監督 鷲匠鍛治
コーチ 斉藤明
01 牛島若利
02 添川仁
03 瀬見英太
04 大平獅音
05 天童覚
06 菊池一弘
07 湯野浜海青
08 五色工
09 入江謙一
10 白布賢二郎
11 柴田勇
12 川西太一
13 平山翔太 リベロ
14 山形隼人 リベロ
※6、9、13番がオリジナル
~スターティングオーダー
4 大平獅音 1 牛島若利 12 川西太一
5 天童覚 10 白布賢二郎 8 五色工
試合展開に興味がなければ「2012年10月⑨」まで飛ばしてください。お願いいたします。
代表決定戦最終日。白鳥沢との春高進出をかけた決勝戦だ。昨日ぐっすり寝たから疲れも無い。ノヤ先輩には悪いけど、今日は俺に任せて貰おうかな。
白湯飲んで顔洗ってこよー。それからストレッチだ。
朝の身支度をして荷物の確認をしていると、そろそろ出発してもいい時間が近付いてきた。最後にもう1回荷物の確認をする。
2種類のユニフォームの上下、スパッツ、ニースリーブとアームスリーブ、シューズ、ソックス、練習着、予備のサポーター類、テーピングとかの小物、タオル、軽食……。うん、大丈夫そう。
リュックのジッパーを閉じて、マスクをしてジャージとベンチコートを羽織っていく。……良ーし、大丈夫そう。
「鷲匠先生は相変わらず良い選手集めてる。強えぞ」
「分かってる。でももうやるしかないよ」
「おう。頑張ってこい」
「うん」
まず祖父ちゃんとハイタッチ。続いて祖母ちゃん。
「ビデオで撮ってるからね」
「情けない姿が残らないようにしないと」
祖母ちゃんとハイタッチ。続いて父さん。
「父さん達も梟谷グループの皆もライブ見てるってよ。頑張れ」
「ん。音駒魂見せつけてくる」
「お前烏野な?」
ぐえっ。祖父ちゃんに突っ込まれた。
父さんとハイタッチして、お次は母さん。
「いつも通りやってきなさい。烏野なら大丈夫でしょ」
「適当だなー」
母さんとハイタッチ。続いて姉ちゃん。
「烏野が勝ったらお父さんにパフェ連れてって貰う約束だから勝ちなさいよー」
「何それ聞いてない」
「今言ったし」
「えー」
姉ちゃんとハイタッチ。続いて美緒。
「顔気を付けてね! 1番さんパワーすごそうだから」
「まー、当たったら当たったでしょうがないよ。バレーやってたらたまーにあるし。避けるけど」
「私もパフェ行きたいから勝ってよ」
「勝手に俺達で賭けるなー。こんにゃろー」
美緒をハイタッチ。そして、最後に彩音ちゃん。
「見てるから。頑張って」
「うん、応援宜しく。じゃあ、行ってきます」
……いでっ!? 背中叩かれたー。よーし、やってきますよー。
試合が11時からだから、まず学校で軽く動いて学校のバスで仙台市体育館へ移動。
決勝戦だけあってやっぱり観客数が多い。まー、牛島選手がいるもんね。皆見たいよね。俺も烏野生じゃなかったら見に行きたいし。
「なんか人多くね……?」
「決勝戦だしなー」
「あとウシワカ見たいんだろ」
「さっき女子大生? が『烏野何点穫れるかなー?』って賭けてましたよ」
「「「えぇー……」」」
ここにいるほとんどの人が白鳥沢の勝利を疑ってない。牛島選手がいるんだもん。それはしょうがない。
「ウシワカすげぇ! はわかりきったことだろ。ウダウダ言ってんじゃねえぞ。全国行くならやるしかねえんだから。その為に練習してきた。だろ?」
「「「オス!」」」
入り口に向かって歩き出そうとすると、私服姿の道宮先輩、相原先輩、佐々木先輩の3人がこっちの方に走ってきた。
「だ、だ! ……バレー部の皆! 頑張ってね!」
「おう、ゆ、……道宮達。応援来てくれてありがとな」
「そこは名前で呼んでやれよ、大地」
「そうだそうだー」
「あんたもだぞー、結ー」
「「「えっ!?」」」
龍先輩とノヤ先輩が目を見開いては驚いてる。ん? あの2人が良い感じになったの知らなかったのかな? 昼休みとか一緒にご飯食べるようになってんじゃん。8月の花火大会の日に【告白してOK貰った!】ってメッセージ貰ったんだよなー。仲睦まじいようで何よりだ。
「決勝頑張ってよ!」
「おう!」
「はいこれ! 必勝祈願!」
「マジか。ベンチに置かせてもらう。応援宜しくな!」
「「「任せろー!」」」
道宮先輩達に頭を下げて、今度こそ体育館の入り口に向かう。……龍先輩とノヤ先輩がうるさいけど。
「だ、大地さん! 女バレの先輩と良い感じなんすか……!?」
「お、おう。まあな」
「何で言ってくんないすか! 俺達チームメイトじゃないすか!」「盛大に祝いましょう、大地さん!」
「そういうのが嫌だからだよ! あんまり騒ぎ立てないでくれよ、頼むから」
「「オス!」」
というか、龍先輩とノヤ先輩、翔陽、飛雄くらいか。知らなかったの。体育祭でも写真撮ってたし。良きかな良きかな。
「龍」
「なんだ? ノヤっさん」
「相手は白鳥沢。活躍すれば?」
「……声援が来る?」
「そうだ。良いプレイには『西谷くぅ~ん!』とか『田中くぅ~ん!』とかってよ」
「っ!? やるしかねえぞ!!」
「「潔子さんに応援して貰うために!!」」
テンション爆上がりじゃん。この2人。っていうか、そこは清水先輩なんだな。
「ほらほら、公共の場なんだから」
「これ以上騒ぐんならユニフォーム置いて帰って良いぞ」
「「お、おす……」」
駐車場で良かったね。龍先輩、ノヤ先輩。
そのまま正面玄関の方に向かっていくと、暫定観客の皆さんから「相変わらず人数少ねー」とか「ウシワカとシンクロ攻撃のぶつかり合いどっちが勝つんだろうなー」とか囁き声が聞えてくる。耳栓持ってくれば良かったな。ま、有象無象が何言おうが関係ない関係ない。
「他の人とのトラブル起こすなよ。周りに気を付けろ」
「「「オォーッス」」」
仙台市体育館の正面玄関に入っても「カワイソー」って視線が飛んでくる中、「繋護ー!」って園田先生の声が聞えてそっちの方を見る。うおおっ。
やっぱり園田先生がいて、ケビン、聡、眞一、2こ下の俊、和成、涼太の6人がこっちに手を振っていた。俊達も育ってんじゃーん。
そのまま7人が俺達の方へと近付いてきて、全員で通行人の邪魔にならないように端っこに寄る。
「武田先生、烏養先生、決勝進出おめでとう御座います。そして烏野に興味がある生徒6人と一緒に春高進出の様子を見させて頂きます。今日は宜しくお願いします」
「「「お願いします!」」」
今度はウチのターン。まずは武田先生から。
「園田先生、そして庵里中学校の皆さん。烏野高校男子バレー部顧問の武田一鉄です。今日は遠路はるばるこちらまでお越し頂き誠にありがとう御座いました!
