4日(土) 疑似東北大会(5日まで)
4日 下園悠花、下園凛花 オリンピックでバドミントンダブルスで銀メダル
6日(月) 明治大学の男子バレー部見学会 烏野3年花火大会 澤村大地と道宮結が付き合い始める
10日(金) 庵里中、関東大会優勝
11日(土) 春高1次予選開始 部活説明・見学会
12日(日) OBとの交流戦 烏養家で花火 オリンピックで女子バレーが3位(銅メダル獲得)
13日(月) お盆前最後の練習
14日(火) 千葉に帰省、猫又育史の所へ(16日まで)
17日(金) 練習開始
19日(日) 庵里中全国ベスト4
22、23日あたり 2学期開始、体育祭の練習開始
25、26日 音駒で合宿
9月に入ると一気に涼しくなった。秋が近付いてきてる。
そして、9月22日は彩音ちゃんの誕生日だ。部活やら体育祭の事を考えると何か買いに行くにしても時間が取れない。どうすっかなー。
『そんな気にしなくて良いよ? 電話でおめでとうって言ってくれるくらいでさ』
「それでもさー。何かしたいしせめてプレゼントでもって思うんだよ」
『その気持ちで十分だって。悩むと寝られないぞー』
ううーん。本当にどうしよう。お小遣いはあるから無理しても大丈夫。でも彩音ちゃんには俺のお小遣い状況も伝わってるだろうし。無理に高い物送ったら逆に怒られそう。
去年までは家に集まってパーティやってたんだけど、今年は事情が違ってる。22日はまた練習試合で千葉に戻ることもできない。んー、どうしよう。
『じゃあさ、今度ペアの腕時計見繕おうよ』
「腕時計?」
『そう。ちょっとオシャレ用の。繋護スポーツ用のしか持ってないじゃん?』
「あー、確かに」
ランニングするときのGPS搭載の腕時計だ。いかにもスポーツ用って感じだからデートの時には付けてない。あと時間確認するときはスマホで十分だし。
『これから先腕時計を一つは持ってても良いと思うんだよね。スーツとかネクタイとか着る機会も増えるだろうし。そういった時に着けられるような腕時計はどう?』
「うん、分かった。じゃあ時間見つけて腕時計買いに行こう」
『オッケー。じゃあ明日から1週間頑張ろー』
「おー!」
また月曜日がやってくる…………。今日も練習試合で疲れたから早く寝よう。
授業と体育祭の練習は順調に進んでる。それと同時に学校周りの木もだんだん色づいてきた。あー、紅葉見に行きたいな。
「ほれねこ君、大縄飛びの練習するよー」
「おー」
クラス対抗戦の大縄飛び。俺は跳ぶ方だ。
男女混合、かつ背の順で2列に並んで回る縄に合わせてジャンプする。今の所最高は25回。「100回目指そうぜー」って言ってるけどなかなか上手くいかない。
「いくぞー、せーのっ!!」
「「「いーちっ!!」」」
「「「にーいっ!!」」」
「「「さーんっ!!」」」
回る縄に合わせてジャンプしていって、5回……10回……15回……20回と順調に続いていって23回で止まった。
「ドンマイドンマイ! 大分続くようになってきてるから頑張ってこう!!」
「「「おー!!」」」
「もう1回やるぞー!」
「「「おー!!」」」
5分間で何回でも挑戦して良くて、5分間の合計じゃ無くて1回の挑戦で飛べた最大の数で学年毎に競い合う。15回、34回、12回、24回だったら34回って感じ。
まあね、お祭りだから思い出になれば良いよ。正直ここで怪我して代表決定戦に影響したら馬鹿らしいし。ぶっちゃけ出たくない。学校行事だからしょうが無いけど。
