烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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7月の振り返り

2日(月) 1学期末テスト(5日まで)  
6日(金) テスト返却 日向翔陽は英語、影山飛雄は国語で名前ミス、補習確定
7日(土) 音駒にて遠征(8日まで) 
9日(月) 短縮授業開始 身体測定(猫又繋護、170.4cm 59.3kg) 道宮結達と恋バナ
10日(火) 木下久志、セッターの練習を始める
18日(水) 終業式夏休み開始(8月22、23日くらいまで)
20日(金) 森然高校にて長期合宿(26日まで)
27日(金) 身体測定
28日(土) ロンドンオリンピックでバレーボール部門の開始(8月12日まで)
29日(日) インターハイ開始(男子は8月2日まで)
31日(火) 部活説明・見学会


2012年8月①

 8月に入った。相変らずバレー漬けの生活だし、あと暑い。「毎年最高気温更新してんじゃないの?」ってつい悪態つきたくなる。

 ロンドンオリンピックで全日本女子は勝ったり負けたりしている一方で、インターハイも無事に終了した。

 優勝は東京第一代表の井闥山、準優勝は兵庫代表の稲荷崎、ベスト4は稲荷崎に負けた静岡代表の修徳と井闥山に負けた大分代表の狢坂。

 高校3大エースが所属する高校がしっかりと結果を残した。梟谷の敗因は〝好調止まり〟の木兎先輩がブロックで止められたからだ。〝絶好調〟ならまだ分からなかった。ちなみにキヨ君とモト君は絶好調だった。

 そういえば白鳥沢は稲荷崎に負けてベスト8止まり。宮兄弟がやべー。

 

「全国だからこそ、1点1点を勝ち取れる選手がいれば勝ち抜けるって訳だな。全国制覇するには全然力が足りねえ。そこんとこちゃんと理解しとけよ」

「「「はい!」」」

「コーチ!」

「おお?」

「井闥山とか稲荷崎と練習試合やりたいです!」

 

 翔陽と飛雄の食い入るような質問が視聴覚室に響いて、ほぼ全員が期待を込めた視線を送る。でもー?

 

「県ベスト4止まりのウチじゃ練習試合組んでくれねえよ。だって全国では無名だからな」

「「「ぐぬぬ……!!」」」

「まずは県内一になって全国出場。そんで全国でも最低ベスト8にならねえとな。それが最低条件だ。

 ……ちなみに、予算的に厳しいから稲荷崎が東京の方に出てこないと物理的に練習試合は無理だ。兵庫と宮城じゃ離れすぎてる」

「「「…………」」」

 

 いやー、兵庫まで新幹線でも2万5千円くらいでしょ? それが20人弱。片道で50万とか無理でしょ。バスだとしても音駒まで6時間なんだから。半日潰れるって。

 そんな理由から稲荷崎との練習試合は厳しいと思いまーす。

 

「つーか、青城とか伊達工、和久南みたいに全国に行ってねえけど全国でも戦える学校は山ほど有るんだぞ? 各都道府県で出場数が限られてるだけでよ。

 そんな訳でまずは宮城県を制覇して全国に出場。全国でも結果を出す。それが他県との練習試合の機会が増える最大の近道だ。【急がば回れ】ってやつだな。肝に銘じておけよ」

「「「はい!」」」

「伝えていたとおり、明日から東北地方の数県の学校を集めて疑似東北大会だ。青森、福島、山形、ウチの4校で梟谷グループの合宿みたいに練習試合をしていく。何処の学校もウチと同じようなレベルだからこの機会満遍なく使っていこう」

「「「オォーッス!」」」

 

 青森県の蜂谷農業高校。

 福島県の蝶山興業高校。

 山形県の蜻蛉商業高校。

 そしてウチ。

 明日からの2日間この4校で練習試合をしていく。場所はゴールデンウィークに音駒との練習試合で使った烏野総合公園運動場。移動手段を考えると一番集まりやすいとかなんとか。

 

「よーし、じゃあ明日の準備始めていくぞー」

 

 どこでもドアが欲しい。そうすれば遠征費もかからなくて済むのに。ドラえも~ん!! 四次元ポケットだけちょうだーい!!

 

 

 

 朝、準備をして荷物の確認も終わる。

 

「祖父ちゃんも見に来るんだっけ?」

「おう。先生達にはお世話になってたしよ。軽く挨拶しに行くつもりだ」

「暑いから無理しないで」

「わーってるよ。繋護も頑張ってこい」

「うん」

 

 祖父ちゃん祖母ちゃん、母さんとハイタッチして学校に向かってしゅっぱーっつ。

 

 

 最初学校に集まって、それから皆で移動。烏野総合公園運動場に到着。コート2面の準備をしていると他の3校も到着した。

 

「「「おはようございます!」」」

「「「おはようございます!」」」

 

 雰囲気あるぅ。どこの学校もベンチメンバーだけの参加みたいだ。場所ないもんね。

 宿舎に荷物を置いて戻ってきたら全体での挨拶をしていく。右から蜂谷、蝶山、蜻蛉、ウチで背番号順に2列で並ぶ。

ここはホームである武田先生が話し始めた。

 

「皆さんおはよう御座います!」

「「「おはよう御座います!!」」」

「烏野高校男子バレー部顧問の武田一鉄です。本日は遠い中来て下さってありがとう御座いました!

 前任の烏養一繋先生の縁あって、再び皆様と交流を持てたことをとても喜ばしく思います。2日間という短い間ですが、どの学校もこの機会を存分に活かして下さい!

