烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年10月⑧ VS白鳥沢学園⑦

 コートチェンジで白鳥沢の応援席側のコートに着いた。荷物を置いたらベンチサイドでミーティングに入る。

 

「白鳥沢ってチームに慣れてきたよな? 絶対に敵わないって思うか?」

「「「いいえ!」」」

「そうだ。俺達は4月から必死こいて練習してきた。そのおかげで鷲匠先生の考えを変えるほど相手を苦しませてる。でも、苦しませるだけじゃ駄目だ。このセットを落とすと俺達は全国に行けない。

 1人1人ができることをしっかりとやってこい。そんで全員バレーだ。良し、第4セット取るぞ!!」

「「「はい!」」」

 

 続いて武田先生。

 

「1、2セットと3セット目では牛島君のスタート位置が違いましたが、それでも君達は粘りを見せてあと一歩と言うところまで追い詰めた。ならば〝あと一歩〟を頑張りましょう。君たちなら勝てます!」

「「「はい!」」」

 

 ちょっと休んで俺も回復したからなー。もう本調子ですよ。

 ……まあ? 1、2セットをノヤ先輩が見てたからスタミナって意味ではノヤ先輩の方が動けそうなんだけどね。俺の役目は一旦終了。いつでも出られるけどな!

 

「東峰、影山」

「「はい!」」

「2人はずっと出ずっぱりだからな。体力的にはどうだ? まだいけるか?」

「「いけます!!」」

「タイミングがあれば交替して休憩させてやりてえ。縁下と菅原もいつでも出られるようにしといてくれ」

「「はい!」」

 

 スガさんの表情的に「正セッター俺でもいいっすけど!」みたいに思ってそう。あ、飛雄が張り合い始めた。まだ余裕有りそうだな。

 あと。

 

「オーダーどうするんですか?」

「……月島と日向を入れ替えてみようと思う」

 

 ……なるほど? それなら旭さん、蛍、飛雄の誰かは前衛にいるから対処できるようになるかもしれないな。

 

「牛島が前衛スタートだったら、影山がセンターでブロック。後衛スタートだったらレフトと月島の2枚で対応できるかなと思ってる。トータルディフェンスでアンテナからの距離を開けてリベロの方に打たせるってのは変わりねえ。

 正直博打ではある。なんとか出来そうか?」

「……します」

「良し。ローテーション複雑になってるから確認するぞ。特に日向!」

「お、オス!」

 

 最初のローテーションだと飛雄が前衛にいないから翔陽はブロックやるんだぞ、分かってんだろうな? おおん?

 

◆

 

 一方、白鳥沢学園男子バレー部一同も烏野高校同様にミーティングを行っていた。

 

「オーダーは3セット目と同じで行く。だが、烏野もオーダーを弄ってくる可能性が高いから慌てないこと。ここぞと言うときには若利が決めろ」

「はい!」

「このセットで終わらせるぞ」

「「「はい!」」」

 

 斉藤明が鷲匠鍛治を見ると、鷲匠鍛治はひとつ大きく頷いた。

 

◆

 

 セット間の休憩が終わって、ポジションと背番号の確認に入った。

 

烏野

10 翔陽 3 旭さん 1 大地さん

9 飛雄 5 龍先輩 11 蛍(ノヤ先輩)

白鳥沢

8 3 5

12(リベロ) 1 牛島選手 4

 

 白鳥沢は3セット目と同じスタートだ。翔陽と蛍の位置が替わったことに気づいて若干嫌そうにした。特に5番。

 あとこのセットはノヤ先輩が最初から出る。俺もいけるけどな!!

 サーブは白鳥沢から。つまり4番がサーバー。

 

「いつでも出られますからね」

「繋護の仇は俺が取ってやる」

「やられた訳じゃ無いんですけどぉー!!」

 

 「にいっ」じゃないですよ。まったく。親指たてちゃってさー。

 ウォーミングアップゾーンに向かって、ノヤ先輩と入れ替わった蛍を出迎える。

 

「ツッキーウシワカのスパイクドシャットしようね!」

「そうだぞー、月島。格好良いとこ見せようぜ」

「……止めてなんぼのブロックなんて古いですよ」

 

 4番がエンドラインに向かっていって、ボールボーイからボールを受け取った。

 

「「「大平1本ナイッサー!!」」」

「応援すっぞ!! 全員で勝つ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 第4セットが始まる。

 

◇

 

 烏野高校の応援席で、烏養一繋、羽染葵育、下園育音の3人は烏野高校を応援しながら指導者故の分析も行っていた。

 

「烏野オーダー変えてきたね」

「10番がブロックしてもあんまり意味なかったしね。あのオーダーだと3番、9番、11番の誰かはブロックに付けるって考えたんでしょ。

それにしても牛島君やばいな。三坂さんウハウハしてそう」

 

 大学やVリーグ等で結果を残すためにも優秀な選手は必要で、やはり高校生の春の高校バレーの代表決定戦やインターハイ予選、私学大会などには大学やVリーグ等のチームのスカウトがいることが多い。そして、牛島若利のように結果を残している高校生には早い時期からスカウトの声がかかるのが一般的だ。

 その中で「関東1部リーグの中央大学が牛島若利を獲得した」というニュースはスカウトマンの間でも共有されており、羽染葵育と下園育音は中央大学のスカウトマンである三坂洋吾を通して牛島若利の進路を伝えられていた。それ故の台詞である。

 

「鷲匠先生は中央大とパイプ持ってるからなぁ。5番なんかも進学してもおかしくねえし、影山も目に留まりそうだけどな。あと2年もすればもっと背も伸びるだろうし、長身セッターとして重宝されそうだ」

「勉強にはついていけるんですか?」

「…………」

「あっ、なるほど」

 

 いくらスポーツ推薦といえど、やはり大学生である以上勉学にも力を入れないといけない。そう言った意味で気まずそうにする烏養一繋を見て、羽染葵育と下園育音の2人は反応に困った。

 

「部活だけやってればいいって訳では無いですしね。やっぱり成績とか素行もチェックしますし」

「トラブル起こせば高校に迷惑かかるからねぇ」

 

 そんなことを話しているうちに第4セットは【27-25】で烏野高校が獲得した。

 

「さあー、フルセットだ。頑張ってよー」

 

 セットカウントが【2-2】なので第5セットもある。

コートチェンジをして、烏野高校の部員は烏野高校側の応援席、白鳥沢学園の部員は白鳥沢学園の応援席へと移動していく様子が見えた。

 

◇

 

 第4セットを取って烏野側の応援席にコートチェンジで戻ってきた。大地さん達はベンチに座ってミーティングに移る。

 

「最終セットだ。いけるな?」

「「「はい!」」」

 

 もうやるしかない。勝てば全国。負ければこのチームは解散。出ずっぱりの旭さんと飛雄は結構消耗してる。

 

「15点マッチで25点よりも試合の進行が早い。集中力を切らさないようにな。流れはこっちに来てるから気持ちで負けるなよ」

「「「はい!」」」

 

 続いて武田先生。

 