今日のために我々は頑張ってきたので、優勝杯を手にする瞬間をどうか楽しみにしていて下さい」
続いて烏養コーチ。
「烏野高校男子バレー部コーチの烏養繋心です。皆さんお久しぶりとはじめましてですね。
今の烏野は全国でも戦えるチームだと自負しています。我々が白鳥沢を倒す瞬間を見届けて下さい。澤村」
「はい! 応援宜しくお願いします!」
「「「お願いします!」」」
涼太気圧されたな? びびってんじゃねぞー、おらおら。
「我々は観客席の方で見させて頂くので、是非勝ち抜いて下さい。頑張れよー、繋護」
「はい! 皆も応援頼むぞー」
「繋護先輩頑張って下さい!!」「応援してます!!」
ケビンから順に1人1人とハイタッチしていって、園田先生達とはそこで別れた。俺達もまた歩き始める。
「前回より多くなかった?」
「ん? ああ、2つ下も3人いたからね」
「ってことは今中2!? 皆でっか!」
「全員180cm近かったな」「強豪校こっわ……」
翔陽と忠はびびり散らかしていて、飛雄と蛍は観察。そして、3年生3人がなんかホクホクしてた。
「来年再来年も安心だなー」
「まずは俺達だろうが、旭」
「そうだぞ。今日勝って来年の新入部員に入って貰わないと」
「そういうこった。来年も大事だが、それよりも目の前の白鳥沢戦だ。俺達はここに負けに来たんじゃねえからな。勝って全国に行く。その為に来たんだぞ」
「「「はい!」」」
こうして注目されてるだけで緊張感が高まってくるみたいで、旭さん、力先輩、一仁先輩、久志先輩は顔色が悪い。
まあねー、ここにいるほとんどの人が決勝戦を見に来てるわけだから、そりゃー緊張もするでしょうよ。「緊張して試合の内容覚えてません」は防ぎたいところだ。
「しょ、しょうちゃん!」
「……? っ! イズミン! コージー! 来てくれた!」
どうやら翔陽の知り合いみたいだ。……いや? どこかで見かけたな。うーんと……、ゴールデンウィークの音駒との練習試合で? こうしてみてもバレーやってるような雰囲気じゃ無いな。筋肉の発達具合も違う。
分析している間に翔陽が知り合い2人を龍先輩に紹介してた。
「あ、あの! 中学の最後の大会で人数あわせで試合に出てくれた友達です! ゴールデンウィークにも来てくれた!」
「当時バスケ部でした」
「サッカー部でした」
「通りで足技上手え奴いると思ったわ!!」
やっぱバレーやってなかったか。
「しょうちゃん、頑張って!!」「翔陽頑張れよ!」
「任せとけ! 応援宜しく!!」
「うん!」「おう!」
翔陽の友達2人と別れて、今度こそ全員で歩き出す。
「……あ」
「痛てっ。どしたー? ……あ」
「大地? スガ? ……あ」
大地さんが急に立ち止まって大地さんの肩にスガさんが顔を軽くぶつけたっぽい。
珍しくギャアギャアしてる3年生の視線の先を見ると横山のおっちゃんがいた。名前は横山静康さん。繋心兄ちゃんが現役の頃、どころか20年以上前から烏野を応援してるみたいだ。祖父ちゃんも知り合いだって言ってたし。
会うのは丁度5年ぶりか。話し掛けてきても良いかな。……今は無理そうだな。
「まず荷物置いて準備な。
いつも言ってるとおりだ。練習は本番を、本番では練習通りを想定しろってよ。ビビる必要はねえぞ。ウチだってちゃんと練習してきたんだから」
「「「オォーッ!」」」
あー、楽しみだ。
◇
11時から始まる烏野高校と白鳥沢学園の対戦を観戦・応援するために両校の関係者や生徒の家族、テレビ局等が続々と仙台市体育館へと集まっていた。
込田家の3人――込田慎吾、込田咲良、込田彩歌――も千葉県からやってきて、烏養一繋と烏養典子、猫又家の4人と込田彩音と合流していた。
猫又明育と猫又美繋、込田慎吾、込田咲良の4人が和気藹々とする。
「いやー、あっちの応援凄いね~、『しーらとりざわ!』って」
「こっちもOB会通して練習してたから大丈夫大丈夫。皆も適当に合わせてね」
「ええ、久々の繋護君の試合だから。頑張って欲しいね」
また、今年入団予定の高校3年生の選手の様子の確認と現2年生と1年生をスカウトするために女子の決勝戦を観戦しに来た羽染葵育と下園育音も彼らの集団と合流していた。
「今日お父さんも音駒の部員と一緒に観戦するって言ってましたけど、どうなりますかね」
「早く普段通りが出せると良いんですけど」
「鷲匠先生は大舞台でも緊張しないように練習させるからな。とはいえ、繋心がちゃんと指導してたら大丈夫だろ」
「さっき見た感じ、ちょーっと硬いかなって印象でしたね」
「ポテンシャル自体はある。しかし、それを試合中に発揮できればだが」と言うのが3人の共通認識だった。
日向翔陽の母親である日向七海と妹の日向夏も仙台市体育館の烏野高校関係者が集まる座席へと到着していた。
日向夏は烏野高校側の観客席で見つけた猫又真緒達へと早足で向かっていく。
「ねこのお姉ちゃん達久しぶり!」
「「「夏ちゃん久しぶり!」」」
「夏ね! 2cm伸びたよ! 123cm!」
「ご飯いっぱい食べてお兄ちゃん抜かさないとね」
「うん!」
猫又繋護や日向翔陽が長期合宿に明け暮れていた時に、日向夏は猫又美繋と共に千葉県の猫又家まで遊びに行っては猫又家姉妹と込田家姉妹の計4人とディズニーリゾートを訪れていた。
それからというもの、5人は順調に交流を深めていて、猫又家姉妹と込田家姉妹の4人は日向夏を妹のように、日向夏は猫又家姉妹と込田家姉妹4人を姉のように慕っている。
特に烏野高校に入学して以来日向翔陽が家にいる時間が少なくなっていて、どこか寂しさを感じている日向夏にとっては嬉しい出会いであった。
「体育館凄いね! パレードみたい!」
「日向君が良く言ってる東京体育館はもっと凄いよ」
「っ!! 夏もバレーやりたい!」
「そしたらお母さんに相談かな」
「っ!! お母さーん!! 夏もバレーやる!!」
日向夏が猫又美繋と挨拶を交わしていた日向七海に飛びかかって、日向七海はそんな娘を抱きしめる。
「危ないでしょ、気を付けて」
「うっ、はーい……」
「烏野が勝ったらバレー教室見つけないとねー」
「っ!! うん!!」
日向夏の行動に苦言を呈したら、日向七海は猫又真緒達にお礼を伝えて頭を下げた。
「真緒ちゃん達も夏がお世話になってます。いつもありがとう。
『お兄ちゃんよりお姉ちゃんの方が好きー!』って言うようになって、今日も凄く楽しみにしてました」
「いえいえ。私達も繋護がこっちに来てからなかなか会えない時間が増えて、夏ちゃんの気持ちも分かりますから。いるのが普通なのにいないとなんか変だなーって感じ」
「また夏と遊んでくれると嬉しいです。夏もちゃんとお礼言ってよ?」
「分かってるもーん」
「じゃあ夏ちゃん今日は一緒に応援するよ」
「うん!」
日向夏は猫又美緒と手を繋いで、烏野高校の応援を始める。日向七海は大人たちの方に向かっていった。
月島蛍の母である月島佳乃や山口忠の母親である山口明美、月島明光の3人も会場に到着していた。月島明光は今日観戦に来たOBと一緒に行動して今は不在ではあるが。
「ひえー、やっぱり応援凄いー。忠大丈夫かなー、あの子気が小さいから」
「烏野入って成長してるから大丈夫。蛍も本入部決まった日から言動に気を付けるようになってるし」
「高校入ってから蛍君大人びたよね。
忠さ、本入部の日に難しい顔して帰ってきたから、バレー部入部したくなかったのかなって思ったけど、こっちが思ってるようなことじゃなくて。本入部の日に何かあったよね、絶対」
「だね。蛍に聞くと聞かないでくれーって顔するから何かあったよ。でも部活は楽しそうにしてるからいいや。
あと、欲を言えば白鳥沢に勝って明光の仇討ちもしてくれると嬉しいけど」
「分かる。中学の時は決勝戦なんて縁の遠い話だったんだけどね。頑張って欲しいな」
「そうだね」
月島佳乃と山口明美の2人はそのまま烏野高校関係者が集まっている方へと向かっていく。
影山飛雄の母である影山華と姉の影山美羽も仙台市体育館へと到着していて、烏野高校側の観客席に向けて歩いていた。
「この空気感は相変らずだなー」
「またバレーやりたくなる?」
「んー、お遊びくらいならね。飛雄みたいにバレーばっかり! とはならなかったし」
「帰ってきたんだから飛雄ともちゃんと話しなさいよー」
「分かってまーす」
家を出てからと言うもの、影山飛雄の試合を見に来たのは久方ぶりで有るため、影山美羽はどこか楽しそうにしている。
特に影山飛雄と影山美羽の2人がバレーボールを始めるきっかけを与えたのは祖父の影山一与だ。彼がいれば、とどうしても考えざるを得なかった。
「一与さんも見たかっただろうなー。一与さんなら今の飛雄に何て言うかな」
「『全国大会に行けばもっと強い人と戦えるよ』とか?
