烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年10月⑤ VS白鳥沢学園④

 コートに戻って牛島選手のサーブに備えてバックレフトで構える。……なんつーかさー、やばくない? さっきまでと全然雰囲気違うじゃん。ここでガチモードかよー。

 多分皆そう感じてるだろうな。旭さんと大地さんなんか顔強張ってるし。

 

「「「若利ー! 1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 このサーブ俺に来そうだな。めっちゃ眼が合うもん。ピースでもしてみようかな。イェーイ。……あ、5番がピースしてきた。

 主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。このコースは大地さんと俺の間。

 

「大地!」

「俺が……!」

 

 声を出す余裕さえ無く両腕を差しのばしながら右側に飛び込む。すんげえ衝撃が両腕に伝わってきて、挙げ句には床にたたきつけられる感覚さえ覚えた。

 

「すいません、カバー!」

 

 俺が上げたボールはアタックラインに近いバックゾーンに落ちる軌道を取っていて、飛雄がセットアップに走ってる様子が目に入る。次はブロックフォロー!

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 レフトの龍先輩、バックレフトに移動した大地さん、センターの蛍、バックライトから旭さんの4人が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入る。ネットから遠いからツーは使えない。

 飛雄は誰を使う?

 

「お願いします!」

「「「3番!」」」

 

 飛雄が選択したのはバックライトの旭さん。トスと同時にアタックラインまで近付いてブロックフォローに入る。

 センターの5番がレフトの4番に合流して2人でブロックの体勢を作った。

 

「「せーのっ!」」

「「「ブロック2枚!」」」

「ふっ!」

「ワンチ!」「ノー!」

 

 旭さんのバックアタックは5番の右手の指先に当たってそのまま後ろに飛んでいった。決まったように見えたけど、14番のリベロが追いつきそうだ。

 この間にバックレフトまで移動して、14番のリベロが返球したボールを目で追いかける。

 

「バック!」「センター!」「レフト!」

 

 バックライトの牛島選手、センターの5番、レフトの4番、そして3番のツー。どれを持っても強力すぎる。

 

「若利!!」

 

 牛島選手にトスが上がって、俺はサイドラインに足がかかるまで。龍先輩、蛍、飛雄の3人がブロックの体勢を作った。

 

「「「せーのっ!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――俺の方を見た。

 スイング――ストレート。

 ⇒ストレート!

 

「ふん!」

「ワンチ!」「ノー!」「ノー!」

 

 牛島選手のバックアタックは龍先輩の左手の小指と手首の間に当たって思いっきり軌道が変わった。サイドラインを大きく越えていって、飛び込むけど当然追いつかない。【12-13】。

 逆転されたー。くそー。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 ……やっべえ。球速も重さも全然違うじゃん。ガチモードこえー。

 白鳥沢みたいにこっちもこっちで集まる。

 

「すんません!」

「大丈夫か?」

「めっちゃいてえっす……」

「あれが牛島さんの本気モードですね」

「まあ、でもウシワカやべえは知ってたことだし。やるしかないよ」

「旭の言うとおりだ。やるしかねえぞ」

「「「オス!」」」

 

 勝てば全国。負ければ終わり。それは変わりない。なんとかあげていかないとな。良し。

 全員レシーブ位置に移動して牛島選手のサーブに備える。早めに切りたい。……それしか言ってないか。

 

「「「若利! もう1本ナイッサー!!」」」

「ここ1本集中!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックレフトの隅っこ。俺のボールだ。

 

「「猫又!」」「「「ねこ!」」」「「「繋護!」」」

 

 ボールの落下に合わせて両腕を伸ばしてカット。……ゆったり打ったはずなのに重いな!

 アタックラインに近いフロントゾーンに落ちるような軌道を取ってボールが上がる。ボールの落下地点を見極めて飛雄がセットアップに走っていった。俺はブロックフォローだ。

 

「レフト!」「バック!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトの龍先輩、バックレフトに移動した大地さん、バックライトの旭さん、ライトの蛍の4人が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。

 

「お願いします!」

「「「5番!」」」

 

 飛雄が選択したのは龍先輩。速い平行トスがレフトに伸びていって、あっちは3番がブロックに付いた。

 

「「「ブロック1枚!」」」

「ォラ!」

「ワンチ!」

 

 3番のブロックが完成する前に龍先輩がスパイクを打って、3番の左手の指先に当たったボールはあっちコートのライト側のサイドラインよりちょっと外に落ちた。ワンタッチでこっちの点だ。【13-13】。

 

「シャアっ!!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 龍先輩とハイタッチして、次は蛍のサーブだからサイドラインで翔陽と交替だ。

 

「12点取れ!」

「任せろ!」

 

 翔陽とハイタッチしてコートを出たら、振り返って一礼。烏養コーチの所に向かっていく。

 

「その調子だ! 勢いづかせたくないからなんとしても触ってけ!」

「はい!」

 

 軽く話したら武田先生と清水先輩とハイタッチしてウォーミングアップゾーンに行く。

 

「「「ウェーイ!」」」

「ウェーイ!」

 

 皆とハイタッチしたらノヤ先輩からタオルを受け取って軽く汗を拭った。この間に牛島選手のバックアタックが決まって【13-14】。

 皆に送り出されてサイドラインで蛍と交替、そしてコートに一礼してバックライトに向かう。ライトには飛雄がいるから前も警戒しないと。

 そして、白鳥沢のサーバーは4番で8番が前衛に上がってきた。

 

「「「大平1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックレフト側。しかも軌道も低くてネットに当たりそうだ。

 

「「「前!」」」「「「日向!」」」

 

 案の定サーブがネットに当たって軌道を変えた。翔陽がオーバーで取るけど弾かれてその場に高く上がる。

 

「自分のミスは自分で取り返せ!」

「「「ウソだろ!?」」」

 

 ライト側のネット際から飛雄がボールに向かって走って、逆に翔陽は飛雄の進路から離れてレフト側からライトに向かって走ってくる。龍先輩は轢かれないようにバックゾーンに下がった。取り敢えずブロックフォロー。だ、誰に?

