烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年10月④ VS白鳥沢学園③

 白鳥沢側の観客席のコートに到着して、別のルートでこっち側のコートに来た烏野の皆と合流してミーティングに入る。

 俺はノヤ先輩からタオルとドリンクを受け取った。皆もポジションが同じ人からタオルとドリンクを受け取っている。

 

「1セット目良くやった! でもまだ1セット目だ! 気を抜くんじゃねえぞ!!」

「「「はい!」」」

 

 バレーボールはセット毎で【0-0】から始まるからまた最初からスタートすることになる。ただ、1セット目のイケイケモードは継続していきたいところだ。

 

「皆1セット目よく頑張りました! しかしまだ試合は終わってない、むしろここからでしょう。【勝って兜の緒を締めよ】と言う言葉のように2セット目も集中して挑むようにしましょうね!」

「「「はい!」」」

「あっちはシンクロ攻撃とかマイナステンポにビックリしてるから優位に試合を展開できた。でも慣れ始められたら苦しい場面が続くぞ。対処される前に逃げ切る! 良いな!!」

「「「はい!」」」

 

 あとブロックの完成もお願いしたい。牛島選手のスパイクを完全に捉え切れてないし。ワンタッチしてくれたら繋げやすくなる。

 ……あーでもウチの場合は短期決戦型だ。ブロックのタイミングを掴めるまでやったらこっちが負けるな。やるっきゃない。

 

「2セット目もガンガン交替していくぞ。全員出番あると思えよ!」

「「「はい!」」」

 

 リベロは渡さねー!!

 

◆

 

 烏野高校と同様に白鳥沢学園男子バレー部一同もミーティングを行っていた。しかしその雰囲気は重苦しい。

 

「……若利」

「はい」

「1セット目何点だった?」

「ウチが20点で1セット目を獲られました」

「烏野は多彩な攻撃をしてくる。それは事実だ。だが、シンプルさこそがおまえ達の強さ。全力で打ち破ってこい」

「「「はい!」」」

「これ以上情けないプレーしたらこっから走って帰らせるからな。2、3、4セットと取ってこい!」

「「「はい!」」」

 

 1セット目はくれてやった。しかし、これ以後セットを落とさないように烏野高校を打ち破らんと白鳥沢学園男子バレー部一同は誓う。

 

◆◎

 

 森然高校男子バレー部一同も音駒高校や梟谷学園のメンバーの様に烏野高校対白鳥沢学園の対戦を観戦していた。そして、〝あの〟白鳥沢学園から1セットを先取したということで、ミーティングルームはどよめきに包まれている。

 

「マジかよ!? 烏野やるなぁ!」

「……ウチよりもシンクロ攻撃の練度高くねー?」

「そんなことねえよ! ……ないよな?」

「埼玉県勝ち抜くにはもっと練習していこうって訳だな」

「「「オォーッ!」」」

 

 ただ烏野高校を応援するだけでは無い。埼玉県代表となるために残り約2週間どんな練習をしていくのかの確認もしている。

 

◎

 

 セット間の休みが終わって2セット目が始まる。だからポジションと背番号の確認だ。ウチは蛍を牛島選手にぶつける様に1こ戻してるけど、白鳥沢は変わってない。

 

烏野

11 蛍 3 旭さん 1 大地さん

9 飛雄 5 龍先輩 10 翔陽(俺)

 

白鳥沢

4 1 牛島選手 12

5(リベロ) 10 8

 

 まず先に白鳥沢が副審からOKを貰ってコートの中にリベロ2人含めて中央で集まって、ウチも副審からOKを貰った。

 

「繋護、頼むぞ!」

「はい!」

 

 まずノヤ先輩に軽くはたかれて、今度は翔陽とサイドラインで入れ替わる。

 

「全部拾えよ!」

「おー」

 

 翔陽とハイタッチしたらコートに一礼して中に入る。前衛の蛍とバックレフトの飛雄の分レフト側に寄って、俺はバックセンターでサーブレシーブに備える。

 そしてサーブは白鳥沢からだから8番がサーバーだ。

 

「「「五色1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 俺の方打ってきて欲しいなー。

 そのうち主審の笛が鳴って、8番がジャンプサーブを打ってきた。お、このコースは俺だ。

 

「「猫又!」」「「繋護!」」

「オッケイ!」

「レフト!」「バック!」「センター!」「ライト!」

 

 アンダーで8番のサーブを取って、ボールは飛雄に返っていく。同時に俺と飛雄以外の4人が助走に入ってシンクロ攻撃に入った。

 

「お願いします!」

「「「1番!」」」

 

 飛雄が選択したのはライトの大地さん。飛雄の手から速い平行トスがライトに伸びていって、大地さんが4番のブロックの完成前にストレートコースにスパイクを叩き込んだ。【1-0】。

 

「オシ!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「猫又もナイスレシーブ!」

「はい!」

「大地1本サーブ頼むぞ」

「おう!」

 

 ローテーションが回って大地さんのサーブだ。早く崩していきたいね。

 

「「「大地さん1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。狙いはレシーブに参加しない牛島選手とセットアップに走るから手薄になってるセンター。でも14番のリベロがカバーに入ってAパスを返した。

 

「白布!」「A!」「レフト!」

 

 10番はどうする? 1セット目はあっちのリズム崩せたから10番のゲームメイク滅茶苦茶になったけど、多分切り替えてるだろうし。牛島選手以外も使ってくるはずだ。

 

「太一!」

「「「12番!」」」

 

 10番が選択したのはAクイックに入った12番だ。バックレフトからちょっとコートの中央寄りに移動して構える。あと蛍が遅れてジャンプに跳んだ。ワンチありそう。下がるか。

 

「ふっ!」

「ワンチ!」

 

 12番のスパイクは蛍の左手の指先に当たって俺の頭上を通るような軌道を取って吹っ飛んでいく。でも、下がった分余裕が出たからジャンプしてフローターを打つようにしたら届いた。ボールはアタックラインに落ちるようなBパスとなる。

 

「カバー!」

「オッケー! 東峰さん!」

「「「3番!」」」

 

 素早くボールの落下地点を見極めた飛雄が入り込んでオープントスをレフトの旭さんに上げる。俺達はブロックフォローだ。

ライトの牛島選手、センターの12番、レフトの4番の3人がガッツリブロックの態勢を作ってる。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ふっ!」

「ノー!」「ワンチ!」「ノー!」

 

 旭さんのスパイクは12番の右手に当たって白鳥沢のチャンスボールになった。急いで後ろに下がってバックゾーンに戻る。10番は後衛だからツーは気にしなくて良い。となると?