ほら、烏野に入学してから『運動神経すっげぇ良いのにバレー下手くそ!』とか『1年にレシーブめっちゃやべー奴がいる』とか烏野のこと楽しそうに話すようになったのよね。
正直青葉城西高校には入らなくて正解だったかなって。北川第一のメンバー結構いるから中学の二の舞だっただろうし」
「そんなifのことなんて分からないでしょ。ただ、烏野に愛着持ってそうで安心する。最悪バレー辞めてた可能性もあるからね」
「お父さんの分もちゃんと応援しよう」
「うん」
そんな会話をしながら、影山華と影山美羽は烏野高校側の応援席へと歩いていって、先に観客席へと到着していた月島佳乃に声をかけられる。
「影山さん、こんにちは! こっちですよ~」
「あ、月島さん、こんにちは! あそこ行こう」
「どなた?」
「11番の月島君のお母さん。……あ。あと12番の山口君のお母さんも。烏野の保護者はあそこにいるね」
「なるほど」
影山華と影山美羽の2人は烏野高校男子バレー部1年の保護者が集まっている方へと歩いて行って合流した。
「皆さんこんにちは。影山飛雄の母と娘です」
「みなさんはじめまして。影山美羽です。いつも弟がお世話になってます」
月島佳乃、山口明美、日向七海、猫又美繋の順で簡単に自己紹介する。そして、そこに日向夏も近付いてくる。
「おねーさん、トビオのお姉ちゃん?」
「うん、そうだよ。影山美羽です。美しい羽で美羽ね。お姉ちゃんに名前教えてくれる?」
「はい! 日向夏です! しゅんかしゅーとーの夏です! お兄ちゃんは背番号10番です!」
影山美羽がコート横でウォーミングアップをしている烏野高校男子バレー部一同を見て納得がいったような表情をした。
「夏ちゃんもバレーするの?」
「これからしたいと思ってます!」
「そっかー、良いチーム見つかると良いね」
「うん!」
また、猫又姉妹と込田姉妹の4人も合流して簡単に自己紹介をして、女性陣で談笑を始めた。
烏養一繋や烏養繋心、OB会会長の新藤直也が大々的に連絡を取ったため、卒業生が代表決定戦の決勝戦の応援に駆けつけていた。
その中に、前年度キャプテンを務めていた黒川広樹と前々年度キャプテンの田代秀水の姿もある。
「凄いな、澤村達! これ勝てば全国か!」
「そうですね」
「もっと嬉しそうにしろよ!」
「嬉しいですよ。でもあと1年遅く産まれていたら、とも思います」
「……でもさ、澤村達は自分達で行動してた。
OB会でバレーを指導出来る人にコーチを頼むとかあったよなって今になって思うよ。俺達は現状で満足しちゃってた。
でも澤村達は自分で行動した。多分そういう所だ」
「……そうですね」
「まあでも羨ましいけどな!」
あの時ああしていたら、とそんな後悔が2人の中にはある。しかし、だからこそ、烏野高校を卒業した今でも2人はバレーボールを続けている。高校時代に得られなかった青春を取り戻すかのように。
烏養一繋に軽く挨拶をした月島明光や宇内天満、森行成らもまた観客席に着いていた。
「烏養先生元気そうで良かった」
「宇内ももうちょっと顔出せよ。現役生と結構練習試合してるんだぜ?」
「就活もなんとかなったのでこれからはって感じです」
「何やるんですか?」
「漫画のアシスタント。いつか自分の漫画出す!」
「目指せジャンプだな」
「はい! まずは漫画の知識を付けて、そっから挑戦します。漫画も基礎大事なので。どうすれば面白い漫画を描けるのか。作者本位にならないようにするとか色々勉強して挑戦します」
「おう、楽しみにしてる」「楽しみです!」
高校を卒業して気づけば20歳。更には社会人になる年齢となっている。
バレーボールに打ち込んでいる現役生を見て3人はどこか切なさを感じていた。そして、月島明光を見つけた田中冴子が声をかけようとしたら、先に宇内天満が彼女に声をかける。
「あれ、田中じゃん」
「は? あんた誰だよ」
「え、同じ学年の宇内天満だよ。……いやまあ在学中はそこまで話したこと無いけど。でもよく体育館に来てたろ? 飲むヨーグルト買いにさ」
「はぁ? 月島の兄貴ー、説明プリーズ」
田中冴子が3人の中で唯一面識のある月島明光にヘルプを出すと、「あれだけ〝小さな巨人〟って言ってたのに……」と苦笑いしながら、彼は答えていった。
「ほら、宇内が〝小さな巨人〟って呼ばれてた選手だよ。烏野の10番。前言ってただろ?」
その言葉を聞いて、田中冴子が宇内天満の顔をジロジロと見る。そして、記憶の中の烏野の10番と目の前にいる宇内天満が合致して彼女の口から悲鳴が上がる。
「何でいんだよ!」
「えっ、後輩の応援に来たんだけど。いや、それこそなんで田中がいるんだよ」
「5番があたしの弟なんだよ。……あの10番さ、あんたの試合見て烏野に入学したんだって。先輩として声かけてやりなよ」
「あとでな。もう試合始まるし。今は後輩のお手並み拝見だ」
そして、控えがいない烏野高校男子バレー部の応援の音頭を代わりに取ることになっている日向夏と猫又美緒の「烏野高校応援始めまーす!!」という声で、烏野高校の応援団は応援を始める。
OBや家族が50人。そして、烏野高校の現役生が約60人と白鳥沢学園の応援団には負けていない。
「いっけーいけー!」
「「「いっけーいけー!」」」
「押っせー押せー!」
「「「押っせー押せー!」」」
「「「1番大地ー、2番孝支ー! ガッツで行こうぜ!」」」
「「「オォー!!」」」
1番の澤村大地から13番の猫又繋護に向けて烏野高校の応援が仙台市体育館メインアリーナに響き渡る。
◇
両校公式ウォーミングアップが終わって、遂に試合が始まる。
「じゃあ皆さん、上から応援してます!」
「おう!」「やっちゃん頼むぞー!!」
ベンチにいられるマネージャーの数は1人。今年度は清水先輩が優先してベンチに座る。但し、やっちゃんは観客席からアナリストとして活躍しているからただの応援要員じゃない。部員数が多くないからって舐めて貰っては困る!! うぉー!