 ワイドブロードに走った翔陽がマイナステンポで助走して、飛雄から正確に平行かDクイックかってトスが上がって8番が反応するけど、その上からズドン。無理矢理点を決めた。【14-14】。

 結果オーライだったけど、龍先輩の助走を邪魔するあんまり褒められた点数の稼ぎ方じゃ無い。……まあいっか。誰も怪我してないし。

 

「「良し!」」

「良しじゃないだろう。危ないぞ」

「俺なら大丈夫っすよ、大地さん」

「……接触しないように気を付けろよ」

「「はい!」」

 

 いつか怪我しそう。接触しないようこっちが気を付けていかないとな。

 ローテーションがひとつ回って飛雄がサーブだ。

 

「そろそろサービスエース取っても良いんじゃないの?」

「……あのおかっぱ狙うか」

 

 牛島選手がサーブレシーブに参加しないから8番も下がり目だ。故にフロントゾーンに落とすと割と効果的なんじゃないかと思ってる。

 

「「「影山1本ナイッサー!」」」

「強打来るぞ! 1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 旭さんとの位置関係に気を付けながらバックレフトに移動できるように準備して相手コートの様子を窺う。

バックライトの4番とバックセンター気味の14番のリベロ、バックレフトの8番しかサーブレシーブには参加しない。

 主審の笛が鳴って、飛雄がジャンプサーブを打った。狙いはバックレフト。

 

「「「五色!」」」

「はい!」

 

 8番が体勢を崩しながらもアンダーで拾って、ボールがライト側のアタックラインに落ちるような軌道で落ちてくる。牛島選手がツーで打ってくるように助走に入ったのが見えた。

 

「1番来ます!」

「「「っ!!」」」

 

 龍先輩と翔陽が慌ててブロックの体勢を作るけど、助走しない翔陽のブロックは高さがでないからそのまま牛島選手がバックアタックを打った。ボールの落下地点に合わせて右側に飛び込むけど2m位先でボールが床に落ちてバウンドしていく。ああいうトリッキーなことしなさそうだと思ってたのに……! 【14-15】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 あんまり動じてないって事は一応練習はしてたんだな。くそー、出し抜かれた。気を付けないと。

 

「ドンマイドンマイ! 狙いは良かったぞ! 次切り替えろ!」

「「「はい!」」」

 

 見たぞー、「あんなのやってくんのかよー」って表情したの。まー、絶好のトスだったよな。狙ったわけじゃ無さそうだけど。

 そして、相手のサーバーは5番。1セット目にピンチサーバーで出た3番は10番と交替してるから出てこられない。もしかしたら他の選手が出てくる可能性もあるか。5番の代わりに12番が前衛に上がってくる。

 

「「「天童1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 飛雄が龍先輩の後ろでセットアップに走る分レシーバーはライト側に寄る。ということでバックライト気味に移動。翔陽が前衛だから前も警戒しないと。

 そのうち主審の笛が鳴って、5番がジャンフロを打ってきた。狙いはバックライトの隅っこ。

 

「「猫又!」」「「「ねこ!」」」「「「繋護!」」」

「……カバー!」

 

 アウトぽいけど入りそうな気がする。不規則に揺れるボールを弾かないように「ここっ!」ってタイミングを見極めて右腕で打ち上げてフライングした。

 上がったボールはセンターとライトの境目のアタックライン付近に落ちるように落ちていく。これだけ上がればなんとかしてくれるだろう。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「ライト!」

 

 レフトの大地さん、バックセンターに移動した旭さん、センターの翔陽、ライトの龍先輩が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。大地さんには3番、翔陽には12番、龍先輩には8番がブロックに付いている。

 急いで立上がってブロックフォローに入る。

 

「お願いします!」

「「「1番!」」」

 

 飛雄が選択したのは大地さん。レフトに平行トスが伸びていって大地さんがフェイントでボールをフロントゾーンに落とした。バックライトから牛島選手が走るけど追いつく前にボールが落ちる。前衛3枚がジャンプした瞬間にブロッカー3人も跳んでるからフェイントは有効だ。積極的に使っていこう。【15-15】。

 

「おし!」

「「「ナイス!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。今のも警戒しないといけないんだから後ろはきっついぞー。

 そして次のサーバーは龍先輩。力先輩もアップ完了してベンチで待機してる。

 

「サーブ頼むぞ田中!」

「オッス!」

 

 そのままバックレフトで相手コートの様子を窺う。ひとつローテが回ると牛島選手が前衛だ。何点か稼いでおきたい所。

 そのうち主審の笛が鳴って龍先輩がジャンプサーブを打った。狙いはバックレフト。お、インかアウトか分からない良いとこ!

 

「「「大平!」」」

 

 サーブレシーブに参加しない牛島選手の範囲を補う分バックレフトに移動していた4番がフライングしてボールに触るけど、後ろに弾いてボールがあらぬ方向へと飛んでいく。サービスエースだ。【16-15】。

 

「ッシャア!!」

「「「ナイッサー!!」」」

 

 そして、ウチが先に16点取ったから2回目のテクニカルタイムアウトだ。ハイタッチしながらベンチサイドまで戻っていく。

 

「田中! ナイスサーブだ!」

「縁下には渡さねえっす!!」

「守備は縁下の方が良いからちょっと休ませる。それは変わらねえよ」

「……オス」

 

 ベンチに座らされてそのままミーティングに入った。俺はノヤ先輩からタオルとドリンクを受け取る。

 

「向こうだってミスは少なくありません。君達の力は通用してますよ!」

「「「はい!」」」

 

 武田先生喉枯れそう。あれだけ大声出してるもんな。ありがとう御座います。

 それにしてもさっきから俺狙われてない? 気のせい? いや、こっち打ってきてくれるんなら拾うから良いんだけど。……ウソ、Aパス全然無いからちゃんとしないと。

 

「強いサーブでレシーブを崩してセッターを消耗させる。そうすりゃトスの精度も落ちてくる。だからサーブはガンガン攻めていけ!」

「「「はい!」」」

 

 そこでテクニカルタイムアウト終了のブザーが鳴って、全員で円陣を組む。

 

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 気合いを入れたらコートに向かう。

 

「田中、サーブ頼むぞ!」

「おうよ! このまま10点取ったらぁ!」

「その意気だ! やってこい!」

「オス!」

 

 白鳥沢も含めて12人がコートに入って、龍先輩はエンドラインでボールボーイからボールを受け取った。俺はバックレフトで相手コートの様子を窺う。

 

「「「もう1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 あっちの今のローテはそこまで強い方じゃない。ここでもう少し点差付けておきたいぞ。

 そのうち主審の笛が鳴って、龍先輩がジャンプサーブを打った。今度は軟打でレフト側のアタックライン付近に落とすサーブだ。

 

「「「大平!」」」

 

 後ろ気味にいた4番がフライングして上げて、12番が二段トスを上げようとしてる。誰に? もちろんバックライトに移動した牛島選手。

 

「牛島さん!」

「「「1番!」」」

 