 

「白布!」「A!」「レフト!」

「牛島さん!」

 

 だよねー。サイドラインに足がかかるまで移動して、同時にレフトの旭さんにセンターの蛍とライトの飛雄が合流してブロックの態勢を作る。

 

「いきます! せーのっ!!」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――今眼が合った。

 スイング――ストレート。

 ⇒ストレート!

 

「ふん!!」

「「「ノー!」」」

 

 アタックラインに落ちるような軌道でボールが叩き付けられた。気づいたら両腕を伸ばしながら前に飛び込んでいて、両腕にすんげえ衝撃が伝わってくる。

 ボールはそのまま相手コートに返っていった。けど、ちょっと長い気がする。

 

「「「アウト!」」」

 

 エンドラインを超してコート外に落ちたっぽい。だよなー! くそー。【1-1】。

 

「すいません!」

「上がってるぞ! 切り替えろ!」

「「「はい!」」」

 

 コート中央に集まって5人にペシペシはたかれる。もっと勢い殺さないと駄目だな。あと今のは腕の角度も悪かった。もっと床と平行にしないと。

 

「「「川西1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 12番がサーブで、5番が前衛に上がってきた。10番が前衛に上がるまでブロックがいやなローテが続くぞ。早く回したい。

 蛍の分も警戒しつつバックセンターで構えていると、そのうち主審の笛が鳴って、12番がジャンフロを打ってきた。狙いはバックレフトの龍先輩。

 

「「「田中!」」」

「オラ!」

 

 龍先輩がオーバーで処理して、ボールがネット際の飛雄に返っていく。同時に4人がシンクロ攻撃に入った。

 

「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 飛雄のジャンプトスからのー、ツーアタックだ。あっちのリベロの14番が反応するけどボールが床に落ちる。そういや今日見てなかったか。イヤラシいツーだ。【2-1】。

 

「良し!」

「「「ナイス!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「そういや今日見てなかったな」

「はい、なので決まるかなと」

「何本でも決めてやれ」

「はい!」

「旭さん1本頼みます!」

「おう!」

 

 ローテーションが1つ回って旭さんがサーバーで龍先輩が前衛に上がってくる。連続で点を稼げないにしてもサイドアウトを繰り返していきたい。

 

「「「旭さん1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 そのままバックレフトで相手コートの様子を窺う。そのうち主審の笛が鳴って、旭さんがジャンプサーブを打った。……ちょっと長いか?

 

「「「アウト!」」」

 

 予想通りサーブがエンドラインよりも奧で落ちてアウトになった。【2-2】。

 

「悪い!」

「ドンマイドンマイ! 攻めていけよ!」「「「ドンマイっす!」」」

「次取るぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 白鳥沢のサーバーは牛島選手。イケイケモードになってるのはウチだけじゃない。尻上がりに調子上げていくタイプだから1セット目と同じ試合展開にはできないぞ。ここ早く切らないと。

 バックレフトで構えてサーブに備える。

 

「「「若利1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックライトの方。サウスポー特有の回転もかかってて取りづらいな。

 

「俺が!」「頼む!」

 

 大地さんが取りに行ってなんとか触るけど目茶苦茶乱された。ボールはその場で高く打ち上がって、旭さんが二段トスを上げに行く。

 

「旭さん! レフトです!」

「田中! 頼む!」

「「「5番!」」」

 

 旭さんはレフトの龍先輩に二段トスを上げて、その間にブロックフォローでフロントゾーンに向かう。

 ライトの10番にセンターの5番とレフトの4番が合流して完全に3人でドシャットする体勢だ。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!!」」」

「ォラ!」

「ノー!」「ワンチ!」「ノー!」

 

 龍先輩のスパイクは5番の右手に当たってドシャットされた。ボールが目の前で落ちていく。……間に合う!

 右手を出して処理! 良し、上がった!

 

「カバー!」

「レフト! もう1本!」「月島頼む!」

「……田中さん!」

 

 俺が上げた1本目をセットアップに間に合わない飛雄の代わりに蛍がセットアップに入って、龍先輩にオープントスを上げた。今と同じ構図となる。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ォラ!」

「「「ノー!」」」

「アウト!」

 

 龍先輩は5番の指先を狙ったけど、その勢いのままボールは吹っ飛んでいってコートの外に落ちた。アウトであっちの点だ。【2-3】。

 

「「「ナイジャッジ!」」」

 

 あっちのコートでジャッジをしたリベロの14番を中心にハイタッチしている様子が見える。そして、こっちでも龍先輩を中心に集まった。

 

「すんません!!」

「良い良い! 攻めてけ攻めてけ!」

「ウシワカ乗り始めてるから早めに切ろう」

「「「はい!」」」

 

 まだ牛島選手のサーブは続いてる。ここで連続得点はしたくないぞ。

 

「「「若利1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 バックレフトでサーブに備えていると、そのうち主審の笛が鳴って牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。回転故に俺の方に伸びてくる。左に曲がって伸びていくコースに合わせて腕を伸ばす。良し!

 

「「「ナイス!」」」

 

 それにしてもサーブも強烈だ。いってぇ……。ボールはアタックラインに落ちる軌道を取りながら落ちていって、飛雄が素早くセットアップに走った。

 

「レフト!」「バック!」「バック!」「D!」

 

 レフトの龍先輩、バックレフトに移動した大地さん、バックライトの旭さん、Dクイックを呼ぶ蛍の4人が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。

 

「いけっ!」

「「「11番!」」」

 

 飛雄が選択したのは蛍。ライトに速いトスが伸びていって4番のブロックの上から蛍がスパイクを叩き込んだ。【3-3】。

 

「良し」

「「「ナイスキー!」」」

 

 旭さんと龍先輩が蛍をコート中央に引きずってきてペシペシハイタッチ。

 

「ナイスレシーブだ、猫又!」

「はい!」

 

 蛍とハイタッチして、蛍がサーブで前衛に上がる翔陽と交替しないといけないからサイドラインに向かって俺を待ってる翔陽とハイタッチ。

 