「僕は君達のバレーをもっと見ていたい。全国でも戦う君達の姿を! このセット取りましょう!」

「「「はい!」」」

 

 ここまでやってくれたんだから勝つしかねえぞー。

 そして、セット間の休憩が終わって副審からコートに入るように指示された。

 

「澤村」

「はい!」

 

 全員で集まって円陣を組む。そして、やっちゃんの方を見て大地さんが号令を掛けた。

 

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 さーて、勝って全国に行くぞ。

 

◆

 

 一方、白鳥沢学園男子バレー部一同もミーティングを行っていた。

 

「切り替えろ。第5セット取れば良い。いけるな?」

「「「はい!」」」

「15点マッチってことでローテをずらす。確認してくれ」

 

 そう言って、斉藤明は〝目玉〟と呼ばれるスターティングオーダー表と持ち運び可能なバインダーを部員に見せた。牛島若利がレフトから始まるオーダーだ。

 

「確認したな? おまえ達は強い。烏野も強いが、おまえ達の方が強い。それを証明してこい」

「「「はい!」」」

 

 スターティングオーダーに記載されている6人がコートへと歩いていく。

 

◆

 

 まずはポジションと背番号の確認だ。俺とノヤ先輩はサイドラインの近くでお腹側の背番号を副審に見せる。

 

白鳥沢

1 牛島選手 12 8

4 5(リベロ) 3

 

烏野

9 飛雄 11 蛍 3 旭さん

5 龍先輩 10 翔陽(ノヤ先輩) 1 大地さん

 

 15点マッチってことで牛島選手を前衛スタートでやってきたか。短期決戦狙ってるな。ま、ウチもだけど。そして4セット以降調子を上げてるノヤ先輩がリベロで出る。……俺だっていつだって出られるからな!!

 サーブはこっちからスタート、つまり大地さんから。サイドラインでノヤ先輩と入れ替わった翔陽がウォーミングアップゾーンに走ってきた。

 

「「「ウェーイ!」」」

「ウェーイ!」

「少しでも休んどけよ!」

「おす!」

 

 主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。狙いはレフト側。4番のレシーブを乱して牛島選手に二段トスを上げさせる作戦だ。

 

「「「大平!」」」

 

 くっそ。完璧に返された。ボールがセットアップに走った3番へと返っていく。

 

「ライト!」「A!」「瀬見!」

「若利!!」

「「「1番!!」」」

 

 だよな。牛島選手に上げるよな。

 3番からレフトの牛島選手にオープントスが上がって、ライトの飛雄にセンターの蛍とレフトの旭さんが合流してブロックの態勢を作った。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 ここからだと遠いからどこ打ってくるか判断付かないな。レフト側っぽいけど。

 

「ふんっ!!」

「ワンチ!」「ノー!」「ノー!」

 

 旭さんの左手の小指らへんに当たって、こっちコートのレフト側のフロントゾーンに鋭い軌道で落ちた。【1-0】。

 

「ドンマイドンマイ! 切り替えてけ!!」「次1本!!」

 

 応援しかできないから応援しないと。今のワンタッチは正直無理。あんなんプロでも届かないっての。

 

「「「五色1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 ローテーションがひとつ回って8番がサーブだ。強いサーブだから気を抜けない。サービスエースがあったら一気に流れが持ってかれるぞ。ここで切って欲しい。

 主審の笛が鳴って、8番がジャンプサーブを打ってきた。狙いは飛雄が前衛で手薄になってるレフト側。

 

「「「田中!」」」「龍先輩!」

「ぐっ……!」

「「「カバー!!」」」

 

 乱されたか。その場にボールが打ち上がって飛雄がセットアップに走る。シンクロ攻撃自体できてない。

 

「影山! ライト!!」

「東峰さん」

「「「3番!」」」

 

 ここは旭さんしかいない。ってことで飛雄がライトに二段トスを上げて、あっちはレフトの4番にセンターの12番とライトの牛島選手が合流して3枚ブロックの態勢を整えた。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ふっ!」

「ワンチ!」「ノー!」「ノー!」

 

 旭さんのスパイクは牛島選手の右手に当たって、こっちコートのレフト側のサイドラインを大きく越えていった。アウトでこっちの点だ。【1-1】。

 

「おし!!」

「旭!」「「「旭さん!」」」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 ナイス旭さん! キレッキレだなー!! サーブも頼みますよー!!

 ローテーションがひとつ回って旭さんがサーブだからここで点数稼ぎたい。

 

「旭!」「「「旭さん!」」」

「「「ナイッサー!!」」」

 

 主審の笛が鳴って、旭さんがジャンプサーブを打った。狙いは前衛に牛島選手、3番がセットアップに走るローテで手薄なセンターライン。

 

「「「山形!」」」

「おし!」

 

 くそ、良いサーブだったのに。相変わらず上手いな、あの14番。

 後衛からセットアップに走った3番にボールが返っていって、ライトの牛島選手、センターの12番、レフトの4番がトスを呼ぶ。

 

「獅音!!」

「「「4番!」」」

 

 3番が選んだのはレフトの4番。速い平行トスがレフトに伸びていって、ライトの飛雄と遅れてセンターの蛍がブロックに跳ぶ。でも、蛍の右手に当たって吸い込むような形で点を取られた。【2-1】。

 

「今のはしょうが無い! 1本切り替えろ!!」

「ここぞって時の他のスパイカー使うの上手いなー!!」

「流石白鳥沢……!!」

 

 白鳥沢のローテーションがひとつ回って12番がサーブだ。ここでピンサーを使ってくるわけじゃないか。

 

「1本集中しろ!!」

 

 スガさんめっちゃ声通るなー。負けてらんねえ。俺も声出さなきゃ。

 主審の笛が鳴って12番がジャンフロを打ってきた。狙いはセンター。……でもボールの軌道が低くて、ネットに当たったけどこっちコートには入らなかった。【2-2】。

 

「よっしゃ、ラッキラッキー!!」

「ツッキーナイッサー!!」

 

 あと、蛍がサーブだから翔陽が前衛に上がる。ってことで皆で翔陽を送り出す。

 

「「「いってこーいっ!!」」」

「オス!!」

 

 そして、サイドラインで入れ替わったノヤ先輩が烏養コーチと一言二言話してウォーミングアップゾーンに戻ってきた。

 

「「「ウェーイ!」」」

「ウェーイ!」

 

 俺がして貰ったように、俺のノヤ先輩にタオルを渡す。

 

「お疲れ様です!」

「おう、ありがとな! あと烏養さんが繋護も準備しとけって。最後まで俺が出るけどな!」

「虎視眈々と狙ってますよ~」

「コシタンタンって何だ!?」

 

 ……おう、そっかぁ。四字熟語頑張れぇ。

 ま、休憩して腕も冷やした結果、これから5セットやっても良いくらいにはスタミナ回復したぞ。

 あと、この間に蛍のサーブ権は牛島選手のスパイクで強引に切られた。【3-2】。

 

「行ってくる!」

「「「行ってこーい!!」」」

 

