「……旭。『烏野の連中仲悪いよな』って思われてるらしいぞ」

「それで呼び方を変えさせてる」

「へー。……仲悪そうに見られてるの!?」「小中学生じゃないんだから……」

 

 そーだそーだ。もっと言ってやって下さい縁下先輩。東峰先輩もびっくりしちゃってんじゃん。

 

「田中さん。別に名前じゃなくても……」

「それだよ山口。月島と山口ですら俺のことを〝田中さん〟と呼んでいる。なのに繋護は〝田中先輩〟だ。これでは仲が良いだなんて思われないだろう?」

「……言われてみれば?」

 

 口を開いたら負け。もっと面倒くさくなる。

 そんな風に思っていても、東峰先輩とか縁下先輩、成田先輩、木下先輩達が同調していた。一方で月島が「何やってんだよ……」って恨めがましい目線で見てくる。俺のせいか? ……俺のせいか。

 

「ということで、先輩命令だ。何か言うことは?」

 

 ……こうなったら巻き込んでやろ。

 

「龍先輩、ノヤ先輩」

「「何だ?」」

「力先輩が1年3組の女子からラブレターを貰ったのはご存知ですか?」

「「っ!?」」「んな!?」

 

 ふはははは。祖父ちゃんとか卒業生から告白スポット聞いてた訳じゃ無いんですよ。死なば諸共じゃー!!

 

「どういうことだ! 縁下!!」「力ー!!」

「まだあります」

「「何ぃ!?」」

「一仁先輩も吹部の2年生から『一緒に花火見に行こうね』って誘われてますよ」

「「っ!?」」「どうしてそれを!?」

 

 力先輩と一仁先輩を巻き込んだことで完全にカオスな事になっていく。

 

「蛍も――」

 

 「蛍も今月に入って4通ラブレター貰ってます」って続けようとしたら、蛍にタオルを投げつけられた。ぶへぇ。

 

「俺達に隠れて恋してるとは!」

「許しちゃおけねえ!」

「「うおりゃぁぁぁぁ!」」

「「くっそ……!」」

 

 龍先輩とノヤ先輩から追いかけられて力先輩と一仁先輩は逃げていく。

 さーて、朝御飯の時間だー。

 

 

 大和先輩、秋紀先輩、蒼太先輩、渉、秀一、信典、ユニフォームを貰ってない淳也先輩、純先輩と鉢合わせて食堂に到着。早速列に並んできつねうどん、ごはん、リンゴジュースをトレーに載せては席に着いた。ここは庵里で占領した!

 

「相変らず烏野って面白えな」

「ちょっとー? 珍獣みたいに言わないで下さいよー」

「実際パンダみたいじゃん」

「絶対褒めてないですよね」

 

 吹き出してるし。たくよー、龍先輩とノヤ先輩のせいじゃん。

 

「「「頂きます」」」

 

 皆でご飯を食べていく。

 

 

 各学校でアップを取って、割り当てられてるグループにいった。今日は第一体育館で梟谷グループ。

 梟谷からは木兎先輩、赤葦先輩、蒼太先輩、渉。マネさんは白福先輩。

 烏野からは龍先輩、久志先輩、俺。

 音駒からは孤爪先輩、山本先輩、芝山。

 森然からは千鹿谷、吉川先輩。

 生川からは伊勢原先輩、松井先輩。 

 滝沢先生の指示に従って自己紹介をして、早速練習開始だ。

 

「おーし。両サイドのコートに負けないように声だしていけよ!」

「「「はい!」」」

 

 ステージ側はチーム烏野。入口側はチーム生川が使って練習してた。だから大地さん達声かれてたのか。なるほどなー。

 

「ヘイヘイヘーイ!! 声出してくぞー!!」

「「「イーヨーッシ!!」」」

 

 木兎先輩と龍先輩、山本先輩がめっちゃ声出してるんですけど。こりゃ声出さないと指摘されそうだ。……孤爪先輩が死にそう。ウケる。

 それにしても大分知り合い増えてきたなー。

 

 

 お昼の時間になった。朝の部を終わらせてお腹ペコペコー。鳴り止まない。

 ごま塩ごはんとノンフライ酢豚、じゃがいものオカカ煮、キャベツのオイスター和えをトレーに載せて席に着く。

 今日は烏野1年ズと音駒の数人で集まってた。……食堂への到着が遅れてそこしか空いてなかったと言うべきか。

 

「ツッ――、け、蛍!」

「……無理して呼び方変える必要無いでしょ、山口」

「そこはグッチーか忠って呼びなさいよ~」

「僕達もう高校生ですよ? 名前で呼んだら仲良くなるとかって訳でもないでしょうに。黒尾さんだって孤爪さんと灰羽以外に名前で呼ばないじゃないですか」

「衛輔ー、信行ー。……なんか違和感あんな。やっくんと海で慣れてる」

「でしょう?」

 

 呼び方を変えるって龍先輩の命令で1年全体でお互いに名前で呼び合おうって事になってしまい、すげーギクシャク。というか照れてる。特に翔陽と飛雄、蛍が。忠は柔軟に対応してる。

 

「やっちゃんはどうよ。翔陽とか飛雄、蛍、忠って」

「な、なんか恥ずかしいかも……。せめてねこ君みたいにあだ名が良いかな?」

「よーし。名前で呼ぶかあだ名を考えよーう。思えばさー、やっちゃんだけ谷地さんってすげー他人行儀じゃない? チームメイトなんだからもうちょっと親しみを込めても良いよね。女子バレーとかバスケみたいにコートネームつけるのも良いじゃん」

 

 男子だとあんまりなじみが無いけどね。蛍だけはあんまり乗り気じゃなさそう。でも決めましたー。

 

「翔陽はタマゴ、飛雄はカレー、蛍はイチゴ、忠はポテト、やっちゃんはふ菓子ね。けってーい」

「食べ物シリーズかよ」

「皆の好物で統一してみました。黒尾先輩はサンマ、でしょうか? サンマ先輩」

「原型ねえな~」

「これで少しは仲よさそうに見られることでしょう」

「まー、確かに繋護がいなかったら分裂してそうだよな。君達の1こ下とか2こ下がやばそう。キャプテンとかどうすんのよ」

 

 俺達が3年になったときのキャプテンかー。……忠一択じゃね?