「22点決めろよ!」

「任せろ!」

 

 コートを出たらコートの方を向いて一礼。そして立って指示を出してる烏養コーチの所に行く。

 

「良いぞ! 牛島のサーブを早めに切れた! このまま頼む!」

「はい!」

 

 そして武田先生と清水先輩の2人ともハイタッチしてウォーミングアップゾーンに向かう。

 

「「「ウェーイ!」」」

「ウェーイ!」

 

 皆とハイタッチしたらノヤ先輩からタオルを受け取って汗を拭っておく。アームスリーブの裏を拭こうとしてちょっと覗いてみたら赤通り越して紫に変色してた。……いやー、これ冷やさないとやべーな。

 

「うわっ、やべーな」

「あっ、力先輩。やばくないですか? これ」

「うん」

 

 丁度力先輩に見られて結局全員に見られた。ホントやべー。

そして、この間に翔陽が5番をドシャットして【4-3】、次のラリーにはリベンジされて【4-4】。蛍と交替の時間だ。

 

「俺の出番も近そうだな!」

「そんなこと無いですよ!」

 

 皆に背中を押されてサイドラインまで走る。

 

「タイミング頼むぞー」

「分かってるよ」

 

蛍とハイタッチして、コートに一礼してからバックライトへと向かっていく。飛雄がライトだから前の警戒もしないとな。

 相手のサーバーは4番。強打来るぞ。

 

「「「獅音1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックセンターの旭さん。

 

「旭!」

「オーライ! ……悪い!」

 

 アンダーで触った旭さんのレシーブが乱されて、観客席くらいの高さまで打ち上がったボールが後ろに大きくそれていく。こういう時の俺!

 

「「「カバーいける!」」」

 

 ボールが打ち上がった方に向かって全速力。翔陽と飛雄みたいに50m5秒前半はいかないけど、俺だって5秒後半なんだっての。

 走って走って追いついて。コートを見る余裕があったから振り向いてアンダーの準備をする。

 

「猫又!」

「旭さん!」

 

 くっそ難しい後ろからのトスになるけど、アタックライン際のフロントゾーンに落ちるようにアンダーでボールを戻す。それを見届けながら次はブロックフォローだ。ひぃー、きっつーい。

 

「東峰!」「「旭! 打て!!」」

「「「3番打ってくるぞ!」」」

 

 旭さんのバックアタックをブロックするためにライトの10番、センターの5番、レフトの8番がガッツリブロックの態勢を作ってる。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ふっ!」

「ワンチ!」「ノー!」「ノー!」

 

 旭さんのスパイクは10番の右手に当たって鋭い軌道を取りながらコートに落ちた。こっちの点数だ。【5-4】。

 

「おし!」

「「「ナイスキー!」」」

「カバーナイスだ、猫又」

「はい!」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。特に旭さんが大はしゃぎしてる。というか、あんな難しいボール良く打ち切ってくれたな。ありがとう御座います。

 

「勢いはこっちに来てるぞ! 影山サーブしっかりな!」

「はい!」

 

 ローテーションが1つ回って次は飛雄のサーブ。点差離していきたいところだ。

 

「「「影山1本ナイッサー!!」」」

「強打来るぞ! 1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴って、飛雄がジャンプサーブを打った。狙いはネット際の10番とレシーブに参加しない牛島選手の分手薄になってるコートど真ん中。

 

「「「山形!」」」

「オーライ!」

 

 14番のリベロが拾ってアタックライン上に落ちるようなボールになった。10番がセットアップに動く。

 

「バック!」「C!」「レフト!」

 

 バックライトの牛島選手、ライトからCクイックかDクイックに跳んだ5番、最後にレフトの8番。誰で来る? 点差的にはそこまで開いてないから8番か5番なんだよな。

 

「五色!」

「「「8番!」」」

 

 読み通り!

 10番はレフトの8番にオープンではないけど平行寄りの速いトスを上げた。同時にライトの大地さんにセンターから翔陽が助走を使って合流していく。

 

「日向! 来い!」

「はい!」

 

 龍先輩は間に合わないから下がってレシーブに入る。俺もインナーは龍先輩に任せて深い所を守るように下がった。

 

「「「ブロック2枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で8番のモーションをよく見る。

 

 助走――クロス。

 身体の向き――クロス。

 視線――大地さんの右手。

 スイング――ストレート。

 ⇒ブロックアウト!

 

「ふっ!」「飛雄!」

「ノー!」「ワンチ!」

 

 予想通り、8番は大地さんの右手に当てて思いっきり吹飛ばしてきた。飛雄が追いかけるけど追いつく前にボールが落ちる。ワンタッチであっちの点だ。【5-5】。

 

「よっしゃー!」

「「「良いぞ五色!」」」

 

 8番がもみくちゃにされてる所を見ながら俺達は俺達で集まる。

 

「すまん! 狙われた!」

「ドンマイ大地!」「「「ドンマイっす!」」」

「1本切り替えろ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 白鳥沢のサーバーは5番で12番が前衛に上がってくる。全員サーブ強いから気が休まる時が無い。

 セットアップに走る飛雄の分ライト側に寄って5番のサーブに備える。

 

「「「天童1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、5番がジャンフロを打ってきた。狙いはセンター。しかも軌道が低くてネットに当たりそうだ。すかさず前に詰める。

 

「「「前!」」」「「「日向!」」」

「オーライ!」

 

 ネットインしたボールを翔陽が高めに上げて助走する時間を稼ぐ。飛雄がどこ上げるか分からないけどブロックフォローだ。

 

「レフト!」「バック!」「影山!」「ライト!」

 

 レフトの大地さん、バックセンターに移動した旭さん、紛れながらAかCに入ってる翔陽、ライトの龍先輩が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入る。白鳥沢もライトの10番、センターの12番、レフトの8番がそれぞれ真正面のアタッカーを警戒してる。

 

「お願いします!」

「「「1番!」」」

 

 飛雄が選択したのはレフトの大地さん。速い平行トスがアンテナめがけて伸びていって、大地さんが10番のブロックが完成する前にスパイクを叩き込んだ。こっちの点となる。【6-5】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「日向も良くやったな!」

「おす!」

「あんな感じで自分が助走できる時間確保するんだぞー」

「はい!」

 