 蛍と入れ替わるノヤ先輩を送り出して応援に戻る。

 

「ウシワカのサーブだ!! 気を付けろよー!!」「ここ1本で切れ!!」

「「「若利1本ナイッサー!!」」」

 

 ここ早く切らないと流れ一気に持ってかれるぞ。なんとかしてくれ。

 主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打った。狙いは大地さんと旭さんの間。

 

「大地!」「「「大地さん!」」」

 

 体勢を崩しながら、というか後ろに吹っ飛ばされながら大地さんが牛島選手のサーブを拾った。

 

「レフト!」「影山!」「バック!」

「お願いします!」

「「「5番!」」」

 

 レフトの龍先輩、センターの翔陽、バックセンターの旭さんがトスを呼んだ。

飛雄がレフトの龍先輩に速い平行トスを上げて、龍先輩のスパイクはブロックに跳んだライトの3番の右手に当たって吹っ飛んでいった。【3-3】。

 

「「「ナイスキー!!」」」

 

 よしよし。牛島選手のサーブを切れた。サイドアウトでもいいからどんどん点稼いでいかないと。

 ローテーションがひとつ回って飛雄がサーバーだ。ここで数点稼いでおきたい。

 

「「「影山1本ナイッサー!!」」」

 

 主審の笛が鳴って、飛雄がジャンプサーブを打った。狙いは比較的手薄なレフト側。

 でも8番が体勢を崩しながらその場で上げた。

 

「瀬見!」

「若利!!」

「ウシワカ来るぞ!!」

 

 3番がボールの落下地点に走って行って、バックライトの牛島選手に二段トスを上げた。レフトの龍先輩と助走をするセンターの翔陽がブロックの態勢を整えた。

 牛島選手のバックアタックは龍先輩の左手に当たって、更にノヤ先輩のレシーブを乱して吹っ飛んでいった。【4-3】。

 

「フルセットだってのに止まらねーな!! ホント!!」

「相手のサーブ1本で切ってけよ!!」

 

 ローテーションがひとつ回って、白鳥沢のサーバーは4番。4番のサーブも強いんだよな。

 

「「「1本集中しろ!!」」」「ここで切れよ!!」

「「「大平1本ナイッサー!!」」」

 

 主審の笛が鳴って、4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはライト側。……いや、入ってる? アウトっぽいけど。

 

「「「イン!」」」「「「アウト!」」」

 

 ……どうだ? 龍先輩とノヤ先輩はアウトだってジャッジした。インでもアウトでもあり得る。……インかー!!

 こっからだと詳しくは分からなかったけどライン上だったかもしれないな。今のはしょうが無い。【5-3】。

 

「切り替えろ切り替えろ!」「引きずるなよ!!」

 

 でもいやーなノータッチエースだぞ。流れあっちに傾いちまったな。早く切りたいところだ。

 

「「「次1本切ってけ!!」」」

「「「大平もう1本ナイッサー!!」」」

 

 主審の笛が鳴って、4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いは同じ所。でも龍先輩がしっかりとサーブを返してボールが飛雄へと飛んでいく。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「ライト!」

 

 レフトの大地さん、バックレフトの旭さん、センターの翔陽、ライトの龍先輩が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。

 

「いけっ!」

「「「10番!」」」

 

 AからCクイックに跳んだ翔陽が3番の左手に狙ってブロックアウトした。こっちの点だ。【5-4】。

 

「「「日向良いぞー!!」」」「「「その調子だー!!」」」

「田中サーブ頼むぞ!!」

「おす!!」

 

 スガさんの声が龍先輩に聞えたらしく、疲れたーって表情の龍先輩がこっちを向いた。……お? 力先輩が呼ばれてる。

 

「縁下、烏養さんが呼んでる」

「行って来いよ!」

「はい!」

 

 守備強化で力先輩を出すのか。まあ納得できる話だ。

 主審の笛が鳴って、龍先輩がジャンプサーブを打った。狙いはバックライトの4番。

 

「乱した!」

「ウシワカが二段トスだ!」

 

 牛島選手がレフトの8番に二段トスを上げて、大地さんの右手に当ててブロックアウトを取られた。【6-4】。

 

「切り替えろよ!!」「縁下ファイト!!」

 

 サーブ権が終わった龍先輩が力先輩と交替して、烏養コーチと軽く話してベンチで休憩し始めた。そんな龍先輩に久志先輩がタオルを届けに行く。

 

「1本切り替えろよ!!」「「「天童ナイッサー!!」」」

 

 白鳥沢のサーバーは5番。しっかりと対応して行きたい。

 主審の笛が鳴って、5番がジャンフロを打ってきた。狙いは力先輩がいるライト側。

 

「「「縁下!」」」

 

 良し。力先輩はオーバーで完璧に返球した。こっちのターンだ。

 

「レフト!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトの旭さん、センターの大地さん、バックライトの力先輩、ライトの翔陽の4人が同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。

 

「「「3番!」」」

 

 飛雄はレフトの旭さんに速い平行トスを上げて、旭さんは3番の右手を狙ってボールを吹っ飛ばした。ボールはあっちコートのライト側のサイドラインを大きく越えていって落ちる。ワンタッチでこっちの点だ。【6-5】

 

「「「ナイスキー!!」」」

 

 ローテーションがひとつ回って翔陽がサーブ。あと蛍が前衛に上がったから皆で見送って次のラリーを見る。

 

「「「日向1本ナイッサー!!」」」

 

 サーブミスだけはやめてくれよー。

 主審の笛が鳴って、翔陽がフローターサーブを打った。……っっ! 短い!

 ネットインして、12番が1本目を上げて相手のターンになった。

 

「A!」「センター!」「バック!」

「……若利!!」

 

 そのままAクイックの助走に入った12番、多分時間差の8番、バックレフトから牛島選手の3人がトスを呼んで、3番はバックレフトの牛島選手にオープントスを上げた。

 ライトの大地さんにセンターの蛍とレフトの旭さんが合流して3枚ブロックの態勢を作る。

 

「「「影山!」」」

 

 牛島選手のバックアタックは大地さんの右手に当たって、こっちコートのライト側のサイドラインを大きく越えていった。飛雄が追いかけて飛び込むけどあと数歩ってところでボールが落ちる。ワンタッチであっちの点数だ。【7-5】。

 

「ナイファイナイファイ!」「次取れるぞ!」「サーブレシーブしっかり!!」

「「「瀬見1本ナイッサー!!」」」

 

 相手のサーバーは3番。早めに切りたい。

 そして、サーブ権が終わった翔陽がサイドラインでノヤ先輩と入れ替わってベンチに座ったのを見た。

 主審の笛が鳴って、3番がジャンプサーブを打ってきた。狙いは前衛の蛍と後衛の飛雄で手薄なレフト側。

 

「「「縁下!」」」

「センター!!」

「東峰さん!!」

 

 力先輩がフライングをしてなんとか3番のサーブを上げたけど、シンクロ攻撃はできない。セットアップに走った飛雄がセンターの旭さんに二段トスを上げる。

 

「「「3番!」」」

 

