猫又家5人と祖父ちゃん祖母ちゃん、彩音ちゃんの8人で仙台から東京までの新幹線の始発に乗って懐かしの我が家へ到着。外見は何にも変わってないな。……変わってたらあれか。
彩音ちゃんは一旦家に帰っていった。とは言っても5分でいけるからそんな離れてる実感が無い。3月まではこれが普通だったんだよなー。
「はい、お義父さんお義母さんいらっしゃい。美繋と繋護もお帰り」
「おう。お邪魔します」「お邪魔します、宜しくね~」「「ただいま~」」
朝だから多少マシかと思ってたけど、やっぱり千葉は暑い。シャワー浴びたい。……あー、ランニングしてこよう。
「公園行っていつものコース走ってこようかな。今日縄跳びやってないし」
「そう? まあ比較的マシな朝の方が良いかもね。準備したらいってらっしゃい」
「ん」
ということでランニングできる格好に着替えてこよう。まずは俺の部屋ー。玄関入って靴脱いだら階段登ってはい到着。彩音ちゃんが泊まるって言ってたからなんとなく手が加えられてる。
宮城から持ってきた鞄から運動着、サポーター、シューズ、ウエストポーチ……ランニングに使う道具を取り出して運動着に着替えていく。……お盆中に部屋掃除するかな。埃っぽくは無いけど一応やっとこう。
準備が終わったら小さめのリュックとシャワー後の着替えを持って台所に。着替えは玄関でいいや。
「ほれ、怪我すんなよ」
「うん、ありがとう」
祖父ちゃんからスポーツドリンクを受け取ってさあ出発。
「2時間くらいで戻ってくる」
「確認しまーす。
帽子、サングラス、ランニングウォッチ、サポーター、タオル、スマホ、お金、ティッシュ、自転車の鍵……うん、大丈夫そうね。いってらっしゃい」
「んー」
「お兄ちゃんいってら」
「帰ったらシャワー浴びるから。それまでに入っててよ」
「お兄ちゃんが帰ってくるまでには入ってるから大丈夫」
トイレとかお風呂とかバッタリ遭遇しないように気を付けないと。ってことで行ってきまーす。誰かに逢わないかなー。
ランニングを終えて家に帰ってきた。ひー、やっぱり砂浜コースはきっついなー。早くシャワー浴びて砂落としたい。
「あ、繋護お帰り。お昼ご飯食べたら猫の方のお祖父ちゃん家行くよ。早くシャワー浴びちゃいな」
「んー」
アイス食べてる姉ちゃんと鉢合わせてそんなことを言われる。……ていうか、そのアイス良いやつじゃん。
「ちょっと頂戴」
「繋護の分冷蔵庫にあるからそっち食べなさいよ」
「あ、そうなの? 分かった。サンクス」
「んー」
返事をするときに「んー」って言う癖があるって所は姉ちゃんと美緒とも似てるらしい。祖母ちゃん2人ともがそう言ってた。
ま、いいや。シャワー浴びてこよ。
シャワーを浴びたらお昼ご飯を食べて、ちょっと食休みをしたから今度は車で猫の方の祖父ちゃん家に行く。俺がこっちに戻ってきたーってことで彩音ちゃん家の皆がお見送りに来てくれた。
彩音ちゃんのお父さんの慎吾さん、お母さんの咲良さん、彩音ちゃんの3つ上の彩歌ちゃん、最後に彩音ちゃんだ。
父さんの学生時代からの友達ってことで、産まれたときからずっとお世話になってる。
「繋護、身長伸びたね~。半年会わなかっただけですっごく成長してる」
「分かる? 170cm越えたよ」
「目指せ180cmだな」
「うん。慎吾さんも抜かしたい」
「そのうち抜かされそうだな。まだまだ抜かされるわけにはいかないけど」
「ふっふーん。いつか抜かすよ」
慎吾さんは181cmとかって言ってたからそこまで伸びて欲しい。いや、ホント。せめて175cm……!
「烏養さんもいつも娘がお世話になってます~」
「いえいえ。孫がもう1人できたみたいで主人と一緒に彩音ちゃんが遊びに来るのを楽しみにしてます。こっちの方に比べてなーんも無いけど遊びに来て下さい。もし仙台の方に来る事があればまた家族でどうぞ」
「ええ、是非伺わせて頂きます」
父さん、姉ちゃん美緒はいつも話せてるからそこそこ。でも祖父ちゃん祖母ちゃん、母さん、俺か久々だから話してるって感じだ。すっかり仲良し!