「いくぞー!! せーのっ!!」
「「「いーちっ!!」」」
「「「にーいっ!!」」」
「「「さーんっ!!」」」
2回目の挑戦。今度は32回を記録した。
「良いぞ良いぞー! この調子だ! 皆で頑張ってこー!!」
「「「おぉー!!」」」
……程々で良いかなって思っててもちゃんとやりたくなるよなー。クソー。やるからには勝ちたいし。
体育祭の練習があっても部活には手を抜けない。本来最終下校は19時までだけど、武田先生と烏養コーチが頭を下げて20時まで延長してくれた。男子バレー部が期待されてる事もあると思う。
他の皆の話を聞いても体育祭の種目は減らしてくれてるみたいだし。
「つっても、慣れない体育祭の練習で少なからず疲れも溜まってるだろうから程々にやるつもりだ。せっかくの体育祭楽しんで良いから。ただ怪我だけは絶対にするなよ。最悪部活休んでも良い。違和感が出たらすぐに言え。いいな?」
「「「はい!」」」
龍先輩、ノヤ先輩、飛雄と翔陽はやばそう。あと部活対抗リレーこの4人なんでしょ? 速いのは良いけどルール大丈夫かよ。人選ミスだと思うんだよなー。
体育祭でハイテンション。部活対抗リレーで身内で競い合う。ありそー。
「で、次だ。この中で裏起毛のアンダーウェア持ってる奴、挙手」
今はまだ着てないけどもう準備してる。これから先の練習には必要不可欠だし。
ただ、俺の他には飛雄と蛍しか手を挙げなかった。え、マジか。
「え、マジか。3人しか知らねえの」
「コーチ! ウラキモーってなんですか!! アンキモーの仲間ですか!!」
「全然違えわ。……まあ、秋冬用のアンダーウェアだよ。野球部がよく着てるだろ」
3年生3人の力先輩あたりはピンときてるみたいだけど、龍先輩、ノヤ先輩、翔陽達はよく分かってないっぽい。
「アームスリーブとかニースリーブ、サポーターを付けて貰ってるけど、今までは暑かったろ? でもこれから先気温が低くなってくると今度は保温するって意味で重宝する。身体を冷やさなくて済むって訳だな。
そんで、ユニフォームだけだと汗が冷えて体調を崩す原因となるから、そうならないように裏起毛のアンダーウェアを着させたいって訳だ」
「そんなのあるんですね」
「ある。で、何枚か持ってきたからちょっと試してみろ。今日はまだ暑いと思うけど」
そう言って、烏養コーチは紙袋から半袖のアンダーウェアを5枚くらい取り出した。
あ、身長伸びて着られなくなった俺のもあんじゃん。翔陽とノヤ先輩にあげても良いかな、着られないし。
話し合いの結果、大地さん、スガさん、龍先輩、ノヤ先輩、翔陽が着ることになった。5人はウェアを預かってパパッと着替える。
「……お。おお? めっちゃ暖かいです!!」
「だな!! 何だこれ!!」
「それが裏起毛だ。暖けえだろ?」
「「「はい!」」」
気に入ったようで何よりだ。……というか、ホントに知らなかったのかよー。
「ウチのユニフォームは半袖だからどうしても防寒性って面で頼りない。練習着も長袖は着たくないって奴もいるだろうし。そんなわけでおまえ達に勧める。
まとめて頼んだ方が安くなるから欲しいって奴はサイズをこの紙に書いといてくれ。まとめて買うと安くなるからこっちで買っちまう。いいな?」
「「「オス!」」」
嘘じゃん。自分で買っちゃったんだけど。……ま、いっか。
いやー、でもそろそろ本格的に寒くなってくるぞー。
朝練! 授業! お昼ご飯! 授業! 体育祭の練習! 部活!