 センターの12番にライトの牛島選手とレフトの8番が合流して3枚ブロックの態勢を整えた。

 そして、旭さんのスパイクは12番の左手の指先を掠めて、エンドラインよりも更に奥へと吹っ飛んでいく。ワンタッチでこっちの点だ。【7-6】。

 

「良いぞ旭! ナイスキー!!」「「「ナイスキーです!!」」」

 

 ローテーションが一巡して大地さんがサーバーだ。

 

「大地1本ナイッサー!!」

「「「ナイッサー!!」」」

 

 主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。狙いはセットアップに走る3番がいるライト側。サイドラインを狙った良いサーブだ。でもアウトっぽい。

 

「アウト!」

「すまん!」

 

 ……くそ、こっからだとインに見えたんだけどな。ぎりぎりアウトだったっぽい。【8-6】。

 そして、白鳥沢が先に8点取ったからコーチチェンジだ。荷物を持って白鳥沢のコートに行く準備を始める。

 コートにいるメンバー6人はエンドラインに並んで、主審のシグナルに合わせて移動を開始した。俺達はボール籠とかタオル、ドリンクを持ってコートの脇を通っていく。

 

「移動素早くな!」

「「「はい!」」」

 

 俺はボール籠を転がして、白鳥沢の応援席側のコートに置いた。タイムは挟まないから白鳥沢の8番から試合が再開する。

 

「「「五色1本ナイッサー!!」」」

「ここ早く切ってけよ!!」

 

 主審の笛が鳴って、8番がジャンプサーブを打ってきた。ボールの軌道が低い。

 

「「「前!」」」「ツッキー!」

 

 8番のサーブがネットインしてチャンスボールになったから蛍が1本目を取った。

 

「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 飛雄がツーを打つように助走して12番を釣りに行く。そして空中で蛍へのBクイックに切り替えてそのままズドン。4番のブロックが完成する前に蛍が打ち切った。【7-8】。

 

「「「ナイス月島!」」」「ナイスツッキー!!」

 

 へばってんじゃねえぞー、蛍! 無理はないけどさ。

 そして、次のサーバーは旭さんだから、前衛に上がった力先輩が龍先輩と交替してウォーミングアップゾーンに戻ってきた。力先輩はこのセットもう出られない。タイムは2回、交替は4回。どう使っていくかが勝敗を左右するぞ、烏養コーチ。

 

「旭ー! 1本ナイッサー!!」「「「ナイッサー!!」」」

 

 主審の笛が鳴って、旭さんがジャンプサーブを打った。狙いはバックセンターのエンドラインギリギリ。……うーん? 入ったか?

 

「「「アウト!」」」

 

 やっぱりアウトか。……いや、ラインズマンは〝イン〟のシグナルを出してる。良し良し良し! ノータッチエースだ!! 多分ライン上って感じかな。【8-8】。

 

「「「ナイッサー!」」」

「良いぞ! 旭! もう1本決めたれ!!」

 

 ……おっと、ここで鷲匠先生がタイムアウトを要求した。タオルとドリンクを持って武田先生達の所に向かう。

 

「おーし座れ! 少しでも休め!」

 

 大地さん、旭さん、龍先輩、ノヤ先輩、飛雄、蛍の6人がベンチに座ってミーティングに入る。ノヤ先輩にタオルとドリンクを渡した。

 

「集中切らすなよ!」

「「「はい!」」」

「サーブガンガン攻めてけよ! そんで乱す!! チャンスを返させるように強い攻撃意識を持て!! しんどいだろうが踏ん張ってくれ!!」

「「「はい!」」」

 

 あと7点。気を抜いたら一瞬でもってかれる点数だ。

 

「このセット、菅原と木下か山口を出すつもりだ。場面によって変えるけど、3人は準備しといてくれ」

「「「はい!」」」

 

 スガさんはツーセッター、久志先輩はピンサー、忠は大地さんの代わりに入って高さの補強か。ノヤ先輩が怪我でもしない限り俺は応援。……いつでも出られるけどな!!

 

◆

 

 一方、白鳥沢学園男子バレー部一同もミーティングを行っていた。東峰旭のノータッチエースによる烏野高校の勢いを殺ぐためのタイムアウトでもある。

 珍しく鷲匠鍛治が口を開いた。

 

「全体的に打点下がってるぞ。5セット目で疲れが出てるのは分かる。が、ここで踏ん張って全国に行くか、気持ち切らせて負けるかどっちが良いかなんて言わなくても分かるな?」

「「「はい!」」」

 

 続いて斉藤明が口を開いた。

 

「4セット目にも言ったが、4番のリベロがトスを上げる際には3番にトスを上げる傾向が高い。13番程の技術は無いからリードブロックで対応していこう」

「「「はい!」」」

「サーブで崩してブロックで点を取る、覚、太一、烏野の心をへし折ってこい!」

「「はい!」」

 

 そのうちタイムアウトが終わって、鷲匠鍛治を除いた15人が円陣を組んで活を入れたらレギュラー6人がコートに向かっていった。

 

◆

 

 タイムアウトが終わって、大地さん達がコートに向かっていった。旭さんのサーブはまだ続いてる。あと、スガさんが蛍との交替に備えてベンチサイドに向かっていった。

 

「旭ー!」「「「旭さん!」」」

「「「もう1本ナイッサー!!」」」

 

 主審の笛が鳴って、旭さんがジャンプサーブを打った。狙いはさっきと同じバックセンター。

 

「「「山形!」」」

「ッシ!」

 

 くそっ。警戒してたな。でも乱した。

 飛び込んだ14番のリベロが拾って、4番が二段トスをあげに行く。ラストはもちろんライトの牛島選手。

 

「ウシワカ来るぞ!!」「ブロックしっかり!!」

 

 レフトの龍先輩にセンターの蛍とライトの飛雄が合流して3枚ブロックの態勢を整える。そしてブロックに跳んだ。

 

「「「西谷!!」」」「西谷さん!」

 

 牛島選手のスパイクは龍先輩の左手に当たって鋭い軌道でこっちコートのレフト側のサイドラインの外へと吹っ飛んだ。ノヤ先輩が追いかけてフライングするけど間に合わない。【8-9】。

 

「ドンマイドンマイ!」「切り替えろ!!」

 

 ここで副審が白鳥沢側でメンバーチェンジのシグナルを出した。サーバーの12番に替わって7番を出すみたいだ。

 この起用は予想通り。

 

「「「おっ。おっ。おっ。おっ。おっ、おっ、おっ、おっ、おっおっおっおっ。……いよーっし!!」」」

 

 他の5人がコートに入ってきた7番を迎え入れて、7番はエンドラインへと向かっていく。

 

「「「湯野浜1本ナイッサー!!」」」

「ジャンフロだぞ! 気を付けろ!!」

 

 あの7番しっかり仕事果たして来るからな。めっちゃ厄介。

 主審の笛が鳴って、7番がジャンフロを打ってきた。狙いはレフト側。

 

「「「田中!」」」

 

 っ! あっぶねー!!