 流石にネットインしたボールは前で取って欲しい。天井サーブとかチャンスボールはいくけど。ま、翔陽に任せるのは微妙なんだけど。

 

「田中、次サーブ頼むぞ」

「オッス!」

 

 ローテーションがひとつ回って龍先輩がサーブで旭さんが前衛に上がる。そんでもってあっちはセッターの10番がまだ前衛にいるローテーションだからブロックが弱い。ここで畳みかけたい。

 

「「「田中1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 バックレフトからあっちのコートの様子を窺う。10番が前衛だからツーもあり。特に翔陽のブロックは助走が無いと微妙ってことは知られてるし、自分がウィークポイントだってのは知ってるはずだから強引にやってきてもおかしくない。……うーん、あの感じやってきそうだな。

 そのうち主審の笛が鳴って龍先輩がジャンプサーブを打った。狙いは12番と牛島選手がサーブレシーブに参加しないレフト側。サーブを打たれた瞬間牛島選手はエンドラインを越えてコートの外に出てバックライトへと向かっていく。そして読んでたらしいリベロの14番が龍先輩のサーブをAパスで返した。……あ、ツーだ。

 

「バック!」「セミ!」「B!」

 

 バックライトから牛島選手、8番がレフトに回るセミ、レフト側から12番がBクイックと3人がトスを呼ぶ中10番がジャンプをして左手でボールを落としてきた。

 

「「「ツー!」」」

「チャンス!」

「っ!?」

 

 残念でしたー。ツーをやるときの癖治ってないですよー。

 と言うことでこっちのターンだ。飛雄がセットできてスパイカー陣が助走できるようにちょっと高めに1本目を上げてブロックフォローに入る。まあ、ここは。

 

「いけっ!」

「おう!」

 

 マイナステンポで助走に入った翔陽だよね。ツーを読まれて動揺してる10番の上からスパイクを叩き込んだ。【7-5】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。「バカヤロー! ツー読まれてるじゃねえか! 何で使った!!」って鷲匠先生と10番が謝る声が聞えてくる。ふはは、分かりやすいんだよ。

 

「繋護も何で分かったんだよ」

「えー、表情に出てたんですよね。あと翔陽のブロックの上からなら決めてくるだろうなって。正直1年の8番とも関係良くないですよ、あの10番」

「……そうか?」

「ええ、というか、牛島選手以外興味ないって感じですかね。自分と牛島選手だけいればいいやーって考えてそうだなと見えます。4番とかほとんどスパイク打ってないでしょう? 上げる素振りも見せてないですし」

「言われてみれば? そうかもしれないな」

「そういったのから判断して、今は自分で決めようとするだろうなって」

「「「へー」」」

「ということで、あの10番が前衛のうちはブロック低いので狙い目です。このローテで点数稼ぎましょう。龍先輩サーブお願いしますね」

「おうよ!」

 

 龍先輩のサーブはまだ続いてる。ということでここがチャンスだ。

 

「「「田中! 1本ナイッサー!」」」

「ここ集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 バックレフトで相手コートの様子を窺っているうちに主審の笛が鳴った。龍先輩がジャンプサーブを打つ。狙いはバックレフトのサイドラインギリギリ。……ん、アウトっぽい。

 

「アウト!」

 

 12番はアウトを宣言。ラインズマンはどう見る? ……インだ、線上かギリギリインだったっぽい。ノータッチエースでこっちの点だ。【8-5】。

 そして、先に8点取ったからテクニカルタイムアウトだ。皆で喜びながらベンチまで戻っていく。

 

「ナイス読み!」

「10番結構攻撃的なのでやってくるかなーって。ビンゴでした」

「いつでも出られるからな!」

「ノヤ先輩の出番はありませんよ」

「俺だってウシワカのスパイク取りてえ!」

 

 はっはっはー。

 ノヤ先輩からタオルとドリンクを受け取って、スタメン組がベンチに座ってから早速ミーティングに入る。

 

「おーし! 良いぞその調子だ! 強いサーブとスパイクで相手を崩す。特にセッターを走らせてトスの質を悪くさせる。そうすりゃブロックも出来るようになるはずだ。気合入れてけよ!」

「「「はい!」」」

 

 スパイカー全員へのトスが悪くなれば勝機がある。オープンでもネットに近かったり離れてたり。ま、強いサーブで崩せばって感じだ。サーブ&ブロックはウチでも実践する。

 このままイケイケで頑張りたい。

 

◆

 

 1セット目に続き、2セット目の1回目のテクニカルタイムアウトを烏野高校に取られ、鷲匠鍛治の表情がとても厳しくなっていた。例えるなら噴火しそうな火山である。

 その鷲匠鍛治がゆっくりと口を開いた。

 

「……英太」

「はい!」

「次賢二郎のサーブで交替な。烏野はセッターを消耗させる作戦を立てているから気を付けろ。あと全員ブロックの上からばかすか打たれすぎだ。何の為に練習してきたんだ」

「「「はい!」」」

「釣られても良いからブロックに跳べ。覚、太一おまえら今日ブロック本数ねえぞ。何の為のミドルだ」

「「はい!」」

 

 伝えたいことだけ伝えると鷲匠鍛治は押し黙る。後を斉藤明が引き継いだ。

 

「サーブで攻めればシンクロ攻撃も使いにくくなる。そうすればブロックを揃えられるからこっちが有利だ。

 なんとなく、だが、ブロックを避ける分後衛からのバックアタックは抑え気味にしているような気がする。鷲匠先生も言ったけどスパイカーに対して1人だけでもブロックに跳ぼう。パワーあるの3番だけな。他はレシーブで対応できるぞ」

「「「はい!」」」

 

 時間まで白鳥沢学園男子バレー部のレギュラー陣は各自でリラックスしていく。

 

◆◎

 

 決勝戦の様子を見に来ていた青葉城西高校男子バレー部の岩泉一が観客席に見知った背中を見つけてそっちの方まで移動して声をかける。

 

「なんだ及川来てたのか。『白鳥沢が勝つのも烏野が勝つのも見たくない~』って言ってた癖によ」

「っ。……飛雄の負け面見に来ただけだしー」

「の割には烏野1セット取ったけどな」

 