そんな日々を送っていると、遂に体育祭の日がきた。
烏野の体育祭は赤、黄色、青、紫、白の5組に分かれて、赤なら1年1組、2年1組、3年1組、黄色なら1年2組、2年2組、3年2組……って別れる方式だ。
つまり1年5組は白組で、やっちゃんとは一緒だけどバレー部の先輩とは誰も被ってない。
ちなみに、1組の翔陽と龍先輩は赤組。2組の久志先輩と清水先輩は黄色、3組の飛雄とノヤ先輩、旭さんは青組。4組の蛍、忠、力先輩、一仁先輩、大地さんとスガさんは紫組。紫だけ多くね? 偏りすぎでしょ。
「「宣誓ー!!」」
「僕達ー!」
「私達はー!」
「スポーツマンシップに乗っ取ってー!」
「今日一日楽しむ事をー!」
「「誓います!!」」
体育委員の男女の3年生が宣誓して今年の体育祭が始まった。良く晴れてて絶好の体育祭日よりだ。女性陣の「日焼け止め塗らなきゃー」って言う声が耳から離れない。
選手宣誓が終わったらアップがてらのラジオ体操だ。これも動的ストレッチなんだよな。
「ラジオ体操第一!!」
聞きなじみのある音頭が聞えてきた。
お玉リレー、ムカデ競争、100m走と続いて、白組は勝ったり負けたりしてる。今の所3位。可も無く不可も無く。
しっかりとしたストレッチをしていると、借り物競走の出走者が呼ばれた。行ってくっか。
「ねこー、頑張れよー!」
「おー」
「変なお題に当たってくれー!」
「そればっかりは運だな」
白組の皆に背中を押されて出走者が集まる方へと向かっていく。お題なんだろう。簡単なのが良いなー。でもこういうこと考えてると碌なのに当たらないんだよな。
借り物競走は1クラス男女1人ずつ、それが3学年だ。3年男子、3年女子、2年男子、2年女子、1年男子、1年女子の順でやる。
「おー、繋護! 負けねえぞ!」
「残念ながら学年が違いますね」
ノヤ先輩も借り物競走に出るらしいけど、学年が違うから競うことはない。ただ、忠がいて一緒に競う。他の3人は話したことが無いから知らない人だ。
「繋護どのくらいの力出す?」
「そういう心理戦には乗りませんー。『一緒に走ろっ』ってやつじゃん。そんで置いてくのが定石だよね」
「バレたかー。お題変なのじゃなきゃ良いな」
「それな」
ここで【カツラ】とか【犬】とか探すのが面倒なのが当たったらやばい。と言うか、【犬】は駄目だろ。犬岡みたいに名前に入ってたらOKってこと?
3年男子から始まって、遂に1年男子の番になった。スタート位置まで誘導される。
「いちについてー! よーいっ!」
「ドンっ!」のタイミングで空気砲が鳴らされて、若干耳がやられる。それでも走りながら、スタート位置から5mの所にある神経衰弱みたいに並べてあるお題の紙を1枚手に取った。
【フルネームに〝潔〟が付く人】
記憶を辿る必要も無い。一瞬で該当する人が思い浮かんだ。清水先輩だ。
清水先輩は黄色組。黄色組が待機してる方を見て清水先輩を探す。……いた。同じクラスの女子と話してる。
急いで黄色組の方に走っていって、「清水先輩! お願いします!!」って大声を出した。
「えっ、私?」
「はい! お願いします!」
「分かった、今行く!」
よーし、これで第一関門は突破。……他の男子からの視線がやばい。お題に言ってくれ。こんなピンポイントで当たるとは思わなかったんだから。
あと日頃の行いって大事だよね。こういう時龍先輩とノヤ先輩なら来てくれなさそう。
清水先輩と合流してゴールまで走って行く。
「おーっと! 白組猫又君、男子バレー部のマネージャーをしている3年の清水潔子さんと一緒にゴールまで走って行くぅー!! お題はバレー部関係でしょうか! ああ、清水潔子さんは今日も美しい……!!」
おい、実況。ふざけんなよ。こいつも清水先輩の信者か。くっそ、ちょっとやっちまったか? 男子ー、こっちみんなー。
「すみません、なんか」
「後でお題教えてね」
「はい」
そして、2人でゴールに到着。体育委員の人にマイクを向けられた。
「はい、それではお題をお願いします」
「はい、【フルネームに〝潔〟が付く人】です」
「付添人の方、名前をお願いしますね」
「清水潔子です」
「なるほど、大丈夫です!」
よーし、いっちばーん!!