 俺はレフト側のサイドラインまで。スタンディングでブロックに跳ぶ準備をしたレフトの旭さんにセンターから翔陽が助走しながら合流しようとする。大地さんはライト側のインナーを警戒して構えた。

 

「来い! 日向!」

「はい!」

「「「ブロック2枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――ライト側を見た。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「ふんっ!」「大地さん!」

「ノー!」「ワンチ!」

 

 牛島選手のスパイクは翔陽の右手の手首付近に当たってライト側のサイドラインを大きく越えていった。大地さんと飛雄が追いかけるけどコートの外で落ちる。ワンタッチであっちの点だ。【16-16】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 あっちはあっちで喜んでて、こっちはこっちで集まる。

 

「すいません!」

「良い良い! 日向もブロックしてやれ!」

「オス!」

 

 そして、サーブ権が切れた龍先輩が力先輩と交替だ。サイドラインに集まって力先輩を出迎える。

 

「縁下! ウシワカ吹っ飛ばしてくるからな!」

「おう! 田中の出番はもう無いと思え」

「あぁん!?」

 

 そんな会話をしながら2人が交替して、力先輩とハイタッチしていく。

 

「あっちの3番狙ってくると思うから上げていくぞ」

「はい!」

 

 力先輩なら大丈夫でしょ、って謎の自信がある。

 相手のサーバーは3番で、牛島選手が前衛に上がってきた。こっからきっちいぞー。

 

「「「瀬見1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 バックレフトでサーブレシーブに備える。ただ、飛雄が後衛からのセットアップだからバックセンターのボールも拾いたい。……多分3番の狙いは力先輩。

 そのうち主審の笛が鳴って、3番がジャンプサーブを打ってきた。案の定狙いはライト側。

 

「「「縁下!」」」「「縁下さん!」」「力先輩!」

「……オシ!」

 

 力先輩が綺麗に返球してこっちのターンだ。

 

「レフト!」「センター!」「バック!」「影山!」

 

 レフトの旭さん、センターの大地さん、バックライトの力先輩、ライトの翔陽の4人が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入る。まあここは。

 

「お願いします!」

「「「っ! 3番!」」」

 

 翔陽に見せかけた旭さんでしょう。飛雄の手から速い平行トスがレフトに伸びていって、旭さん対牛島選手の構図になり、旭さんが牛島選手の左側に打ってボールはコート中央に叩き付けられた。【17-16】。

 

「おし!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「縁下もナイスレシーブ!」

「はい!」

 

 きっちり仕事したな、力先輩。

 そして、ここで翔陽がサーブだから俺は前衛に上がる蛍と交替だ。サイドラインで蛍と入れ替わる。

 

「ブロック頼むぞー」

「分かってるよ」

 

 蛍とハイタッチしてコートを出たら、振り返って一例。そして烏養コーチの所に向かっていく。

 

「今回は特にないな。ゆっくりしとけ」

「はい」

 

 武田先生と清水先輩とハイタッチしてウォーミングアップゾーンへ向かっていこうとしたけど、翔陽のサーブ権は牛島選手のスパイクでワンタッチを取られてあっちの点になったから途切れた。【17-17】。

 行き先変更。サイドラインで翔陽と交替する。

 

「くそー、俺もサービスエース取りてえ!!」

「ネットイン狙っていくとかしろー」

「分かってるし!」

 

 分かって無いじゃーん。翔陽とハイタッチしてコートに一礼してからバックセンターへと向かっていく。ここのローテは飛雄と蛍がレフト側だから力先輩と俺、大地さんが左に寄らないといけない。

 

「8番レフト側狙ってくるかもしれないですね」

「おう。真ん中頼むな」

 

 力先輩と軽く打ち合わせてサーブレシーブに備える。

 

「「「五色1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 ローテーションが1巡して8番がサーバーだ。

 正直どこ打ってきてもおかしくない。あの8番技術有るからサイドライン上に落ちるように打ってくる可能性だってあるし。ま、なるようにしかならないね。

 主審の笛が鳴って、8番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはレフト側。しかも軌道が低い。

 

「「「前!」」」

「ォーッライ」

 

 ネットのレフト側にボールが当たってイージーボールになった。そのボールを蛍がオーバーで処理する。こっちのターンだ。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「ライト!」

 

 レフトの蛍、バックレフトの力先輩、センターの旭さん、ライトの大地さんの4人が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。飛雄は誰を選ぶ?

 

「お願いします!」

「「「1番!」」」

 

 飛雄が選んだのは大地さん。ライト側に平行トスが伸びていって、俺もブロックフォローでアタックラインを踏むくらいまで前に詰める。

 

「ふっ!」

「ワンチ!」

 

 大地さんのスパイクはブロックに跳んだ4番の左手の薬指と小指に当たって軌道が替わり、サイドラインの外側に落ちた。ワンタッチでこっちの点だ。【18-17】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。サイドアウトを繰り返して牛島選手を後衛に下がらせたい。

……下がってもバックアタックをしてくるって? それでもアタックラインを踏んだりするケースも増えるでしょ。……増えると良いなー。

 

「「大地1本ナイッサー!」」「「「1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 こっちのサーバーは大地さん。力先輩との位置関係に気を付けながら相手コートの様子を窺う。後衛だから3番のツーは考えなくて良いけど、攻撃力自体は高いローテーションだ。

 主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。狙いはライト側。

 

「「「五色!」」」

「はい! ……カバーお願いします!」

 

 8番がオーバーで処理したけど、手元で浮いたのかその場で大きく上がるボールになった。3番がセットアップに走る。

 誰で来る? レフトの4番? ライトに移動した牛島選手? でもあの位置からは難しいと思う。あと12番はトス呼んでないから無いな。

 

「瀬見! ライトだ!」

「若利!!」

 

 やっぱり牛島選手か。3番からの二段トスがライトに上がった。ちょっとネットに近いか?

 俺はサイドラインに足がかかるまで。レフトの旭さん、センターの蛍、ライトの飛雄の3人もブロックの体勢を作った。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――眼が合った。

 スイング――手首だけ。

 ⇒前に落としてくる! ……プッシュだ!

 

「ふっ!」

「ノー!」「ノー!」「ノー!」

「猫又!」「ねこ!」

 

 嘘だろ!?

 最後の最後にコートの奥を狙って押し込んできて、その場でジャンプしてオーバーでなんとか触る。でもボールは後ろに逸れていった。エンドラインから5m位離れた所で落ちる軌道を取ってる。

 

「カバー!」「縁下!」

「はい!」

 

 俺が弾いたボールを力先輩が追いかけていく。追いつくか追いつかないか微妙なラインだ。力先輩が走って走って……間に合った! 