 「隣座るぞー。てかもっと前で見ようぜ」と岩泉一が促すものの及川徹は頑なに動こうとしない。嘆息した岩泉一は諦めて及川徹の右の席を1つ空けて席に座った。

 

「それにしても烏野13番めっちゃやべえな。4月の練習試合とインハイ予選でも思ったけどよ」

「それね~。

 ウチでもウシワカ野郎をなんとかすれば勝てるじゃんって話出たけどさー。結局ブロックもレシーブもボコボコだったじゃん? なんであんなポンポン拾えんのさ。どんな練習してんだよ」

「それは思う。やっぱり烏野の全員4月よりも身体できてるしな。あの10番11番でさえも体つき良くなってるしよ。影山経由でどんなトレーニングしてるか聞けねえかな」

「飛雄に頭下げるとかないわ~」

「じゃあコンタクト取れて話聞けてもお前には教えねえ」

「はぁっ!? そこは教えてよ! 幼馴染みでしょ!?」

「ふざけんな。自分でやれ」

 

 周りの観客に迷惑を掛けないようにギャアギャア言っていると、テクニカルタイムアウト終了のブザーの音が聞こえてきた。

 

「及川お前スペイン語の勉強してんのかよ」

「してるよ? でもねー、なかなか会話の練習ができないって言うか。CD聞いてても飽きちゃうんだよねー。実感が湧かないって言うかさ。岩ちゃん伝手無い? スペイン語出来る人の」

「あると思うか?」

「無いね。岩ちゃん前回の中間で英語の点数74点だったんでしょ?」

「何で知ってる!?」

「おばさんから聞いた」

「お袋!!」

 

 またまた2人はギャアギャア騒ぎ始めた。

 

◎

 

 テクニカルタイムアウトが終わってコートの中に戻る。そしてバックレフトで相手のコートの様子を窺っていると、ウォーミングアップゾーンで3番がアップを取っているのが見えた。10番から交替かな? 3番はトス散らせてくる印象と高さがあるからブロックも強化される。一筋縄じゃいかなくなるな。

 

「「「田中1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴って、龍先輩がジャンプサーブを打った。狙いはさっきと同じ12番と牛島選手がいるレフト側。

 

「山形!」

「オッケ!」

 

 でも、読んでいたらしい14番のリベロが拾ってボールはネット際の10番に返っていく。と同時に牛島選手がバックライト側へと回った。

 

「白布!」「A!」「セミ!」

「牛島さん!」

「「「1番!」」」

 

 バックライトの牛島選手、センターから8番、そしてレフト側から12番がトスを呼んで、10番は牛島選手にオープントスを上げた。

 ちょっとセンター寄りに上がったから俺は旭さんの左手側を抜けられても良いようにサイドラインが視界に入る位置。そして、旭さんと翔陽がブロックの態勢を作った。大地さんは下がってレシーブだ。

 

「日向! 来い!」

「はい!」

「「せーのっ!」」

「「「ブロック2枚!」」」

 

 旭さんがネット際で助走をする翔陽の支えを作って2人がブロックに跳んだ。

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――ストレート。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「ふん!」

「ノー!」「ワンチ!」

 

 バックセンターのエンドライン側を狙ったらしい牛島選手のスパイクは翔陽の右手首を掠めて後ろへと吹っ飛んでいく。エンドライン付近で吹っ飛ばされたボール担当の龍先輩がその場でジャンプするけど届かなくてボールは更に奥へと吹っ飛んだ。ワンタッチであっちの点だ。【8-6】。

 

「すみません!」「すんません!」

「ドンマイドンマイ! 切り替えろ!」

 

 そして、思った通りここで次のサーバーの10番と3番が交替だ。1セット目はもっと後半だったからセッター交替も考えてるのかもしれない。

 

「「「おっ。おっ。おっ。おっ。おっ、おっ、おっ、おっ、おっおっおっおっ。……いよーっし!!」」」

 

 白鳥沢の皆さんはコートに入ってくる3番を出迎えて皆でハイタッチしてる。さーて、サーブ強烈ですよー。しかも牛島選手が前衛に上がってきました。

 

「「「瀬見1本ナイッサー!!」」」

「強打来るぞ! 1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 バックレフトで3番のサーブに備える。どこ打ってくるかなー。

 主審の笛が鳴って、3番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックライトの龍先輩。

 

「「「田中!」」」

「オラ!」

 

 龍先輩がアンダーで拾って、ボールはアタックライン上に落ちるような軌道をとって飛雄がセットアップに走る。

 

「レフト!」「センター!」「バック!」「影山!」

 

 レフトの旭さん、センターの大地さん、バックライトの龍先輩、ライトの翔陽の4人が同時に助走してシンクロ攻撃に入る。まあここは。

 

「いけっ!」

「「「10番!」」」

「ワンチ!」

 

 翔陽だよね。ってアンテナまで伸びていくボールを目で追いかけていたら、翔陽のスパイクが8番の左手に当たって更にアンテナに当たった。最後に8番が触ったからアウトでこっちの点だ。【9-6】。

 ……それに、今旭さんには牛島選手が。大地さんには12番が。翔陽には8番が。アタッカー1人ずつに対してブロッカー1人ずつがジャンプしてた。タイムアウト中にそんな指示が出たんだろうな。

 

「あ~~っ! すいません!」

「ドンマイ工!」

 

 やっぱりあの8番も上手いな。流石1年で試合に出てるだけある。

 

「ひえっ……!」

「1人ずつ対応してくるんだろうな。まあ、でもそれは梟谷とかにもされてきたことだから。今まで以上にコースの打ち分けってのをしっかりしていこう。1枚ブロックならアタッカーの方が有利だし。あとどうしてもレシーブには参加出来ないだろうし」

「「「はい!」」」

 

 そ。ブロックに跳ぶ時間を考えるとレシーブには参加できなくなるからコートがガラ空きになる。そこでフェイントも混じれば「どうすりゃいいんだよ!?」ってなる。……多分。もうね、ブロックされるのは当たり前だからそこら辺は割り切っていかないと。

 ってことで、翔陽がサーブだから俺は蛍と交替だ。サイドラインまで向かう。

 

「白鳥沢の3番トス散らしてくる印象だ」

「オッケー」

 

 蛍とハイタッチしてコートに出る。振り返ってコートに一礼してから立上がって指示を出してる烏養コーチの所へ。

 