 翔陽はキャプテン業務を出来ると思わないし。飛雄は威圧感で後輩いじめそうだし。あとセッターだからゲームメイクだけに集中させたい。蛍はシニカルな一言で後輩虐めそうだし。忠は……、忠だけじゃん、できそうなの。

 

「やる人いなかったら俺やる!」

「嫌だ」「ふざけんな」「辞めろ」「いんじゃねー」

「そこまで言う!?」

 

 翔陽には任せられないでしょー。

 

「……まあ猫又じゃないっすか?」

「繋護」

「……繋護」

「残念ながらリベロがキャプテンにはなれないんだよなー。まあでも、忠がサイドでレギュラー取れたらキャプテン候補じゃない? 飛雄はセッターでゲームメイクだけに集中させようとするだろうし。そしたら黒尾先輩みたいに蛍がやるのかもね?」

「……ま、先の事でしょ」

「高校生活なんてあっという間だぞー。気づいたら3年になってたしよー。高3ももう夏休みだし。そしたら受験だろ?」

 

 受験。そういや、黒尾先輩って受験どうすんだ? 秋紀先輩と大和先輩はもう大学推薦とってるみたいだし。怪我とかしなければほぼほぼ決定してるらしい。まあね、結果残してるからそこまで焦る必要は無いでしょう。いざとなったら内部進学もあるはずだし。

 

「……黒尾さんって大学進学ですか?」

「おー。やりたいことあるしなー」

「やりたいこと!? 何ですか!?」

「内緒だ」

 

 今の音駒の成績で考えると都内ベスト8だからスポーツ推薦はどうか分からないけど、選ばなければ推薦でいけるはずだ。ひょっとしたら同じ大学に行く可能性もある。

 

「都内の大学ですか?」

「まあな。家から通える範囲だ」

「なるほどー」

 

 練馬駅からいける範囲でバレーもって考えるとー。まあ色々あるよねって感じ。多分俺の候補にも入ってるな。本当に大学では黒尾先輩が先輩になる可能性もありそうだ。

 

「繋護は実家戻るんだって?」

「そうですね。実家か祖父ちゃん家に居候って感じかなーって。なので――」

「後輩になる可能性がある、と」

「はい」

「そうなったら宜しく」

「それこそ先の話ですが」

「いやー、烏野に取られちまったからな。大学では一緒に出来たら良いと思う」

「……なんかめっちゃ信頼してますね」

「猫又監督の孫ってのもあるからなー」

 

 黒尾先輩が大学の先輩か。引っかき回されそうだな。色々と。

 

「他の1年ズはどうなのよ。ツッキー、グッチー、日向影山、ヤッチーは」

「俺はバレーやります!」

「俺も!」

「2人はそうだと思った。志望校とか決めてんの?」

「「…………」」

 

 沈黙した翔陽と飛雄の様子を見て、黒尾先輩が「ぶひゃひゃ」って笑い出す。

 

「『勉強できなくてもスポーツ推薦で!』とか思ってるかもしれねえけど、スポーツ推薦だと最低でも全国行って結果残さねえとまず落ちるぞ。あと成績足りなくて足切り食らうとかな。ちゃんとやっとけよ」

「「……お、オス!」」

 

 そうだそうだー、もっと言って下さい。

 

「他の3人は?」

「……僕はまだ。宮城の大学か上京するかも決めてません。大学には行くって決めてますが」

「ツッキーは関東に出てきたら戻らなそうだよなー」

「そんなことは……」

「ツッキーは多分大丈夫だと思う。少なくとも日向影山よりはな」

「……はい」

 

 蛍は保留っと。まー、でも考えはあると思う。じゃなきゃ勉強しないでしょ。うん。引き合いに出されてちょっとむくれてる。ウケる。

 

「俺もどうしようかなって迷ってます。……やっぱり早めに決めといた方が良いですかね?」

「まー、国立と私立でも変わるし、実家か上京かって面でも変わってくるだろうしな。学生寮かアパートかー、とかな。早めに考えとく分には困らないと思うぞ。

 特に国立狙うなら科目数がぐっと増えるしよ」

「……はい」

「まあ? まだ1年だからな。焦る必要は無いと思うけどな。でも部活ばっかやってて、高3になって慌てる、よりは気持ち的にも楽だと思うぜ」

「……はい!」

 

 最後にやっちゃんだ。皆の視線がやっちゃんに集まって若干びびってる。

 

「わ、私はですね、母が仙台で会社を経営してるので宮城に残ります。仙台の学校に進学する予定です……!」

「社長!? すげー!」

「ひーちゃん絵チョー上手いんですよ! これ見て下さい!」

「ひ、ひな……。翔陽……!」

 

 翔陽が携帯電話を操作し始めた。多分前に作ったポスターを見せるんだろうな。

 ケータイの画面でポスターを見せて貰った黒尾先輩が珍しく真顔になる。

 

「え、すげえ。プロじゃん」

「い、いえ! 私はまだ……!」

「いや、すげーって。……俺達も美術部にでも頼んでみるか」

「だれか絵が得意な人いないんですか?」

「残念ながら美術を選択してる奴はいねえな。……ヤッチーすげえな」

「い、いえ……!」

 

 もっと自身持てー、やっちゃん。

 

 

 午後。予定通り練習試合をした。

 1巡目。

 音駒戦、【25-27】で勝ち。

 生川戦、【26-24】で勝ち。

 森然戦、【27-25】で勝ち。

 梟谷戦、【28-26】で負け。

 OB戦、【26-24】で負け。

 

 2巡目。

 音駒戦、【28-26】で負け。

 生川戦、【28-26】で勝ち。

 森然戦、【29-27】で勝ち。

 梟谷戦、【25-23】で負け。

 OB戦、【29-27】で負け。

 

 シンクロ攻撃とか強化版変人速攻もだんだん決まり始めてきて今日は結構良い感じだった。

 

「今日は良い感じだったな。明日もこの調子でできるようにしていこう」

「「「はい!」」」

「そんでこれからフリー時間だ。合宿折り返しでだんだん疲労も溜まってきてるだろうから自分の身体と相談してこれからの時間を活かしてくれ。

 休むことも大事だからな。そこ分かっとけよ。じゃあ解散」

「気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとう御座いました!!」」」

 

 さーて、何しようかな。休んでも良いんだけど。と思ってたけど木兎先輩がこっちの方に来た。黒尾先輩は黒尾先輩で犬岡とか灰羽に声をかけてるみたいだ。

 

「ヘイヘイヘーイ! 烏野1年ズ!! 今日もスパイク練習に付き合ってくれよ~!!」

 

木兎先輩のスパイクをノーブロで拾えるように頑張るかー。良し。

 

「……分かりました。お願いします」「お願いします!」

 

 蛍と俺に続いて飛雄達も。

 

「俺もお願いします!」「お願いします!」「お願いします!」

「お~! どんどん来い!」

 

 翔陽飛雄も参加。

 

「ヤッチー速攻の成功率数えて貰っても良いか?」

「わ、分かった!」

 