「清水先輩、ありがとうございました」
「ううん。変なお題じゃ無くて良かった」
「このお礼は必ず」
「返します」って続けようとしたら、龍先輩とノヤ先輩から「けーいごくーん!! なーにしてるのかなー!!」って大声が聞えてきた。他にも「清水とイチャイチャしてんじゃねー!!」って知らない人からも。清水先輩めっちゃ人気じゃん。
「すみません、なんか」
「大丈夫。〝潔〟が付く人ってそんないないと思うから。ホント変なお題じゃ無かったよ。今度アイスでも奢って貰おうかな」
「はい!」
「潔子ー、お疲れー」
「お疲れー」
清水先輩は友達と一緒にここを去って行った。俺も戻るか。……今戻ったら面倒なことになりかねないから適当に時間潰してから戻ろ。
と思ったけど、その前に忠がやってきた。
「お疲れさん。忠のお題は?」
「【頼れる人】ってお題だったから武田先生にお願いした」
「なるほど、そりゃぴったりだ」
「にしても、繋護が清水先輩を連れて行くとは思わなかったなー」
「〝潔〟が付く人ってそんないないじゃん。逆に清水先輩と知り合ってて良かったよ。下手したら全校生徒の前で聞き回るところだった」
「それはまあ。……でも確実に話題になるんじゃない?」
「いざとなれば職員室に逃げ込むから大丈夫」
「えぇー……」
職員室面白いじゃん。俺は好き。
お昼ご飯を食べたら学年毎の大縄飛びだ。3年と2年が終わって、最高記録は2年1組の78回。龍先輩のクラスだ。
そして今度は1年の番。ずらっと並んでその番を待つ。
「猫又ー! やっちゃん!! 頑張れよー!!」「「「ねこー!! やっちゃーん!!」」」
「はーい!」「ウス……!!」
大地さん達からの応援が凄い。下手したら白組の2年生3年生よりも。
「めっちゃバレー部の人から応援されてんじゃん」
「俺もしたしね」
「月島ー! 山口ー! おまえ達もなー!!」
「はい!」「…………」
「月島ー! 返事しろー」
「…………」
4月からずっとチームワーク作り頑張ってきた甲斐がある。後輩いじめとかゼロだし。今みたいにイジりは多いけど。
準備が終わって、早速1年の大縄飛びが始まる。スタートを知らせるピストルが鳴った。
「「「行くぞー!! せーのっ!!」」」
「「「いーっち!!」」」
「「「にーいっ!!」」」
「「「さーんっ!!」」」
5回……10回……15回……20回……と続いていって、1回目の挑戦は32回で止まった。次に向けてのちょい休憩。
「良いよ良いよー!! この調子ー!!」
「まだまだ回数伸ばせるぞ! 頑張ってこう!!」
「「「おぉー!!」」」
2回目の挑戦。
「「「行くぞー!! せーのっ!!」」」
「「「いーっち!!」」」
「「「にーいっ!!」」」
「「「さーんっ!!」」」
5回……10回……15回……20回……25回……30回……35回……40回……と続いていって、クラスで最高記録である71回で止まってしまった。ここでストップの合図が出る。
「やったじゃん! 新記録!!」
「よーっし!!」
4組も止まってたけど、どっかからか「ひゃーくっ!!」ってかけ声が聞えてきた。……マジか。膨らんでた風船が萎むみたいに水を差された。「あー」だの「うー」だの皆何を話せば良いのか分からなくなってる。
「他は他! ウチはウチ! 練習だと50回いかなかったのが本番では71回までいった! ここは喜んで良いところだよ!! 皆良くやった!!」
そんな風に若林先生が声を張り上げて、お互いに顔を見合わせたら大はしゃぎ。近くの人達とハイタッチをしていってウェイウェイ。
そして、最後まで跳んでた組が終わったみたいだ。ちょっと待って結果発表に移る。
「それではー! 結果発表です!