車の準備も終わったことだし、そろそろ出発するみたいだ。俺達は車に乗り込んでいって、そのまま込田家の皆に見送って貰う。いってきまーす。
高速道路で約1時間強。猫の方の祖父ちゃん家に到着した。音駒もお盆休みに入ったらしくて祖父ちゃん祖母ちゃんに出迎えられる。
「お祖父ちゃーん! お祖母ちゃーん!」
「おお、良く来たな」「皆、いらっしゃい」
「猫又も文代さんも世話になるな」
「おう、烏養も典子さんも遠路はるばる良く来てくれたな。何にも無いけどゆっくりしてってくれ」
「学生の時はこうなるなんて思わなかった」なんて2人共よく言ってるけど、なんだかんだで楽しそうにしてる。なおさら父さんと母さんの結婚する時の話もっと詳しく聞かせて貰いたいな。皆「面白かった」って言ってんだよな~。何があったんだよ。
「姉さん達は?」
「『明育達が来るなら行こっかなー』らしいわよ。顔見せに来るんじゃない?」
「賑やかになるな」
「本当よ」
猫の方の祖母ちゃんと父さんの会話を聞きつつ、荷物を車から出していく。そっか。おばさん達も来るかもしれないんだ。ま、お盆だし。
「繋護ー、持ってって」「お兄ちゃーん、お願い」
「……あーい」
姉妹がいるとこういうときパシらされるよな。けっ。
ちょっと落ち着いたら女性陣は父さんという名のアッシーを使ってどこか出かけていった。買い出しとかかな。
残された俺と祖父ちゃん2人一緒にバレー談義をする。ロンドンオリンピックとかね。
「宮城は春高一次予選が終わったか」
「ああ。1年で2mがいたらしい」
「ほぉー、そりゃあ来年再来年が楽しみだな」
「将来は全日本代表かもな」
角川学園って所に2mがいたとかなんとか。当たりたくないけどいずれは当たりそー。同じ1年であと2年対戦する機会はあるし。その時はその時だ。負けん。
「あ、音駒って部活説明会とかやったの?」
「ん? おお。都内の公立だとウチは結構人集まる方だからな。結果残せば来年も人入ってくるだろ」
「烏野、来年どのくらい入部してくんだろ」
「特に結果残して無くても8人くらいは入ってきてるから15人とかいくんじゃねえかな」
「その時にならないと分からないな。県だけか。全国進出か。全国ベスト4でも変わってくるしよ」
「だね」
人数が多くなったとしてもユニフォーム着て試合に出られるように頑張っていかないと。但し怪我はしないように。
「それにしても、烏野は面白いな」
「……そう?」
「ああ、烏養や繋心、武田先生の力もあるがゴールデンウィークのチームとは全く別物だ。末恐ろしいな」
「こりゃウチが勝つ日も近いだろうよ」
「まだまだひよっこには負けんよ」
あー、ゴミ捨て場の決戦楽しみだな。バチバチしてるー。
日が落ちてきて、日中よりは気温も落ち着いてきたから祖父ちゃん達と一緒にパス練とランニング、加えて縄跳び。
……おや? あのモヒカン、見覚えがあるぞ。美緒と同じくらいの女の子と一緒にエコ袋を持ってる。多分買いものだ。びっくりさせてやろ。
「山本先輩!」
「ん? ……おお、繋護! ……いやなんでいんだ? ここ東京だよな」
「お盆で祖父ちゃん家に遊びに来ました」
「なるほどな! ……にしても、すんげえ違和感」
「ですね」
こんな街中で会うとか宝くじで当たるくらいの確率じゃない?
あるあるだけど、普段は学校で会ってる人が違う場所で会うと違和感感じるよねって話だ。おっと、いけない。俺のことをポケッと見てくる女の子を忘れてた。山本先輩に似てる。
「こんにちは、猫又繋護です。山本先輩の妹さんですか?」
「おう、よく分かったな」
「失礼ですけど、山本先輩が緊張せずに女の子と一緒に帰れるとは思えません。やっちゃんとも話せてないですし。となるとお盆だから親戚だろうなーって。慣れ具合からいって妹かな? って」
「……嫌な信頼のされ方だな」
女子マネージャーの勧誘を失敗した話を聞いたらそんな風に思うよね。山本先輩の妹さんも山本先輩のそんな姿を容易く想像できたようだ。
「まあ、お兄ちゃんなら無理だよね。彼女どころか女友達もいなさそう。って言うかクラスの女子と話したことある?」
「おう。挨拶くらいは俺だってしてるぞ」
「他には?」
「……『今日は晴れてるな』とか?」
「お母さん。山本家は断絶しそうです。ごめんね」
「おいあかね! 俺だってなんとかなるっての! ……多分」
多分かーい!!
というか、山本兄妹のコント面白えー。龍先輩とノヤ先輩の友達だけあるわ。波長が一緒。ウケる。
「……あ。ほらあかね。お前も自己紹介しとけよ」
「あ、ごめんなさい。
音駒中2年の山本あかねです。再来年に音駒高校に進学する予定です。あと兄がいつもお世話になってます!」
「烏野高校1年の猫又繋護です。山本先輩とは今年のゴールデンウィークからバレーやるようになりました。
2つ違いだから俺が高3の時の1年生ってことか。合宿で会うようになるのかな? その時は宜しく。
……マネ候補いましたね」
「いやー、学校でも部活でも顔会わせるってちょっとなー」
「それは私の台詞ですぅー!!」
まーた始まったよ。毎回こうなるとしんどいか? 姉ちゃんも美緒もあんまり言い合いになることないからな。分からん。そもそも被らないか。
「仲いいんですね」
「良くねえ!」「良くないです!!」
いや良いじゃん。ウソつくなよ。
一頻りワイワイやったら、山本ちゃんが「今から音駒に転校しませんか?」って誘われた。ここでもかよ。
「庵里と言えば千葉県の中学の男子バレーの強豪じゃないですか。全国にもいってますし。