 飛雄のヤッチー呼びはなんか面白い。なんだかんだで距離縮まったんじゃないの。良いじゃん。やっちゃんも慣れてきたっぽいし。

 

 

 

 合宿4日目。丁度折り返しの日だ。今日入れてあと4日、頑張っていきましょー。

 だんだん疲れも溜まってきたような気がする。昼寝の時間を増やしても良いかもしれない。って言いながら起きる時間は変わらないんだけどねー。

 身支度とストレッチ、朝御飯を食べ終わったら食休み。

 烏野でアップを取ったら午前練習だ。今日はチーム生川。第一体育館で秋田先生とか強羅先輩達に合流。 

 

「生川高校コーチの秋田洋介です。さっそく自己紹介していきましょう。強羅から自己紹介だ」

「「「はい!」」」

 

 生川からは強羅先輩、芦谷先輩、長尾先輩、宮崎先輩。

 烏野からは旭さん、蛍、俺。

 音駒からは手白、守口、夜久先輩。

 梟谷からは秋紀先輩、鷲尾先輩。

 森然からは飯田先輩、児玉先輩。

 マネさんは宮ノ下先輩。

 

「知り合いも増えてきてるだろうけど、ここはあえて話したこと無い人とキャッチボールな。そんでお互いに技術やら姿勢やらを盗んでいこう。無駄な時間なんてないぞー。じゃペア組んでけ」

「「「はい!」」」

 

 誰になるかな。……お。

 

「木葉や猿杙が薦めてきた。お願いしても良いか?」

「お願いします!」

 

 と言うことで鷲尾先輩とやることになった。

 

「ちぇ。俺が直々に揉んでやろうと思ったのによ」

「木葉は自主練でやってるだろ?」

「まあな」

 

 昨日のフリー時間にも一緒にやったじゃないですか~。

 

 

 お昼ご飯を食べたら午後の部に入って練習試合。

 1巡目。

 音駒戦、【28-26】で負け。

 生川戦、【27-25】で勝ち。

 森然戦、【25-23】で勝ち。

 梟谷戦、【29-27】で負け。

 OB戦、【25-22】で負け。

 

 2巡目。

 音駒戦、【24-26】で勝ち。

 生川戦、【27-24】で勝ち。

 森然戦、【25-27】で負け。

 梟谷戦、【30-28】で負け。

 OB戦、【26-24】で負け。

 

「試合の内容も良くなってるぞ。あとはこの合宿中梟谷とOBチームから1セット取りてえよな。絶対に勝てないチームではねえし」

「「「はい!」」」

「そんじゃフリー時間だ。各自有意義に時間を使ってくれ」

「「「はい!」」」

「気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとう御座いました!!」」」

 

 解散。……どうすっかなー。と思ったら龍先輩に声をかけられた。

 

「繋護よ」

「はい」

「トスあげて貰っても良いか?」

「分かりました」

「そんじゃ猫又からのシンクロ攻撃の練習もしよう。コーチお願いしても良いですか?」

「おう。影山と菅原からのシンクロ攻撃も良い感じになってきてるからな。リベロからのシンクロ攻撃もバンバン増やしていきてえ。特にレフトサイドのセッターからのシンクロ攻撃だな。猫又だけが左利きってことで若干間隔も違ってくるだろうし。あと攻撃5枚の練習もやっていこう」

「「「はい!」」」

 

 リベロからのトスでレフト、バックレフト、センター、バックライト、ライトのアタッカー5枚が同時に助走に入ったら絶対に有効だよな、って言うのが烏養コーチの考え。実際に点取れてるし。

 と言うことで今日は烏野で練習。大地さん、スガさん、旭さん、龍先輩、一仁先輩、力先輩、久志先輩、ノヤ先輩と合流。

 俺以外の1年は黒尾先輩と木兎先輩に連れて行かれた。頑張れー。

 俺達もコートに入ってそれぞれのポジションに着いていく。

 

「リベロがトスをあげるときはセッターが1本目を触ったときかセッターが間に合わないときだ。西谷も猫又もコートの様子は把握しておけよ」

「「はい!」」

 

 さーて、練習していくぞー。

 

 

 

 合宿5日目。

 合宿も残り3日だ。怪我の無いように気を付けていこう。

 

「昨日の湯上がりの旭君めっちゃ落ち武者に見えた」

「風呂上がりの旭はこんなもんだぞ」

「ゴールデンウィークの合宿でも西谷と日向にびびられてたし」

「髭剃りますー。剃れば良いんだろー」

「そう拗ねんなって」

 

 大地さん達と強羅先輩達が話しているのを聞きながら食堂へと向かっていく。合宿も後半になってきて皆起きるのが遅くなってきてる。日中の練習の方が大事だから自主練もほどほどにしていこう。あと怪我の無いように。

 

 

 朝御飯を食べてちょっと食休みをしたら、いよいよ最後のチーム烏野に合流。明日はどうすんだろう。知らね。

 

「烏野高校の武田です! 合宿も後半戦です。疲れも溜まってきていると思うので、違和感があればすぐに知らせて下さい! 無茶は駄目ですよ!」

「「「はい!」」」

 

 武田先生の次は烏養コーチだ。

 

「コーチの烏養だ。セットの終盤とか第3セットの後半、デュースの時っていうのを想定して、疲れてきた中でも丁寧にやるっていうのを実践していくぞ。1点を取るためにどうすれば良いかって考えてバレーやってけよ」

「「「はい!」」」

「じゃあ自己紹介から。澤村」

「はい!」

 

 烏野からは大地さん、スガさん、翔陽と俺。

 音駒からは福長先輩、間塗先輩。

 梟谷からは白山先輩、信典。

 森然からは遠藤先輩、今井、森本。

 生川からは下田先輩、大石先輩。

 マネージャーは清水先輩とやっちゃん。

 

「そんじゃ2人組作ってやっていこう。始め!」

 

 烏野の3人と音駒の2人、信典はダメでしょー? どうすっかなー。……お。

 

「猫又、やろうぜ」

「おー。宜しく」

 

 森然の今井とやることになった。

 

 

 お昼ご飯を食べて食休みをしたら練習試合だ。

 1巡目。

 音駒戦、【26-28】で勝ち。

 生川戦、【30-28】で勝ち。

 森然戦、【27-25】で勝ち。

 梟谷戦、【26-24】で負け。

 OB戦、【27-25】で負け。

 

 2巡目。

 音駒戦、【25-23】で負け。

 生川戦、【27-25】で勝ち。

 森然戦、【25-23】で勝ち。

 梟谷戦、【30-28】で負け。

 OB戦、【26-24】で負け。

 

「お疲れさん。森然と生川には大分勝ち越せるようになってきてるから梟谷とOBチームにも勝てるように頑張っていこう」

「「「はい!」」」

「そんで、明日からは1日中試合になる。自主練も程々にな。休むのもバレーだぞ」

「「「はい!」」」

「じゃあ解散」

 