やっちゃんを見送って、最後のミーティングに入る。
「じゃあいよいよ本番だ。とは言ってもそんなに大きく身構える必要はねえ。練習通りやってこい。このために今までやってきたんだからな。5セットマッチを楽しんでこい!」
「「「はい!」」」
日頃から言ってる練習は本番を、本番は練習通りに。それを実践していこう。
続いて武田先生。
「白鳥沢は強い。でも君達だって強くなりました。
この試合に勝って、〝全国大会〟と言う名の更に大きな空へと羽ばたきましょう! 君達ならばできます!!」
「「「はい!」」」
コートに入って、フロントゾーンのネットに一番近いところから副審、大地さん、スガさん……最後に俺って感じで背番号順に並ぶ。俺はエンドライン側だ。白鳥沢学園のメンバーも同様に並んで、少し経ったらアナウンスが聞えてきた。
『これより、全日本バレーボール高等学校選手権大会 宮城県男子代表決定戦 宮城県立烏野高等学校 対 白鳥沢学園高等学校の試合を開始致します。
両校の健闘を称え、大きな拍手をお願い致します』
観客の人と一緒に拍手をして、今向いてる方に一礼。逆を向いて一礼。そしてネット際まで近付いて、白鳥沢学園の2番と3番と握手をしてベンチサイドのウォーミングアップゾーンまで捌ける。俺を境にスタメンとスガさん以降のスタメンじゃないメンバーで並んだ。
『烏野高等学校のスターティングプレイヤーを紹介致します。1番、澤村大地』
「はい!」
「「「大地ー!!」」」
名前を呼ばれた大地さんが旭さん、龍先輩、飛雄、翔陽、蛍、ノヤ先輩、俺、スガさん、力先輩、一仁先輩、久志先輩、忠、清水先輩、烏養コーチ、武田先生の順でハイタッチをしてコートに入る。
『3番、東峰旭』
「はい!」
「「「旭ー!!」」」
旭さんも大地さんと同じようにベンチのメンバーとハイタッチをしてコートに入る。
『5番、田中龍之介』
「オッシャー!!」
「「「龍之介ー!!」」」
龍先輩も同様に。
『9番、影山飛雄』
「はい!」
「「「飛雄ー!!」」」
飛雄も同様に。
『10番、日向翔陽』
「はい!!」
「「「翔陽ー!!」」」
翔陽も同様に。
『11番、月島蛍』
「はい」
「「「蛍ー!!」」」
蛍も同様に。続いて俺達だ。
『リベロ、4番、西谷夕』
「シャアっ!!」
「「「夕ー!!」」」
最後に俺。
『リベロ、13番、猫又繋護』
「はい!」
「「「繋護ー!!」」」
スガさん、力先輩、一仁先輩、久志先輩、忠、清水先輩、烏養コーチ、武田先生とハイタッチをしてコートに向かう。一礼してからコートに入って、大地さん、旭さん、龍先輩、飛雄、翔陽、蛍、ノヤ先輩の順でハイタッチをする。
『マネージャー、清水潔子』
「はい!」
「コーチ、烏養繋心」
「はい!」
「監督、武田一鉄」
「は、はい!」
これでウチの紹介はおしまい。続いて白鳥沢。
『続きまして、白鳥沢学園高等学校のスターティングプレイヤーの紹介です。1番、牛島若利』
「はい!」
「「「牛島くぅ~ん!!」」」「「「若利ー!!」」」
俺達と同じように牛島選手からコートに入っていく。それにしても女子からの歓声がすげえすげえ。これから対戦すんだよなー。
『4番、大平獅音』
「はい!」
「「「レオーン!!」」」
牛島選手に隠れてるけど、しっかりと点を獲るポイントゲッターだ。
『5番、天童覚』
「はーい!」
「「「サトリー!!」」」
蛍とは対極のミドルブロッカー。ゲスブロッカーとしてこっちのスパイカーの気力を殺いでくる。
『8番、五色工』
「はい!」
「「「五色ー!!」」」「「「ツトムくぅ~ん!!」」」
1年生にしてスタメン入り。トスが上がってくる本数自体は少ないけど、上がったら確実に決めてくる。あと見かけによらず技巧派。流石1年で白鳥沢のスタメンに入るだけある。
『10番、白布賢二郎』
「はい」
「「「ケンジロー!!」」」
10番は分かりやすく牛島選手贔屓だ。多分牛島選手が引退したら10番も引退しそう。それくらい牛島選手に拘ってる。
『12番、川西太一』
「はい」
「「「たいちー!!」」」
12番は臨機応変にブロックしてくるミドルブロッカーだ。点数を稼げれば何でも良いというか。マジ面倒くさい。
続いてリベロ2人の紹介に入った。
『リベロ、13番、平山翔太』
「はい!」
「「「翔太ー!!」」」
確認した録画だと、ほとんど14番が試合に出てるから未知数。ただ、白鳥沢だから下手では無いはず。
『リベロ、14番、山形隼人』
「はい!」
「「「隼人ー!!」」」
……14番さ、トータルディフェンスって意味では全く頼りにならない5番と12番の後ろでリベロやってんだよな。どんな練習やってんだろ。いやー、話聞いてみたいぜ。
『コーチ、斉藤明』
「はい」
『監督、鷲匠鍛治』
「ん」
鷲匠先生の紹介が終わって、コートの中の8人で集まる。
「良し。じゃあ1本1本丁寧にやっていこう。烏野ー!! ファイ!!」
「「「オォーッス!」」」
今度はポジション確認だ。ノヤ先輩と俺はコート外に出て、副審が背番号を確認できるようにサイドラインに立つ。
「行け行け烏野! 押せ押せ烏野!」
「「「行け行け烏野! 押せ押せ烏野!」」」
白鳥沢に負けず、ウチの応援も凄い。
「さぁ~行きましょ~」
「「「さぁ~行きましょ~」」」
「さぁ~行きましょ~」
「「「さぁ~行きましょ~」」」
「今日の~、相手は~」
「「「今日の~、相手は~」」」
「烏野高校~」
「「「烏野高校~」」」
「「「宜しく宜しく~!」」」
でもやっぱり白鳥沢の応援は凄い。チア部と吹奏楽部の応援は反則でしょ。……って思ったけど、庵里も応援あったわ。
白鳥沢
4 1 牛島選手 12
5(リベロ) 10 8
烏野
9 飛雄 11 蛍 3 旭さん
5 龍先輩 10 翔陽(俺) 1 大地さん
副審からのポジション確認が終わった。
「やったれー、繋護!!」
「分かりました!」
まずノヤ先輩と別れて、次にサイドラインで翔陽と入れ替わる。
「繋護ー、行ってこーい!」
「おーっし!」
サイドラインでコートに向かって一礼。そしてコートに入る。サーブはこっちからで大地さんからだ。龍先輩とのポジショナルフォールトに気を付けながらバックセンターで待機する。
「「大地ー! 1本ナイッサー!!」」「「「大地さん1本!!」」」
「1本集中!」
「「「オォーッ!」」」
そのうち主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。この間にバックレフトに移動する。
牛島選手はサーブレシーブに参加しないからネット際からライトに移動。前衛に進んでる分10番もセットアップに走れるって訳だな。
大地さんのサーブはバックライトの8番の方へ伸びていく。
「「「五色!」」」
「はい!」
「寄越せ!」
「牛島さん!!」
8番がしっかりオーバーでAパスを返して、10番がライトの牛島選手にオープントスを上げる。来た。この日を待ってたよ。
牛島選手がスパイクの助走に入って、センターの蛍とライトの飛雄がレフトの旭さんと合流してアンテナから旭さんの左手まで30cmほど開けた位置でブロックの準備をする。
「1番来るぞ!」
「行きます! せーのっ!!」
「「「ブロック3枚!!」」」
集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。
助走――ストレート。
身体の向き――ストレート。
視線――今眼が合った。こっちに来る、つまりストレート。
スイング――ストレート。
⇒ストレート!