猫又さんが庵里に入学したって聞いて、音駒に来るのかなーって思ったらなんと宮城県の烏野高校!? そこは音駒でしょー!! って今も思ってます」
「それな。今から連れてくか」
「音駒が私立ならね、その可能性は十分あったんですけどー。やっぱり血縁関係から指導されたくてその高校選びましたって言うのはあんまり良くないっぽいんですよ。公立だとなおさら。
祖父ちゃんも『そうなったら俺は引退だな』って言ってましたし。そんな訳なので諦めて下さい」
「ま、そういうこった。
あとどうしても『猫又監督の孫だから』とか『猫又監督の孫なのに』って問題は出るだろうって黒尾さん達が話してたからな。リエーフとかデリカシー無いし」
「~~~~っ!! 音駒が私立なら良かったのに!」
私立の方が設備やらは充実してたよなー。ま、無い物ねだりは良くない。
それに、2人の祖父ちゃんが監督現役だったら井闥山に進学してただろうし。そういう〝もしも……〟は意味ないと思う。
「いつまでこっちいんだ?」
「17日から練習始まるので、16日には帰ると思います」
「そうか。明日もランニングとかやんのか?」
「ええ、朝と夕方に」
「じゃあ、一緒にやろうぜ」
まさかのお誘い。1人でやっててもアレだし。いいね、その誘い受けよう。でも。
「……朝6時とかですよ?」
「おう。日中は外出られねえしな」
「じゃあ適当に集合しましょ」
「おう。あそこの公園周りだろ?」
「はい」
「オッケーオッケー。じゃあ明日の朝な」「猫又さんまた今度!」
「はーい!」
そのまま山本兄妹と別れて祖父ちゃん家まで走り出す。……明日になったら人の数増えてそうだな。出発は5時40分くらいか。おーし。
ご近所さん楽しそうだなーって帰ってきたら、その楽しそうな集団はまさかのウチでした。バーベキューの準備をしているらしく良い匂いもする。どうやら葵育おばさんと育音おばさん、悠花ちゃん凛花ちゃんも遊びに来てたらしい。あ、良い匂い。しかもお腹鳴った。
「お、繋護じゃんお帰り」
「ただいま、葵育おばさん」
「バーベキューやるからシャワー浴びてきな」
「はーい」
まずはシャワー浴びたい。どうせ汗かくけどー。それでもね。
「良樹君と良規君は?」
「明日来るかもってさ」
「そっか」
「ほら、冷えるよ。シャワー浴びてきな」
「んー」
あとでお風呂入ることになるだろうから軽くでいいや。いってこよ。
シャワーを浴びてすっきり! 戻ってきたときにはバーベキューが始まってた。「あ、繋護じゃん。おつー」って早速悠花ちゃん凛花ちゃんに絡まれる。
「銀メダルおめでとう。2人とも」
「金じゃないと意味ないし!!」「あと少しで勝てたのに!!」
ある程度時間経ってるからもう受け入れてるのかなーって思ったけど、そうでも無かったらしい。紙皿の上の料理がどんどん2人の口元に吸い込まれていく。
「……そんな食べて良いの?」
「今日も動いてきたから良いの良いの。次の試合までちょっと空くし」「そうだー。ほら、繋護も食べろー。身長伸びないぞー」
「あーい」
俺もたーべよ。……何かするわけでもなくおばさんが料理で山盛りになってる丼と箸を渡してくれて食べ始める。あー、美味しい。
「あ、そうだ。真緒と美緒には進学祝い渡したんだけど、4月から会えてなかったからさ。繋護なんか欲しいのある? オリンピックで稼いだからお金有るよ」
「インタビュー料もガッポガッポだし」
「自分達で使いなよ!」
この2人何渡してくるつもりだよ。5万10万の何かを渡されても困るだけだわ。
バレーシューズ、ジャージ、サポーター、スリーブ類、テーピング……ぱっと思いつくものを考えてみるけど「これが絶対に欲しい!」って思うものは特に無い。
「……今パッとは出てこないかな」
「繋護、私達に似て物欲ないもんね」「何かあったら言ってよ。……あ、体育館は?」
「どこに建てるの!?」
体育館。……体育館か。欲しいと言えば欲しいけど。この2人に言ったら本当に体育館くれそうだから辞めとこ。
「ま、考えといてー」「お、丼の中減ってきたね。追加取ってきまーす」
凛花ちゃんがまた丼に料理を取り分けてくれた。……やべえ、太る。あとで筋トレもしないと。
◇
バーベキューを終えて、羽染葵育と下園育音、双子の下園悠花と下園凛花は下園家へと帰っていき、猫又家に残った一同も入浴や就寝準備を済ませて横になっていた。
その一方で、猫又育史と烏養一繋は晩酌を始める。
「乾杯」
「おう、乾杯」
テーブルに着いた2人は焼酎グラスを軽くぶつけてグラスを煽りその味を堪能した。
「く~~。やっぱり宮城の焼酎は美味いなぁ! 東京は何でも揃いやすいけど、こういう情緒が足りねえや」
「案外宮城も捨てたもんじゃねえだろ」
「寒いけどな」
「違いねえ」
2人は猫又美繋が用意した冷ややっこや枝豆、キュウリなどの酒のつまみを口に運びながら焼酎を飲む手も進めていく。2人の手は止まることが無い。
「今年こそゴミ捨て場の決戦やるぞ」
「それ毎回言ってるけどな。つーかお前監督引退してるじゃねえか」
「良いんだよ。繋心と繋護がボコボコにしてやる」
「ウチだって負けねえよ。……と言いたいところだけど負けてもおかしくねえ。繋心のやつ指導者として優秀だな。直井にも見習わせないと」
「葵育と育音の協力あってこそだ。そうでもなかったら今だってフラフラしてるだろうよ」
「バイク乗り回してる様子が目に浮かぶな」
「だろ?」
夜は更に更けていく。
◇
……ん。ここどこだ? 見覚えのあるようでない天井に一瞬焦っては、今猫の方の祖父ちゃん家に来てることを思い出す。
時間は……? 5時半前か。良し、ランニングしてこよ。山本先輩との待ち合わせに遅れないようにしないと。ってことでまずは身支度だ。その前に水飲んでこよー。