 今日は明日に備えて寝よう。結構疲れてきて身体が重くなってきた。

 

 

 

 合宿6日目。今日は1日中試合を行う予定だ。明日は半日で終わっちゃうし。怪我無くやっていきましょー。

 顔洗ったりとかの身支度を済ませてストレッチしていると欠伸をしながら飛雄もやってきた。流石に身体が重くなってそう。欠伸が止まってない。

 

「1週間の合宿は疲れるな」

「流石に。でも俺はまだやれるぞ」

「っ! 俺だって!!」

「そこ張り合う所じゃ無いだろー」

「「おはようございます!」」

 

 「朝から元気だなー」って言いながら力先輩もやってきて一緒にストレッチを始める。

 

「影山と日向の強化版変人速攻も良い感じじゃん。日に日に成功率上がってる」

「あざっす! ……9割成功にしたいです」

「だなー」

「俺も旭さんと田中からスタメン奪ってやるーってことで時間あるときにシンクロ攻撃の練習付き合ってくれ。感覚掴みたいし」

「「はい!」」

 

 この合宿中、色んなフォーメーションを試してきたもんな。スガさんをセッターにしたローテ、飛雄をセッターにしたローテ、久志先輩をセッターにしたローテ、たまーに俺がセッターだったり。

 手の内知られたところで全国でしか戦わないし他の4校は良い練習相手だ。確実に言えるのは、この1週間で全員レベルアップしてる。13人だからって舐めるんじゃねえぞー、おおん?

 

「良し。そろそろ朝御飯の時間だ。ちゃんと食べて全勝しよう」

「「はい!」」

 

 今日の朝御飯はなんだろなー。

 

 

 朝御飯を食べたら食休みをして学校毎でアップをしたら練習試合に移る。

 

「いよいよ合宿も2日だけです。今日は1日中練習試合の予定なので、実戦からまたレベルアップをしていきましょう。

 ただ、今日も気温が高くなってくると思うので熱中症や怪我などには気を付けること。何か違和感があったら早めに行って、周りも自分達の仲間に気を配れるようになりましょう」

「「「はい!」」」

「では今日もよろしくお願いします!」

「「「はい!」」」

 

 梟谷とOBチームからも勝てるように頑張っていこう。

 

 

 午前中

 1巡目。

 音駒戦、【27-25】で負け。

 生川戦、【26-28】で勝ち。

 森然戦、【25-27】で勝ち。

 梟谷戦、【27-25】で負け。

 OB戦、【24-26】で勝ち。

 

 2巡目。

 音駒戦、【24-26】で勝ち。

 生川戦、【23-25】で勝ち。

 森然戦、【27-25】で負け。

 梟谷戦、【25-27】で勝ち。

 OB戦、【25-23】で負け。

 

 午後。

 3巡目

 音駒戦、【27-25】で負け。

 生川戦、【26-28】で勝ち。

 森然戦、【25-27】で勝ち。

 梟谷戦、【28-26】で負け。

 OB戦、【29-27】で負け。

 

 4巡目。この後何かやるらしくて15点マッチで進行するらしい。

 音駒戦、【15-14】で負け。

 生川戦、【13-15】で勝ち。

 森然戦、【14-15】で勝ち。

 梟谷戦、【13-15】で勝ち。

 OB戦、【15-13】で負け。

 

 今日行う予定の試合が全て終わって全体で集合する。

 

「今日1日お疲れ様でした。この後の流れの説明です。

 なんとOBの皆さんや父兄の皆さんが流しそうめんと手持ち花火を準備して下さっています。各自の片付けと体育館の施錠をしたらそちらに合流しましょう」

「「「っ!? はい!!」」」

 

 流しそうめんだ。やったー!!

 

 

 ダウンと体育館の掃除をしたら流しそうめんの時間になった。時間的には16時を回ったところだけどまだまだ明るい。多分だけど、全体的に動きが重くなってきてこれ以上は怪我の危険があるって判断したんじゃ無いかな。実際にチラホラマッサージ受けてる部員いたし。

 それはともかく、流しそうめんの準備も着々と進んでる。どうやら森然高校の園芸部が竹を育ててるらしく毎年流しそうめんをやるのがお約束らしい。

 

「流しそうめんやったことねえ!」

「リエーフもか! 俺も!」

「俺は小学校の自然学習体験でやったなー」

「俺もー」

 

 さっきまでへばってた灰羽が生き生きしてて衛輔君に蹴られた。「その元気試合で出せやー!」って。

 ちなみに俺は小バレの夏合宿でこういうレクリエーションはやった。キヨ君とモト君も一緒だった。……井闥山どんな合宿してるんだろうな。おっと。

 

「はい、では早速ですが流しそうめん、やっていきましょう!」

「「「はい!」」」

「始める前に準備を進めて下さった父兄の皆様とOBの方々にお礼を言いましょう。小鹿野」

 

 小鹿野先輩の挨拶に続いてお礼をしたら早速始まる。つゆが入った竹と箸を受けとって適当な所に移動する。流しそうめんの始まりだ。

 

「「「うぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

 あ。あっちでやっちゃんがフルーツポンチ作ってんじゃん。落ち着いて食べられるようになるまであっちにいよう。

 

 

 

 合宿7日目、遂に最終日だ。

 学校への移動の事を考えると午前中練習試合をしてお昼ご飯とか掃除をして合宿が終わるはずだ。昔祖父ちゃんが言ってた通りなら最終日のお昼はバーベキューだろうな。

 この6日間のように、第一体育館でレギュラーが集合して挨拶をする。

 

「皆さんおはよう御座います。長かった合宿も今日で終わりです。

 今日の予定ですが、午前中は練習試合を行って、午後は昼食や掃除をして全行程終了となりますので時間がありません。それでもしっかりと有意義な時間として下さい」

「「「はい!」」」

 

 よーし、やってくぞー。

 

 1巡目。

 音駒戦、【29-27】で負け。

 生川戦、【22-25】で勝ち。

 森然戦、【24-26】で勝ち。

 梟谷戦、【29-27】で負け。

 OB戦、【26-28】で勝ち。

 

 2巡目。

 音駒戦、【25-27】で勝ち。

 生川戦、【25-27】で勝ち。

 森然戦、【23-25】で勝ち。

 梟谷戦、【25-23】で負け。

 OB戦、【27-29】で勝ち。

 

 全試合が終了した。練習が終わってたらしい控え組も第一体育館に集まって、笹川先生がこれからの流れについて説明する。

 

「皆さんお疲れ様でした。練習の方はこれで終わりです。1人1人、そしてチームでも成長が見られたのかなと思います。

 午後は例年通りバーベキューを行います。

 その為にもまずは体育館の清掃や各学校ボールやボール籠などを片づけて体育館を使わなくても良い状態にして下さい。あと教室ですね。後で大人が確認します。

 そして、マネージャー陣と烏野さんからシャワーと洗濯機を使って下さい。バーベキューの間に乾いてる事でしょう。

 空腹だと思いますが、全員がパパッと動けばバーベキューの時間が増えるので迅速な行動をして頂くようお願いします。目標は14時30分です。宜しくお願いします」

「「「はい!」」」

 

 今の時間は12時50分。結構厳しくね?