「ふっ!!」
「「「ノー!!」」」
牛島選手のスパイクが放たれる。一直線に俺の方に伸びてきて、すばやく回転とボールの落下地点を見極めてアンダーの構えを作って両手を伸ばす。
ボギャン!!
人の身体から鳴っちゃいけない音が鳴ったものの、身体全体でボールの勢いを殺した結果、レシーブに成功。……成功はしてないな。BパスかCパスか。くっそ、65点。にしても、おっも、いてえ……。
でもライト側のアタックラインに落ちる軌道を取りながらこっちコートに上がった。良し。
「「「っ!! ナイスレシーブ!!」」」「「「っ!?」」」「「「っ!?」」」
烏野陣営からは喜びの声が。白鳥沢陣営と白鳥沢の勝ちを疑っていない観客からは驚きの声が聞えてくる。
夢? いいや、両腕に残る熱が現実だって分からせてくれる。
ビックリするのはまだ早いよ、試合は始まったばっかでしょ。これから何本でも取ってやる。この日のために練習してきたんだから。
「カウンター!!」「何ぼさっとしてる! まだ笛鳴ってねえぞ!!」
「「「っ! はい!」」」
今度はこっちのターンだ!!
「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」
烏養コーチと鷲匠先生の叫び声が聞えてきて、飛雄はボールの落下地点へとセットアップ。レフトの旭さん、バックレフトに寄ったバックセンターの龍先輩、センターの蛍、バックライトの大地さんがシンクロ攻撃に入った。俺はレフト側のブロックフォローに入る。
俺がブロックフォローに入った様子を見て、牛島選手と5番が若干旭さんを警戒した。だからこその。
「お願いします!」
「1番だ!」
飛雄は大地さんを選択。トスがバックライトからのバックアタックに伸びていく。
白鳥沢のレフトの4番とセンターの5番が慌てて大地さんのバックアタックをブロックしようとするけど、ブロックの完成前に大地さんがスパイクを打って、相手コートのバックレフト側のサイドライン横にボールが落ちた。主審が〝イン〟のシグナルを出す。先制点はこっちだ。【0-1】。
「オシっ!!」
「「「ナイスキー!!」」」
コート中央に集まって皆でペシペシハイタッチ。
「猫又もナイスレシーブ!!」
「はい! ……あとアンテナからもうちょっと離れた方が見やすいかもしれないです。20cmくらい?」
「分かった。タイミングは?」
「……ちょっと早かったかな? そこまで気になりませんでした」
「ブロック完成まで時間貰う」
「うん」
ひとまず情報共有をすると、龍先輩に肩を叩かれる。
「ウシワカのスパイク拾ったんだからもっと喜んでも良いんだぜ?」
「まだ1点目ですよ、喜ぶのはまだ早いです。あとCパスですよ。飛雄が走ってるじゃないですか」
「あれくらい高いと問題ねえよ」「上がるだけでもすげーよ……」
そして、外から烏養コーチの「良いぞ良いぞ! 牛島が調子づく前に点数稼げ!!」って叫び声が聞えてきた。
「まだ始まったばっかだ。でもこっちも乗ってこう」
「おう!」「「「はい!」」」
次のラリーに備えて、龍先輩との位置に注意しながらバックセンターで構える。
「「大地! もう1本ナイッサー!!」」「「「大地さんもう1本ナイッサー!!」」」
「ここで切るぞ!」
「「「オォー!」」」
主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。その間にバックレフトへと移動してあっちのコートの様子を見る。
「「「五色!」」」
「はい!」
大地さんのサーブはもう一度8番に伸びていって、8番はしっかりAパス。ボールがネット際の10番に返っていった。
「寄越せ!」
「牛島さん!!」
ここはきっちり牛島選手で1点目を稼ぎたいんだろうなって伝わってくる。ライトにオープントスが伸びていって、俺もパパッとレフト側のサイドラインまで寄る。前衛陣もレフトの旭さんと合流してブロックの態勢を整えた。2回目にしてブロックの位置が若干センターよりに修正されてる。
「「「せーのっ!!」」」
「「「ブロック3枚!!」」」
集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。
助走――ストレート。
身体の向き――クロス。
視線――旭さんの右手と蛍の左手の間らへん。
スイング――クロ、……ストレート。
⇒ストレート!
「ふっ!」
「「「ノー!!」」」
1回目とはスイングの速さが違う。気づいた瞬間には前に飛び込んでいて、両腕に強烈な衝撃が伝わった。なんとか上がったけど、ボールはそのまま相手コートに返っていく。
「良いぞナイファイナイファイ!! 諦めんなよ!!」
「「「チャンス!!」」」「「「山形!!」」」
やっば。尻上がりに調子上げてくんじゃ無いのかよ。いったぁ……。
笛は鳴ってない。つまりラリーはまだ終わってない。素早く起きて、相手コートの様子を窺う。
14番のリベロがチャンスボールを処理して、ボールはセッターに返っていった。
「白布!」
「牛島さん!!」
3度目の牛島選手。10番からのオープントスがライトに上がって、牛島選手がスパイクの助走に入った。
俺はサイドラインまで。ブロッカー陣もレフト側に寄ってブロックの態勢を整える。
「「「せーのっ!!」」」
「「「ブロック3枚!!」」」
集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。
助走――ストレート。
身体の向き――クロス。
視線――旭さんの左腕。
スイング――旭さんの左腕を狙うように。
⇒ブロックアウト!