 私自身バレーボールは未経験で、2日間の指示はこちらの烏養繋心君にお任せします。烏養君、宜しくお願いします」

 

 烏養コーチが武田先生の横に立って、話し始めた。

 

「只今武田先生からご紹介に預かりました、烏野高校男子バレー部コーチの烏養繋心です。

 そうですね、各学校でアップを取った後にスパイクとサーブ練習を挟んで、10時を目処に練習試合を始めていきましょう。

 1セット25点、デュースあり。1セット終了毎に烏野以外の3校が時計回りで回っていくスタンスをとりたいと思います。

 つまり、初戦がウチと蜂谷農業さん、蝶山興業さんと蜻蛉商業さん。2戦目がウチと蝶山興業さん、蜻蛉商業さんと蜂谷農業さん。3戦目がウチと蜻蛉商業さん、蜂谷農業さんと蝶山興業さん。これで1巡目ですね。

 2巡目は蜂谷農業さんが固定と言う流れでやっていきたいと思います。何かご意見ご質問は有りますか? ……大丈夫そうですね。

 では各学校アップを始めて行きましょう。宜しくお願いします!」

「「「お願いします!!」」」

 

 まずはアップからだ。各学校割り当てられたコートに向かう。

 

 

 1巡目。

 蜂谷農業戦、【26-24】で勝ち。

 蝶山興業戦、【25-23】で勝ち。

 蜻蛉商業戦、【26-28】で負け。

 

 昼食の時間を挟んで2巡目。蜂谷農業がコート固定だ。

 保護者だったり受験するかどうか考えてる中学生とその保護者だったりと観客もそれなりにいる。青葉城西高校のジャージも見た気がする。まー、制限してないし。偵察に来るよなー。

 蜂谷農業戦、【26-28】で勝ち。

 蝶山興業戦、【27-25】で負け。

 蜻蛉商業戦、【27-25】で勝ち。

 

 3巡目。蝶山興業が固定だ。

 蜂谷農業戦、【26-28】で負け。

 蝶山興業戦、【28-30】で勝ち。

 蜻蛉商業戦、【27-25】で勝ち。

 

 15点マッチで4巡目。蜻蛉商業が固定だ。

 蜂谷農業戦、【14-15】で負け。

 蝶山興業戦、【13-15】で勝ち。

 蜻蛉商業戦、【12-15】で勝ち。

 

 今日の全試合が終わったから、朝みたいに全体で集まる。

 

「今日1日お疲れ様でした!」

「「「お疲れ様でした!」」」

「この後は宿舎にて夕食と風呂の時間になります。烏野高校のOBの方々や烏野町内の方々が手伝ってくれたので必ずお礼を伝えるようにして下さい。

 風呂の順番はー……。キャプテンがジャンケンで決めましょう。他の3校は夕食を優先して下さい」

「「「はい!」」」

「気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとう御座いました!!」」」

 

 大地さんが号令を掛けて今日は終わり。お腹空いたー!!

 あと清水先輩とやっちゃんは清水先輩の家から通うらしい。他の3校女マネいなかったから安全確認も兼ねてだ。その話を聞いて龍先輩とノヤ先輩は崩れ落ちてた。明日会えるでしょうが。

 あと、信じられないことだけど、悠花ちゃん凛花ちゃんがバドミントンダブルスで銀メダルを獲得したらしい。マジかよ、あの双子。やばすぎ。後でお祝いのメッセージ送っとこ。

 

 

 烏野高校男子バレー部顧問の武田一鉄とコーチの烏養繋心、加えて烏養一繋の3人。

 蜂谷農業高校男子バレー部の監督を務めている山本徹とコーチの高橋秀人。

 蝶山興業高校男子バレー部の監督を務めている三浦翔とコーチの菊地健太郎。

 蜻蛉商業高校男子バレー部の監督を務めている青木祐一とコーチの磯部大介。

 夕食を食べ終えた9人は監督とコーチだけで今日1日の振り返りを行い、一息ついていた。談笑の時間へと切り替わりつつある。

 

「それにしても烏野が復活するとは思わなかったよ」

「まー、全盛期にはほど遠いですけどね」

「半年でそこまでいかれたら立つ瀬がねえって」

 

 青木祐一が「繋心、まさかドーピングなんてやってねえだろうな?」と烏養繋心に詰め寄るものの、烏養繋心はそれを否定する。

 

「ま、俺だってこの4年間必死こいて勉強してコーチの資格取りましたから」

「はん、生意気言うようになったな。コノヤロ!」

「いてえっすよ!」

 

 烏養繋心の高校時代を知る監督3人からヤイヤイされて、コーチ3人から呆れた目で見られていた。

 一方で、菊地健太郎が烏養一繋に話し掛ける。武田一鉄を除く8人は10数年前から交流があった。

 

「烏養先生はもう監督には復帰しないんですか?」

「まあ、武田先生と繋心って後釜がいるからな。あと体調崩したら4年前と同じだ。ぬか喜びさせるのも悪い。

ま、いい加減世代交代の時だろ。って思ってる」

「そんなこと言いつつ練習見に行ってるんですよね?」

「まあな。体調はすこぶる問題ねえしよ」

「こうしてまた交流が出来るようになったから練習試合していきましょうや。武田先生も宜しくお願いします」

「はい! こちらこそ宜しくお願いします!」

 

 夜が更に更けていく。

 

 

 2日目。

 朝御飯を食べて食休みをしたら早速練習開始だ。

 

「皆さんおはよう御座います!」

「「「おはよう御座います!!」」」

「今日も昨日みたいな感じで進めていきます。体育館の施錠が17時までなのでそれまでに1セットでも多く練習試合をしていきましょう。

 それでは9時半位を目処に各学校でアップして下さい。今日1日宜しくお願いします!!」

「「「お願いします!!」」」

 