 

「……ラスト!!」

「オッケイです!」

 

 最後の最後に力先輩がパンケーキで上げて、ネットの下の白帯辺りまでボールが上がる。そこまで上げてくれりゃあ楽勝だ。追いついてこっちの体勢を整える時間を稼ぐために思いっ切り上に打ち上げる。

 

「「「チャンス!」」」

「フォローサンキュ!」

「こちらこそ!」

 

 力先輩と一緒にコートまで走って戻る。シャトルランかよ!!

 ボールは相手コートのアタックライン付近に落ちるような放物線を描いていて、14番が待ち構えていた。……いんや。

 3番がセットアップに入って12番も助走を始めていた。縦のBクイックの可能性が高い。息つく暇も無くレシーブ体勢を作って構える。

 

「太一!」

「はい!」

 

 予想通り1本目を12番のBクイックのトスにして12番が打ってきた。

 

「ワンチ!」

 

 でも蛍がワンタッチを取ってくれて、大きく上がったボールはエンドラインを越えるように吹飛んでいく。やべ。

 

「ォーライ!」

 

 でも力先輩がそこにいる。力先輩がオーバーで処理してボールはネット際まで戻っていく。こっちのターンだ。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 レフトの旭さん、バックセンターの力先輩、センターの蛍、バックライトの大地さんが同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。……あ。

 

「「「ツー!!」」」

 

 飛雄が左手でチョンと相手コートに返して、3番と8番がフライングするけどボールはフロントゾーンに落ちた。【19-17】。

やりやがった。確かに有効だもんな。こっちバタバタしてたもんな。

 

「オッシャ!」

「「「ナイス影山!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「あとナイスラン! 縁下、猫又!」

「「はい!」」

 

 スタミナは負けへん。縄跳び効果やー。

 

「ボールを落とさなきゃ負けねえんだ! 粘って粘って粘りまくれよ! 相手にプレッシャーかけてけ!」

「「「はい!」」」

 

 流れはウチに来てる。このまま一気に行きたい所だ。大地さんもう1本ナイッサー!!

 っていうタイミングで白鳥沢がタイムアウトを要求して、ブザーが鳴り響く。皆でベンチサイドまで戻っていく。

 

◎

 

 生川高校男子バレー部一同もまた、音駒高校、梟谷学園、森然高校と同様にスポーツ専門の有料サイトを使って烏野高校と白鳥沢学園の対戦を観戦していた。

 

『ここで白鳥沢学園の鷲匠監督がすかさずタイムアウトを要求しました! 烏野高校に流れが傾いていると判断したのでしょうね』

『そうですね、田中君と替わった縁下君が良い所にいました。猫又君共々ファインプレーでしたね』

 

 実況の解説が流れている背景で烏野高校のベンチサイドをメインに映し出された。

 

『縁下! ナイスだ!』

『はい!』

 

 悔しそうな表情の田中龍之介が縁下力の肩を軽く叩くと西谷夕や成田一仁、木下久志、菅原孝支と続く様子が映る。

 

「いやぁ~、ファーストテンポのシンクロ攻撃はやっぱり有効ですねぇ。ほとんどブロックが1枚ですから」

「だな。一気に逃げ切らないと影山君のスタミナが心配だぞ」

 

 監督の中崎純一とコーチの秋田洋介が話している一方で、他の部員もまた口々に試合の感想を述べている。

 

「化け猫が化け猫過ぎてやばい」

「ウシワカのサーブとスパイクあんな触れるぅ? 腕もげそうなんだけど」

「そりゃサーブ決まらないわ。……でも、逆に言えば猫又と西谷から点穫れれば良いってことだろ?」

「仮想敵は梟谷グループのリベロ陣だな。俊美と賢祐も頑張れよ」

「「おす!」」

 

 初めて烏野高校が梟谷グループの4校と合宿をした7月から2週間前の合宿まで、徐々に生川高校の勝率も下がっていた。その原因としてはサーブレシーブとスパイクレシーブの成功率の低さだ。

 対戦相手のサーブで崩されたり、木兎光太郎や東峰旭からのスパイクレシーブに対応できなかったりと徐々に増えているので、代表決定戦までもっと仕上げなければいけない。

 と言うのが生川高校男子バレー部の目下の課題である。

 

「それにしても白鳥沢のメンバーは落ち着いてるよなー」

「ウシワカも尻上がりに調子上げてくみたいだからな。本来試合中でギアを上げていくのが白鳥沢の戦い方っぽいけど、1セット目はそのリズムを狂わせたんだろ。ほら、『あ、今の取れないんだ。じゃあこんな感じで』ってあるだろ?

でも最初に化け猫がウシワカのスパイク拾ったからテンパったんだと思う。白鳥沢の監督も『笛鳴ってねえぞー!』って言ってたじゃん」

「世界にも通用するウシワカのスパイクを県内に取れる奴がいたらちょっとは驚くか。今までの試合も圧倒的だったし」

「烏野の連中の話聞いたらここ数年は青葉城西ってところとの2強だったっぽいしな」

 

 そんな風に伊勢原裕次と松井宙、湯河浩二の3人が話していると、副審がタイムアウト終了の笛を鳴らした様子が映った。そして両校のメンバーがコートに戻っていく。

 

◎

 

 タイムアウトが終わってコートに戻り、ポジショナルフォールトを食らわないように力先輩との位置関係に気を付ける。あっちのコートは大きく雰囲気が変わったとかってわけじゃない。「気持ち切り替えろ」って意味のタイムだったんだろうな。ここは確実に牛島選手で来るはずだ。

 

「「「大地さんもう1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 そのうち主審の笛が鳴って大地さんがジャンフロを打った。狙いはライト側。牛島選手も12番も8番も拾える位置へのサーブだ。

 

「はい!」

 

 12番がオーバーで処理してあっちのターンになる。

 

「若利!」

「「「1番!」」」

 

 3番からライトにオープントスが上がる。

 やっぱり牛島選手だよね。ってことで俺はレフト側のサイドラインまで足がかかるまで。レフトの旭さんにセンターの蛍とライトの飛雄が合流してブロックの態勢を整えた。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――蛍の右手側を見た。

 スイング――クロス。

 ⇒ブロックアウト狙い!

