……ん? 意識が戻ってきて、ウチの天井の木目が見えてきた。
3日も試合続くとやっぱり身体重くなるな。……なーんてな。最後に時計見たのが21時20分だったからめっちゃ元気だ。多分22時前には寝てる。今日も試合できるくらいには元気だ。
それはともかく、白湯飲んでこよー。あとストレッチもしないと。
朝の身支度をして、ストレッチと縄跳び、祖父ちゃんとパス練習なんかをしていると皆起き出して、朝御飯を食べて今日の予定を話し合う。父さん達は今日帰ったら今年はこっちに来る予定は無い。
「すみません。せっかく仙台まで来られたので色々廻ってみたいと思います。彩音は明育達と帰ってくるよね?」
「うん、そのつもり」
「明育悪いね」
「良いよ良いよ。お互い様だし」
って事で慎吾さん、咲良さん、彩歌ちゃんの3人は仙台周辺を廻って千葉に帰るらしい。多分次は春高で逢う。
さーて、俺達はっと。
水族館、八木山ベニーランド、ショッピングモール、アウトレットモール、庭でBBQ……、色々案が出てくるけど逆に決まらない。
俺に決定権は無いからぼけっとしてる。あと、帰る時に見送れなかったけど、ケビンからの【俺烏野入ります!! 一緒に全国行きましょ!!】ってメッセージに【井闥山の特進クラスに入学できるように頑張れ】って返信をしておいた。
井闥山の特進クラスは難関国立大とか医学部に特化した進学クラスだからね。白鳥沢の一般より同じくらいかそれ以上の偏差値を誇る。自慢じゃないけど、私立の併願は井闥山の特進クラスで無事合格してた。ふははーっ。
ああだこうだ言い合ってた美緒が遂にテーブルに突っ伏した。
「決まらなーい」
「買い物とかは千葉でできるしね」
「紅葉は? 今日晴れてて案外暖かいからお祖父ちゃん達にも負担にならないんじゃない?」
「お祖父ちゃんお祖母ちゃんはどう?」
「俺達は着いてくから何でも良いぞー」「遠慮しなくて良いからね」
「じゃあ青葉山公園とかは?」
「良いと思う。せっかくだし夏ちゃんにも声かけてみる? 次会えるとしたら1月とかになっちゃうし」
「インフルとかも恐いからなかなかだよね。はい、繋護」
「んー」
姉ちゃんから「翔陽と夏ちゃんを誘うように」って視線を飛ばされたから、スマホで文字を入力していく。
【これから紅葉見にピクニックに行くから翔陽と夏ちゃんもどう? 姉から】って文章を打って送信。すると、ちょうど携帯を触っていたのか、日向家の固定番号から電話がかかってきた。
「もしもーし、翔陽?」
『ねこのお兄ちゃんおはよう!』
「おおー、夏ちゃん。おはよー」
翔陽だと思ったら夏ちゃんが電話をかけてきたみたいだ。都合が良いな。スピーカーモードにして皆の円の中心に置く。
俺の代わりに姉ちゃんが電話に出た。
「夏ちゃん、おはよう。メール見てくれた?」
『真緒ちゃんおはよう!
……糸に工って漢字は読めないんだけど、真緒ちゃん達が遊びに誘ってくれてるってことでしょ? 嬉しい、ありがとう!!』
「いいえ~。
そう。私達今日の夕方には千葉に帰っちゃうから夏ちゃんと遊びたいなーって。因みに〝こうよう〟って読んで〝もみじ〟とかって意味があるよ。赤とか黄色になった葉っぱのこと」
『っ!! 夏コーヨー好き! 綺麗!!』
「分かるー。……それでどうかな? 一緒に遊ばない?」
『遊びたい! あっ、お母さん!!』
受話器を置いて夏ちゃんと2人のお母さんの話し声が聞えてくる。小学生のあの時期ってすげー声通るよなーとかってぼんやりしながら経過を待つ。話を聞いてる感じOK貰えそうだ。
『良いの!? 真緒ちゃん達と遊んでも!!』
『良いわよー。折り返し電話かけないと』
『大丈夫! 今電話中だから!』
『……せめて保留にしなさい!』
『ひふぁ~いっ』
ほっぺたを抓られたのか、ちょっとくぐもって聞えてきて2人のお母さんが受話器を持ったらしい。
こっちも母さんが俺のスマホを持った。あとは任せれば大丈夫だ。
『おはようございますー、日向夏の母です。猫又さん家でお間違いないでしょうか?』
「日向さんおはようございます。猫又繋護の母親です」