 よーし、アップだー。

 

 

 アップが終わって早速練習試合を始めて行った。

 1巡目。ウチが固定。

 蜂谷農業戦、【27-25】で勝ち。

 蝶山興業戦、【25-22】で勝ち。

 蜻蛉商業戦、【29-27】で勝ち。

 

 2巡目。15点マッチで、コートは蜂谷農業が固定。

 蜂谷農業戦、【13-15】で負け。

 蝶山興業戦、【13-15】で勝ち。

 蜻蛉商業戦、【15-12】で勝ち。

 

 昼食を挟んで3巡目。コートは蝶山興業が固定。

 蜂谷農業戦、【25-23】で勝ち。

 蝶山興業戦、【26-28】で勝ち。

 蜻蛉商業戦、【27-25】で勝ち。

 

 4巡目。コートは蜻蛉商業が固定。

 蜂谷農業戦、【27-25】で勝ち。

 蝶山興業戦、【26-24】で負け。

 蜻蛉商業戦、【20-18】で勝ち。ただ、残念ながら時間が来てしまって途中で終わってしまった。

 

 祖父ちゃんと烏養コーチの言うとおり、実力的にはほとんど同じで勝ったり負けたりって感じだった。力量差が大きすぎると練習にならないし、移動もそこまで大変じゃないから今後とも付き合っていきたいって監督同士で話し合ってるのを聞いた。ウチは私立じゃ無いから私立大会には出られないしね。

 武田先生が前に出て話し始めた。

 

「皆さんお疲れ様でした!」

「「「お疲れ様でした!!」」」

「あっという間に時間が経ってしまったこの2日間だと思います。先生方とも『これからも定期的に練習試合したいですね』と話し合っていたので、またこうして練習試合をお願いしたいです。その時はどうかよろしくお願いします!」

「「「はい!」」」

「今後の流れですが、体育館は17時まで、宿舎の方は18時までの貸し出しとなっているのでクールダウン含めて時間厳守でお願い致します。それでは宜しくお願いします!」

「「「はい!」」」

 

 んー? 結構余裕無いぞ。今16時35分だから。ま、50人近くでパパッとやればすぐ片付くかな。

 まずはちゃんとダウンからやらないとな。ダウンしないのは怪我の元だ。

 

 

 4校での最後の挨拶を終えて学校に戻ってきた。ボールとかボール籠、救急箱を戻してミーティング。

 烏養コーチが話し始める。

 

「と、まああんな感じだ。移動に慣れたりだとか力量もほとんど同じだから梟谷グループみたいに定期的に練習試合をしてた。これからもそういう伝手は活かしていきたいと思ってる。

 そんで、明日は休みだ。今週いっぱいやって、来週はお盆休みに入るぞ」

 

 その瞬間翔陽が挙手をして、烏養コーチが一瞬戦く。

 

「コーチ!」

「な、なんだ?」

「お盆は休みなんですか!?」

「ああ、学校自体が開かないんだよ。あと俺も武田センセも親戚づきあいがあるからちょっと厳しい。おまえ達もそんな感じだろうし。

ただ、縄跳びとか各自でボール触ったりとかはしとけよ。また休み前に改めて伝えるけどな」

「「「オォーッス」」」

 

 父さん達も10日くらいからこっち来て、俺も家族全員で13日くらいから一旦千葉に帰る予定だ。そのまま猫又家の方の親戚づきあいをしていくつもりでいる。

 

「休みたくねえって気持ちは分かる。でも、親戚づきあいは目茶苦茶大事なんだよな。これから10年20年とつきあっていくだろうし。

 つーわけでこの1週間集中していこう。……あと夏休みの課題やってあるよな?」

「「「ほぎゃあ!?」」」

 

 ……案の定翔陽と龍先輩、ノヤ先輩が悲鳴を上げた。散々やれって言われてたじゃんかよー。

 

「か、影山! 何で焦ってないんだよ! どうせやってないんだろ!!」

「お前と一緒にすんじゃねえ。終わったわ」

「はぁ!? 嘘だろ!?」

 

 残念ながら一緒にやったから終わってますー。俺が保証する。あとやっちゃんと忠も保証人だ。

 

「後輩から『○○先輩って馬鹿なんですね』って思われないようにしろよー」

「「「っ!?」」」

 

 取り繕っても無駄だと思うけどなー。もう遅いと思う。

 

「あ、明日近くで祭りやるから誰か行くかもしれないけど、羽目外しすぎるなよ」

「「「祭り!?」」」

 

 あー、そういやあるんだっけ。どうすっかな。……いやいや、明日は明治大のオープンキャンパスでしょうが。

 

 

 

 休みを使って、武田先生と烏養コーチ、飛雄の4人で東京の明治大学へとやってきた。学生数も烏野とは文字通り桁数が違うからやっぱり大きい。キャンパスも3つか4つあるはずだし、私立の大学ってすげー。

 武田先生は俺達の付き添い、烏養コーチは大学の練習風景を烏野で取り入れたいって名目だ。もちろんコネ作りって面もあると思うけど。

 そして、正門で大川さんと合流した。

 

「武田さん、烏養さん、影山君、猫又君。今日は遠いところお時間頂いてありがとう御座います。今年も気温が高い日が続きますね」

「人数多く来てしまってすみません。本日は宜しくお願い致します!」

「「「お願いします!!」」」

「はい! それでは早速体育館の方に行ってみましょう」

 

 大川さんの後をぞろぞろと歩いて行く。夏休みだって言うのにそれなりに学生がいて、制服姿が珍しいのかやっぱり注目を浴びてるような気がした。烏野は学ランだから他の学校とそこまで変わらないけど、白鳥沢のブレザーだとかなり目立ちそう。