「ふっ!」
「ワンチ!」「「ノー!!」」
予想通り、3度目の牛島選手のスパイクは旭さんの左手首に当たって鋭い角度でサイドラインを割りそうだ。パパッと動いてフライング。ボールは左腕に当たって上がったけどネットの真上に落ちる放物線を描く。
「「「川西!!」」」「「「月島!」」」
「はい!」「はい!」
相手の12番と蛍が同時にジャンプしてる様子を見ながら素早く立上がってコートに戻っていく。
「ふっ!」「くっ……!」
先に12番が触ってボールはこっちコートに落ちてくる。またまたフライングをして右手のパンケーキでボールを上げた。ここは俺のテリトリーだ。
「カバー!」
「旭!!」「旭さんこっち!」
「……田中!」
大地さんと龍先輩がトスを呼んで、俺が上げたボールを旭さんがアンダーでバックセンターの龍先輩に上げる。そのボールを見て龍先輩はバックアタックの助走を始めた。素早く立上がってブロックフォローに入る。
「「「5番!」」」
「「「ブロック3枚!!」」」
白鳥沢はセンターの12番にライトから牛島選手、レフトから4番が合流して3枚ブロックの態勢を整えた。
「「「せーのっ!!」」」
「ォラ!!」
「ノー!」「ワンチ!」「ワンチ!」
「飛雄!」「影山!」
「クソ……!」
龍先輩のスパイクは12番の左手と4番の右手に当たってドシャット。バンチリードもできてるし。さっすが白鳥沢。
……お? どうやら12番がネッチしてたっぽい。こっちの点数になった。【0-2】。
「だぁっ! すいません!」
「ドンマイ川西!」「ナイスブロック!!」
完璧なドシャットですよ。ひえっ。
「セ、セーフ……!」
「危なかったなー……」
「あと猫又もナイス!」
「はい!」
コート中央に集まってペシペシハイタッチ。
「ウシワカ、繋護に対抗してるっぽいですね」
「だな。一気に出力上げたな」
「頑張ってワンチ狙ってこう」
「おう」「「「はい」」」
打数を打たせれば打たせるだけ疲れも溜まっていく。バレーはチームスポーツなんだ。俺が粘れば粘るだけノヤ先輩が楽できる。音駒の魂なめんじゃねえぞ、おおん。
「「大地もう1本ナイッサー!!」」「「「大地さん1本!!」」」
「集中!」
「「「オォー!」」」
龍先輩との位置関係に注意しながらバックセンターでラリーが始まるのを待つ。そして、主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。今度の狙いは牛島選手が移動するライト側のフロントゾーン。
「「牛島さん!」」「「「若利!」」」
ん~、高めに上げて牛島選手と12番の移動をできる時間を確保した。セッターの10番は後衛だからツーは無い。
「寄越せ!!」
「牛島さん!」
やっぱり牛島選手で来るよな。オープントスがライトに上がって牛島選手がスパイクの助走に入る。
俺はバックレフトのサイドライン側。ブロッカー3人もレフトに詰めてブロックの態勢を整えた。
「いきます!」
「「「せーのっ!!」」」
「「「ブロック3枚!!」」」
集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。
助走――クロス。
身体の向き――クロス。
視線――蛍の両手の指先。
スイング――クロス。
⇒ブロックアウト!
「ふっ!」「後ろ!」
「ノー!」「ワンチ!」「ノー!」
「大地!」「「田中!」」
牛島選手のスパイクは蛍の右手の中指と薬指に当たってはエンドラインよりも後ろに吹っ飛んでいった。龍先輩がジャンプしてなんとか触っても勢いは残ったまま吹っ飛んでいく。【1-2】。
「良し!」
「「「ナイスキー!!」」」
あっちはあっちで喜んでる。一方こっちはこっちでコート中央に集まった。
「ナイファイ田中」
「威力ぱねえっす……」
「ブロックアウト狙われたら今の位置よりもう二歩後ろだな。頑張って繋ごう」
「おう」「「「はい」」」
相手のサーブは12番。ジャンフロだったはずだ。12番がサーブだから5番が前衛に回ってきた。
前衛の飛雄と蛍の分警戒してバックセンターで構える。
「「「川西」」」「「「太一」」」
「1本集中するぞ!」
「「「はい!」」」
主審の笛が鳴って、12番がジャンフロを打ってきた。狙いはバックレフトの龍先輩。
「「「田中!」」」
「……ォラ!」
龍先輩がオーバーで処理。ボールは飛雄に返っていく。
「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」
バックレフトの龍先輩、センターの蛍、バックライトの大地さん、ライトの旭さんがトスを呼びながらシンクロ攻撃の助走に入る。
「お願いします!」
「「「3番!」」」
飛雄が選択したのは旭さん。ファーストテンポの助走に合わせて平行に近いトスをライトの旭さんに上げて、旭さんがレフトの4番のブロックの完成前にスパイクを叩き込んだ。
ワンバンしたボールが観客席へと飛んでいって白鳥沢の女子生徒がキャッチする。パワーならこっちだって負けてない。【1-3】。
「ヨーッシ!!」
「「「ナイスキー!!」」」
コート中央に集まってペシペシハイタッチ。
「良いぞ! 辛いかもしんねえがブロックを分散させるって意味でシンクロ攻撃を多用していけ! それ以外じゃあウチに勝機はねえぞ!」
「「「はい!」」」
ブロック3枚に勝てないなら分散させれば良い。その為のシンクロ攻撃だ。全員が囮で全員がアタッカー。それがウチの勝ち筋。
「旭、1本サーブ頼むぞ」
「おう!」
「「「旭さん、1本ナイッサー!!」」」
1つローテーションが回って旭さんがサーブで龍先輩が前衛に回る。牛島選手もストレート抜いてくるだろうな。故に要注意。
「1本集中!」
「「「オォーッ!」」」
蛍がライトで対角の俺はバックレフトだから、そのままバックレフトで相手コートの様子を見る。そのうち主審の笛が鳴って、旭さんがジャンプサーブを打った。狙いは10番がセットアップをするためにぽっかりと空いたバックレフト側。
「「「五色!」」」
「はい! ……あっ、カバーお願いします!」
アンダーで構えた8番は触るけどボールはそのまま上に上がって乱れた。でも、こういう時には牛島選手だ。
「白布!」
「はい! 牛島さん!!」
だよね。バックレフトまで走って行った10番がライトの牛島選手に向けて二段トスを上げる。ちょっと割れたか。
落下地点を見ながら牛島選手がスパイクの助走に入ってるけど、割れた分どこを打ってくるか分からなくなった。それでもブロッカー3人がコースを塞ぐようにブロックの態勢を整える。
「「「せーのっ!!」」」
「「「ブロック3枚!!」」」
集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。
助走――クロス。
身体の向き――クロス。
視線――飛雄の右側、つまりインナー。
スイング――インナー。
⇒インナー!
「ふっ!」「大地さん!」
牛島選手が飛雄の右手の横を狙ってスパイクを打って、フライングした大地さんが触る前にボールがコートに落ちた。あそこからインナー狙ってくるのかよ……! 【2-3】。
「良し!」
「「「ナイスキー!!」」」
あっちもコートでも牛島選手を中心にハイタッチをしていて、ウチもコート中央に集まる。
「悪い!」
「ドンマイっす!」
「あそこからインナー打てるとかやっぱりウシワカすげーっす」
「サイド2人はブロックの横のコースにいよう。今のは俺の位置取りが悪かった」
「それで、次牛島さんのサーブなんで集中しましょう」
「「「……おう」」」
あっちのローテーションが回って、牛島選手がサーブで10番が前衛だ。正直10番は高さがそこまでないからそんなに。ただ、牛島選手はバックアタックも打ってくる。10番のツーアタックにはあんまり警戒する必要はなくて、でも牛島選手のバックアタックには注意。
「「「若利! 1本ナイッサー!!」」」
「1本集中!」
「「「オォーッス!」」」
旭さんがライトのフロントゾーンも守るからバックセンター寄りのバックレフトに入って、龍先輩との前後の位置関係に気を付ける。ここ、早く切らないと一気に離される。
主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。左利き特有のバナナサーブで左に曲がってくる。
回転をよーく見極めてアンダーでジャスト! ……おっも!!
背中が床に着くように後ろに勢いを殺して次のブロックフォローに出遅れる。でもボールは上に上がった。
「決めろ!!」
「レフト!」「バック!」「バック!」「ライト!」
レフトの龍先輩、ちょっと左にずれてバックレフトの大地さん、バックライトの旭さん、ライトの蛍がトスを呼びながらシンクロ攻撃に入って、コート中央に上がったボールを飛雄がセットしに走る。早く立て!