皆を起こさないように布団から抜け出てまず台所に向かう。コップに水を注いでゴクリ。うん、美味しい。昨日作ったスポドリも持っていかなきゃ。
トイレに行ってから寝てた部屋に戻ってストレッチ。そっから着替えてランニングに必要なものをリュックに入れて担ぐ。
「おはよう繋護、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます。帰りは7時半位だと思う」
「何かあったら連絡してね」
「うん」
猫の方の祖母ちゃんに見送られてさあ出発。
猫の祖父ちゃん祖母ちゃん家から走って行って、山本先輩との合流場所に向かうと山本先輩の他にも黒尾先輩と海先輩、犬岡、芝山がいた。皆朝早いな。
「おはよう御座います」
「おっ、来たか」「おはよう」「はよっす!」「おはよー」
「まさかこんな集まるとは」
「お盆休みで体育館借りられないし、日中は外出たくないし、でも動いておきたいし。ま、そんな感じだな」
「東京暑いですもんね~」
宮城の朝に慣れてたからちょっとしんどいかもしれない。この時間でも蒸し蒸しする。
「烏野の方はどうなんだ?」
「人によっては薄手のパーカー着てるくらいですよ。日中は暑いですけど」
「夏は宮城の方で合宿したいなー」
「今年は無理そうだから来年相談してみろ」
「「「ウス!」」」
「じゃ、行きますかね。周りに気を付けろよー」
そんなわけで6人でランニング開始。俺達と同じようにチラホラ走ってる人達がいる。この時間でももう暑いもんなー、しょうが無い。
「このまま公園のランニングコースに向かうぞ。あっちの方だと車の通り少ないし」
「「「ウィース」」」
通行人もいるし車も通ってるしでなかなかスピードを出せない中まずはランニングコースがある公園へと走っていく。
黒尾先輩と海先輩が一番前、山本先輩と犬岡が二番目、俺と芝山が最後列だ。
「烏野でロンドンオリンピック見た?」
「見たよー。女子バレー銅メダルだったな」
「すげーよな! 俺もオリンピック出たい!」
「じゃあまずはリエーフからスタメン奪取だなー。犬岡の場合はもうちょっと考えられないと」
「う、うす! 頑張ります!」
翔陽と飛雄、龍先輩、ノヤ先輩みたいに単細胞なんだよ。本能で動いてるって言うかさ。悪いとは言わない。ただ、搦め手使われると自滅しそう。灰羽もそうだけど。
「インターハイも。木兎さん絶好調だった」
「やっぱり高校3大エースがいるところが勝ち抜いたな。あと宮ツインズのコンビやべえ」
「双子特有のテレパシーかなんか使えるんすかね」
「双子というと、オリンピックの下園ツインズも凄かった。下園悠花と下園凛花のペア」
「あ~、あとちょっとだったよな~」
その2人俺の従姉妹なんですって言って良いのだろうか。成りすましとか疑われるからやめとくか。
「稲荷崎とは当たりたくないなー」
「そもそも全国いけるように枠勝ち取らないと」
「白鳥沢勝てるように頑張れよ」
「おー」
代表決定戦まであと2ヶ月。そこまでにもっと上手くならないと。でも焦って怪我は駄目。なかなか難しいね。
ランニングコースを走った後、黒尾先輩が写真を撮っては大地さんとスガさんに送ったらしい。【大丈夫か!?】なんてメッセージが来た。どうやら【繋護は俺達が確保した。音駒に転校させるかんなー】とかって送ったらしい。
その後は集合場所で解散して祖父ちゃん家に戻ってきた。俺がランニングをしている間に今日の予定を話し合ってたらしく、朝御飯を食べてる時にそれを伝えられる。
「お墓参りをしてー、買い物行ってー、帰ってくる。その後は近所のお祭りね」
「分かった」
「ということで、出発出来るように準備しなさい」
「「「はーい」」」
女性陣のお化粧を待つだけだ。持っていくものも特にないし。
猫の方の祖父ちゃんのお父さんとお母さん、つまり俺から見て曾祖父ちゃんと曾祖母ちゃん達猫又家のご先祖様のお墓参りをしてきた。どうやら烏の方の祖父ちゃんは曾祖父ちゃんと曾祖母ちゃんに会ったことがあるらしい。
その後、買い物に行って帰ってきた。そしてトレーニングをして夕方になったらお祭りの時間だ。
俺は甚平。姉ちゃんと美緒は浴衣を着て皆で写真。姉ちゃんの浴衣は濃紺地に水色の紫陽花が描かれてるもの、美緒の浴衣は薄いピンクの生地に濃い金木犀が描かれたもので可愛い。2つとも猫の方の祖母ちゃんが着ていたものだとか。
離れないようにしながら屋台を物色していく。
「お兄ちゃん何食べるー?」
「特に決めてない。何にしようかなー。姉ちゃんもお目当てな物無いの?」
「リンゴ飴とか?」
「あ、あそこにリンゴ飴有るじゃん」
美緒が指差す方を見てみると実際にリンゴ飴があった。
他にも金魚すくいとかチョコバナナ、綿飴、ブドウ飴、イチゴ飴、ピロピロ笛、お面等々色んな屋台があって見てるだけでも楽しい。
「繋護、あそこにカブトムシ売ってるよ。ヘラクレスオオカブトだって」
「おー」
「買ってけば」
「買わなくても飛んでくるよ。オオクワとミヤマ拾ったし」
「採集して売ってる人いるよね。やってみれば」
「……既にやってるんだなー」
「そうなの?」「へー」
繋心兄ちゃんと2人でやっててボロ儲けですわ。未成年だから繋心兄ちゃんの名義でやってる。そして使うこと無いから溜まっていく一方。笑っちゃうね。
「じゃ、何か買ってよ」「そうだそうだー」
「決まったら言ってよ」
「「わーい」」
2人は「何が良いかなー」とか「どうせなら高い奴」なんて呟きながら屋台を物色してる。消耗品買う予定なんだからそんな高いものは辞めろ。バレーシューズとか馬鹿に出来ないんだからさー。