1位! 3組の112回!」
「「「おぉーっし!!」」」
飛雄のクラスか。100回越えってすげー。
「2位! 5組の71回!」
「「「おお? ……おぉーっし!!」」
100越えの3組が凄すぎただけか。やったぜ、2位だ。近くの人とハイタッチして結果発表の続きを聞く。
3位は1組の68回、4位は4組の65回、5位は1組の62回。全クラス60回越えかよ、すげーじゃん。
「5組良くやったぞ!!」
「「「おぉー!!」」」
てっしゅー!!
次は各組の応援合戦だ。創作ダンスと言っても良い。
各組テーマを決めて5分間の中で表現する。ちなみに男女の人数が釣り合わなくて、俺と他にも数人女子の格好で出る。これも「俺、姉ちゃんの服着たことあるよ?」って言ったせい。
お下がりの服着せられて着せ替え人形になるのなんて普通じゃないの?
「やっぱりねこ君女装似合う~」
「えー」
「写真撮ろ~」
「えー」
おい、まだ良いって言ってないんだけど? 勝手に写真撮るなよ。ま、いいや。体育祭だし。
栗色のウィッグやらスカートやら……簡単に言えばチアリーダーの格好をして応援合戦に参加する。
女装姿の俺は姉ちゃんとか叔母さんにそっくりだった。今度バレー部で性転換アプリでも使ってみよう。あとはポンポン持って踊るだけ。井闥山とか梟谷のチアリーダーみたいにやるだけだ。
「はい、ねこ君の」
「うん、ありがとう」
ポンポンを受け取って集合場所へと歩いていく。……お。龍先輩と翔陽だ。ということは赤組の発表は終わったみたいだな。
「龍先ぱーい、しょーよー」
「「っ!?」」
「だ、だ、だ、どなたですか!?」
……この様子だと俺だって気づいてないのか。おちょくってやろ。「お前の知り合いか?」って龍先輩が翔陽に聞くけど、翔陽もドギマギしながら「い、いえ……!」って返事してるし。
「えぇ~、酷いですぅ~。毎日お会いしてるのにぃ~」
「え。あ。う。す、すみません!!」
「マジかよ!? ど、どこでだ!?」
体育館に決まってるでしょうが。え、マジか。特技女装って言えるように頑張ってみっかな。
「おーい。……あ、田中さんにショーヨー、お疲れ様です!」
「や、やっちゃん!」「ヤ、ヤッチー!」
やっちゃんは俺を見て首を傾げ、さらに2人の様子を見ては更に首の角度が深くなった。
「……どうかしたんですか?」
「この美人さんが俺達に話し掛けてきたんだ!」
「でも誰か分からなくて!」
「「どうすればいいんだ!?」」
私こそどうすれば良いの? ってやっちゃんが目線で訴えてきたから、サムズアップで応える。さあ、答えをどうぞ。
「…………この人ねこ君ですよ?」
「「え」」
壊れかけのロボットみたいに龍先輩と翔陽が見てきて、「もぉ~、酷いじゃ無いですかぁ~、毎日会ってるのにぃ~」って言ってやる。
「け、繋護なの?」
「1年5組、男子バレー部の猫又繋護でーす。気づかないなんて酷いなぁ」
「え、だってお前! おっ! そこはどうしてんだよ」
龍先輩が俺のちょっと膨らんでる胸に指を指してきた。さっきめっちゃくちゃ見てましたもんね~。
「知ってますか。おっぱいは装備出来るんですよ」
「「っ!?」」
俺達がやったのは至って簡単で、コスプレ用のバストを装着しただけだ。やるからにはちゃんとやりたいじゃん?