「いけっ!」
「「「11番!」」」
飛雄が選択したのは蛍。Dクイックに近い平行トスがライトまで伸びていって、蛍が4番の完成前のブロックの上からスパイクを叩き込んだ。こっちの点だ。【2-4】。
「ッシ」
「「「ナイス月島!」」」「「「ナイスキー!!」」」
コート中央に集まってペシペシハイタッチ。
「ナイスレシーブ繋護」
「ナイスか? もうちょっと回転どうにかしないとな」
「上がってんだから良いんだよ」
龍先輩に背中をはたかれた。い、たくはないな。
蛍がサーブだから、俺は前衛に上がってくる翔陽と交替しないといけない。ということで、サイドラインで翔陽と入れ替わる。
「指気を付けろ。吹っ飛ばされるぞ」
「おう! 俺も負けてらんねえ!!」
翔陽とハイタッチして、コートに出たら振り向いて一礼。そして立って指示を出している烏養コーチの所に。
「良いぞ、その調子だ。月島達のブロックが完成するまでなるべく時間稼いでくれ。レシーブで牛島にストレス与えていけよ」
「はい!」
「猫又君良いですよ! その調子でお願いします!」「頑張って猫又!」
「はい!」
武田先生と清水先輩とハイタッチをしてウォーミングアップゾーンへ。スガさん達もハイタッチの準備をしてた。
「「「ウェーイ! 良いぞ!!」」」
「音駒魂見せてやりますよ!」
「お前烏野な!!」
ノヤ先輩から俺のタオルを渡されて、軽く汗を拭う。
「目茶苦茶左に曲がってくるので、いっそサイドラインに足がかかる位でも良いかもです」
「オッケ。いつでも出番待ってるからな!」
「今日はノヤ先輩の出番無いですよ!!」
「繋護てめえ!」
蛍のサーブ権は牛島選手のバックアタックで切れた。【3-4】。蛍と交替しないといけないからサイドラインへ。
「日向のざるブロック気を付けて」
「どうすんだよ」
蛍とハイタッチして、コートに一礼してからバックライト側まで走ってサーブレシーブに備える。前衛の飛雄の分前にも気を付けないと。
「「「獅音! 1本ナイッサー!!」」」
「1本集中!!」
「「「オォーッス!」」」
主審の笛が鳴って、4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはー、ライト側のネット? ボールがこっちに向かってきてネットに当たってこっちコートに入ってきた。
「「「影山!」」」「飛雄!」
「……繋護!」
飛雄が1本目を触って、ライト側のフロントゾーンに落ちるようにボールを高く上げた。こういう時の俺だろ!
「やります!」
「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」
「「「っ!?」」」
アタックラインを踏まないように気を付けながらジャンプトスの助走をする。そして、レフトの翔陽、バックレフトの大地さん、センターの龍先輩、バックライトに移動した旭さん、ライトの飛雄も同時にシンクロ攻撃の助走に入る。
ここは。……翔陽だろ!
アンテナまで伸ばした速い平行トスをレフトの翔陽に上げて、アタフタしてる10番のブロックの上から翔陽がボールを下に叩き付けた。ネッチとかパッシングとかの反則は無い。こっちの点だ。【3-5】。
「シャアっ!!」
「「「ナイス日向!」」」
コート中央に集まってペシペシハイタッチ。この試合で翔陽の初得点だ。
「繋護もナイストス!」
「失敗しなくて良かったぜ」
「後輩に負けてらんねえ……!!」「俺にもトスくれ!」
「良いぞ! ガンガン使ってけ!!」
「「「はい!」」」
リベロからのトスで攻撃5枚。攻略してみろやー!! ……って舐めてかかったらひっくり返されるから落ち着けよ、俺。
「じゃあ影山サーブ頼むぞ」
「はい!」
「10番ブロック低いから前衛の時は積極的にレフト側使っても良いかも」
「オッケ」
ただ、飛雄が後衛に下がるから前衛のブロックが手薄になるターンが続く。10番がスパイクを打ってこないから警戒する必要が無いのは安心だけど、ノーブロでもあっちのスパイクを取らないといけない。こっからが正念場だ。
「「「影山1本ナイッサー!!」」」
「強打来るぞ! 1本集中!!」
「「「オォーッ!」」」
ポジショナルフォールトに気を付けながら旭さんとの位置を詰める。そのうち、主審の笛が鳴って飛雄がジャンプサーブを打った。狙いはネット際の10番とサーブを打った瞬間にライトに移動した牛島選手の関係でぽっかりと空いたコート中央。
「山形!」
「俺が!」
っち。リベロが拾ってボールが10番に返っていく。
「白布!」「センター!」「レフト!」
「牛島さん!」
バックライトの牛島選手、ライト側からセンターに切り込んでAクイックかセミに跳ぶ5番、そしてレフトの8番の3人がトスを呼んで、やっぱり10番はバックライトの牛島選手にトスを上げた。
俺は俺で。前衛3人もブロックの態勢を整える。
「合わせる! せーのっ!!」
「「「ブロック3枚!」」」
集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。
助走――クロス。
身体の向き――ストレート。
視線――飛雄の方。
スイング――クロス。
⇒クロス!
「ふっ!」「飛雄!」
「「「ノー!!」」」
「くそ……!」
牛島選手のバックアタックはブロック3枚の上から放たれて飛雄の方に伸びていく。なんとか飛雄はアンダーで触ったけど、上がったボールはそのまま相手コートのエンドラインを軽々と越えていった。なんつーパワーだよ。【4-5】。
「良し!」
「「「ナイスキー!」」」
あっちはあっちで喜んでる。そして、こっちはこっちでコート中央に集まった。
「すいません!!」
「ドンマイドンマイ!」
「点獲られることは重々承知の上なんだ! 次切り替えてけ!」
「「「はい!」」」
最悪全員でレシーブした方がマシじゃねえ? それはやりながら考えていこう。
相手サーバーは5番。確かジャンフロだったはずだ。
「「「天童1本ナイッサー!!」」」
「1本集中!」
「「「オォーッス!」」」
バックライトの飛雄とセンターの翔陽の分警戒して、龍先輩も若干後ろに下がってサーブレシーブに備える。
そのうち、主審の笛が鳴って5番がジャンフロを打ってきた。旭さんも取れるけど、何のためのリベロだよってことで俺が拾いに行く。
「旭!」「繋護!」
「オーライ!」
「頼む!」
オーバーで処理してライト側からセットアップに走る飛雄に返球する。良し、じゃあ次はブロックフォローだ。
「レフト!」「バック!」「影山!」「ライト!」
レフトの大地さん、バックセンターの旭さん、センターの翔陽、ライトの龍先輩の4人がシンクロ攻撃の助走に入って、飛雄もジャンプトスの準備をする。
「お願いします!」
「「「5番!」」」
飛雄が選択したのはライトの龍先輩。あっちのコートではレフトの8番が遅れながらもブロックに跳んで、龍先輩がブロックの完成前にスパイクを叩き込んだ。こっちの点だ。【4-6】。
「シャアァァァァ!!」
「「「ナイスキー!!」」」
「影山ナイストス!!」
「はい!」
コート中央に集まってペシペシハイタッチ。良いムードがウチに流れてきてる。
「良いぞ! ガンガン攻めてけよ!!」
「「「はい!」」」
相手の攻撃力以上に攻撃して点数を稼ぐしか無い。それがウチの戦い方。あと、……うん。俺もやったるでぇ。
「田中さん1本ナイッサー!!」「「「1本!!」」」
「オス!!」
龍先輩がサーブで旭さんが前衛に上がる。サイドアウトの連続でもうローテーションが1巡しそうだ。10番が前衛で、翔陽も前衛のこのローテでもっと点数を離しておきたいぞー。
「1本切るぞ!」
「「「オォーッ!」」」
主審の笛が鳴って龍先輩がジャンプサーブを打った。狙いはライト側のネット際にいる10番の後ろ。上手くいけば牛島選手のバックアタックを封じることができる。
この間にバックレフトへと移動して相手のコートの様子を窺う。
「山形さん!」
「……オーライ!」
良し、14番のリベロが膝を付いて、バックレフトからバックライトに移動してきた牛島選手のバックアタックの助走を邪魔する形になってる。10番はどうくる?