「あ、ポテト食べたいかも。お兄ちゃん」
「はいはい。姉ちゃんは?」
「じゃあ私も」
「オッケー」
忠が好きそうなフライドポテトの屋台があって、3人でその列の最後尾に並ぶ。
「忠、12番ね。忠って時間たってふにゃふにゃになったフライドポテトが好きなんだって」
「あー、分かる。味染み込んでて美味しいよね」
「でもやっぱり私はできたての方が好き」
そうなると、美緒は忠と同じ派、俺と姉ちゃんはできたて派って感じだ。
「じゃあマックみたいなスティックタイプかふっくらして扇形になってるタイプかだったら?」
「んー、なんとも言えない」「同じく」
俺はスティックタイプの方が好き。姉ちゃんと美緒は中立派。
「じゃあ付けるとしたらケチャップ? マヨネーズ?」
「私は胡椒」「胡椒美味しいよ! お兄ちゃん」
「マジか。今度食べてみよ」
「胡椒あるよ。かけてみて」
「あ、はい!」
いつの間にか俺達の番になっていて、店番のお姉さんに話を聞かれていたみたいだ。
「3つ下さい」
「はい、900円ね」
「じゃあ1000円でお願いします」
財布から1000円取り出してお姉さんに渡すと、100円が返ってきた。
「ちょっと待っててねー。……それにしても両手に花じゃん。やったね」
「あはは、私達3姉弟です。私が一番上で、弟と妹」
「あ、そうなんだ。君達仲いいんだね。私も兄いるんだけどしょっちゅう喧嘩してたよ。今はもう全然連絡取ってない。何やってんだか。
私みたいにならないようにね。はい、お待ちどおさま」
「「「ありがとう御座います!!」」」
お姉さんからポテトが入った紙コップと爪楊枝を受け取って、姉ちゃんは胡椒、俺はケチャップ、美緒はマヨネーズをちょっとかけてその屋台から離れる。
「ほれ、こっちみろー」
父さんの声が聞えて、そっちの方を見たら父さんがカメラを構えていた。3人揃ってイェーイ。
「良し。もう良いぞー」
「んー」
本当写真撮るの好きだなー父さん。ま、それはともかくフライドポテトたーべよっと。……うん、やっぱりケチャップを付けると美味しいと思う。
「ほら、そっち頂戴」
「ん」「はい」
2人からコップを差し出されてお互いに交換。……ぐぬぬ、胡椒付きとマヨネーズ付きのフライドポテトも捨てがたい。結構胡椒付きのフライドポテトも美味しいな。
「お父さん、何か良さそうなのあった?」
「焼きおにぎりとか焼きトウモロコシはどうだ? あと焼きイカとかな」
「「「…………」」」
フライドポテト食べたせいでお腹減って、3つの味を想像したら唾液が出るほどだった。多分2人もそう。
「……どこらへんにあった?」
「ん? すぐそこ。ほら」
「本当だ。何から食べる?」
「「焼きトウモロコシ」」
流石兄妹。心がシンクロしてる。
「オッケー、じゃあまずは焼きトウモロコシからだ。行くぞ、弟妹よー」
「「おー!」」
「晩ご飯のおかずにするからじゃがバターとかイカ焼きとか買ってきな。重いものね」
「「「はーい!」」」
祖父ちゃん祖母ちゃんでも食べられそうなものはなんだろなー。
会場を回りながら晩ご飯のおかずを買って家に戻ってきた。あと、葵育おばさんと従兄の良樹君と良規君、育音おばさんと従姉の悠花ちゃんと凛花ちゃんとも合流した。従兄姉全員社会人って事もあって色々奢って貰っちゃった。
「繋護ー、入学祝いなんか考えとけよー」
「家とかどう? って話してたんだよねー」
「そりゃあ良いな。別荘にしよう。俺達も泊まりにいく」
「管理とかどうすんのさ」
もー、もっとお金大事にしなよー。って本気で言ってるわけじゃないと思うけど。
……おっと? 打ち上げ花火のあの重厚な響きが伝わってきたと思ったら花火が打ち上がった。うーん、宮城の方だと電灯無くて見栄えが良いけど東京の方はそんなにだな。
「花火見ると夏だなって思うよなー」
「冬の花火も良いじゃん」
「冬と言えばイルミネーションだろー」
「そう? 冬の花火も良いよ。今度見に行きなよ」
「うーす」
いとこ4人の話を聞いてバレー以外の「夏と言えば」と「冬と言えば」について考える。……夏なら花火とかカキ氷、プール、祭り。冬なら雪だるま、鍋、クリスマス、お正月って感じか。
まー、春高進出決まってたらお正月どころじゃないと思う。
「明育ー、花火バックで写真撮れる?」
「やってみるか。全員適当に並べー」
花火が見える方を背中側にして、子供が前で大人が後ろって感じで並んでいく。
「俺がやるぞ」
「いーや、烏養と典子さんも入りな。せっかくだしよ」
「分かったよ」
姉ちゃんと美緒、悠花ちゃん凛花ちゃんが1番前。俺と良樹君、良規君が真ん中の列。祖父ちゃん祖母ちゃん2人ずつ、母さん、葵育叔母さん、育音叔母さんが3列目。
父さんが花火に合わせてカメラのシャッターを切って確認する。満足そうな表情で何回か頷いた。
「もう何枚か撮るぞー」
「『はい、チーズ』くらい言ってよ」
「いやー、花火のタイミングがな。ちょっと難しいって言うか」
「……しょうがないか」
次は全員で撮ろうってことになって、悠花ちゃんが自撮り棒を持ってスマホの内カメラで全員を収めるように指示していく。
「うーん、葵育叔母さんもっと寄って。……あ、良いかも。はいチーズ」
パシャシャシャシャって連写の音が響いて、写真の確認が終わった悠花ちゃんが「あとで適当に送りまーす。よーし、じゃあ女性陣で撮りましょー。真緒美緒写真撮るぞー」って姉ちゃんと美緒を引っ張っていった。
「んじゃこっちも男性陣で撮ろうぜ。烏養のお爺ちゃんもです!」
「おう」
「「わーい」」