 

「この時間を生かして軽く説明をさせて下さい。

 本校の男子バレー部は関東1部リーグに所属していて、春季リーグ、インカレ、秋季リーグで日本一を目指しています。他にも大会に参加して結果を残していますが、メインとしてはこの3つの大会で優勝できるように励んでいます。ちなみに今年の春季リーグは10校中の4位でした。

 そして、1学年7人くらいで、かける4学年なので約30人くらいでの活動ですね。全国各地から全国大会で結果を残すような学生が集まっていて、やはり練習のレベルは高いものだと自負しています。

 それでも他の大学も力を入れているので気を抜けない状態ですね」

 

 お、飛雄がソワソワし始めた。ここ4年のインハイとか春高で結果残してるような人ばっかりだもんな。気持ちは分かる。あと宇内先輩の代が丁度4年生のはず。ただ、烏野からは進学もしてない。もう少し上の代だといたはずだ。

 そして、インハイとか春高に出られるのが約50校。その中でも結果を残すような人達ばっかりだから練習のレベルは高いって想像が付く。庵里と烏野の練習のレベルが低いとは思わないけど。

 あと、烏養コーチは自重トレーニングを中心に組み立てているけど、大学生ともなると器具を使ったトレーニングも取り入れてるイメージが強い。あとでトレーニング室も見られたらいいなー。

 そうこうしてる間に目的の体育館へと到着した。やっぱりデカい。あとボールの音とか野太い声が聞えてくる。大学生だとやっぱりもう大人だ。

 

「では、観客席の方に行きましょう」

「観客席もあるんですね……!?」

「ええ、公式戦の会場になることもありますから」

 

 玄関で内履きに履き替えたら階段を登って観客席でコートを見る。コート2面でスリーメンをしていて、選手全員が絶えず動き回っている。

 

「大学生ともなるとやっぱり考える力が重要になってくるので、練習の運営は4年生が中心となって行っています。もちろん監督とコーチも口は出しますけどね」

「ウチも一応やってますよね……?」

「おう。まー、やっぱりウチとはレベルが違うな。高校と大学は全くの別物だ。ウチの連中も出来るようにしていきたいな」

「……参加しちゃ駄目ですかね?」

「今日運動着持ってきてねえだろ」

 

 くそー、全員上手だ。飛雄じゃないけど俺も混じりたい。混じれないなら見て学んで帰ろう。

そんな俺達2人の様子を見て大人3人が笑ってる。

 

「貪欲で良いですね。やっぱり見て貰って成功でした。2人ならこれから先もっと上達するでしょう。そしてゆくゆくはウチに入学して欲しいものです」

「進路についてはなんとも言えませんがこの2人なら結果を残してくれる事でしょう。僕はそう信じています。

そして、貪欲さがこの2人の良いところです。『バレーボールが上手くなりたい』って常に考えて行動してますから」

「くそー、この風景録画しても良いですか?」

「ちょっとだけですよ」

「おし!」

 

 ビデオカメラ持ってきてたもんね。

 卒業後のことはいまはまだ分からないけど、まずは烏野で結果を出さないと。あー、でもいずれはこういうレベルが高い所でバレーやりたいな。

 

 

 影山飛雄と猫又繋護の様に部活の休みを利用して澤村大地、菅原孝支、東峰旭、清水潔子と女子バレー部を引退した道宮結、佐々木千鶴、相原真緒の7人は夕方、夏祭りの会場に来ていた。

 ちなみに女性陣が浴衣を着ていて、私服ですらあまり見たことが無かった男性陣は若干ドギマギしている。

 

「何か感想は? ほれほれ、言ってみ」

「お、ああ、悪い。4人とも似合ってるぞ」

「同じく」

「お、おお……。俺達も和装してくれば良かったな」

「東峰が和装したら落ち武者とか言われそう」

 

 〝落ち武者〟と聞いて澤村大地と菅原孝支の2人が吹き出し、慌てた東峰旭が「え、なんでそんな爆笑してんの!?」とその理由を尋ねる。

 

「ゴールデンウィークの時にシャワー上がりの旭を見て西谷と日向びびってたよな」

「東京遠征でも女マネの皆とそんな風に話してたよ。『え、誰あれ怖』ってさ」

「ええっ、そんなこと言ってたの!?」

 

 完全に崩れ落ちた東峰旭を見て他の6人が大爆笑。そして、更に畳みかけていった。

 

「東峰外見と中身のギャップ激しいもんなー」

「ひげちょこもっと流行らせようぜ」

「ひげちょこ!! いいねえ」

「スガ~、相原も止めてくれよ~」

「そういう所だぞ、旭」

 

 高校生活に加えて、性別こそ違えどバレーボールという競技を楽しむ同士3年目ということもあってお互いに気心も知っている。そんな7人は全体写真を撮って、お互いに携帯電話で送りあった。

 

「……こうしてみると3人体つきガッシリしてきたね。4月と全然違う」

「コーチに『身長伸ばす為にも体重増やす為にも食べろ』って言われてるもんなー」

「気が付けば体重減ってる」

「で、『もっと喰えー』って怒られる」

「3人とも身長伸びたよね……?」

「うん、伸びてる」

 

 身体測定の数値を書いている清水潔子が頷くと、「ほえー、男子すごー」と佐々木千鶴が相づちを打っては3人の中でも一番背が低い菅原孝支と身長を比べる。

 

「後輩身長高いの多くてたまーにイヤになる。西谷じゃないけど『正座しろー!!』って」

「月島なんか190cm越えたしな」

「「「190cm!?」」」

「あの眼鏡かけてる1年? すごー」

「男子の成長凄いな」

 