「センター!」「レフト!」
っち。レフトの12番がAかBクイックに走って、センターの8番が回り込むようにしてレフトに助走するような形を取った。多分セミ。……いんや? バックセンターよりでバックアタックの助走に入ってる牛島選手がいる。パイプ攻撃だ。
「牛島さん!」
だよなぁ!!
早い時間差って感じで牛島選手が助走に入ってきて、こっちのブロックは翔陽。遅れて旭さん。大地さんは完全に間に合わない。
「「「ブロック1枚!」」」
牛島選手の体勢とスイング的にはこっちには来ない。
「ふっ!」
「っ! ワンチ!!」
「影山!!」
牛島選手のスパイクは翔陽の右手の薬指と小指に当たって、こっちコートのライト側のサイドラインを越えるように大きく吹飛んでいた。飛雄が追いかけるけど、報道陣のカメラに当たってワンタッチ。【5-6】。
「良し!」
「「「ナイスキー!!」」」
パイプ使ってくるのかー。なんとかワンタッチだけでもして欲しいけど。
「~~いっだぁ!? 俺の指付いてますか!?」
「付いてる付いてる」「やべー威力だな、相変わらず」「飛雄もナイファイ」
「おう」
「1番を多用するって事はこっちの攻撃がストレスになってるって訳だ! やってることは正しいからな!!」
「「「はい!」」」
白鳥沢もさっきのローテは穴だって自覚があるんだろう。じゃなきゃ強引に攻めてこない。やっぱりセッターの10番が前衛にいるうちに点数稼がないと。
「1本で切ろう」
「おう」「「「はい!」」」
とは言っても、10番がサーブで牛島選手が前衛に上がってくるローテーションだ。ブロックが整っていない以上点数稼がれそうでもある。
「「「白布! 1本ナイッサー!!」」」
「「「サッ、来ーーーーい!」」」
バックレフトでサーブレシーブに備える。そのうち主審の笛が鳴って、10番がジャンフロを打ってきた。狙いはバックセンターの飛雄がセットアップに走る進路上。
「俺が!」
でも大地さんがオーバーで処理してこっちのターン。
「レフト!」「センター!」「バック!」「影山!」
レフトの旭さん、センターの大地さん、バックライトから龍先輩、ライトの翔陽の4人、……いや翔陽はライト側のアンテナ近くでマイナステンポのジャンプをした。つられて白鳥沢の8番がブロックに跳ぶ。
「お願いします!」
「「「3番!」」」
飛雄が選択したのはレフトの旭さん。アンテナまで伸びる平行トスがレフトまで上がっていって、ライトの牛島選手にセンターの12番が遅れて合流しかける。
でも、その前に旭さんが牛島選手の右手側から白鳥沢のライト側のサイドラインにスパイクを叩き付ける。……良し、入った。こっちの点数だ。【5-7】。
「オッシ!!」
「「「ナイスキー!!」」」
コート中央に集まってペシペシハイタッチ。そして、翔陽がサーブで蛍が前衛だから俺と入れ替わる。
「頼むぞー」
「分かってるよ」
蛍とハイタッチしてコートに出たら振り向いてコートに向かって一礼。そして烏養コーチの所に。
「影山が1本目を触った時、あるいは影山がセットアップに間に合わないときは猫又がやれよ。影山の攻撃力もガンガン活かしていこう」
「はい!」
武田先生と清水先輩と軽くハイタッチしてウォーミングアップゾーンに向かう。
「「「ウェーイ!」」」
「ウェーイ!」
ベンチの皆とハイタッチをして試合を見る。翔陽のサーブ権はレフトから牛島選手が決めて一瞬で終わった。【6-7】。
汗拭いたかったけどしょうが無い。サイドラインまで入っていって翔陽とハイタッチ。
「取れよ!」
「翔陽ももっと点数稼げよ。おおん?」
「おう!」
コートに一礼してから、レフトの蛍とバックレフトの飛雄の分全体的に左に寄っていて、バックセンターに近いバックライトでサーブレシーブに備える。
相手のサーバーは8番。
「「「五色1本ナイッサー!!」」」
「1本集中!!」
「「「オォーッス!」」」
主審の笛が鳴って、8番がジャンプサーブを打ってくる。狙いはバックレフトにいる龍先輩。……でもこのコースは!
「アウト!」
俺がジャッジして龍先輩はそのサーブを拾わない。案の定ボールはエンドラインより2mほど離れた所で落ちた。こっちの点数だ。【6-8】。
「ナイジャッジ!」
「はい!」
他の5人とハイタッチをしていると、先に8点獲ったからテクニカルタイムアウトを知らせるブザーが鳴り響いた。皆でベンチまで向かっていく。
◎
音駒高校男子バレー部一同は高校生の部活の大会を放送する有料サイトを使って宮城県代表決定戦の烏野高校対白鳥沢学園の試合の中継を見ていた。
「あいつらやべー、ウシワカに勝ってんじゃん」
「つってもブロックもサービスエースも無いけどな。シンクロ攻撃で攪乱させていかねえとまずいだろ。今の所繋護がウシワカからの点数抑えてなんとかついてってる感じだし」
「夜久さんならウシワカのスパイク拾えますか!?」
「拾うしかねえな」
「「「夜久さんカッケー!!」」」
黒尾鉄朗と夜久衛輔、灰羽リエーフがそんな会話をしていると、烏野高校のベンチで烏養繋心が部員に指示を出している様子がピックアップされる。
『牛島の本数を多くしてストレスをかける! その為にブロックも完成させていくぞ!』
『『『はい!』
『そんでなるべくワンタッチで後ろに繋いでくれ!』
『『『はい!』』』
ドリンクを飲んで水分補給、タオルで汗を拭っている烏野高校男子バレー部一同の様子が移ったと思ったら、今度は白鳥沢学園男子バレー部一同のベンチの様子が映った。コーチの斉藤明が部員に指示を出している様子がモニターに映し出される。
『烏野のシンクロ攻撃だけど、触れないにしても人がいるところに打たせられるようにコースを絞らせよう。おまえ達ならレシーブで対応できる。いいな?』
『『『はい!』』』
そこで、白鳥沢学園男子バレー部監督の鷲匠鍛治が部員に声をかけた。
『俺が選んだメンバーだ。各自自分の仕事をキッチリやってこい』
『『『はい!』』』
白鳥沢学園男子バレー部一同が返事をすると、アナウンサーと解説者2人の声も放送に乗った。
『これはもうチームのコンセプトの鎬合いですね。白鳥沢のチーム力は足し算、大して烏野はかけ算。2校の点の取り合いが繰り広げられています』
『そうですね。非常に面白い展開となっています。スーパーエースがいる白鳥沢かチーム力で勝る烏野高校か。引き続き解説していきましょう』
テクニカルタイムアウトが終わって、2校の選手がコートに戻っていく。
「ツッキー! ウシワカのスパイクブロックしろよ!」
「おまえもサクサと木兎のスパイク止めろよ! 月島のブロックちゃんと見とけ!」
「ウス!!」
因縁のライバルである烏野高校が全国大会に行けるように音駒高校男子バレー部一同は応援する。
◎