「シンクロ攻撃の欠点であるブロックフォロー頼むぞ。これからシャットされること増えるだろうから」

「はい!」

「猫又君次も頼みますよ!」「頑張って!」

「はい!」

 

 烏養コーチと話したら武田先生と清水先輩とハイタッチをしてウォーミングアップゾーンへ。

 と思ったけど、翔陽がセットアップに出る3番を狙ってライト側にサーブを打ったら、あっけなく拾われてレフトから牛島選手にスパイクを決められた。【9-7】。

 行き先変更、サイドラインへ。

 

「狙いは良かった。あとはジャンフロかジャンプサーブ習得していこうな」

「くそ~。旭さんみたいにパワー付けないと!」

 

 翔陽とハイタッチしてコートに一礼してから、バックセンター寄りのバックライトへ向かっていく。ここのローテはレフト側に蛍と飛雄の2人がいるから穴になりやすいローテーションだ。そして1巡して8番がサーバー。

 

「「「五色1本ナイッサー!!」」」」

「強打来るぞ! 1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 相手のサーバーは8番。そして4番が前衛に上がってきた。白鳥沢も1巡して最初のローテーションだ。

 そのうち主審の笛が鳴って、8番がジャンプサーブを打ってきた。狙いは飛と蛍がネット際に詰めてて比較的穴になってるバックレフト側。

 

「「「田中!」」」

「オラ! ……カバー頼む!」

 

 龍先輩がボールを弾いてその場で高く上がる。俺が行こう。

 

「センター!」「ライト!」

 

 センターの旭さんとライトの大地さんがトスを呼んでる。旭さんにはもうブロック2枚付いててやばそう。じゃあライトだ!

 アンテナまで伸びていくようにトスを上げた。

 

「お願いします!」

「「「1番!」」」

 

 二段トスだから仕方ないけど、がっつり3枚ブロックに付かれて俺含めて4人はブロックフォローにつく。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「しっ!」

「ノー!」「ノー!」「ワンチ!」

 

 大地さんのスパイクは4番の左手に当たって相手コートのレフト側のサイドラインを平行して伸びていき、バックレフトの8番が処理した。

 ボールがネット際まで返っていって、セットアップに走った3番が追いつきそうだ。

 

「ライト!」「センター!」「レフト!」

「獅音!」

「「「4番!」」」

 

 3番が選択したのはレフトの4番。センターの12番とライトの牛島選手は助走が取れてないからかもしれない。ウチもライトの大地さんにセンターの蛍とレフトの旭さんが合流して3枚ブロックの態勢を作った。俺はインナーを警戒してアタックラインよりで構える。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で4番のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――こっちを見た、つまりインナー。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「ふっ!」

「ワンチ!」「ノー!」「ノー!」

 

 4番のスパイクは旭さんの左腕に当たって鋭角でインナーに飛んできた。左半身が床に着くように滑り込んでボールの落下地点に左腕を伸ばす。

 ボールに触ったけど白帯の下を掠めてそのまま相手コートに入っていった。……うぬん。【9-8】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 4番がもみくちゃにされてるところを見て、俺も旭さんに立てるように支えて貰った。そのまま6人で集まる。

 

「「「ナイファイ!」」」

「ん~~っ、あとちょっとだったのにー!!」

「あと予想通りあっちの3番トス散らしてきますね」

「ウシワカだけが白鳥沢の強さじゃ無いもんな。なんとかワンタッチ取ってこう。4番も力強いわ」

「「「はい!」」」

 

 くそー、あと5cm高かったらネットに跳ね返されてカバー出来たなー。

 まだまだ8番のサーブは続いてるからサーブレシーブに備える為にバックセンター寄りのバックライトに移動する。

 

「「「五色1本ナイッサー!!」」」

「1本切るぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、8番がジャンプサーブを打った。またまた狙いはバックレフト。でもかなり長い。

 

「「「アウト!」」」

 

 龍先輩と大地さんと一緒にジャッジをしてボールを見送る。エンドラインより歩幅1歩分外に落ちた。【10-8】。

 

「「「ラッキーラッキー!!」」」

「だあっ! すみません!」

「狙いは良い! 次切り替えるぞ!」

「……はい!」

 

 やっぱりあの10番とは相性悪いみたいだ。3年から見た1年ってことで3番からは可愛がられてるっぽいし。

 そして、ローテーションが1つ回って大地さんがサーバー。飛雄が前衛に上がった。

 ポジショナルフォールトを取られないように龍先輩との位置関係に気を付けながら相手コートの様子を窺う。牛島選手はネット際まで詰めていて、3番もフロントゾーンにいる。

 

「「「大地さん1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。狙いは手薄になってるセンターのバックライン。

 

「「「山形!」」」

 

 14番のリベロがなんなく拾って相手のターンになる。誰で来るかな。3番は後衛だからツーは気にしなくて良い。

 

「瀬見!」「センター!」「レフト!」

「太一!」

「「「12番!」」」

 

 3番が選んだのはセンターに移動してAクイックに跳んだ12番。蛍と飛雄が反応して、揃っては無いけどブロックに跳んだ。

 

「ふっ!」

「ワンチ!」「ノー!」

「「「チャンス!」」」

 

 12番のスパイクは蛍の右手の指先にあたってチャンスボールになった。バックライト側の大地さんが処理しに行く。

 1本目を大地さんが正確に返球して今度はこっちのターンだ。飛雄がセットアップしに走る。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 レフトの旭さん、バックレフトに移動した龍先輩、センターの蛍、バックライトの大地さんの4人が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入る。

 

「いけっ!」

「「「11番!」」」

 

 センターにはセンターを。そんな勢いで飛雄が選択したのは蛍だ。12番も遅れてブロックに跳んだ。

 

「ふっ!」

「ワンチ!」

 

 蛍は上手いこと12番の左手の薬指と小指に当てるようにプッシュして勢いが殺されたボールがフロントゾーンに落ちていく。4番と8番は間に合わなかった。【11-8】。

 

「よーし」

「「「ナイス月島!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「トス近かったか?」

「プッシュだったら決まると思ったから。ナイストス」

「そうか、分かった」

 

 飛雄と蛍もハイタッチして、大地さんがホクホクしてた。4月やばかったですもんね。

 