 

「ふんっ!」「力先輩!」

「ノー!」「ワンチ!」「ノー!」

 

 牛島選手のスパイクは蛍の右手の指先に当たってエンドラインを越えるように吹っ飛んでいく。力先輩の立ってた位置よりも後ろに飛んでいって、大地さんと力先輩が追いかけるけど得点板近くにボールは落ちた。なんつーパワーだよ……。【19-18】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 あっちはあっちで喜んでるからこっちはこっちで集まる。

 

「すみません、狙われました」

「指先狙われたら避けてみるのは? グーにするだけで手の上通過していきそうだ」

「猫又指示出せるか?」

「やってみます」「分かりました」

 

 ここで牛島選手のスパイクをブロックできたらこっちに流れが来るんだけどな。それはお互い様か。白鳥沢も5番と12番とミドル2人のブロックの本数出てないし。

 ただ、シンクロ攻撃に慣れられたらウチは負けるってのは確実に言える。

 

「やってることはあってるぞ! 1本切れ!」

「「「はい!」」」

 

 おっと、ここでサーバーになった12番が7番と交替だ。1セット目と同じでピンチサーバーだな。

 

「「「おっ。おっ。おっ。おっ。おっ、おっ、おっ、おっ、おっおっおっおっ。……いよーっし!!」」」

 

 コートに入ってきた7番が他の5人とハイタッチしてエンドラインへと向かっていく。

 

「「「湯野浜1本ナイッサー!!」」」

「ここ切るぞ! 1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 前が蛍だから前も警戒しつつバックセンターで構える。バックレフトには力先輩、バックライトには大地さん。守備力には自信があるローテだ。

 主審の笛が鳴って7番がジャンフロを打ってきた。狙いはセンターでネットイン。ボールの軌道が低くて真っ直ぐ伸びてくる。

 

「「「前!」」」「「「月島!」」」

「影山!」

 

 案の定ボールはネットに当たってそのままこっちのコートに入ってきた。そのボールを蛍が高く上げるように処理する。

 

「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 バックレフトの力先輩、センターの蛍、バックライトの大地さん、ライトの旭さんが同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。

 飛雄が誰を使う? あっちの前衛はライトから牛島選手、5番、4番だからブロックは高い方だ。……3番が入ってから全体的にブロックが高くなったか。

 

「お願いします!」

「「「3番!」」」

 

 飛雄が選択したのは旭さん。ライトに速い平行トスが伸びていって、ブロックに跳んだ4番の指先に当たるけど、そのままコートにボールが落ちた。【20-18】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 コートに集まってペシペシハイタッチ。

 この間に7番と12番が交替して、12番はリベロの14番と交替していった。そして、旭さんがサーブで力先輩が前衛に上がったからここで龍先輩と交替する。

 

「頼むぞ田中!」

「おうよ! 休んだ分しっかりと働いてやる!」

 

 たった3ローテとはいえ休憩出来たから龍先輩の顔色もさっきよりも良くなってる。サイドラインで入れ替わって龍先輩がコートに戻ってきた。

 

「しゃあ!! 2セットもこのまま取ってやるぜ! 影山! 俺にトス持ってこい!」

「分かりました!」

 

 これも一種の心理戦だ。回復した龍先輩にトス集めるだろうなって思わせて他のスパイカーを使ったりってね。

 

「旭さんサーブ頼んます! サービスエース5本でいいっすよ!」

「おう!」

 

 できたらすげーわ。……あとこういう時に一気に流れ持ってかれるぞ。注意しないと。

 そのままバックレフトに移動して相手コートの様子を窺っていると、そのうち主審の笛が鳴って旭さんがジャンプサーブを打った。狙いは5番と3番がネット際にいるレフト側。

 

「「「五色!」」」

「はい!」

 

 8番がしっかりと返して相手のターンになる。

 

「瀬見!」「セミ!」「A!」

「若利!」

 

 ライトの牛島選手、時間差を使ってこようとする4番、レフト側からAクイックに走る5番の3人がトスを呼んだ。Aパスだからコンビを使えるだろうけど、3番はライトにオープントスを上げる。

 俺はレフト側のサイドラインに足がかかるまで。レフトの龍先輩にセンターの蛍とライトの飛雄が合流してブロックの態勢を作った。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――龍先輩の左腕を見た。

 スイング――ストレート。

 ⇒ブロックアウト狙い!

 

「ふんっ!!」

「ワンチ!」「ノー!」「ノー!」

 

 読み通り、牛島選手が打ったボールは龍先輩の左手首に当たって軌道を変え、そのままアンテナに当たった。4人のラインズマンが一斉に〝アウト〟のシグナルを出す。相手の点だ。【20-19】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 牛島選手を中心に集まって喜んでる一方で、俺達も集まる。

 

「さーせん!」

「「ドンマイドンマイ!」」

「ブロックアウト狙われたらきついですね」

「逆に言えばこっちのレシーブが脅威になってるって事だろ。取れるところは取るって言うのは変わんない。やることはあってんだからさ」

「「「おす!」」」

「ここ1本切るぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 牛島選手がサーバーだ。ここでまくられる可能性は非常に高い。油断大敵!

 

「「「若利1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 サイドラインに近いバックレフトで俺と大地さんの間を開けて誘導する。こっちに打ってくれれば御の字だ。でもまあ無理だろうな。

 主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。狙いは大地さんと旭さんの間。

 

「俺が!」「大地!」

 

 大地さんが拾いに行って両腕でアンダーの構えを作る。良し、なんとか上がった!

 でもその場に打ち上がるようなボールになってしまって旭さんが二段トスを上げに行く。

 

「旭さん! レフト!!」

「田中!」

「「「5番!」」」

 

 ここは龍先輩しかいない。旭さんから二段トスが上がって俺達はブロックフォロー。あっちはライトの3番にセンターの5番とレフトの4番が合流してブロックのタイミングを図ってる。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 威圧感やべーなおい。打てる場所なんか無いだろ。

 

「ォラ!」

「ワンチ!」「ワンチ!」「ノー!」

 

 龍先輩のスパイクは3番の左手の指先と5番の指先に当たってチャンスボールになった。

 

「「「チャンス!」」」

「「「戻れ戻れ!」」」

 

 バックレフトに素早く戻って14番がチャンスボールを処理する様子を視界に入れる。

 

「バック!」「A!」「レフト!」

 

 バックライトの牛島選手、Aクイックを呼ぶ5番、レフトの4番の3人がトスを呼んでいて、しかも3番は前衛だからツーも考えないといけない。誰が来る。

 

「覚!」

「「「5番!」」」

「ほいっ!」

「ノー!」「ノー!」

 

 3番はAクイックに入った5番にトスを上げて、蛍と飛雄も遅れてブロックに跳んだけどブロックが完成する前に打たれた。ボールはそのままライト側のアタックライン付近に落ちてバウンドしていく。反則は無い。あっちの点だ。【20-20】。