「俺には潔子さんという人がいながら……! 危うく罪を犯すところだった!」
「どっからどう見て女の子だ……!」
「化粧もある程度やってるからなー」
そこで何か思い出したようにやっちゃんが手を鳴らした。
「……あっ! 白組集合しないと!」
「マジ? じゃあそういうことなので。応援して下さーい」
呆けている2人を放っておいて、俺とやっちゃんは白組の集合場所へと向かっていく。「おい田中ー、さっきの女子めっちゃ可愛かったなー」とか「俺に紹介してくれよー」とか龍先輩のクラスメートに絡まれてる声が聞えてきた。ふっふっふー。
「こうしてみると真緒さん美緒ちゃんに似てるね」
「モデルにしたしね。小っちゃい頃は『3姉妹ですか~?』って良く聞かれてたらしい。母さんが言ってた」
「ねこ君は女の子だった……?」
やっちゃんもバグってるし。
いいや、応援合戦が終わったらこの姿で大地さん達に会ってこよー。
全組の応援合戦も無事に終わって、体育祭最後の種目は部活対抗リレーだ。この間に各種目の点数を集計するとかなんとか。
男バレ、野球、サッカー、バドミントン、陸上、バスケ、テニス、剣道の8つの部活で4人選出して校庭1周する形式だ。
ウチは龍先輩、ノヤ先輩、飛雄、翔陽の順で走るらしい。
「バレー部どうだと思う?」
「……人選ミスじゃない?」
「繋護辛辣だな~」
「バレー部きっての単細胞組だし。お笑い部門があれば勝てそうなくらいにはポンコツ4人だぞ」
「壮行会の時もだけどバレー部面白いよなー」
部員としたら笑い事じゃ無いけどな。
そうしてる間に第一走者がスタートの位置に並んで、空気砲の合図で走り出した。誰かを応援する声で凄いことになってる。俺もやっとこ。……ん? 龍先輩耳栓してね? いや、してるわ。
「「「田中ー!! ふざけるなー!!」」」
しかも去年の文化祭のミスターコンで賞状貰った人のこと嫌な風に走り抜いたし。女子からのブーイングが凄いことになってる。だから耳栓してるのか。なるほどね。
バトンはノヤ先輩に渡って好調な走り出し。と思いきや野球部がバトンパスに失敗して落ちそうになったのをノヤ先輩が拾う。
「「「西谷ー、カッケーぞー!!」」」
遅れながらもノヤ先輩が走って6位から3位に順位を上げると今度は飛雄。
「「「影山くぅ~ん!! 頑張ってぇー!!」」」
女子からの黄色い声援が響く。でも飛雄に気にしてる様子は無い。走って走って1位になったところで翔陽にバトンパス。
……せずに飛雄が翔陽を追い抜こうと。そして翔陽は飛雄から逃げるように校庭を走り出した。……ほーら、また馬鹿やったよ。失格じゃん。
「「「…………」」」
「言いたいことがあるならどうぞ」
「あの4人やべーな」
「でしょ? 珍道芸人に名前変えた方が良いよね」
バレー以外の時は上野のパンダみたいな扱いだし。繋心兄ちゃんもそこまで口挟んでない。
大地さんとスガさんに怒られてる4人を見つつ、結果発表の為に並んでいく。でなくて良かったー。
結果発表も終わって体育祭は無事に終了。白組の結果は競技部門が3位で、応援合戦が2位だった。良くやった方だと思う。
ちなみに競技部門の1位が紫組で応援合戦の1位が黄色組。どこが勝つかの予想は付かなかったけど、言われれば納得のいく順位だったと思う。
それにしても楽しかったなー。これから各色に別れて簡単に打ち上げだ。お菓子とかジュース類は坂ノ下商店と嶋田マートで注文してるから今日だけでも売り上げが凄いって繋心兄ちゃんと誠兄ちゃんがホクホクしてた。