「良し! このまま突き放すぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 サーバーは大地さんで、まだ続いてる。白鳥沢のレシーブする人数は3人だけで穴だらけだから一気に突き放したいローテーションだ。

 

「「「もう1本ナイッサー!」」」

「ここ切るぞ!」

「「「オォーッ!」」」

 

 龍先輩との位置関係に気を付けながら相手コートの様子を窺う。そのうち主審の笛が鳴って大地さんがジャンフロを打った。狙いはバックライトの8番。

 

「「「五色!」」」

「はい!」

 

 この間にバックレフトに移動してボールの行方を目で追い続ける。

 8番はAパスで3番に返球して、ライトの牛島選手、センターの12番、レフトの4番がトスを呼んだ。

 

「若利!」

「「「1番!」」」

 

 ライトにオープントスが上がって、俺はサイドラインに足がかかるくらい。前衛の旭さん、蛍、飛雄の3人もレフトに移動してブロックの態勢を作った。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――クロス。

 身体の向き――クロス。

 視線――ライト側を見た。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「ふんっ!」

「ノー!」「ノー!」「ノー!」

「「大地さん!」」

「……ぐっ!?」

 

 牛島選手のスパイクは飛雄の右手側を通ってライト側のアタックラインとサイドラインが交差する位置にいた大地さんへと伸びていった。触ったはいいけど大地さんはボールを弾いてそのまま後ろに吹飛んでいく。ワンタッチで相手の点数だ。【11-9】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 牛島選手が周りとハイタッチしている姿が見えて、こっちはこっちで集まる。

 

「すまん!」

「ドンマイ大地!」

「インナー防いだと思ったんですけどね……」

「ウシワカやべーな」

 

 いやー、あそこからインナー打てるとか化け物かよ。牛島選手マジやべー。

 って言うのはもう知ってたから。全国に行くには白鳥沢に勝たないといけない。別にこっちの攻撃が通用してないわけじゃ無いんだし。2点リードをしたまま逃げ切る。

 

「良し、1本切るぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 白鳥沢のサーバーは12番。代わりに5番が前衛に上がって来た。早いところローテ回したい。

 

「「「川西1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って12番がジャンフロを打ってくる。狙いはバックレフトの龍先輩。

 

「「「田中!」」」

「……くっそ! カバー!」

「猫又!」

「はい!」

 

 横から見てもかなり変化して龍先輩が触るけどボールは乱された。良し、俺の番だな。

 

「ライト!」

「「「3番来るぞ!」」」

 

 問題です。飛雄は後衛でしょうか、前衛でしょうか? ……答え、前衛です。

 オーバーでセッティングしてレフトに速いトスを出す。

 

「「「っ!? 9番!」」」

「「「いけ! 影山!」」」

 

 牛島選手と5番が慌ててライト側に向かうけど、その前に飛雄がストレートに打ち切った。【12-9】。

 

「ッシャア!!」

「「「ナイス影山!」」」

「ナイスフォローだ、繋護君よぉ」

「ならもっと嬉しそうな顔しろー、田中」

 

 そうだそうだー。少なくともあっちのサーブ1本で切れたんだから喜ぶべきだろー。

 

「旭、サーブ頼むぞ」

「おう!」

「「「1本ナイッサー!」」」

 

 ここでサーバーは旭さんだ。一気に突き放したい。

 バックレフトで相手コートの様子を窺う。狙い目としては5番と3番が前に詰めてて手薄になってるバックレフト側だ。8番がバックレフトを守るような形だから、俺が狙うとしたらそこ。ただ、白鳥沢だって狙われる事は重々承知の上だろう。

 主審の笛が鳴って旭さんがジャンプサーブを打った。狙いは予想を反してバックライトだ。

 

「「「山形!」」」

「ッケイ! カバー頼む!」

 

 14番のリベロが拾ったけどそのままライト側のサイドラインを超えて大きく打ち上がった。そのボールを牛島選手が追いかけて二段トスを上げようとする。

 

「若利! センターもってこい!」

「大平!」

「「「4番!」」」「センター来るぞ!」

 

 まさかのセンターオープン。レフトの龍先輩とライトの飛雄がセンターの蛍と合流して3枚ブロックの体勢を作る。俺はバックレフト側で龍先輩の左手側を抜けてきたボールの担当だ。

 

「「「せーのっ!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で4番のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――龍先輩の左手を見て飛雄の手の方を見た。

 スイング――プッシュに変えた。

 ⇒フェイント!

 

「ふっ!」

「ノー!」「ノー!」「ワンチ! ……くそ!」

「大地!」「大地さん!」

 

 飛雄の右手の小指に引っかけるように押し出してセンターラインに落ちるようにボールが落ちていく。大地さんがフライングするけど間に合わなかった。【12-10】。

 ん~~っ、やっぱりああ言うのサラッとできるの上手いわ。

 

「良し!」

「「「ナイス獅音!」」」

 

 4番が喜んでいる姿を背景にこっちはこっちで集まる。

 

「すまん!」「すんません!」

「切り替えよう。あれはしょうが無い」

「そんで次はウシワカのサーブっすね」

「早めに切ろう」

「「「オォーッス!」」」

 

 サウスポー特有の左に曲がる事も考慮して左足がレフト側のサイドラインに足がかかるまで移動する。さーて、ここが正念場ですよー。

 

「「「若利1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、レフト側から牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。めちゃくちゃ左に曲がってくる。

 俺、大地さん、俺、大地さん。……大地さん!