 龍先輩がオーバーで処理したけど、ボールは後ろに落ちるように打ち上がった。飛雄の代わりにノヤ先輩が声を出してバックライトの旭さんに二段トスを上げる。ちょっと難しいトスだな。

 

「「「3番!」」」

 

 レフトの4番にセンターの5番とライトの牛島選手が合流してガッツリ3枚ブロックの態勢を整えてる。

 でも、旭さんのスパイクは4番の左手に当たって、更にアンテナに当たった。最後に触ったのは白鳥沢の4番だからこっちの点だ。【9-9】。

 

「「「旭さんナイスー!!」」」

 

 ローテーションがひとつ回って蛍のサーブだ。そして、スガさんが副審まで話し掛けに行ってメンバーチェンジの旨を伝えた。白鳥沢の12番が先に副審に声をかけたから12番がコートに戻る方が先。

 

「「「おっ。おっ。おっ。おっ。おっ、おっ、おっ、おっ、おっおっおっおっ。……いよーっし!!」」」

 

 7番の代わりに12番がコートに入って、更に14番のリベロと入れ替わった。

 今度はこっちの番だ。スガさんが蛍とサイドラインで入れ替わる。その横で前衛に上がった翔陽がノヤ先輩と入れ替わって、ノヤ先輩が烏養コーチに指示を貰いに行ってる。……ん? 烏養コーチに手招きされてる。

 

「「「スガさん1本ナイッサー!!」」」

 

 邪魔にならないように烏養コーチとノヤ先輩の所まで行くと、ノヤ先輩が清水先輩から絆創膏を貰ってた。目に見える範囲で血が出てる箇所が有るわけじゃ無いけど?

 

「悪い繋護。さっきフライングしたときに思いっきりすりむいた。めっちゃヒリヒリしてやべえから任せるわ」

「そういうことだ。いけるな?」

「はい!」

 

 ノヤ先輩の顔に「すりむいて痛ぇー!?」っていうのと「替わりたくねぇー!!」って言うのが入り交じってる。きっちり仕事してきますよー。ここで待機しておこう。

 この間にスガさんからのサーブでラリーが始まってて、4番が上げた1本目を3番がライトの牛島選手へのトスにしていた。

 

「「日向!」」

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 レフトの龍先輩に助走をした翔陽とライトの飛雄が合流して3枚ブロックの態勢を作って、牛島選手のスパイクは翔陽の左手の指先を掠めてバックセンターへと吹っ飛んでいく。

ちなみにバックセンターには大地さん、バックセンターには旭さん、バックライトにはスガさんって変則的なポジションでここは守ってる。

 

「ワンチあるぞ!」

「くっ……!」

 

 吹っ飛んでいくボールを旭さんがなんとか触って、バックセンターのエンドラインに落ちるように大きく打ち上がった。

 

「スガさん! レフトぉ!!」

「田中!!」

「「「5番!」」」

 

 バックライトで守っていて、比較的スタミナに余裕があるスガさんが走ってレフトの龍先輩に二段トスを上げた。……近い!!

 

「リバウンド取れ!!」

「ふぎっ!」

 

 龍先輩が5番の左手に軽く当てて、チャンスボールとしてこっちコートに返ってきた。仕切り直しだ。

 

「「「日向!」」」

「はい!」

 

 チャンスボールを翔陽が上げて、スガさんが後衛からセットアップに走る。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」

「影山!」

「「「っ! 9番!!」」」

 

 レフトの龍先輩、バックレフトの大地さん、センターの翔陽、バックライトの旭さん、ライトの飛雄がトスを呼んで同時に助走を始めた。スガさんバージョンのシンクロ攻撃だ。

 そして、スガさんはライトの飛雄に平行トスを上げて、龍先輩か旭さんのどちらかを警戒していた相手ブロッカーの反応が遅れた。その隙に飛雄が思いっきりスパイクを打ち込む。……良し、入ってる。【10-9】。

 

「「「影山ナイスキー!!」」」

 

 良し良し良し! 先に10点代に乗った。このまま一気に突き放していこう。

 

「菅原ナイスだ! もう1本頼むぞ!!」

「はい!」

 

 スガさんのサーブはまだ続いてる。落ちついて下さいよ。

 そして、鷲匠先生はタイム使わないか。そうだよな、牛島選手の時にタイム使いたいもんな。

 

「「「スガさんもう1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!!」

「「「オォーッ!」」」

 

 この場面だってのに、牛島選手達平然としてる。少しは焦った顔してくれよ。

 主審の笛が鳴って、スガさんがジャンフロを打った。狙いは前衛の5番にセットアップに走らないといけない3番がいて手薄になってるレフト側だ。

 

「「「五色!」」」

「っ! カバー!!」

 

 良し、乱した!

8番がフライングしてボールを上げたけど、良いパスとは言いがたい。3番が走って行って二段トスを上げに行く。

 

「若利!」

「「「1番!」」」

 

 ネットから離れたトスで、どっちかというとバックアタック用のトスだ。牛島選手がその場でジャンプして腕だけで打つ姿勢を取る。龍先輩と翔陽の2人がブロックに跳んだ。

 

「ノー!」「ノー!」「「「影山!」」」

 

 牛島選手の返球はライト側のフロントゾーンに伸びてきて、飛雄がアンダーで処理をする。上がったけど、飛雄は助走できるだけの距離を確保できない。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 だからといって、他の4人がシンクロ攻撃をしないとはいってない。

 レフトの龍先輩、バックレフトの大地さん、センターの翔陽、バックライトの旭さんがトスを呼んで同時に助走を始めた。俺ならここでぇ。

 

「旭!」

「「「3番!」」」

 

 スガさんならそうするか。スガさんがバックライトにトスを上げると、あっちコートではレフトの4番とセンターの5番がブロックの準備をしていた。

 

「「せーのっ!!」」

「「「ブロック2枚!」」」

「っし!」

 

 旭さんがスパイクを瞬間に主審が笛を吹いた。どうやら旭さんがアタックラインを踏んでバックアタックを打っていたらしい。やべ、見てなかった。

 フットフォールトであっちの点だ。【10-10】。

 

「だあっ! くそ! すまん!!」

「「「ドンマイドンマイ!!」」」

 

 蛍が副審にメンバーチェンジをするって伝えて、蛍とスガさんが交替する。そんで俺の出番だ。

 

「スタミナ回復したんでしょ。拾ってよ」

「おう。任せな」

 

 サイドラインで蛍と入れ替わってバックライトで牛島選手のサーブに備える。そう、白鳥沢のサーバーは牛島選手。サービスエースなんてさせないっての。

 

「猫又、サーブレシーブ頼むな」

「任せて下さい」

 

 旭さんもうバッテバテじゃん。ってことでライトのバックゾーンは俺がカバーしよう。

 

「「「若利1本ナイッサー!!」」」

「ここ1本で切るぞ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 こっち打ってこないかなー。打ってこいやー。

 主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。狙いは俺の真正面。……更に、助走とのタイミングが合わなくて前に落ちるボールだ。

 

「繋護!」

「オーケイ!!」

 