 

「それではユニフォームを着られていない人達は第三体育館、森然のユニフォームが奇数組と烏野さん、生川さんが第二体育館、森然のユニフォームが偶数組と梟谷さん、音駒さんが第一体育館の清掃をお願いします」

「「「はい!」」」

 

 「奇数組と偶数組ってどういうことだ?」って一瞬思ったけど、どうやらユニフォームの背番号の事を言ってるらしかった。なるほどなー。

 烏野だけで集まって大地さんから指示を聞く。

 

「良し。まず、俺と成田と山口でボール周り。清水とやっちゃんが救急箱とかを頼む」

「「はい」」「分かった」「分かりました!」

「スガと木下、月島、猫又で教室周り」

「オッケ」「「「はい」」」

「旭と縁下、西谷、田中、日向、影山は体育館を頼む」

「分かった」「「「はい」」」

「終わったら教室な。俺達がシャワー使わないと他の学校も使えないから。早く肉食べられるように動いていこう」

「「「オォーッス!」」」

 

 そんな感じで割り振られて、4人で教室に向かっていく。おーにくー!!

 

 

 教室を掃除しているときに、烏養コーチから「ちょっと話があるから来い」って飛雄と一緒にちょっと離れた教室に連れて行かれた。中で武田先生と森然のOBの人が談笑してた。笹川先生とタメ口で話してたから結構上だと思う。30代中盤くらい?

 

「あ、烏養さんありがとうございます」

「いえいえ、宜しくお願いします。大川さん」

 

 何かやらかしたって感じでは無さそうだな。……一体なんだ?

 

「失礼します。烏野高校1年の猫又繋護です。よろしくお願いします」

「同じく烏野高校1年の影山飛雄です。宜しくお願いします」

「猫又君、影山君お時間頂きありがとうございます。森然高校OBの大川です。そしてこういうものです」

「頂戴いたします」「……いたします?」

 

 大川さんから名刺をもらって、そこには【明治大学男子バレーボール部 広報担当 大川湊斗】って書かれていた。……お? ……おお? これってもしかしてスカウト?

 飛雄は名刺を物珍しそうに見ては、「明治大学……。関東の強豪じゃねえか……!」

って呟いてる。こいつ気づいてないな。

 

「猫又君は察しが付いたみたいだね。

 改めて説明すると、この合宿を見て将来有望な君達2人に『ウチの大学の練習見に来てみない?』ってお誘いをさせて頂こうと思ってお時間を頂きました。簡単に言うと推薦に繋がる第一歩だね」

「ありがとうございます!」「っ!? ありがとう御座います!」

 

 なるほど。進路関係だから武田先生と烏養コーチがいるのか。……あーそういや観察されてたな。誰かと思ったらスカウトか。

 

「今は高校1年ってことでまだ先のことは分からないと思う。でも、もし良ければウチに興味を持ってくれると嬉しいです。

 そして、是非ね、練習の見学とかオープンキャンパスに来てくれたらなーって思うよ。大学のレベルを知って欲しいって感じかな。君達ならばきっと通用する」

「「はい!」」

 

 丁度パンフレット取り寄せてたから有り難い。オープンキャンパスにも行こうと思ってたし。

 どうすれば良いか分からなかったから烏養コーチにヘルプを出したら、「まあそういうことだ」って言いながら話の主導権を受け持った。

 

「今ここで即決する必要はねえ。けど、興味があれば是非とも行ってこい。そんで大学リーグの中でも上のレベルを見てこい、って感じだな。全日本選手も排出してるような大学だし。

 そんで、現時点で2人にやって貰うことは無い。怪我しないように結果を残していこう」

「「はい!」」

「強いて言うなら成績ですね。最低ラインはやっぱりありますから」

「お、おす……」

 

 飛雄言われてるぞー。

 

「今回はこんな感じです。これからも2人には注目しているのでバンバン結果を残して下さいね。お時間頂いてありがとう御座いました」

「「ありがとう御座いました!!」」

「あー、あんまり言いふらすなよ。決まったわけじゃねえし」

「「はい!」」

 

 そりゃそうだ。あとは素行調査とかもあるだろうし。ま、やることは変わらない。勉強とバレー、あと日常生活。うん。

 

「頂いた名刺は僕が預かっておきますね。学校に着いたらお返しします」

「「お願いします」」

 

 名刺落としたら洒落にならないし。武田先生に渡しておこう。挨拶をして教室を出る。

 

「どうよ」

「……嬉しい」

「勉強頑張ろうな」

「……繋護が勉強してる理由が分かった。こういうことか」

「そういうこと。成績あった方が選択肢も増えるしな」

「……教えてくれ」

「おう。さーて、バーベキューだぞー」

「っ!!」

 

 汗流したーい。お腹減ったー。いつオープンキャンパス行こうかなー。

 

 

 教室に戻って掃除の続き、あとシャワー。着てた服の洗濯と乾燥を済ませているとあっという間に時間が経った。……またシャワー浴びてえ。暑いよ。でもさっきよりマシ。

 ちなみにバーベキューセットはシャワーを待ってた組でやってくれた。ありがとう御座います。

 最後にシャワーを使った森然の皆さんが到着していよいよバーベキューの時間だ。

 

「はい、皆さんお疲れ様でした。大きな怪我や合宿が中止するようなことが無くてこちらも安心しました。

 また、この7日間で個人の実力とチームの完成度を高められた事だと思います。特に梟谷さんは29日からのインターハイでこの合宿中に学んだことを発揮して優勝を目指して下さい。この場にいる全員が応援しています」

「「「はい!」」」

「そして、他の4校もこれから控えている春高予選を勝ち抜いて全国大会に出場しましょう。もちろん梟谷さんもね」

「「「はい!」」」

 

 話はまだ続くみたいだ。なげーよー。

 

「28日からオリンピックのバレーボール部門が始まるので、世界中のトップのバレーボーラーから色々学んでいきましょう。

 長々とすみません。【終わりよければすべてよし】という言葉があるようにバーベキューも楽しんで良いですが、ちゃんと節度を守るように。それでは~、頂きます」

「「「頂きます!!」」」

 