 

「くそ!」

 

 大地さんがアンダーで拾ったものの、ボールは相手コートに返るような軌道をとる。しかもダイレクトには絶好のトスだ。5番がジャンプしてるし。

 ってことでダイレクトに備えて前に出る。蛍もブロックに跳んだ。

 

「「「天童!」」」「「「ダイレクト!!」」」

「ほいっ!」

「ワンチ!」

 

 5番の強烈なダイレクトを蛍が触ったけど、勢いそのままエンドラインへと向かっていってその場でジャンプした旭さんの上を通ってコート外に落ちた。ワンタッチであっちの点だ。【12-11】。

 

「ビクトリィィィィー!!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 くそー、5番パワー系かよ。前詰めたの失敗だったな。

 

「良い良い! 反応できてるぞ! 次取れる!」

「「「シャアッ!!」」」

 

 1点差なんて誤差だ誤差。ここ集中しないと。

 

「「「若利もう1本ナイッサー!!」」」

「ここ切るぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 バックレフトで相手コートの様子を窺う。こっち打ってくんないかな。どうかな。

そのうち主審の笛が鳴って、レフト側から牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。めっちゃ左に曲がってくる。そしてこのコースは俺。

 

「「猫又!」」「「「繋護!」」」

 

んぎっ。くっそ重っ! 後ろに倒れて衝撃を殺したおかげでなんとか上がったぞ。Cパスだけどな。

 

「大地さん! レフト!」

「「「田中!」」」

「「「5番!」」」

 

 大地さんからレフトの龍先輩に二段トスが上がる。二段トスだから、ライトの3番、センターの5番、レフトの4番の3人がガッツリライト側に移動してブロックに跳ぼうとしてる。

 素早く立ってブロックフォローだ。

 

「「「せーのっ!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ラァ!」

「ワンチ!」「ノー!」「ノー!」

 

 龍先輩のスパイクは3番の左手に当たってチャンスボールになった。今度はあっちのターンだ。14番のリベロがしっかりと返球してボールはネット際の3番へと返っていく。

 

「バック!」「センター!」「レフト!」

 

 バックライトの牛島選手、センターの5番、レフトの4番、それにセッターの3番のツーもある。誰で来る?

 

「若利!」

「「「1番!」」」

 

 ここはしっかり同点に持ち込みたいよね。ってことで牛島選手にトスが上がった。俺はレフト側のサイドラインまで。龍先輩、蛍、飛雄の3人で3枚ブロックの体勢を作る。

 

「「「せーのっ!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――大地さんの方を見た。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「ふっ!」

「ノー!」「ノー!」「ワンチ!」

 

 牛島選手のスパイクは飛雄の右腕を掠めて軌道が変わり、大地さんがフライングしてなんとか上がった。

 

「「「獅音!」」」

「……4番!」

 

 でも4番がダイレクトを打つ絶好のトスになってしまってそのままブロックで落としてきた。【12-12】。

 

「すまん!」

「ドンマイ大地!」「「「ドンマイっす!」」」

 

 って所で武田先生が1回目のタイムアウトを要求した。皆でベンチサイドに戻っていく。

 ベンチサイトに戻ったら、ベンチに座らされてミーティングに入った。俺はノヤ先輩からタオルとドリンクを受け取る。

 

「情報通りだ。白鳥沢の瀬見だが、白布よりもトスを散らせて牛島だけに頼るトスワークをしてこねえ。ここぞと言うときに牛島に打たせるって感じだな。トスをしっかり見て対処していこう」

「「「はい!」」」

「やることは変わんねえぞ。強いサーブで相手を崩してセッターを走らせての消耗と牛島の本数を増やしての消耗。総力戦だからな。全員使っていくぞ!」

「「「はい!」」」

 

 それでもリベロはノヤ先輩に譲るつもりは無い。って言いたいけど、後ろにノヤ先輩がいるから疲労を考えなくて良いのは確かだ。

 

「縁下!」

「はい!」

「田中が次サーブ打ったら守備要員として、かつ田中のスタミナ回復の為に後衛3ローテ任せる可能性が高い。準備しとけ!」

「はい!」

 

 龍先輩が「そんな! 俺疲れてねえっすよ!」とかって猛抗議してる。そして、烏養コーチがそんな龍先輩を宥めるように「東峰と田中を狙えって指示でてるっぽいしな」って言った。

 その前に牛島選手のサーブを切らないといけないんだけど。やっぱり尻上がりに調子上げてくじゃん。ひぃー。

 

「繋護にウシワカのサーブは荷が重そうだな! 俺がでーる!」

「いやいや。絶対拾えないって訳じゃ無いんで。ノヤ先輩は今回ベンチ温めておいて下さい。昨日までの疲れも残ってるでしょう?」

「昨日は8時半に寝たから問題ねえよ!」

 

 8時半って早すぎ……。皆そんな感じで見てる。

 

「留年しないよう勉強しろよ?」

「中間テスト終わったばっかだろ? 目茶苦茶当たるコロコロ鉛筆貰ったから大丈夫だ!」

 

 小学校とかで選択式の問題でコロコロ鉛筆流行ったっけ。懐かしいなー。

 って言うところでタイム終了のブザーが鳴った。

 

「リラックスできたな? じゃあもう1回集中し直せ」

「「「シャアッス!」」」

「圧倒的な個の姿に立ち向かう君達の勇姿を見せてきなさい!」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んで気合いを入れる。

 

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 さーて、頑張るぞー。

 

◆

 

 一方、白鳥沢学園男子バレー部一同もミーティングを行っていた。同点にもち直したこともあって雰囲気は明るい。

 

「良いぞ若利! 今日サーブ良い感じだ。このまま頼むぞ!」

「はい!」

 

 コーチの斉藤明が牛島若利の左肩を軽く叩き、天童覚をはじめとする部員にも同じ事をされる。

 

「サーブは3番と5番を積極的に狙っていこう。1番も技術はあるがまだまだ粗がある。逆に13番を狙わないようにな」

「「「はい!」」」

「良し、このまま一気に流れを掴んでいこう!」

「「「はい!」」」

 

 その後は各自休憩となって、部員間で自然と雑談が増える。

 

「若利君、今日サーブいいじゃない」

「ああ。天童の様に言うならば乗ってきた、という表現になるのだろう」

 

 その言葉を聞いて天童覚は驚き、瀬見英太や大平獅音、山形隼人は喜び、五色工は闘志を燃やした。

 

「若利君どうしちゃったの? 何、9番と10番がそんなに気になる?」

「そうだな。ヒナタショーヨーとカゲヤマトビオも気になる。……が、あの13番も気になる」

「あぁ~、まさか若利君と張り合える相手だとは思ってなかったよね~。なに、対抗心って奴?」

「ああ。全国でもあれだけの実力をもつリベロは数少ないだろう。だから全力で打ち破りたい。この試合に勝って俺達は全国に行く。そして全国制覇だ。このチームならば成し遂げられるだろう」

「……じゃあやるっきゃないね」

 

 大エース牛島若利の一言が部員全員に奮起を促した。丁度タイム終了のブザーが鳴り響く。

 

◆

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