 「こんなことがあった」や「あんなことがあった」などと夏休み中に起きたことを話しながら歩いていると、色んな料理の匂いで遂に腹の音が聞こえてきた。

 

「……悪い、腹減ったから適当に買って良いか?」

「うん、もちろん。屋台楽しみにしてたからお昼ちょっと少なめにしてたんだ」

「ちゃんと食べろよ」

「男子と同じ量食べたら太る一方だから!」

 

 「浴衣着るためにちょっとダイエットしてたんだし……」と道宮結が続けても、周りの喧騒に飲まれて聞えなかったらしく、「道宮悪い、何か言ったか? もう1回言ってくれ。聞えなかったわ」と澤村大地が聞き直した。

 

「ううん! 何でも無い! あ、ほら! 焼きおにぎりどう?」

「「「食ーべるーっ!」」」

「花火の時間までに適当に買ってこう」

「「「おー!」」」

 

 19時から打ち上げ花火の予定で、夜が近付くにつれてだんだんと祭りに来る人の量も増えてくる。早めに屋台で料理を買わないと身動きが取れなくなりそうだ。

 

「何食べようかな。フランクフルト、焼きイカ、焼きそば、からあげ……。目に入る物全部食べたくなるな」

「肉、肉食いたい!」

「運動部の男子3人いるから生半可な量じゃ足りないよね。ってことで色々買うぞー」

「男バレ頑張れって激励会も兼ねてね」

 

 男性陣3人が女性陣4人にお礼を伝えると、7人は焼きおにぎりや焼きそば、イカ焼きなどの料理を求めて歩きだした。

そして、7人は屋台巡りを始めていく。

 

 

 東峰旭が「へいそこ兄ちゃん。ビールどうだい?」と社会人に間違えられて落ち込んだり、かき氷を食べてシロップの影響で変色した舌を比べたりと楽しみながら屋台を回っていると、遂に花火が打ち上がる時間が近づいてきた。

 7人はなるべく人気の少ないところに移動してその時を待つ。

 

「ほら、旭。いつものやれ」

「……? おお、やれ今こそその時だろ。キャプテン命令だ。やれ」

「何の話だよ!?」

「インハイ予選当日にやってた『これで夏も終わりなんだな……』とか『高校生活最後の夏祭りなんだな……』みたいなのだよ」

「あ~、確かに東峰なら言いそう」

「いやいやいや。また来れば良いじゃん。夏祭りは毎年あるんだしさ」

 

 東峰旭が珍しく前向きな発言をして、6人は思わず固まる。そして、そんな6人を見た東峰旭は更に固まった。しかし、いの一番に菅原孝支が復活する。

 

「……まさか旭が良いこと言うなんて」

「全くだ」

「えぇー、何だよその言い草」

「日頃の行いだな」

「ああ。このひげちょこめ!」

「だからそれ辞めろって!」

 

 男性陣がじゃれ合い始めたら、時間となって花火が上がり始めた。赤、黄色、青、紫、白……色んな色の打ち上げ花火が上がっては消えていく。

 

「たーまやー!」

「かーぎやー!」

 

 花火が打ち上がる度にかげ声を上げて、7人は花火を楽しんでいく。

 

「東峰の言うとおりだよ! 卒業してもたまーに遊ぼう! お盆とか新年とかさ!」

「むしろ東峰が上京したら宮城に帰って来なさそうだよね」

「いやいやいや。戻ってくるし。東京から宮城まで新幹線で2時間くらいだよ? そんな離れた気がしないじゃんか。

逆に『いつでも帰れるからー』って言いそうじゃん、佐々木とかさ」

「「「……確かに」」」

 

 東峰旭、道宮結、佐々木千鶴の3人は卒業したら上京する予定でいて、他4人は宮城に残る予定である。しかし、進学先の都合によっては家を出る可能性が高く、東峰旭の言うとおり「いつでも帰れるから帰らなーい」が起こる可能性が高いことに思い当たった。

 

「ま、まあ、先のことなんか分からないし! 私達の夏はまだ終わらなーい!!」

「そうだー!!」

「「「オォーッ!!」」」

 

 花火大会はまだまだ続く。

 

 

 休み明けから練習続き。お盆休みまで残り3日だ。

 今日の部活が終わって部室で着替えているとスマホの通知に気が付いた。どうやらケビン達からメッセージがあるっぽい。

 ……。

 …………。

 マジぃ? 関東大会優勝? 全国出場決まった? やったじゃん。賞状とトロフィー抱えてる全体写真も送られてきてた。おおー。いいねー。

 

「どした? ねこ」

 

 俺が驚いた声を聞いた久志先輩からそう聞かれて、「ウチの中学全国出場決まったみたいです」って答えると、「マジかよ!?」って龍先輩とかノヤ先輩が食いついてきた。

 どれどれー? って見に来た皆にスマホの画面を見せて写真を見せる。

 

「やべー!!」「【祝! 関東大会優勝!】だって!!」「スゲー!!」

 

 ふふーん。俺の後輩やるでしょー?