 

「ビクトリィィィィ!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 あっちのコートで5番を中心に集まって喜んでる様子を見ながら、こっちはこっちで集まる。

 

「悪い、1本目ミスった!」「すんません、決めきれなかったっす……!」

「ここ1本切ろう。影山、俺にトス頂戴な」

「5番にもブロック跳ばれたらやばいんでその時しだいっすね」

「そこは旭さんに上げるところだろ!!」

 

 龍先輩が飛雄にツッコんで、思わず気が緩む。

 

「ま、そういうことだ。コートに上げれば誰かがカバーしてくれる。……次は絶対上げてやるけどな!」

「その調子っす、大地さん!!」

 

 サービスエース、特にノータッチエースは避けたい。

 

「ここ切り抜けるぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 サイドラインに近いバックレフトに移動して牛島選手からのサーブに備える。そのうち主審の笛が鳴って牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。狙いはさっきと同じ大地さんと旭さんの間。

 

「俺が!」

 

 身体全身を使って大地さんが牛島選手のサーブを拾う。ボールはアタックラインに落ちるような軌道を取って上に上がる。

 

「影山! カウンター!!」

 

 1セット目からずっとスガさんが声を張り上げていて、今が特に響いた。

今度はこっちの攻撃だ。ただ、体勢を崩して大地さんは助走に出遅れてる。

 

「レフト!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトの龍先輩、バックセンターに移動した旭さん、ライトの蛍の3人が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入る。飛雄はどうする?

 

「いけっ!」

「「「11番!」」」

 

 飛雄はライトの蛍にDクイックか平行かどっちでもいえるトスを上げた。……5番もしっかりレフトに移動してる。

 

「獅音君!」

「オッケー! せーのっ!!」

「「「ブロック2枚!」」」

 

 シンクロ攻撃で今日初めて2枚ブロック揃えられた。ただ、蛍は冷静に5番の右手が届かない様にセンター側にボールを落とした。すんげえ良い所。【21-20】。

 

「っ!」

「「「ナイスフェイント!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。牛島選手のサーブを切れたのはでかい。

 

「5番ブロックに付いてきたな」

「アンテナまで伸ばして上手く幅使っていけばそう触れないはずだ。影山頼むぞ」

「はい!」

 

 蛍のサーブだから翔陽が前衛に上がってくるローテだ。サイドラインで翔陽と入れ替わる。

 

「4点取れよ」

「分かってる!」

 

 俺と翔陽が交替してる一方で、サーブの番が来た蛍とスガさんもここで交替だ。飛雄の攻撃力を生かして欲しい。

 

「ねこ良くやった! 日向やるぞ!」

「お願いします!」「はい、菅原さん!」

 

 コートに一礼して烏養コーチの所に向かっていく。

 

「牛島ブロックアウトとか狙ってくるようになってるから動いていこう。取れる範囲のボールを取れればこっちのチャンスになるし、相手へのプレッシャーになるはずだ」

「はい!」

 

 そうだよなー。弾かれたボールを取っていきたいところだ。武田先生と清水先輩と軽くハイタッチしてウォーミングアップゾーンへ行く。

 

「「「ウェーイ!」」」

「ウェーイ!」

 

 スガさんが試合に出てるから代わりに力先輩が音頭を取って皆とハイタッチ。その後はノヤ先輩からタオルを受け取って応援に移った。

 

「「「スガさん1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴ってスガさんがジャンフロを打った。狙いは3番が前衛のレフト側、かつ軟打で前に落とすサーブ。

 

「「「五色!」」」

「……っ!」

 

 ネットに掠って軌道が変わったのか8番の1本目はこっちコートに返っていくボールになりそうだ。3番と飛雄が同時にジャンプしてネットの上でボールの押し合いになる。

 結果的には飛雄が押し負けてこっちのボールになった。

 

「菅原さん!」

「オッケー! やるぞ!」

 

 センター側のフロントゾーンに落ちるボールを翔陽が高く上げてコートのメンバーの呼吸を整えさせる。そして、こういう時にはスガさんの出番だ。

 スガさんがバックライトからセットアップに走って、コート内の他の5人が助走距離を確保した。そして同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入る。

 

「レフト!」「バック!」「センタァー!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトの龍先輩、バックレフトの旭さん、センターの翔陽、バックライトの大地さん、ライトの飛雄がトスを呼んで走る。スパイカー5人対ブロッカー3人。ここだけ見ればこっちの有利だ。

 

「決めろ!」

「「「9番!」」」

 

 スガさんはライトの飛雄にアンテナまで伸びるトスを上げた。レフトの4番は飛雄と一緒にブロックに飛び、5番も遅れて合流しようとする。

 

「「「ブロック1枚!」」」

「ノー!」

 

 飛雄は4番のブロックが完成する前にストレートにボールを叩き付けて、フライングした白鳥沢の8番が触る前に決まった。【22-20】。

 

「シャアっ!!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 このローテで一気にセット取りたいぞ。頑張ってくれぇ~!

 ただ、バックアタックが全然決まってないからバックアタックへのブロックの警戒は無くなってもおかしくない。となるとブロックされる可能性はぐっと高くなる。

 

「「「スガさんもう1本ナイッサー!!」」」

 

 ウォーミングアップゾーンから声を出して白鳥沢の応援にも負けないようにする。こうしてコートの外に出ると白鳥沢の応援はやっぱり凄い。烏野も負けてる訳じゃ無いけど、ただ、バスドラムとかの楽器がある分迫力が凄い。烏野は吹部に応援してくれるよう声掛けてるわけじゃ無いからねぇ。

 そんなことを考えて応援しているうちに、牛島選手のバックアタックが決まって交替する時間になった。【22-21】。

 ただ、まず先にスガさんが蛍と交替して、コートに戻った蛍が俺と交替するって流れだ。サイドラインの近くでスガさんと蛍が交替する瞬間を眺める。

 

「月島! ねこ! 頼むぞ!」

「……すぐ交替ですけどね」「はい!」

 

 コートに入った蛍とハイタッチして、コートに一礼してからバックライトへと向かっていく。

 相手のサーバーは4番。サーブ強いから早めに切りたい。

 

「「「獅音1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 バックレフトから大地さん、旭さん、俺の順で4番のサーブに備える。そのうち主審の笛が鳴って4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いは旭さん。

 

「旭!」「旭さん!」

「ぐっ……! カバー頼む!」

 

 体勢を崩された旭さんのレシーブはアタックライン付近に落ちる放物線を描いて上がった。ボールの落下地点を見極めて飛雄がセットアップに走る。

 

「影山!」「バック!」「センター!」

 

 レフトの翔陽はネットに向かって飛び出していって、バックレフトの大地さんはバックアタック、センターの龍先輩はセミクイックのトスを呼んだ。翔陽はマイナステンポ、大地さんと龍先輩はセカンドテンポって感じだ。

 

「いけっ!」

 

 やべっ。5番がもうライトにいんじゃん。

 

「翔陽ブロック2枚! 躱せ!」

「っ!?」

「ノー!」「ワンチ!」

 

 急に言われても困るよねー!!