 バーベキューの始まりだ。とは言ってもこういう時は先輩優先だから待ってないとね。おにぎりでも貰っとこうかなー。

 お肉、ピーマン、ニンジン、ナス、トウモロコシ、タマネギ、カボチャ、ソーセージ、唐揚げ、焼きそば、焼きおにぎり……。やべえ、美味しそう。

 ……お? ビーチパラソルの下の椅子に座ってる猫又先生が手招きしてる。行って来よう。

 

「繋護お疲れ様」

「ん。祖父ちゃんも。……それで?」

「取り分けてきてくれ」

 

 だと思ったよ。紙皿とトングを持って、先生が使ってるバーベキューセットから適当にお肉とか野菜を取ってくる。

 

「はい」

「おお、悪いな」

 

 先生達俺達より良い肉食べてるじゃん。いいなー。ずるーい。ぶーぶー。

 

「……周りに気づかれないようにな」

「……有り難く頂きます」

 

 やったぜ。ごねて良かった。

 「ちょっとだけ頂きます」って許可を貰ったら、チョロチョロと俺の分を紙皿に載せていく。あと焼き肉のタレ。

 祖父ちゃんの隣の席に座って俺も食べ始める。……やっぱ良い肉じゃん! ずるーい。あと日陰だと涼しいな。

 

「どうだった?」

「……梟谷がインハイ決まってなかったら学校関係なくチーム作って練習試合してたよね?」

「おお、そのつもりだったぞ。対応力もつくしな」

「やっぱり」

 

 何というか、先生達がやりたいことはまだあったような気もするんだよな。もちろんやってたことには違いないんだろうけど。

 

「大川君との会話は?」

「あ、そっち? 聞いてたんだ」

「この合宿ってそういう伝手作りでもあるからな。学校のOBが見に来て声かける良い場になってんだ。そんで、梟谷グループからは明治大学に進学するメンバーが多い」

「伝手って大事だよねー」

「だな。まあ結果出してれば進学先には困らないぞ。もちろん上に行けば行くほどな」

「ん」

「まあ繋心と違って勉強面では不安ないな。この調子で3年間オール5目指していけよ」

「うん」

 

 今はゴミ捨て場の決戦を目的にバレーやってるからなんとも言えない。大学は行くけどバレーを続けるのかはまだ分からないし。それでも部活見学はさせて貰いたいところだな。

 あ、そうだ。

 

「もしさ、千葉から通いにくい所の大学で、祖父ちゃん家から近かったら居候させてもらっても良い?」

「家のことやれよ」

「それはもちろん」

「早稲田とか狙ってみろ。繋護ならいけるはずだ」

「それはボチボチ考える」

 

 私立は金かかるんだよな。まじやばいって。奨学金制度使わせて貰おうかな。

 

「ほら、繋護が良い肉食べてるの気が付かれないうちに戻りな」

「あーい」

 

 日陰にいたかったんだけどな。しょうがないね。

 

 

 バーベキューが終わって片付けも終わった。後は宮城に帰るだけだ。

 

「はい。これで合宿全ての工程が終了しました。お疲れ様でした。

 梟谷さんはインターハイ本番頑張って下さい!」

「「「はい!」」」

「そして、それが終われば全学校春高予選に向けての練習が始まります。一番早くて宮城県の10月末ですね。この場にいる5校が春高にて対戦できるように頑張っていきましょう」

「「「はい!」」」

 

 ウチはインハイ予選ベスト4で一次予選は免除。本戦から参戦する。それまでの4ヶ月間で頑張っていかないといけない。インハイ予選で3年生が引退した学校もあって、ウチみたいに1年2年が主体のチームが良い成績を残す可能性も出てくる。

 ……ま、今から狼狽えたってしょうが無い。強ければ全国に行けるし、弱かったら全国には行けない。それだけのことだ。

 

「それではお手を拝借。いよ~」

 

 全員で同時に拍手をして締めた。

 

「お疲れ様でした!」

「「「お疲れ様でした!!」」」

 

 長期合宿しゅーりょー!!

 

 

 サービスエリアで休憩を挟みながら約5時間。真夜中の学校に戻ってきた。なんか久しぶりな気がする。あと涼しい。

 ボールとかボール籠、救急箱を部室に押し込んでミーティング。まずは武田先生から。

 

「はい。1週間の長期遠征お疲れ様でした。大変実りのある合宿だったと思います。この調子でもっともっとレベルアップしていきましょう。梟谷グループの中で一番に春高進出を決めて他の4校を応援しましょうね」

「「「はい!」」」

 

 続いて烏養コーチ。

 

「1週間お疲れさん。個人のレベルアップとチームとしての完成度って意味でめっちゃ良い合宿だったと思う。が、全国制覇するにはまだ足りねえ。

 ここでサボったらすぐ駄目になるぞ。しっかりと気合入れてやってこう」

「「「はい!」」」

「おし。じゃあこれからの予定だ。

 明日……もう今日か。今日は休みだ。また明日からいつもの時間で練習していく。

 ただ、中学生に向けての部活説明会、疑似東北大会があって若干予定が立て込んでるから忙しくなるぞ。ちゃんと予定表確認しておけよ。いいな?」

「「「はい!」」」

「そんで、明日からオリンピック、明後日からインターハイがある。技術を盗む良いチャンスだ。ただ、録画は俺もするから夜更かしするなよ」

「「「はい!」」」

「じゃあ解散。……ってわけじゃなくて、今日はもう遅いから寮に泊まって貰う」

「「「寮!?」」」

 

 おおー、食いつき良いね。

 

「ジジイがいたときには越境入学して烏野に通ってた部員が結構いたんだよ。そんで、ジジイがそういう部員が楽できるように寮を建てた。

 もしかしたら来年以降越境入学してくる部員がいるかもしれねえってことで色々整えてる途中だ。補導されても困るし、夜も遅いから今日は泊まってけ。

 あ、清水と谷地はおばさんが送ってくれるからおばさんの指示を聞いてくれ。取り敢えず夜遅いから移動するぞ。着いてこい」

「「「オォーッス」」」

 

 清水先輩とやっちゃんに別れの挨拶をしてゾロゾロと寮まで歩いていく。武田先生も今日は泊まるらしい。

 

 

 坂ノ下商店前に到着した。

 

「繋護、おまえどうする? こっち泊まってくか?」

「ウチでいいんじゃないかなって思ってるんだけど」

「オッケー、じゃあ明日8時過ぎくらいだと思うからそのつもりでいてくれ。お疲れさん」

「ん。じゃあ自分だけすみません。失礼します」

「「「おー」」」

 

 つっかれたー。かーえろ。

 