体育祭が終わると、また平常授業と部活の毎日だ。ただ、11月に行われる文化祭の準備が始まって文化祭実行委員が動き出しているのと、3年生の受験が近付いてきて学校中がピリピリしているような気がする。まあでも2/3位は進路が決まってるって話も聞いた。
幸いにも大地さん達4人は順調みたいでそんなに悩んでる様子は無い。清水先輩は志望してた専門学校に合格したらしくて男子バレー部総出でお祝いした。
彩音ちゃんの誕生日を迎えた。ただ、今日も1日練習だった。
朝起きて【お誕生日おめでとう!】ってメッセージを送って、部活終わりにスマホを見ると【ありがとう! 大事にする!】ってメッセージとプレゼントのブレスレットを付けてる写真が届いていた。気に入ってくれたようで安心する。大学でも身につけてくれると嬉しいな。
1日練習の午後練が始まる前のお昼休憩中に、烏養元監督とOB会会長の新藤さん、付き添いの母さんが240サイズの段ボール3箱を台車に載せて現れた。皆あのダンボールの中身が気になってしょうが無い様子だ。皆からの「あれ何だよ!!」って視線が俺に集中してる。すぐに分かりますよー。
俺はねー、8月に武田先生と烏養コーチを加えて母さんを除いた4人がコソコソ話しているのを聞いちゃったのですよ。実際昨日受け取って中身を家に置いてきた。
全体で集合して、ミーティングが始まる。
「皆、お昼休憩中にごめんね。今日はOB会を代表して会長の新藤さんと烏養先生達に来て頂きました。それでは新藤さんお願いします!」
武田先生から促されて、新藤さんが話し始める。
「男子バレー部の皆さんこんにちは、新藤です。今日は前々からOB会で計画していたものが到着して、やっと皆に渡せる日が来ました。澤村君から背番号順で渡していきますよ~。それでは澤村君から」
「……はい!」
よく分かってない大地さんが立上がって、新藤さんと烏養元監督の方へと歩いていく。そして清水先輩とやっちゃんがダンボールの中からまだビニール袋に包まれてるベンチコートを大地さんに渡した。皆服ってだけは分かってるけど肝心の中身についてはまだ分かってない。
「ありがとうございます……?」
「澤村、開けてみろ」
「え? あ、はい……?」
釈然としないままの大地さんがやっちゃんからはさみを受け取って封を切る。そして中身を取り出した。
「「「っ!?」」」
「……これって!」
いつも使ってる黒のジャージと意匠は同じだけど、中の生地がフリース素材だから目茶苦茶暖かい。これからの季節にぴったりだ。ジャージはね、ぶっちゃけ冬用じゃ無いんですよ。これからの季節だとパワー不足。あと蛍はなんか知ってるっぽい。多分お兄さんが持ってたんだろうな。
今度は烏養元監督が話し始める。
「ま、そんなわけだ。俺が現役で監督だったときには部員達にこれを着させてた。
これからの宮城はどんどん寒くなってくるし、体調を崩しやすくもなってくる。そのジャージだとちと寒いだろ。って訳で暖かい格好をしろ」
「「「ありがとう御座います!!」」」」
「言い訳になってしまうんだけど、烏養先生が監督を離れられてOB会もバラバラになってしまったんだよね。今年の4月から徐々に纏まってきてるからベンチコートはその第一歩ってことで。
これから気温は下がってくるけど、寒さに負けず練習をして是非春高進出を決めて下さい!」
「「「はい!」」」
「じゃあ続き。菅原君来てね」
「はい!」
ちゃんとサポートして貰ってんだから結果残さないとだよな。「早く欲しいっす!」って表情の皆が1列になって並んだ。
「あれ、猫又は? 並ばないのか?」
「すみません、実は昨日受け取ってたんです」