 

「……なんか皆強そう。身長高そう。ひえっ」

「あどけない顔してる割に身体ゴツいな」

「なんだっけ。ピカチューとゴウリキを合体させた奴みたい」

「いやあれとは違うだろ!」

 

 ピカチューって何だっけ。ゴウリキさんってどなた? 俺ポケモン知らないんだよなー。

 

「影山の中学はどんなだったんだよ」

「俺が知ってると思うか?」

「お前の中学だろ!?」

 

 こっちはこっちでドライだし。ま、それぞれ特色があるよねってことで万事OK。

 

 

 

 本来なら春高一次予選1日目。でも俺達は一次予選免除だから、中総体の地方大会が終わったこのタイミングで2回目の部活説明会を行った。

 前回と同じような流れでやって、今日も15人くらいの中学生と保護者の皆様が説明会に来た。

 俺達の代は5人、力先輩達の代は最初8人入部したって言ってて、特に結果を残していないにもかかわらず5人くらいは入部するとなると、来年は10人くらい入部してもおかしくない。

 ま、来年にならないと分からないけど。どうなることやら。

 そして。

 

「よっ」

「…………っ!」「明光君……!」

「そんな顔すんなよ~。俺だってOBなんだから。バレーやろうぜ」

 

 今現在体育館はお盆休みで帰省したOBで凄いことになっている。下は20前半、上は50? 60位のおっちゃんおばちゃんがいて、いつもとはあり得ない様子で若干人酔いしそう。数えてないけど50人はかたい、祖父ちゃんも体育館に来てはOBの皆さんと話してるし。

 そう、これからOBとの交流戦だ。

 祖父ちゃんが今年になってOB会を再起動させて色々とやってくれてるらしい。その中で「現役生頑張れー」って言うのと足りない練習試合を補ってくれる日となってる。お盆だからこっちの方に戻ってきてる人も多いだろうし。

 俺も知ってるOBから「おー、繋護でっかくなったなー」とか「……猫又先生そっくりじゃねえか!」とか色々言われては懐かしい気持ちでいっぱいだ。

 集合がかかって、武田先生が前で話し始めた。

 

「皆さんこんにちは!

 今年度から男子バレー部顧問になりました武田一鉄と申します。OBの皆様、本日はお忙しい中お集まり頂き誠にありがとう御座います。

 これから先OBの皆様のお力を借りたいと思っており、その為にも今の烏野がどのような状況なのかを知ってもらいたく、烏養先生にお願いして今日お集まり頂きました。本当にありがとう御座います!

 一度は途切れてしまった烏野高校の強さを伝授させて頂こうと思っております。どうか宜しくお願い致します!

 ……烏養先生、一言お願いしても宜しいでしょうか」

 

 場を渡された烏養元監督が武田先生の隣に立って話し始めた。ちなみに烏養コーチはすんげえ不服そうな顔して烏養元監督に睨まれた。ちなみにOBの皆様は返事の代わりに拍手をして応えてる。

 

「えーっと。以前烏野のバレー部を見ていた烏養一繋です。本日は現役生だけでなく多くの卒業生の方々に来て頂き誠にありがとうございます。

 出鼻をくじくようで申し訳ありませんが、まずは謝罪をさせて下さい。

 私がしっかりと後身を考えていなかったので、ここ数年の烏野の活動がほとんど成り立っていませんでした。申し訳ない」

 

 ここで、烏養元監督が長く頭を下げた。まあね、引き継ぎちゃんとやってたらもうちょっとマシだったよね。それはもうしょうが無い。

 

「ただ、今年から武田先生と孫の繋心の2人の新体制となって、烏野はまた全国を目指せるチームになりつつあります。これから先烏野が何度も全国出場、そして優勝できるように卒業生の皆様のお力を借りられれば幸いです。

 こんな感じでいいですかね。武田先生、ありがとう御座いました」

「こちらこそありがとう御座います! ……烏養君も一言良いですか?」

 

 烏養コーチは「あー、分かった。うん」だの言いながら、武田先生の隣まで歩いてきて話し始める。

 

「皆様こんにちは。今年から烏野高校男子バレー部コーチを務めています烏養繋心です。本日はこうして集まって下さり、誠にありがとう御座います。

 全国制覇を目標に活動していますが、練習試合の相手だったり遠征費だったり……、あらゆるものが全然足りていません。武田先生と私だけではなかなか手が回らないことが多いです。

 OBの皆様からサポートして頂けるよう我々も励んでいきますので、どうか応援よろしくお願いいたします」

 

 一呼吸置いて、烏養コーチが「それでは、アップを取ってから時間までひたすら練習試合をしていきましょう。半日ですが宜しくお願いします!!」って続けて返事を返す。

 OBとの交流戦が始まる。

 現役生は入口側、OBはステージ側に別れて身体を動かしていく。と言っても、この時間はOBの為の時間だ。……んえ?

 

「繋護ー!」

「「頑張れー!」」「お兄ちゃーん!! ガンバー!」

 

 姉ちゃん、美緒、彩音ちゃん、父さん母さん祖母ちゃんも体育館の外で応援……応援? に来てた。取り敢えず手振っとこ。あ、若林先生もいたのか。

 よーし、頑張っていきますぞー。

 

 

 OBの皆さんが準備したら後は試合形式だ。

 4セットやって【26-24】、【23-25】、【28-26】、【26-24】で3勝1敗。誠兄ちゃんとか祐輔兄ちゃんみたいに烏野町内会メンバーもいたからOBは代わる代わる交代して試合に出て、お見合いすると烏養元監督から「なんだ今のプレーは!!」ってどやされてた。

 時間が来たからまた最初みたいに集合して烏養コーチが口を開く。楽しかった時間はあっちゅーまに終わっちゃう。

 

「OBの皆様。本日は誠にありがとう御座いました。部員数だったり他校との伝手の関係で違うメンバーとの試合形式というものがなかなかできていなかったので、とても助かりました。

 今後もOB会を通して練習の日程をお知らせしたり、OBの皆様との練習試合の申し込みをしますので、今後の烏野が全国制覇できるように力をお貸し頂けると幸いです。

 明日はお盆前最後の練習で、試合形式の練習も行っていきたいのでお手隙の際は練習試合の相手をして下さい。どうか応援宜しくお願いします」

 

 そして武田先生も続く。

 

「OBの皆様! 本日はお時間頂き誠にありがとう御座いました!