ということで、祖父ちゃん2人、父さん、良樹君、良規君、俺で写真を撮る。
「今度烏野行っても良いですか?」
「なーんもねえぞ」
「いえいえ。自然が豊かですし」「食べ物も美味しいし」
「「あと繋心がいる!!」」
「そうか。ま、いつでも来い。たいしたおもてなしはできねえけどよ」
「「やったぜ」」
「いつ行く?」「8月中には!」
うおー、良樹君と良規君が来るなら楽しくなりそうだ。あと繋心兄ちゃんが弄られそう。来ること内緒にしとこー。
朝、また黒尾先輩と海先輩、山本先輩と合流してランニングしてきた。
「あ、じゃあ今日宮城に帰るのか」
「ええ。烏養の方の親戚付き合いがあるので」
「じゃあ次は25、26日の遠征か。負けねえぞー」
「あともう学校始まってるんだっけ?」
「丁度1週間後ですね」
「宮城は夏休みが短いのな」
雪が降って休校になる可能性が高いから、東北の学校の夏休みは短い。しかも冬休みもこっちの方とあまり変わらないし。
何が嫌って1日練習の日数が減ることだよね。
「じゃ、またな。烏野の連中に宜しく伝えといてくれ」「元気でな」「また来週!」
「はい、また来週にお会いしましょう」
ランニング終わりに挨拶して祖父ちゃん家に戻った。
そして、朝御飯を食べたら祖父ちゃん家でもお別れの挨拶。姉ちゃんと美緒はまだ泊まっていくらしいから祖父ちゃん家に残るって言ってた。
猫の方の祖父ちゃん祖母ちゃん、姉ちゃんと美緒、葵育叔母さん、良樹君、良規君、育音叔母さん、悠花ちゃん凛花ちゃんに見送られる。
「じゃあな烏養と典子さん。元気でやれよ」
「おう。お前も気を付けろよ」
「典子さんもお元気で。またお手紙書きますね」
「ええ、文代さんも。宮城の何か、また送ります」
祖父ちゃん祖母ちゃん同士で挨拶をしてる一方で、俺はいとこ4人から盛大にお見送りされてた。
良樹君と良規君の2人に肩を組まれてウェイウェイ。悠花ちゃん凛花ちゃんは俺達3人に合いの手を入れるって具合にだ。車に乗る前に酔いそうだ。
「全国いけよー」
「あと勉強もしっかりやれよー」
「今度烏野の方に遊びに行くからねー」
「おもてなししてよー」
この4人さては酔っ払ってるな? だからこんな風になってんのか。
と言いたいところだけど、昔から親戚同士で集まるとこんな感じだ。一番下の男ってこんな風に雑に扱われるんだと思う。ま、しょうが無い。
「ほら、そろそろ解放しな」
「「「はーい」」」
「またなー」
「うん、また。次は12月?」
「そうだけどー、ま、練習で忙しかったら無理すんなよ。宮城からだと京都って遠いし」
「新幹線で約4時間ってところだよ」
「遠いでしょ」
片道4時間って遠い? 烏野から東京までバスで6時間ってことを考えると遠いか。
「あと入学祝いちゃんと考えといてよ」
「はーい」
っていってもほしい物特にないんだよな。……また思いついたら連絡しよ。
そして、最後に猫の方の祖父ちゃんと叔母さん2人。
「じゃあ、次は25、26日だな。音駒で待ってる」
「私達はご飯当番の予定ー」「夕食の時間終わったら帰るけどね」
「うん、お世話になります」
「夏休み終わったらあっという間に代表決定戦だからな。風邪とか怪我に気を付けろよ」
「うん」
竿着に1人ずつハイタッチしていって父さんが運転する車に乗り込んだ。
「「「ばいばーい!」」」
車が発進すると、すぐに猫の祖父ちゃん家は見えなくなった。あっという間の2日間だったな。
更に、東京駅の新幹線のホームで父さんに見送られる。お土産もちゃーんと買った。
「じゃあお義父さんお義母さん。お気を付けてお帰り下さい」
「おう、世話になった。猫又家の皆にも宜しく伝えといてくれ」「ここまで送ってくれてありがとう。明育君も身体には気を付けて」
「はい。また伺わせて頂きます。美繋と繋護も気を付けろよー。着いたら連絡してくれ」
「うん、真緒と美緒のことお願いね」「またなんかあったら連絡する」
おっと、『まもなく新青森行き~』ってアナウンスが聞えてきた。俺達が乗る新幹線の出発の時間が近付いてきてる。
「じゃあまた」
「おう」「ええ」「はーい」「ん」
父さんに手を振りつつ新幹線に乗り込んで席を探す。お盆だから座れないかと思ってたけど2人ずつで別れてなら座れるようにチケットを買ってたみたいだ。
「男女で良いでしょ?」
「おう」
俺は3人席で祖父ちゃんとスーツのおっちゃんと。通路を挟んだ2人席には祖母ちゃん母さん。リュックを前に持って座ると一気に眠気がこみ上げてきた。
「どうせやることねえ。寝てろ」
「はーい」
目を瞑ると一瞬で意識が。おやす……………………。
約2時間で新幹線が仙台駅に到着して、烏野の方に帰ってきてた繋人叔父さんと合流して家に帰ってくる。ただいまー。
繋至叔父さんも来てたらしく、縁側の方で麦茶飲んでた。
「よぉ親父、お袋。邪魔してるぜー。繋護はでっかくなったなぁ。あと美繋は相変わらずだ」
「繋至もきてたのか」「お帰り、繋至」「兄さんヤッホー」
「あとで繋介も顔だけ見せに来るってよ。俺も夕方には帰る」
「お盆くらいゆっくりしろよ」
「それができたら苦労しねえよ」
烏養顔が3人、……繋心兄ちゃんも含めて4人か。俺と父さんも猫の方の祖父ちゃんそっくりって言われてるけど、烏の方の血も凄い。曾祖父ちゃんもそんな感じだったとか。母さんもよく「お父さんに顔似なくて良かったー」って呟いてる。ま、母さんも烏の方の祖父ちゃんに似てるけどね。
「スイカ持ってきたから親父達で食べてくれ」
「お前も食ってけよ」
「俺はウチで食った」
「そうか? じゃあ遠慮無く。美繋ー」
「後で切るー」