 素早く前に詰めたら、ボールはネットに掠って若干軌道を変えた。まあ、でもそれくらい。

 しっかりとアンダーで上げて、飛雄がジャンプトスしやすいボールにする。

 

「影山!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 レフトの翔陽、バックレフトの大地さん、センターの龍先輩、バックライトに移動した旭さんがトスを呼んで同時に助走を始めた。あと飛雄もジャンプしてツーを打てそうだ。とりあえずブロックフォロー。

 

「しっ!」

「ノー!」「ノー!」

 

 5番が遅れてブロックに跳んだのを確認して、飛雄が結局ツーを打って決めた。【11-10】。

 

「ヨッシャ!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「ウシワカのサーブ早めに切れて良かった」

「集中していくぞ。影山サーブしっかりな」

「はい!」

 

 牛島選手が後衛に下がってる今がチャンスだ。このまま一気に流れに乗りたい。

 旭さんとの位置関係に気を付けながらバックセンターで相手コートの様子を窺う。

 

「「「影山1本ナイッサー!!」」」

「強打来るぞ! 1本集中!!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴って、飛雄がジャンプサーブを打った。狙いはネット際の3番と強打を警戒して後ろに下がってる8番の前。つまりレフト側。

 

「「「五色!」」」

「っ!! はい!! ……くそ!」

 

 良し良し良し! 8番がフライングして上げたけど、ボールがこっちコートにチャンスボールとして返ってきた。俺のボールだ。「俺が!!」……あぶねっ。

 

「いけっ!!」

「っ!? 10番!!」

 

 サーブを打った飛雄がそのまま走ってきて、マイナステンポで踏み切ったセンターの翔陽への縦のBクイックのトスを上げた。そして翔陽が思いっきりスパイクを打って決める。ひぃー、やるぅ~。【12-10】。

 

「「よっしゃ!」」

「ナイス2人とも!!」

 

 おっと、ここで鷲匠先生がタイムアウトを要求した。これで2回目だ。

 ウェイウェイしながらベンチサイドまで戻っていく。

 

「よーし! 集中切らすな!! 休んどけよ!」

「「「はい!」」」

 

 ベンチに座るよう促されて、座ったらミーティングに入る。……訳でもなかった。そのまま静かな時間を過ごす。あー、ドリンク美味ぇ。

 

◆

 

 一方、白鳥沢学園男子バレー部一同も同様にミーティングを行っていた。

 

「回復した13番が戻ってきたが、他の5人はそうとう消耗しているはずだ。トリッキーなことをやってくると思うが、しっかりとボールを見て対処すること。

 ここ踏ん張りどころだぞ。1点1点確実に取っていこう」

「「「はい!」」」

 

 牛島若利を初めとする白鳥沢学園男子バレー部のレギュラー陣は烏野高校と違って1から5セットまでフルで出場している。その為、疲労は相当溜まっていた。気を抜けば寝落ちしても仕方が無いほどに。

 

「瀬見」

「ん? どうした? 若利」

「俺に集めろ」

「……ああ、ウチのエースはすげえもんな。良いトス何本でも上げるぞ」

「宜しく頼む」

 

 タイムアウト終了のブザーが鳴って、白鳥沢学園男子バレー部一同は円陣を組んだ。

 

◆

 

 タイムが終了してコートに戻ってくる。

 飛雄のサーブはまだ続いてるから、旭さんとの位置関係に気を付けながらバックセンターで相手コートの様子を窺う。2点差なんてあってないようなもんだろ。集中集中。

 

「「「影山もう1本ナイッサー!!」」」

「ここ切るぞ!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴って、飛雄がジャンプサーブを打った。狙いはバックライトの牛島選手。

 

「俺が! ……カバー!」

「覚頼む!」

「オッケイ!!」

 

 ……さっきまで牛島選手が二段トス上げに行ってたじゃん。4番が上げたボールを5番がバックライトの牛島選手のトスにした。

 

「「「1番!」」」

 

 ちょっとバックセンターに寄ったから、俺もコート中央に寄る。レフトの龍先輩、助走をしたセンターの翔陽の2人がブロックに跳んだ。

 

「「「ブロック2枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――クロス。

 身体の向き――ストレート。

 視線――ライト側を見た。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「ふんっ!!」

「ノー!」「ワンチ……!!」

 

 牛島選手のバックアタックは翔陽の両腕の間を抜けて俺の頭の上を通って吹っ飛んでいく。ジャンプして触るけど、勢いは殺せなくてそのまま吹っ飛んでいった。クソっ。【12-11】。

 

「「すいません!」」

「指先まで力入れてけよ、日向」

「はい!」

「次切り替えるぞ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 ライトに龍先輩、バックライトの飛雄ってことで若干ライトよりにずれる。ただ、前は翔陽だから前も警戒しないといけない。

 相手のサーバーは4番。早めに切らないと。

 

「「「大平1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックレフトの大地さんとバックセンターの旭さんの間。

 

「俺が!」「頼む!」

 

 4番のサーブを大地さんが拾って、ボールがセットアップに走る飛雄へと返っていった。取り敢えずブロックフォロー。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「ライト!」

「お願いします!」

「「「5番!」」」

 

 レフトの大地さん、バックセンターの旭さん、センターの翔陽、ライトの龍先輩の4人がトスを呼んで同時に助走を始めた。そして、飛雄はライトの龍先輩に速い平行トスを上げる。

 

「ォラ!」

「ワンチ! ……っ!!」

 

 龍先輩のスパイクは4番の左手に当たって、吸い込みを発生させた。4番が自分でカバーするけどボールはネット下を通ってこっちコートに転がってくる。【13-11】。

 

「シャオラ!!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「田中。サーブで決めてこい」

「オス!!」

 

 龍先輩がサーブで、旭さんが前衛に上がってくる。牛島選手もあと2回ローテが回ると前衛だ。デュースは戦いきれる体力残ってないぞ。ってことだからここで決めたい。

 

「「「田中1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 バックレフトで様子を窺いつつ、前衛に3番がいるからツーで前に落とされても対応できるようにセンターの方も警戒する。

 そのうち主審の笛が鳴って、龍先輩がジャンプサーブを打った。狙いは3番は前衛、後衛は牛島選手って手薄になってるセンター。

 

「俺が!」

 

 まーたあの14番のリベロが取ったよ。ホント上手いな。

 ボールはネット際の3番に返っていって、レフトの8番と、センターにAクイックで切り込んでくる5番、バックライトに移動した牛島選手の3人がトスを呼ぶ。

 

「若利!」

「「「1番!!」」」

 

 だよねえ。3番からバックライトの牛島選手にトスを上がる。俺はレフト側のサイドラインに足がかかるまで。レフトの旭さんと助走をする翔陽がブロックの態勢を整えていく。

 

「日向!」

「はい!!」

「「ブロック2枚!」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――ライト側を見た。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「ふんっ!!」

「ノー!」「ワンチ!」

 

 牛島選手のバックアタックは翔陽の右手の肘らへんにあたってネットの真下に落ちるように軌道を変えた。そりゃ無理だ。【13-12】。

 5セット目の終盤だぞ? やっぱ牛島選手すげえな。

 