 私自身がバレーボール未経験で、烏養君や部員達に負担を掛けてしまっているのが現状です。全国制覇をするために、OBの皆様のお力をお借りしたい所存です。

 これからも現役生を応援して頂けると幸いで御座います。どうか宜しくお願いします!」

 

 武田先生が一礼すると、OBの皆様は拍手で応えた。続いて烏養元監督。

 

「現役生、卒業生共にお疲れさん。

 OB会ではなかなか今の烏野を伝える事が出来なかったが、今日を通してなかなかやるチームだっていうのは分かって貰えたと思う。が、まだまだ足りてねえ。

 今の烏野、そしてこれからの烏野が全国制覇をできるように卒業生の力を貸して欲しい。宜しく頼む」

 

 烏養元監督が一礼して、また烏養コーチへ。

 

「それでは、クールダウンをして体育館を片付けていきます。現役生がやるので、OBの皆さんは各自自分の事をして下さい。澤村」

「はい! 気を付けー! 礼!!」

「「「ありがとう御座いました!!」」」

 

 OBの皆さん明日も来てほしいなー。やっぱり社会人だとパワーが違うんだよなー。お願いしまーす。

 

 

 ミーティングを終えて家に帰って来た。お風呂に直行して汗を流したらご飯を食べて、夏の思い出ってことで和装して手持ち花火だ。大人組は晩酌中。

 

「おー、綺麗ー!」

「花火大会も良いけど、こういう花火も好きー」

「ねー」

 

 中身の無い会話を続けながら家の庭で手持ち花火で遊んでるけど、まー楽しい。3月までは実家だったからいつもこんな感じだったし。……まあ洗面所とかトイレの争奪戦は少なくなかったけど。

 

「ペンライト持って踊る人達いたよね。繋護やってみ」

「えー」

 

 彩音ちゃんの指示で手持ち花火を両手に持って踊ることになった。いや踊れと言われてもさ、まあいいや。何やろーかなー。

 手持ち花火をロウソクに近付けて火の元が移ったら燃え移らないように離れたところに立って踊り出す。姉ちゃん達スマホ構えてるし。

 手に持ってる花火が終わるまで適当な振り付けを即興でやった。

 

「これでいい?」

「良いよ。後で送る」

「美緒もやりなよ」

「浴衣着て激しい踊りしたくないよー」

 

 そりゃそうだ。……キュウリ食べよ。冷えたキュウリがすげー美味しいのよ。味噌付けても美味しい。体温下げる効果もあるから夏にピッタリだ。

 

「はい、繋護」

「ありがと」

 

 祖母ちゃんからキュウリを受け取って口元へ。……あー、美味ー。

 こうしてると、冷えたキュウリを囓る音、花火が燃える音、カエルとかアブラ蝉を始めとする蝉の合唱。それでいて蜩とか鈴虫みたいな秋の虫の合唱が混ざっていて夏も終わりに近付いて来てるのを実感する。夏もだんだん涼しくなってきた。そんであと2週間で夏休みが終わる。

 

「邪魔するぞー」

「あ、繋心君じゃん」

「ほれ」

「わーい、ありがとー」

 

 家での用事が終わったのか、繋心兄ちゃんもやってきた。どうせ晩酌に交ざる気だろう。まあいいか。

 追加の花火を持ってきてくれたらしく、美緒が受け取っては喜んでる。あ、スイカも美味しい。

 

「繋心君花火ありがとう」

「おー。まあ酒だけ持っていくのもなんだしよ」

「飲んべえだ!!」

「休みの時だけな。流石に【コーチ! 酔っ払ったまま指導か!?】なんて新聞に載りたくねえし」

「ちゃんとやってるんだね。コーチ楽しい?」

「まー、結構やりがいはあるな。指導者ってこんな感じなのかって実感してるよ」

「学校の先生になれば良いじゃん」

「武田センセを見てると学校の先生はいいかな。メンドクセエが勝つ。バレーだけの指導だけしたいけど無理だろ」

「そっかー」

 

 繋心兄ちゃん、姉ちゃん、美緒、彩音ちゃんの会話が聞えてきて、ふと進路の問題が頭を過ぎった。全然分からない。ホントどうすっかねえ。

 

「繋心君も一杯どうだい? 今日持ってきたんだ」

「あ、おじさん頂きます。……あ! 良い奴じゃん!」

「おめーにはちょいと早いかもな」

「俺にも飲ませろジジイ!」

 

 早速お酒薦められてるよ。あと4年で俺もあの一員に加わるのか。アル中にならないように気を付けよう。バレー現役中はなるべくお酒飲みたくないけどどうなるかな。

 お、姉ちゃんが新しい手持ち花火を持ってきた。俺に差し出してくる。

 

「ほーら、繋護もやるよ。かなりの量あるんだから」

「買いすぎでしょ」

「セールだったからいいかなって」

「にしても量考えなよ」

「だってお祖父ちゃんお祖母ちゃんも買って来てくれるだなんて思わなかったし。繋心君が持ってきてくれた分も考えると凄いことになっちゃった」

 

 子供4人でやるには多すぎるよな、この量。ま、全部使わなくてもいいし。猫の方の祖父ちゃん家でやってもいい。……多分親戚中で同じ事考えるだろうけど。

 よーし、花火やるぞー。

 

 

 その後は父さん母さん、祖父ちゃん祖母ちゃん、繋心兄ちゃん達も花火に混じったり、一緒に写真を撮ったり、ポッキーの代わりにキュウリを使ったポッキーゲームで彩音ちゃんにキスされたり、……そんなことをしているとあっという間に時間が過ぎた。