 ってことで翔陽のスパイクは5番にドシャットされて、ボールは床に落ちた。【22-22】。

 あー、今飛雄は無いだろって全体的にライト側に寄ってたわ。龍先輩のセミでも5番と8番がガッツリブロックされてたと思う。しゃーないな。でも、5番を乗せたくも無かった。

 

「ビクトリィィィィ!!」

「「「ナイスブロック!!」」」

「ドンマイドンマイ!」

「次取るぞ!」

 

 かけ声を出すけど、いやーな雰囲気が流れたのも事実。

 でも、ここで武田先生がタイムアウトを要求して、ブザーが鳴り響いた。タイム残ってて良かったわ。

 

「トス読まれてたな」

「……ウス、さーせん」

「~~っ!! 次は決めてやる!!」

 

 そんな会話をしながらベンチサイドまで戻って、試合に出てるメンバーはベンチに座らされた。

 

「今のはローテーション的に仕方ねえ。影山はフロントライト、猫又はバックライトってライト側が手薄になっちまうローテだしな。

 ただ、だからこそ、田中がCかD、ライトのセミに入っても良いローテだ。臨機応変に対応していけ。コート幅を上手く使っていけよ!」

「「「はい!」」」

「もちろん、日向がワイドブロードしても良いからな。接触しないように声しっかりと出していけ!」

「「オス!」」

 

 思えば、今のは俺がトス上げに行っても良かったな。くそー、次は行こう。

 

「皆! 流れはこっちに来ていますよ! 君達のバレーボールをしていきましょう! ファイトです!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 武田先生にも檄を飛ばされてやる気回復っと。……いや別に減ってないけど。

 このセットも取りたいな。でも流れがあっちに傾いたのも事実だ。

 

◆

 

 一方、白鳥沢学園男子バレー部一同も烏野高校同様ミーティングを行っていた。

 

「やっとドシャットでたなー、覚。9番の癖も大分分かってきただろ。ドンドンドシャットしてこい!」

「はいっす!」

 

 烏野高校のポイントゲッターである日向翔陽のスパイクをドシャットしたことでリードされていた序盤よりもベンチサイドの雰囲気は柔らかくなっている。

 

「何度も言うけど、別にこっちの攻撃が決まってないわけじゃ無いぞ。ウチはウチのバレーで点数を稼ぐ。ただそれだけのことだ。

 点を取られたら相手以上のシンプルな力で点を取り返す。そういったバレーをやってこい!」

「「「はい!」」」

 

 バレーボールは流れがコロコロ変わる球技だ。それ故、さっきまでは烏野高校側にイケイケモードが流れていたが、天童覚のブロックによって一気に白鳥沢学園に追い風が流れるようになっている。

 シンクロ攻撃に慣れるようになってきたこともあって、白鳥沢学園男子バレー部一同に余裕が産まれていた。

 

「このセット取るぞ。獅音、サーブしっかりな」

「おう!」

 

 タイムアウト終了を知らせるブザーが鳴り響いて両校のメンバーがコートへと向かっていく。

 

◆

 

 バックライトに移動してまだ続く4番のサーブに備える。

 

「「「獅音1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 こっち打ってこないかな。多分鷲匠先生の指示は「旭さんと龍先輩を狙え」って感じだと思うんだけど。俺の方打ってこーい。

 主審の笛が鳴って、4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはレフト側のサイドライン。でもアウトっぽい。

 

「アウト!」

 

 大地さんが見送ったけど、その瞬間やっちまったって表情をした。こっからだと線上に見えたな……!

 案の定というか、ラインズマンは〝イン〟のシグナルを出した。相手のノータッチエースだ。【22-23】。

 やっべぇ、逆転された。流れあっちに来てんじゃん。

 

「良し!」

「「「ナイッサー!!」」」

 

 あっちコートでは4番を中心にハイタッチしている様子が見えていて、こっちはこっちで集まる。

 

「すまん! 入ってた!」

「今のアウトだったろぉー、って俺も思ったっす」

「「「同じく」」」

「今のはしょうがねえぞ! 4番の狙いが良かったんだ! 次切り替えろ!」

「「「はい!」」」

 

 烏養コーチに返事をして全員で集中しなおす。

 

「ここ切り抜けるぞ!」

「おう!」「「「はい!」」」

 

 それが終わったらバックライトに移動して、3本目の4番のサーブに備える。こっち打ってこいやー!!

 主審の笛が鳴って4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックセンター寄りの大地さんと旭さんの間。

 

「俺が!」「大地!」

 

 ドッシリと構えた大地さんが完璧にカットして、ボールがネット際の飛雄へと返っていく。同時に翔陽もライト側に走り始めて龍先輩がレフトに移動していく。

 

「レフトォ!」「バック!」「バック!」「影山ぁ!!」

「「「っ!?」」」

 

 翔陽に釣られ。龍先輩にも釣られ。あっちの前衛の3番、5番、8番は動きが一瞬固まった。そして、一瞬固まったら翔陽のマイナステンポには出遅れる。

 

「いけっ!」

「「「っ! 10番!」」」

「シっ!」

 

 ライト側のアンテナ近くでジャンプした翔陽がネットよりも手が出ていない8番のブロックの上からボールを叩き付けた。流れをこっちに引き寄せる事に成功。【23-23】。

 

「シャア!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。次は飛雄のサーブの番で、忠が大地さんと交替する。ワンポイントブロッカーかこのまま前衛を任せるのかは分からない。

 

「山口! 頼むぞ!」

「はい!」

 

 高さの補強と大地さんのスタミナ回復。そして、特に変わらないけど大地さんの代わりに旭さんがゲームキャプテンになる。

 

「「「影山1本ナイッサー!!」」」

「強打来るぞ! 1本集中!!」

「「「オォーッ!」」」

 

 デュースには持ち込ませたくない。積極的に強いサーブ打って欲しいけどネットにかけるとかアウトは避けたい。でも、ここで強いサーブが打てるかが勝ち上がれるチームだって日頃から言われ続けてる。

 旭さんとの位置関係に気を付けながら相手コートの様子を窺う。奥の手を使ってでもこのセット取りに行きたい。

 主審の笛が鳴って飛雄がジャンプサーブを打った。狙いは3番がネット際、牛島選手はバックライトに移動ってことで手薄になってるセンター。でも、読んでいたらしい4番がサラッと拾う。やべ。

 

「バック!」「A!」「レフト!」

 

 ボールがセッターの3番に返っていって、バックライトに移動した牛島選手、Aクイックに入る5番、レフトの8番がトスを呼んだ。牛島選手だと思うけどー、どう来る?