 

 猫又繋護と別れた烏野高校男子バレー部一同は和室を中心とする寮の中に入っていた。部員一同はおっかなびっくりしながら内装を見渡す。

 

「悪いな、まだ家具の準備とか全然してねえんだ。取り敢えず武田センセから風呂か?」

「あ、僕は最後で構いません。生徒優先で大丈夫です」

「そうか? じゃあ3年から風呂、他で布団の準備だな。軽く食うものも用意してくるからちょっと待ってろ」

「「「はい」」」

 

 烏養繋心の指示で3年生3人は入浴の準備、2年生5人と1年生4人は和室で布団の準備をしていく。烏養繋心の言うとおり家具はほとんど無かった。

 

「畳の匂いって良いよな~」

「分かる。帰ってきたーってなる」

「森然は綺麗すぎてちょっと落ち着かなかったな」

「……でも綺麗な方がいいだろ?」

「「「まあな……」」」

 

 半日前まで他の4校と合宿していたのが嘘のようでまだどこかおぼつかない2年生5人であった。

 一方で1年生4人も話しながら就寝の準備を進めている。

 

「家から学校まで近いと良いな~。10分くらいだったよな?」

「多分その位」

「俺もここに泊まりたいな。そうすりゃバレーの時間増やせるし」

「……烏養さんもそう考えてんじゃない? 越境してくる新1年がいたらって言ってたし。ここの存在を知らせたって事はこれからのミーティングでも使っていくんだと思う。

 ……武田先生は何かご存じですか?」

 

 月島蛍が部員と同様に就寝の準備を進めていた武田一鉄にそんな質問をすると、彼は作業の手を止めて回答していく。

 

「ええ、猫又君の中学の1こ下の後輩が烏野に進学しようと考えているみたいですし、烏養君も自分の知り合いの弟さん達に声をかけているみたいです。これからの部活説明会で寮のことも説明するって話になってます」

「ありがとう御座います」

 

 月島蛍が一礼すると、武田一鉄は元の作業を進め始めた。

 

「繋護の後輩か~! 上手いんだろうな! 影山とか月島山口の後輩は烏野来んの?」

「知らねえ。時間変わって逢わねえし。青城行くんじゃねえか?」「『烏野どんな感じなんですか~?』とは聞かれたよ。説明会も来るってさ」

 

 両極端の言葉を聞いて、日向翔陽のテンションは更に上がってくる。

 

「マジか~! 来年新入生いっぱい来ると良いな!」

「そしたらレギュラー争いも激しくなるけど? 少なくとも繋護の後輩とかやばいでしょ。井闥山とか梟谷でもレギュラーに入れるんだから、上手くないわけないよね」

「……負けねえ!!」

 

 日向翔陽は顔も分からない後輩に対抗心を燃やして叫ぼうとするが、その前に縁下力に止められた。

 

「時間考えろって。もう真夜中なんだから。近所の人から怒られるのは烏養コーチなんだぞ」

「あっ、すっ、すみません」

「武田先生見てみろって」

 

 縁下力の指示に従って武田一鉄を見ると、ニコニコとしているが彼の瞳が雄弁に語っていた。

 

「……あと少しでしたね」

「すみません……!」

 

 そこに、おにぎりやヨーグルトなどの夜食を持っている烏養繋心が戻ってきた。

 

「まーた何かやったのか?」

「いえ、未遂です」

「なら良いけどよ。3年の分は別にあるからこれ適当に食べて良いぞ」

「「「アザッス!」」」

 

 部員9人は烏養一繋や猫又美繋が作った夜食を食べ始めた。

 

「コーチ!」

「ん?」

「俺寮泊まりたいです!」

「「「俺も!」」」

 

 日向翔陽に続き影山飛雄も挙手をする。他にも田中龍之介や西谷夕も続いた。

 

「家具の準備の他にも寮母みたいな人の確保とかな。交渉してんだけどなかなか上手くいってねえ。もうちょっと準備がかかる。

 幸い1時間以上かけて通学してるメンバーいないみたいだしな。現時点ではそこまで優先度は高くねえって感じだ。

 ただ、雪とか大雨の時に帰り道ですっころんで怪我しました、なんてならないようにはしたいよなーって武田センセと話してる。実際日向ジジイの所に泊まったろ?」

「あ、はい!」

「東京遠征でも帰りめっちゃ遅くなるから使いたいところではある」

「「「おお~!」」」

 

 思った以上に色よい返事が返ってきて、部員からどよめきの声が溢れる。

烏野高校男子バレー部一同が寮生活を送るのはそう遠くないかもしれない。

 

 

 ……ん。意識が戻ってきて蝉の鳴き声が聞えてくるようになった。合宿……じゃない。そうだ。帰ってきたんだ。

 天井の木目が目には入ってきて一瞬何処にいるのか分からなくなった。森然の教室じゃなくて焦った~。……よーし、白湯飲んでこよ。

 布団から起き上がって肩回しとかアキレス腱伸ばしとか簡単なストレッチをしながら台所へと向かっていく。

 

「あ、繋護。おかえり。あとおはよう」

「あ、祖母ちゃん。うん、ただいま。おはよう」

 

 1週間ぶりの祖母ちゃん。なんか久しぶりだ。あと帰ってきたのが深夜だったから祖母ちゃんは寝てたしね。

 

「合宿どうだった?」

「楽しかったよ。知り合い増えたし」

「また合宿あるんだっけ?」

「そう。8月末と9月? ……9月はあったっけ? 10月上旬が最後かな」

「頑張らないとね」

「うん。……何かやることある?」

「あ、じゃあゴミ出しお願いしてもいい?」

「オッケー」

 

 軽く身支度してからパパッと行ってくっか。そういや、繋心兄ちゃん達はどうなったんだろうな。

 白湯飲んで顔洗って軽くストレッチして……、朝の身支度をしたら燃えるゴミを持って近くのゴミ集積所へ。……お。なんと欠伸をしてお尻をかいてる繋心兄ちゃんもいた。ゴミ袋投げ捨てたの見たぞー。

 

「繋心兄ちゃんおはよう」

「おお、おはよう。朝はえーな」

「合宿もこの時間に起きてたし」

「俺も同じだ。習慣ってこえー。ま、一眠りするけどな」

 

 俺も寝ようかな。時間あるだろうし。

 ゴミ集積所にゴミを置いて2人で戻る。

 

「そんで、今日は部室の掃除と消耗品の買い出し、あと身体測定のつもりだ。午前中には解散する。……したい」

「午後は休んで明日から練習っと」

「おう。あと部活説明会の準備とかな。たっつぁんに動画作って貰ったからそれ使う予定だ」

「まーた人使い荒いんだから」

「飯奢ったりしてるから良いんだよ。武田センセと俺だけじゃあ手が回らない。有り難く思えよ。来年からは部員でやって貰うからな」

「おす。あとありがとうございます」

「おうよ」

 