「暖かいか?」
「めちゃくちゃ。暑いくらいです」
「ジャージだけだと重ね着しないとって思ってたから嬉しいな。……あれ、金は? 俺達払ってないよな。……あれ」
早速ベンチコートを着ようとしてた大地さんが壊れかけのロボットみたいな挙動を取り始めてベンチコートをたたみ始めた。残念ですが、そんなことをしても無駄ですよ。
スガさんか旭さんも同じ事を考えつい手質問したようで、烏養監督がまた話し始めた。
「これまでの詫びだ。俺がちゃんと後進を育ててればこの4年間みたいなことにはならなかった。つーわけで黙って受け取れ」
「そういう訳でOB会から捻出してます。気にしなくて大丈夫。
……いや、気にするようだったら全国制覇して。そしたらチャラにするよ」
「「「……オォーッス!」」」
これはもうやるしか無いじゃん。
全員が受け取ってファッションショーをしていると、清水先輩とやっちゃんの名前も呼ばれた。
「え、私達の分もあるんですか?」
「そりゃあおまえ達も男子バレー部のメンバーだろうが。ただ、監督とかコーチと同じ紺色だけどな」
「お父さんがやらかしたのが悪いから受け取って?」
「あ、はい。じゃあ有り難く受け取らせて頂きます。ありがとうございます!」
「私も! ありがとうございます!」
清水先輩とやっちゃんにもベンチコートが行き渡って、ファッションショーに加わった。
「す、菅原さん!!」
「おー、日向、どうした?」
「ここ! ここに名前が入ってます!!」
「えっ、嘘!?」
翔陽がベンチコートを着たスガさんの右肩と左肩を指差すと、皆一斉に自分のベンチコートの同じ場所を見て騒ぎ出した。俺も金色で自分の名前が刺繍されてたのを確認済みだ。
「「「うぉぉぉぉ!! マジだ!!」」」
「白ペンで名前書くのもあれでしょう、皆同じものだし。ここなら間違えないよねってことで」
「「「ありがとう御座います!!」」」
「めっちゃあったけー!!」とか「肌触り良いー!!」とかって皆がギャアギャア言い合ってて面白いことになってる。その間に武田先生と烏養コーチも受け取ってサイズ確認してた。
「大地、お礼!」
「あ、おう!! 整列!!」
「「「はい!」」」
大人を前に背番号順に並んで、大地さんのかけ声と共にお礼を言った。……こうしてみると俺だけベンチコート着てなくて忘れたみたいじゃん。
「慣れない移動で消耗して試合当日に体調崩して自分達のバレーをできなくて負けたって学校を何度も見てきた。
勝つためには自分達のバレーをすることが重要になるし、そのためには体調管理が必須だ。これからの季節インフルとかノロウイルスの危険もあるからよ。
暖かい格好をするってのは単純だけどめちゃくちゃ重要だぞ。忘れるなよ」
「「「はい!」」」
烏養元監督の次は新堂さん。
「今の部員数こそ少ないけれど、烏野の歴史も50年近く続いていてOBも結構な人数います。
実際に対戦するのは君達だけど、我々OBは君達を応援してます。是非ね、【墜ちた強豪 飛べない烏】だなんて2度と言われないように頑張って下さい。
全国進出、そして全国制覇する瞬間を楽しみにしてます!」
「「「はい!」」」
代表決定戦まであと1ヶ月。やるしかないぞ。
……あ、そろそろ中間テストもあるな。目指せ全教科90点だからな、良し。
【登場人物まとめ】
新藤直也 烏野高校男子バレー部OB会会長
赤、黄色、青、紫、白の5色といえば何を思い浮かべますか? 最近は水色と緑も加わりましたよね。そしてダンドリダンドリ。まあSwitch2持ってないんですけどね。