「すいません!!」

「落ち込んでないな?」

「はい!」

「良し! 気持ちで負けないように!! ここ取り返すぞ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 白鳥沢のサーバーは5番。ピンサーに替える訳でもないらしい。バックレフトで5番のサーブに備える。

 

「「「天童1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 こっちに打ってくる可能性は高い。でもあっちの指示としては最初から龍先輩を徹底的に消耗させろって感じだから、ライト側を狙ってきそうだ。とりあえず一番疲れてないの俺だから動き回らないとな。

 主審の笛が鳴って、5番がジャンフロを打ってきた。狙いはやっぱりライト側。

 

「「「田中!」」」

「シャオラァ!!」

 

 龍先輩がフライングしながら5番のサーブを上げた。もう足動いてないな。しゃーないけど。

 

「「「影山!」」」

「はい!」

「「「3番!!」」」

 

 シンクロ攻撃には入れなくて、飛雄が旭さんに二段トスを上げる。飛雄も崩れ落ちた。とりあえず俺はブロックフォローに入る。

 あっちコートではライトの3番にセンターの12番とレフトの8番が合流して3枚ブロックの態勢を整える様子が見える。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ふっ!」

「ノー!」「ノー!」「ワンチ!」

 

 旭さんはクロス側に打って、ボールは8番の左手に当たって相手コートのレフト側に吹っ飛んでいった。でもバックレフトで構えていた4番がその場でジャンプして触る。……触るだけになって、ボールは勢いそのまま後ろに吹っ飛んでいった。ワンタッチでこっちの点だ。【14-12】。

 15点マッチだからマッチポイントだ。

 

「おし!!」

「「「ナイスキー!!」」」

「田中と影山大丈夫か?」

「もちろんっす!」「同じく!」

 

 冗談言えるくらいなら大丈夫か。

 あと翔陽がサーブだから、蛍が前衛に上がってくるってことで、サイドラインで蛍と入れ替わる。

 

「頑張ってこい」

「分かってるよ」

 

 蛍とハイタッチしてコートの外に出たら、振り向いて一礼。あと、久志先輩が翔陽と交替してサーブを打つ。正真正銘リリーフサーバー。

 

「木下さんナイッサーです!」

「日向の出番貰って悪いな!」

「……負けません!!」

 

 緊張してはいるけどそこまでって感じだ。

 

「「「木下1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 烏養コーチも武田先生、清水先輩の3人は両手を組んで神頼みしてて、話を聞けそうに無い。

 主審の笛が鳴って、久志先輩がジャンフロを打った。狙いはセンター。上手い!

 強打を警戒してて後ろに寄ってるからめっちゃ有効だ。

 

「「「五色!」」」

「……はい!!」

 

 良し良し良し!!

 体勢を崩した8番が1本目を触るけど、ボールはチャンスボールになった。本当にチャンスだ!

 

「オーライ!!」

 

 龍先輩がバックレフトに移動して、バックセンターを守ってる久志先輩がチャンスボールをネットに向かって走って行く飛雄に返球する。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトの旭さん、バックレフトの龍先輩、センターの蛍、バックライトの久志先輩、ライトの大地さんがトスを呼んで同時に助走を始めた。ここで決めてくれ!!

 

「お願いします!」

「「3番!」」」

 

 飛雄が選択したのはレフトの旭さん。レフトのアンテナに向かって速い平行トスが伸びていく。

 

「しっ!」

「ワンチ……!!」

 

 旭さんのスパイクは3番の左手に当たって、あっちコートのライト側のサイドラインを大きく越えて吹っ飛んでいく。バックライトから牛島選手が走って追いかけるけど、ボールは床に落ちた。

 主審が〝ワンタッチ〟のシグナルを出して、こっちに点数が入ったことを知らせる。【15-12】。

 そして、試合終了のシグナルも出した。……勝った。勝ったぞ!!

 

「大地! 旭! 田中! 木下! 影山! 月島!」

「「「うおぉぉぉぉ!!」」」

 

 ウォーミングアップゾーンからスガさんが一目散にコートの中に走って行って、ノヤ先輩と力先輩達が追いかけたのを見て、ベンチサイドから俺と翔陽も続く。あ、翔陽すっころんだ。しょうがねえなー。

 

「大丈夫かよ」

「立てない……!!」

「いっぱいジャンプしたもんなー。お姫様だっこしてやろうか」

「いや! 普通に肩貸してくれよ!!」

 

 あーら、残念。

 翔陽の左側に立って、俺の右肩を貸して翔陽と肩を組んで、ワーワーギャーギャーしてる皆と合流する。

 

「っ! 日向大丈夫か!!」

「疲れてすっころびましたー。立てないそうです」

「言うなよ!!」

「まあ、そんだけ声でてれば大丈夫だろ」

「ほらほら! まだ挨拶してないぞ! 整列!!」

 

 試合が終わってスタミナ切れで崩れ落ちた6人を誰かしらが支えてエンドラインまで向かい、右端から背番号で並んでいく。つまり俺は一番左。

 

「「「ありがとうございました!」」」「「「ありがとうございました!」」」

 

 主審のシグナルに合わせてネットまで詰めて、白鳥沢の2番と3番と握手する。終わったらそのまま白鳥沢のベンチに行って、鷲匠先生と斉藤先生に挨拶。

 

「気を付けー! お願いします!」

「「「お願いします!!」」」

「良い試合だった。この流れに乗って春高でも頑張って欲しい。

 それはともかく、来年のインハイ予選はウチが優勝させて貰うからそのつもりでいてくれ」

「「「はい!」」」

 

 鷲匠先生の代わりに斉藤先生が言葉を発して挨拶は終了。

 

「気を付けー! ありがとう御座いました!」

「「「ありがとう御座いました!」」」

 

 同じくらいのタイミングで武田先生達の挨拶も終わったらしく、武田先生達3人もこっちに向かってきていた。

 

「応援席にお礼言うぞ!」

「「「はい!」」」

 

 そのままワーワーギャーギャーしてる烏野側の応援席の前に向かっていって、右から背番号順に並ぶ。俺の左には清水先輩と武田先生、烏養コーチ。

 

「気を付けー! 応援ありがとう御座いました!!」

「「「ありがとう御座いました!!」」」

「全国でもお願いします!」

「「「お願いします!!」」」

 

 すると、観客席が大爆発。歓声の嵐だ。

 拍手やら「ナイスゲーム!!」とか「全国でも期待してるぞー!!」とかって言葉が聞えてくるようになった。正直何言ってるか聞き取れない。取り敢えず祖父ちゃん、祖母ちゃん、母さん、父さん、姉ちゃん、美緒、彩音ちゃん、慎吾さん、咲良さん、彩歌ちゃん、伯母さん2人と誠兄ちゃん達烏野のOB、若林先生とか5組の皆に手を振っとこ。いぇーい、やったぜー。

 

「飛雄ー! お疲れー!!」

「あ、美羽ちゃん。いけたら行くー、じゃなかったのか」

「「「んんっ!?」」」

 