 これで繋心兄ちゃんが動画も作るってなったらマジで身体壊しそう。もちろん武田先生も。恩返しの為にも結果残さないとね。

 ……ん? 学校説明会って生徒出られるっけ? ま、いっか。

 

「じゃあまた後でな」

「んー」

 

 坂ノ下商店前まで戻ってきたから別れる。

 そのまま家に戻ると祖父ちゃんも起きだして新聞読んでた。

 

「おう、おはよう。朝はえーな」

「……さっき繋心兄ちゃんとも同じ会話した」

「……そうかよ」

「何かやることある?」

「んー、いや無いな。合宿の疲れ溜まってるだろ。寝てろ」

「バスの中ほぼ寝てたからそんなに眠くないんだよね」

「じゃあベンキョーでもしてろ」

「はーい」

 

 と思ったけど、報告というか何というか。

 

「明治大学の人から『練習見に来ないか?』って声かけられたよ」

「おお、良かったじゃねえか。行って来い行って来い」

「うん、そのつもり。……でも早くない?」

「いや? どこも結果残すために有望そうな奴には早めに声かけるだろ。ま、まだ決まった訳じゃねえからな。浮かれてると『その話は無かったことにして下さい』なんて言われちまうぞ」

「あーい」

 

 祖父ちゃんには話いってなかったのか。てっきり祖父ちゃんにも話聞いてるかと思ってたけど。ま、いいや。勉強してこよう。

 自室に戻っていくと、今度は母さんと遭遇した。

 

「あ、母さん、おはよう」

「おはよ~、朝早いわねー」

「……それ繋心兄ちゃんと祖父ちゃんも同じこと言ってた」

「まあ血は繋がってるし」

 

 にしてはちょっと「うげえ」って顔してるじゃん。

 

「あと清水先輩とやっちゃんの送迎もありがとう」

「まあ補導される時間だったし。繋心からもお礼言われたから良しとしましょう。何かあっても嫌だしね。今日の予定は?」

「部室の掃除とか明日以降の買い出しとか。午前だけの予定」

「そう? じゃあお弁当はいらなそうだね」

「うん、大丈夫」

「朝御飯までゆったりしてなさい」

「はーい」

 

 あ。彩音ちゃんに【帰ったー。テスト頑張って!】ってメッセージ送っとこ。

 

 

 寝始める時間が遅い。合宿の疲れが出た。

 そんな理由から学校に集まったのは結局10時近くだった。皆昇降口で集まってる。

 

「おし。じゃあ今日のやることな。まず身体測定。その後は部室の掃除と消耗品の買い出しだ。車出すから人を選出してくれ。2人で良いかな」

 

 そこで、「コーチ!」って言いながら飛雄が手を挙げた。

 

「おう、影山。どうした?」

「シューズ買いたいので買い出し行きたいっす」

「オッケー。他には?」

 

 龍先輩が「あ、さーせん。俺も」って続いた。

 

「オッケー。じゃあ田中と影山は俺と一緒に買い出しだ。他の11人で部室の掃除とかボールの空気入れ、みたいなことをやっててくれ。特に1週間部室入ってないから埃も溜まってると思う」

「「「はい!」」」

「おし、じゃあ背番号順でやってくぞ。澤村から縁下まで着いてこい」

「「「はい!」」」

「成田から猫又までは先に部室の掃除始めててくれ」

「「「はい!」」」

 

 曇りで良かったような悪かったような。俺もサポーターの予備買いにいっても良いかもしれない。元気だったら午後行って来ようかな。

 

 

 身長3mm伸びて四捨五入すれば171cm、ただ体重が1kg落ちてた。ぐええ。

 身体測定の後は部室の掃除・整頓、ボールの空気入れとか布で乾拭きみたいな雑用をしていると買い出し組も戻ってきた。終わりのミーティングってことで武田先生も。

 

「大丈夫そうか?」

「はい」

「清水と谷地も部室に入るってこと忘れるなよ。『うわ、きったな……』とか『クサすぎ……』とか思われたくねえだろ?」

「「「っ!? はい!!」」」

 

 俺と蛍、忠、飛雄以外の悲鳴が上がった。特に龍先輩とノヤ先輩。そういうこと言われたらショック死するんじゃね。

 

「【部屋の乱れは心の乱れ】って言葉があるように基本的なことが積み重なって周りからの評価になるぞ。バレーの実力と同じように身嗜みとか立ち振る舞いとかな。

 んじゃ、ということで今日は終わりだ。明日からまた練習だから今日こそゆっくり休んどけよ」

「「「はい!」」」

 

 続いて武田先生。

 

「はい! 皆お疲れ様!

 これで長期合宿も一段落だね。また明日から練習があるから今日はじっくり休んで下さい!」

「「「はい!」」」

「良し、じゃあ澤村」

「はい! 気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 さーて、今日は帰って休もう。

 

 

 夜、彩音ちゃんと電話の時間だ。心なしかテスト期間が終わって声色も明るい。

 

「テストお疲れ様。手応えどう?」

『計算ミスとかなければ大丈夫だと思う』

「さっすが~」

『自分が勉強したいことやってるからね。私も夏休みだ』

「……9月まででしょ?」

『そう!』

 

 2ヶ月弱くらい? 大学の夏休みって長過ぎ。

 

「ずるーい。その位夏休み欲しい」

『まー、それがルールだからね~。仕方ないよ。繋護も大学生になればね』

「んー。……あ」

 

 そうじゃん。大学と言えば報告することあったわ。

 

『どうかした?』

「明治大学のバレー部の人に『練習見に来ないか?』って誘われた」

『え、凄いじゃん。行くの?』

「都合が付けばね。……進路って言われてもなー。彩音ちゃーん、ヘルプ~」

『進路のことは自分で決めなよ。女子大だから繋護入学できないし。まあ、御茶ノ水近辺だったら嬉しいかな?』

「先のことなんか分からないよ~」

『それでいいじゃん。取り合えず東大京大に入学できるようにしとけばさ。バレーやってたらスポーツ推薦もらえるかもしれないし。成績でも推薦狙えるかもしれないし。困ることは無いって。ね?』

「うん」

『大丈夫。繋護がプー太郎でも養っていくから私に任せて』

「いや働くし」

 

 将来どんな仕事してるか分からないけど、そこは譲らない。……いや、今から進路って言われてもまだ何にも分からないわ。どうしましょー。




【登場人物まとめ】
大川湊斗 森然高校OB 現在は明治大学男子バレーボール部でスカウトをしている
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