 

「覚!」

「「「5番!」」」

「ほいっ!」

「ノー!」「ワンチ!」

 

 ジャンプトスをした3番からAクイックに跳んだ5番へ最短距離のトス。翔陽と忠もブロックに跳んで、忠がワンタッチを取って返せたけど、ボールは相手コートのレフト側に飛んでいってサイドラインを大きく越えていった。【23-24】で白鳥沢のセットポイントだ。

 

「よーっし!!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 あっちのコートで5番を中心に集まってウェイウェイしてる。

 

「すいません!」

「ドンマイ! 次シャット出来るぞ!」

「……はい!」

 

 こっちも集まってハイタッチをしたら、メンバーチェンジのブザーが鳴った。大地さんをコートに戻すらしい。

 

「ナイスワンチ! 次止めるぞ!」

「はい!」

 

 サイドラインで忠と大地さんが入れ替わって、今度は大地さんとハイタッチをしていく。そして、白鳥沢でもメンバーチェンジをするらしい。サーバーになった5番と2番が交替する。

 

「「「おっ。おっ。おっ。おっ。おっ、おっ、おっ、おっ、おっおっおっおっ。……いよーっし!!」」」

「「「添川1本ナイッサー!」」」

「俺が決める!!」

「「「オォーッ!」」」

 

 2番。そこまで印象が無い。というか試合に出てたっけ? レベルだ。まー、でもきっと強打のはず。

 

「落ち着いて1本取るぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 バックライトからセットアップに走る飛雄の分全体的にライト側に寄って、更にセンターの翔陽の分前も警戒する。

 主審の笛が鳴って、2番がジャンプサーブを打ってきた。狙いは飛雄の進路上、つまりライト側。

 

「はい!」「頼む!」

 

 龍先輩に任されて、俺が2番のサーブを拾う。……良し! こっちのターンだ!

 

「レフト!」「バック!」「影山!」「ライト!」

 

 レフトの大地さん、バックセンターに移動した旭さん、AかCクイックに跳ぼうとする翔陽、ライトの龍先輩がトスを呼んで同時に助走を始めた。

 相手ブロッカーはライトから3番、12番、8番。狙うとしたらライト側か?

 

「お願いします!」

「「「3番!」」」

 

 トスが上がる直前でCクイックに跳んだ翔陽と旭さんのパイプ攻撃。3番も12番もブロックには出遅れてる。ブロックはほぼいない状態だ。

 

「ふっ!」

 

 旭さんのバックアタックが相手コートに突き刺さる。【24-24】でデュースだ。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「良し! デュースだ! 粘ってけよ!」

「「「はい!」」」

 

 先に2点差ついた方が勝ちだ。牛島選手が前衛に上がってくる前のこのローテで決着を付けたい。

 

「田中! サーブ頼むぞ!」

「ォッシャア!! 任せろ!!」

 

 6回交替したし、前に力先輩と交替したからここで久志先輩との交替はできない。

 あと、この間に2番と5番が交替して、更に5番と14番のリベロが入れ替わってた。

 

「強打来るぞ!」

「「「オォーッ!」」」

 

 バックレフトでそのまま相手コートの様子を窺う。すると、主審の笛が鳴って龍先輩がジャンプサーブを打った。狙いはフロントレフトの12番とサーブレシーブに参加しない牛島選手がいるレフト側。

 

「「「大平!」」」

 

 くっそ。4番がカバーに入って乱してはいるもののボールはコート内に上がった。アタックラインに落ちるようなボールだ。そして、ネット際にいる3番がセットアップしに走る様子が見える。ここは誰で来る? 8番? 12番? やっぱり牛島選手?

 

「太一!」

「「「っ! 12番!」」」

 

 マジかよ!? そっからBクイック!?

 翔陽がブロックに跳ぶけど、ブロックの完成前に打たれて相手の点数になった。【24-25】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 12番を中心に集まってウェイウェイしてる。こっちはこっちで集まった。

 

「今のはしょうが無い! 落ち込むなよ! 次取れ!」

「「「はい!」」」

 

 ふぅー、この緊張感はいつもあんまり好きになれない。

 バックレフトに移動してバックセンターにいる大地さんと干渉し合わないようにポジションを決める。

 ここでサーバーは3番。そして牛島選手が前衛に上がってくるローテだ。10番なら良かったのになー!!

 

「「「瀬見1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 こっち打ってこい。俺に打って来いよー。

 って思ってたら主審の笛が鳴った。3番がジャンプサーブを打ってくる。狙いはバックライト側。

 

「「「田中!」」」「「「田中さん!」」」「龍先輩!」

「ォラ!」

 

 龍先輩が3番のサーブを拾うけど、ボールはそのまま相手コートへとチャンスボールとして返っていった。……くっそ。

 

「「「チャーンス!」」」

 

 サーブを打った3番はそのままセットアップしにネット際まで走って行って、14番のリベロがしっかりAパスで3番に返す。となりゃあ?

 

「若利!!」

「「「ライト!!」」」

 

 牛島選手だよなぁ!!

 俺はサイドラインまで足がかかるまで。旭さんと助走をする翔陽がブロックの態勢を整える。

 

「日向! 来い!」

「はい!」

「「「ブロック2枚!!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――クロス。

 身体の向き――クロス。

 視線――翔陽の両腕を確認した。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「ふんっ!!」

「ノー!」「ワンチ……っ!!」

 

 牛島選手のスパイクは翔陽の右手に当たって、ボールは思いっきり吹っ飛んでは得点板の更に奥で落ちた。ワンタッチであっちの点だ。【24-26】。

 セットポイントを取られたからコートチェンジの為にエンドラインまで並びに行く。

 

「すいません!」

「ブロックの高さは出てたから気にするな。次取り返すぞ!」

「はい!」

 

 主審のシグナルに合わせてコートチェンジをしていく。

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