 飛雄を呼ぶ女性。それは一体。

 ……なんて聞かなくても顔立ちというか何となく雰囲気が似てる。というか姉がいるって前聞いたし。雰囲気似てるな。

 

「おい影山! お前も彼女がいたのかよ!!」「あんな美人、羨ましいぞ、コノヤロー!!」

「……彼女? 美羽ちゃんは姉ですよ」

「「「姉!?」」」

 

 姉がいるって前言ってたし。もう忘れたのかよ。

 

「お兄ちゃ~ん!」

「夏ー!! どうだった!」

「凄かった! バギューンって! ゴギャーンって!」

「なるほど、血筋か……」

「おい、月島ぁ! 何かヤユしただろ!」

「意味分かってないならその口閉じてなよ」

 

 夏ちゃん元気だなー。

 

「「「やっちゃん! やったぜ!」」」

「皆さん凄い! 凄いです!!」

 

 やっちゃん顔顔。やばいぞー。

 そんな感じでいたら、龍先輩のお姉さんが誰かと一緒に観客席の一番前に来た。……あ、宇内先輩じゃん。

 

「翔陽! こいつ! 〝小さな巨人〟!! あたしの同級生!!」

「「「っ!!」」」

「今の烏野の試合見た! 全国でも頑張れよ!!」

「「「はい!」」」

 

 マジか。全然気づかなかったわ。ま、そっちのほう全然見てなかったけど。

 観客席への挨拶が終わって、部員で集まる。

 

「良くやった! これで全国出場が決まったな。

 澤村、改めて聞くが俺達の目標はなんだ?」

「全国制覇です!」

「全員同じ気持ちだな?」

 

 烏養コーチが全員の顔を見てきた。返事はもちろん。

 

「「「はい!」」」

「今日の試合の中でも課題点が見つかったと思う。つまり、まだまだウチは弱い。春高まで約2ヶ月。もっと強くなるぞ!」

「「「はい!」」」

 

 まだね、全国出場ができるだけで全国制覇をしたわけじゃ無い。ここで気を抜いたら駄目だ。

 

「皆! よく頑張りました!

 烏養君はこう言っていて、実際その通りです。しかし、今は宮城県内で優勝したことを誇って下さい! そして全国で優勝するようにまた練習していきましょう! 皆! お疲れ様!!」

「「「はい!」」」

「じゃあ表彰式までストレッチ。3日間試合、今日は5セットやって相当疲れ溜まってるだろうから入念にな」

「「「はい!」」」

 

 旭さんとか龍先輩とか1回座ったら立ち上がれるか? まあ早めにやっとかないとなー。

 表彰式の準備をしている大人の邪魔にならないように端っこの方でストレッチをしていく。あー、身体張ってるなー、今日の夜もお風呂入ったらちゃんとストレッチしないと。

 さーて、もっと強くならないとな。

 

◎

 

 一方、音駒高校男子バレー部一同は烏野高校が優勝し、春の高校バレーへの出場権を獲得した瞬間を目撃した。時間は丁度13時を超えようとしていた。

 

「今見て貰ったように烏野は春高に出場する。ウチも頑張らないとな」

「「「はい!」」」

「まずは昼食をしっかり食べて、午後からの練習に備えよう。視聴覚室片付けるぞー」

 

 監督の猫又育史が声をかけると、部員一同が片付けの準備を始めて行く。

 

◎

 

 表彰式を終えて、インハイ予選でも使った居酒屋おすわりにやってきた。祖父ちゃんの時からだから30年くらい? ずっとお世話になってる所だ。俺も良く連れてこられた。

 お座敷に座布団と長机とがあって、色々と配膳して貰って、号泣して凄いことになってる武田先生の代わりに烏養コーチが話し始める。

 

「運動した後は筋肉を回復させるために栄養を摂らないといけない。ってことでちゃんと飯を食おう。それでまた練習していくぞ」

「「「はい!」」」

「じゃあ澤村。春高に向けて一言決意表明してくれ」

「はい! 俺達の目標は全国制覇だ。でも、まだまだ力が足りてない。春高まで2ヶ月有るから一日一日を大切にしてバレーに取り組もう。

 バレーが上手くなるためにも強い身体を作ろう。ってことで頂きます!!」

「「「頂きます!!」」」

 

 うおーっし、ご飯だー!!

 

 

 3日間試合が続いて疲労も溜まってるだろうから。

 武田先生は学校関係者、烏養コーチはOB会の人達に話があるから。

 そんな2つの理由で明日は休みにするって連絡があって家に帰ってきた。早くお風呂入りてー。

 

「ただいまー」

「「「おかえりー!!」」」

「うおっ!?」

 

 玄関を開けたら姉ちゃん、美緒、彩音ちゃんの3人がクラッカーを鳴らす姿が見えた。ビックリしたー。

 姉ちゃん、美緒、彩音ちゃん、彩歌ちゃん、慎吾さん、咲良さん、母さん、父さん、祖母ちゃん、最後に祖父ちゃんの順でハイタッチしてウェイウェイする。

 

「良い試合だったぞ」

「5セットフルで試合に出られるように練習していかないとね」

「ああ、頭? 何だったの?」

「フライングしたら支柱カバーのマジックテープでひっかいた。元々牛島選手を疲れさせたらノヤ先輩と交替して対応して一気にいこうって作戦だったからあそこで交替」

「そう。ほら、お風呂入っちゃいな」

「あーい」

 

 着替え出さないと。早く湯船入りたい。

 

「あ、お寿司頼んだから。お腹に入るでしょ?」

「入る!!」

 

 お寿司食べたい!! 

 

◇

 

 夜も更けて、先程まで猫又明育や猫又美繋、込田慎吾、込田咲良の4人と共に晩酌をしていた烏養一繋のもとに見覚えのある電話番号からの電話がかかってきた。気づいた烏養一繋が電話を取る。

 

『よぉ烏養。夜分遅く悪いな。今時間あるかい?』

「おお、問題ねえよ、猫又」

 

 電話を掛けてきたのは烏養一繋の因縁のライバルである猫又育史だった。音駒高校男子バレー部一同も本日の試合を見ていて、その感想を言いに電話したんだろうと烏養一繋は予測する。

 

「こっちは決まったぞ。見てたんだろ?」

『おう。あいつらの士気も上がった。東京第一代表で春高出てやるよ』

「おう」

 

 今までの経験から「それだけを伝えに来たんじゃ無いな」と判断した烏養一繋が更に問い質すと、猫又育史は散々渋った後に話し始めた。

 

『……繋護の奴何があった? 2週間前と全然ちげーじゃねえか』

「ああ、バレーの神様が降りてきたんだろうよ。本人も調子良いって言ってるぜ」

『はぁ~~。影山と良い繋護と言い、烏野は面白えなあ』

「ゴミ捨て場の決戦決まったら烏野が勝ちそうだな」

『ウチが勝つに決まってるだろ』

「なら枠に残れ」

『おう』

 

 2人の電話はまだまだ続く。

 

◇

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