 締めの線香花火耐久レース。後は祖母ちゃんと美緒だけだ。

 

「うわー、すご。今どのくらい?」

「2分ちょい?」

「ギネスまでもうすぐじゃん」

「……相変らず母さんは長いねー」

「まだまだ若い者には負けないよー」

 

 祖母ちゃんのその言葉通り、1番長く持ったのは祖母ちゃんだった。

 

「はい、私の勝ちー」

「負けたー!!」

「お祖母ちゃん凄い!」

「今度は繋至と繋介の所も一緒に出来ると良いな」

「いっその事お義父さん達にも声かけましょうよ」

「猫又のジジイもかよ!?」

「それなら姉さん達にも声かけますね」

「大分大所帯だなー」

 

 烏の方の親戚と猫の方の親戚だけでも25人を超える。どこで集まるんだって話だよ。

 猫の方の祖父ちゃん祖母ちゃんに今日の写真を送っていた美緒が「猫のお祖父ちゃんから。【今度はこっちでもやろうな。花火買って待ってる】だってさ」って言いながらスマホの画面を見せてきた。

 

「【お盆楽しみー!!】って返しといて」

「お兄ちゃんも行くんでしょ?」

「そのつもり。明日の夜? 明後日の朝? 帰省だ」

 

 約5ヶ月ぶりの実家だ。俺の部屋はどうなってることやら。

 

「俺も行くからな~」

「祖父ちゃんも?」

「おう。親戚づきあいだな」

 

 絶対そんなこと思ってないよね。でもそっか、祖父ちゃんも一緒なのか。やったね。

 まずは明日の練習やりきって実家に帰ろう。

 

 

 

 午前中は基礎練習、午後はOBとの試合形式をしてお盆前の練習は終わった。部員だけでミーティングをする。

 あと、全日本女子バレーがロンドンオリンピックで銅メダルを獲ったから「負けてられねえ! うおりゃぁ!!」ってムードになった。

 

「これでお盆前の練習は終わりだ。休み続くけどなるべく各自でトレーニングやっとけよ。休み明け動けねーってならないようにな。次の練習は17日からだ、忘れるなよー」

「「「はい!」」」

 

 続いて武田先生。

 

「お盆休みもバレーボールをしたいって皆の気持ちも分かりますが、学校のルールなので守って下さい。

 そして、25、26日には東京遠征を控えていますが、同時に来週から学校も始まり体育祭や文化祭などの行事も挟んでしまって練習する時間も減ってしまいます。1分1秒でも無駄にしないよう取り組んでいきましょう」

「「「はい!」」」

「全員分かってると思うけど授業が始まればただでさえ短い時間がもっと短くなる。2ヶ月なんて一瞬だ。10月なんてあっという間に来るぞ。ってことを忘れないようにな」

「「「はい!」」」

 

 このチームでバレーを出来るのも最大で半年か。時間の流れって早いな。なんかまだ4月とかそこら辺のイメージだ。

 

「じゃあクールダウンと体育館の片付けやって終わろう。始めていけー」

「「「オォーッス」」」

 

 まずはクールダウンからだ。おーし。

 

「皆お盆どうすんの?」

「俺は墓参りかな。姉も帰ってくるはず」「俺は千葉に帰る」「僕は親戚で集まる予定」「同じく」「私もかなー」

 

 翔陽からそう聞かれて、飛雄、俺、蛍、忠、やっちゃんって感じ。まー、お盆だから保護者の言いなりでしょ。

 

「あー、やっぱ皆そうかー。パスとか出来たらって思ったんだけど」

「現時点ではなんとも言えないなー。昨年の流れだったら割と暇してたけど。時間あったらやろうぜ、俺も動いておきたい」

「マジ!? よっしゃ!!」

 

 翔陽と忠は元気だなー。

 

「父さん母さんに予定聞いて、分かったら返事する」「……僕も」

「おー! 影山と月島もか!!」

 

 蛍なんか外出たくないーって感じなのにな。やる気があるようで何よりです。

 

「繋護さん!」

「……何?」

「お土産宜しくお願いシャス!!」

「金寄越せや」

 

 落花生とビワ関係で良いのあったかな。気温高くてチルド使わないと傷むしな。どうしよ、何が良いかなー?

 

「俺も横浜県行ってみてえ!」

「……日向は勉強した方が良いんじゃない? 横浜県って何処だよ」

「え? 関東地方にあるだろ?」

 

 この下り前もやったな。あーあ、翔陽は留年するんだろうな。可哀想に。…………あれ、翔陽ってもしかして。

 

「翔陽」

「何?」

「宮城県の県庁所在地ってどこ?」

「……ケンチョーショザイチって何?」

「「「……」」」

 

 やっぱり。こーりゃ留年確定だな。さよーならー。じゃあな後輩。

 

「君はまず勉強しな。夏休み終わったらまたテスト前にギャーギャー騒ぐんだから」

「俺ですら仙台って知ってるぞ。ベンキョーしろ日向」

「……ショーヨーってよく高校入れたね」

「えっ、そんなやばいのケンチョーショザイチ!?」

「「「うん」」」

 

 OBの皆さんが「あの10番勉強してんのか?」って烏養コーチに聞くくらいには。

 何はともあれ、お盆楽しむぞー。




【登場人物まとめ】
山本徹 蜂谷農業高校男子バレー部の監督
高橋秀人 コーチ

三浦翔 蝶山興業高校男子バレー部の監督
菊地健太郎 コーチ

青木祐一 蜻蛉商業高校男子バレー部の監督
磯部大介 コーチ
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