そういえば昨日の祭りでもスイカ食べなかったな。楽しみだ。
17日になってまた部活が始まる。夏休みが終わるまで1週間切った。
あと、一昨日の夜に【明日どっか公園集まろーぜー!】って翔陽からメールが来たんだけど、あいにくの雨で断念。ま、しょうがないね。
このお盆休みで遠出した人からのお土産渡し会が部室でして、体育館の準備も終わったからこれから部活だ。ミーティングで烏養コーチが話し始める。
「おーし、全員この4日間でリフレッシュしたな? 夏休みも終盤で、学校が始まると練習できる時間も限られてくる。体育祭とか文化祭とかもあったはずだし。
つーわけで1分1秒も無駄にしないようにな」
「「「はい!」」」
「早めに感覚を取り戻せるようにやっていこう」
「「「オォーッス!」」」
実力テストもあるから勉強にも本腰入れていかないとな。
練習練習練習って最後の追い込みをして2学期が始まった。朝と夕方は大分涼しくなってきてるけど、やっぱりまだ暑い。
あと、なんと庵里中が全国ベスト4まで行ったらしい。19日の夜にめっちゃメッセージが来た。まー、1個下上手な後輩多かったし。でもやっぱすげー。
「久しぶり! うわっ、凄い焼けたね!」
「でしょー。海でバイトしたら真っ黒になっちゃった」
5組の教室でそんな会話を聞きながら自分の席で提出物の確認をしていく。大体クラスの2/3は夏休み中に会ってたけど、1/3は久々だ。夏休みデビューをしてる人がちらほらいて、男女ともに髪を染めたりアクセサリーをしたりって具合だ。校則違反のギリギリを狙ってる。
「ねこー、朝ぶりー」
「おー、誠也も」
「今日も相変らず暑いな」
「〝暑い〟禁止」
「だって暑いじゃん」
俺の左隣の席に誠也が座って俺と同じようにホームルームの準備をしていく。陸上部だけあってめっちゃ日焼けしてる。
団扇を扇いでダラダラしてると若林先生が教室にやってきて、同時にチャイムもなった。
「はーい、皆久しぶりー。席着いてー」
5組の全員が自分の席に着いたら、若林先生が教壇に立った。
「はい。ということで今日から2学期です。夏休み楽しかったのは分かるけど切り替えてね。
出席取るから、呼ばれたら提出物前に教卓に置いてね。じゃあ安達ちゃん」
「はーい!」
呼ばれた出席番号1番の安達さんから提出物のプリントを持って教卓へと歩いていった。そしたら若林先生と一言二言話しては席に戻っていく。俺は〝ね〟だから結構後の方だ。
適当にぼけっと待ってると、俺の2つ前の二宮さんが呼ばれたから準備する。
「はい、猫又君。昨日ぶり。今日からまた頑張っていこう」
「はい」
若林先生とはバレー部で会ってたからそんな久しぶりって感じがしない。
全員が終わると、若林先生が話し始めた。
「はい、じゃあ提出物忘れた人は早めに持ってくること。
そして9月15日に体育祭があるからね。体育委員の人を中心に各自出る種目を決めて下さい。個人種目、団体種目、応援合戦とあるから頑張ってね」
「「「はーい」」」
「大会前に怪我すんな」って言われてるから俺は適当でいいや。80パーセント位で頑張ろう。
実力テストだったり大掃除だったりと半日授業が続いて、また音駒高校での合宿だ。夜烏野を出発してサービスエリアで休憩しつつ朝音駒に到着。
梟谷グループの4校と一緒に準備をしたら、全体挨拶で猫又先生が話し始める。
「諸君おはよう」
「「「おはよう御座います!」」」
「長期合宿から約1ヶ月経っていて、時間の流れを感じていることだろう。
そして春高予選はもう2ヶ月ほどで始まる。授業が始まるとバレーに費やせる時間も減ってきてしまうことだから、1分1秒でも無駄にしないように。
あと、まだまだ気温が高いから、体調と怪我には気を付けること。
アップを取ったら試合を始めていこう。1セットでも多く出来るようにキビキビと動くように」
「「「はい!」」」
この5校の中だと一番宮城の代表決定戦が早い。ひー、丁度あと2ヶ月だ。
「良し、じゃあ外でアップな。途中で音駒と交代するからよ。縄跳びとか持ってけよ」
「「「はい!」」」
音駒の体育館はコート2面しか張れないからどうしても1校あぶれる。ということで外でアップだ。
アップを取ったら、梟谷、音駒、審判、生川、森然の順で練習試合だ。
1巡目。
梟谷戦、【27-25】で負け。
音駒戦、【28-26】で負け。
生川戦、【26-24】で勝ち。
森然戦、【27-25】で勝ち。
お昼を挟んで2巡目。
梟谷戦、【29-27】で負け。
音駒戦、【26-28】で勝ち。
生川戦、【28-26】で勝ち。
森然戦、【27-29】で負け。
3巡目。
梟谷戦、【25-23】で負け。
音駒戦、【27-25】で負け。
生川戦、【26-28】で負け。
森然戦、【28-26】で勝ち。
15点マッチで4巡目。
梟谷戦、【14-15】で勝ち。
音駒戦、【13-15】で勝ち。
生川戦、【15-12】で勝ち。
森然戦、【13-15】で負け。
今日の全試合が終わって、全体ミーティング。
「諸君1日お疲れ様。
勝敗はともかく、全学校で点差が付くことが無くなっていて非常に有意義な試合になってると思う。
夜はしっかりと休んで明日の練習に備えること。風呂の順番はキャプテンがジャンケンで決めてくれ。
今日はお疲れさん。黒尾」
「はい! 気を付けー!! 礼!!」
「「「ありがとう御座いました!!」」」
早く風呂入りてー。
なんと大地さんがジャンケンを勝ち抜いて、烏野が一番目に風呂を使うことが出来た。
お風呂から上がって夜ご飯。渉に誘われて庵里メンバーで少しだけ集まる。烏野梟谷合同食事会、みたいな?
「それにしても全国ベスト4かー。……あれ、前に全国行った時って木葉さん達が中1の時でしたっけ?」
「そうそう。だから5年ぶりとかじゃなかったか?」
「いやー、それ以降は郡内中にボッコボコにされてたよなー。全国行きの枠前に当たって結局ー、みたいにさ」
そうそう。去年一昨年もフルセットにもつれ込んだけど、最後の最後で負けた。「全国で戦える中学なのに……」って何度言われたことやら。それで、結局3年間関東止まり。
「今年の中3もウチ志望5人くらいだもんな。いやー、来年も期待できそうだ」
「今の代って3年中心のチームだから結構な戦力ダウンですよね。木兎さん、鷲尾さん、木葉さん、猿杙さん、小見さんって抜けられるのきついです」
「ま、精々頑張れ。嫌でも3年卒業するし。そしたら新しいチーム作りからだ」
梟谷だけあって選手層は厚いんだからなんとかなりそうだけどな。そもそも大地さん達が引退したらって考えると余裕ぶっ込んでる暇無いぞ。1月末の新人戦どうなんだって話だ。
お。このタイミングで赤葦先輩がやってきた。
「皆さん、次ウチが風呂の時間なのでそろそろ」
「おー、赤葦。ありがとな」
「じゃ、そういう訳だ」
「はい、ゆっくりお風呂入ってきて下さい」
「「「おー」」」
梟谷の皆は席から立上がって歩いていった。俺はご飯の続きといこう。
合宿2日目。あいにくの雨だ。
外でのアップができないし、湿気が凄くて汗が止まらない。体育館の窓を開けてるにも関わらずあちーぜ。
どの学校もユニフォームを着てるメンバーだけの参加で良かったかもしれない。
「残暑があるザンショ」
「「「…………」」」
黒尾先輩の会心のギャグは完全に滑った。あ、若干涼しくなった気がする。いいね、もっとやって下さい。
「黒尾ー、寒いぞー」
「なあ赤葦、〝ザンショ〟ってなんだ?」
「文字通りですよ。暑さが残ってる、つまり秋が近付いてるのにまだまだ夏が残ってる感じです」
「ああ! 今日も暑いもんな!」
「学校始まって欲しくねえなー」
……こっちはもう始まってるんですけど? ま、やるしかないよ。
アップを取ったら試合形式だ。
1巡目。
梟谷戦、【27-25】で負け。
音駒戦、【26-24】で負け。
生川戦、【25-27】で負け。
森然戦、【28-26】で勝ち。
お昼ご飯を挟んで2巡目。
梟谷戦、【29-27】で負け。
音駒戦、【26-28】で勝ち。
生川戦、【25-22】で勝ち。
森然戦、【27-25】で勝ち。
15点マッチで3巡目。
梟谷戦、【15-12】で負け。
音駒戦、【13-15】で勝ち。
生川戦、【14-15】で負け。
森然戦、【15-13】で勝ち。
森然戦が終わってミーティング。
「うんにゃ。点差が付くような試合展開にはなってないから、後は最後の追い上げだな。土壇場での粘り強さを身につけていこう。デュースとかセットポイント、マッチポイントだな。
簡単に1点を落とさないようにするのが今後の課題だな」
「「「はい!」」」
点差開くと諦めモードがだんだん露骨になってくるからなんとかしたいところだ。【0-10】で負けてるシチュエーションからの試合形式烏養コーチに進言してみるか。
「じゃあ一旦全体での挨拶だ。集合しよう」
「「「はい!」」」
隣のコートの梟谷と音駒戦も終わって、一旦全体での挨拶となる。パパッと5校集まっていつも通り2列で並んでは猫又先生が話し始める。
「諸君も知ってるとおり、移動の都合上烏野さんはここで早抜けする。次この5校で集まれるのは10月で、宮城県は代表決定戦間近だ。10月までに一回りも二回りも成長できることを祈っている。
これから先気温が低くなってくるから風邪とかインフルエンザに罹らないよう万全の対策を取って欲しい。もちろん怪我の予防もしっかりな。
また10月に会おう」
「「「はい!」」」
「じゃあ烏野さんの片付けついでに他の4校は休憩としよう」
「「「はい!」」」
黒尾先輩が号令を掛けて一旦締めとなる。ボールとかボール籠、救急箱の片付けと教室の掃除していくぞー。
宮城に帰る準備をしたら祖父ちゃんと軽く話す。皆それぞれ適当に別れの挨拶を交わしていた。
「9月になったら一気に気温が低くなるからな。体調管理に気を付けろよ」
「うん、祖父ちゃんも祖母ちゃんもね」
「おう」
髪の毛をワシャワシャされてこれで終わり。父さんは仕事の打ち合わせで来られないって言ってたから、代わりにご飯を作ってくれていた叔母さん2人がお見送りに来てくれていた。2人は武田先生と繋心兄ちゃんと話してる。
「じゃあ武田先生、甥っ子のこと宜しくお願いします」「何かあれば遠慮無くお申し付け下さい。弟よりはバレーについて詳しいですから」
「はい! その時はお世話になります!」
「繋心もね、コーチ頑張んなさいよ」「私達の弟子みたいなもんなんだから」
「はい、また何かあれば連絡させて頂きます」
「「でも『そんくらい自分で考えろー』って言ってやろ」」
「えー」
弄るの好きだなー、叔母さん達。
……お。俺に気づいた叔母さん2人が手招きしてきて、俺もそっちの方に行く。
「繋護も頑張んなさいよー」「烏養家の皆さんに宜しくって伝えといて」
「うん」
「あと、はいこれ。軽食作ったからバスで食べて。こっちは音駒のOBの皆さんから」
叔母さんから2つの保冷ボックスを受け取って、一つは繋心兄ちゃんに任せた。
「色々とありがとう御座います!」
「このくらいはさせて下さい。皆お腹空かせてるでしょうから」「あと武田先生と繋心はこっからが大変ですからね」
宮城までの約6時間。サービスエリアで休憩を挟むとは言え長い時間を運転してくれる武田先生と繋心兄ちゃんには足を向けて寝られない。
「では、そろそろ出発しましょう! 皆忘れ物無いようにね!」
「「「はい!」」」
遠征の度にどこでもドアが欲しいって思う。
朝、昨日寮に泊まった皆と一緒に学校に行って普通に授業を受けた。加えて体育祭の練習も始まってる。
俺は借り物競走と全体での大縄跳びと応援合戦に出る予定だ。大会前って事で頭下げまくった。大縄跳びと応援合戦の準備で部活の時間が減るのは嫌だなー。早く終われ。
【登場人物まとめ】
神田誠也 1年5組 陸上部に所属
二宮和香 1年5組
まさに直近の春高2026(2025年度春の高校バレー)では、東亜学園でお父さんが指導者、息子2人が選手という状態で春高に挑んでいました。
私立だったらちょくちょくあるんですよね。選手のお祖父ちゃんやお父さんが指導者の学校って。
ただ、公立はなかなか聞かないかな。教員の親族が入学すると異動するとかなんとかって聞いたことがあります。真偽は不明です。
この場合の難しさって、「○○家の為にやってんじゃないんですけどー」と他の部員のモチベーション低下が起こりうることだと思います。
だって家の中でああだこうだ言ってたら嫌でしょう? 私は無理。
という訳で、烏養繋心は猫又繋護を何か役職につかせることはありません。