『あ、昨日に引き続きありがとう御座います。そして醜態さらしてごめんなさい』
「いえいえ。ウチの子供達も小学校の時はわんぱくでしたから。
……それでどうでしょうか? 『青葉山公園でピクニックしないか?』って話が出てて。娘達も夏ちゃんと翔陽君と遊びたいと。もちろん車で送迎させて頂きます」
母さんがそう言うと、2人のお母さんが夏ちゃんに話を聞く。……というか、スピーカーモード切っても良いんじゃ無いか? まあいっか。
『夏はどう?』
『遊びたい!!』
『じゃあお願いしても良いですか?』
「はい、もちろん!」
話が決まっていくうちに寝起きの翔陽の声も聞えてきた。
『母さ~ん、腹減ったー』
『お兄ちゃんも行くでしょ!』
『おー。……いやどこに?』
『真緒ちゃんと遊びに!』
『〝マオちゃん〟って誰だ!?』
動揺してる翔陽の戸惑いの声が電話から聞えてきて思わず笑っちゃう。そういえば直接話したことは無いのか、姉ちゃん達と翔陽。
『翔陽も良いですか?』
「良いですよ。是非是非。大勢で遊んだ方が楽しいですしね」
『待って母さん、どういうこと!? 説明してってば!!』
やべー、ウケるー。翔陽ってあんな風に振り回されてるんだろうな。翔陽って清水先輩とか年上の人に対して挙動不審になるから楽しみだな。ケラケラ。
「お兄ちゃん悪いこと考えてるでしょー」
「まあなー。翔陽って年上の女性に会うと挙動不審になるんだよ。姉ちゃん達と話したこと無いからちょっと楽しみだなって」
「意外。日向君って苦手な人いなさそうなのに」
「でも実際清水先輩と話してるとき挙動不審だよ」
「……冴子さんもそう言ってたかも」
言いたい放題言ってたら時間も決まったみたいで、母さんが俺にスマホを渡してくる。
「はい。じゃあ皆の衆準備だー。簡単にお昼作ってピクニックといきましょー」
「「「はーい」」」
まあ、皆外出できる準備はほぼ出来てるんだけど。
「あ、仁花ちゃんと潔子ちゃんも誘ってみる?」
「……俺が誘ったら龍先輩とノヤ先輩がうるさいからちょっとお願いします」
「大丈夫。私達連絡先交換してるから。何回か遊んでもいるし」
「あ、そう?」
ちなみに俺は学校で伝えれば良いよねって考えだから清水先輩からは「テーピング買ってきて」くらいしかやりとりしたことが無い。そもそも携帯持っていかない日の方が多いし。やっちゃんから連絡貰うことが多いかな。
あと、メッセージでうだうだやるくらいなら電話の方が良いんだよな。手っ取り早い。
慎吾さん、咲良さん、彩歌ちゃんの3人を見送ってから出発。まずは翔陽の家へ。
父さん、祖父ちゃん、俺の男3人で1台。母さん、祖母ちゃん、姉ちゃん、美緒、彩音ちゃんの女性5人で1台。
ちなみにやっちゃんと清水先輩は家族で出かけるからまた今度だって。オフの日も遊んでたって龍先輩とノヤ先輩に知られたらちょっと面倒くさいことになってたから俺としては都合良かったかな。
俺達が翔陽の家に到着すると、翔陽と夏ちゃんはもう家の前で待ってた。
「「「は~い、夏ちゃん、日向君!」」」
「っ!! 真緒ちゃん美緒ちゃん、彩音ちゃん!」「ひょわっ!? こ、こ、こんにちは!!」
やっぱりキョドってるよ、翔陽。翔陽のお母さんにも夏ちゃんにも誰と遊ぶかは教えてもらってなかったみたいだな。
車から降りてバグってる翔陽に話し掛ける。
「Ciao !! 生きてる?」
「けっ、けっ、けっ、繋護!?」
「鶏の真似? 似てないな」
「ちっ、ちげえよ!!」
「まあまあ。落ち着けって」
「〝マオちゃん〟って言うから小学生くらいかと思うじゃん!」
そりゃそうか。
「じゃあ翔陽はお留守番するって事で良い?」
「いや! 俺もコーヨー見に行きたい!」
「……翔陽も紅葉興味あるんだな」
「どういう意味だ!!」
だって、翔陽って花より団子じゃん?
あと、俺と翔陽が話してる間に母さん同士の話も終わったらしく、「出発するぞー」って声をかけられて一旦全員で集まる。
「じゃあ翔陽と夏のことお願いします。翔陽もしっかりしなさいね」
「分かってる!」
「夏もはぐれないようにね」
「うん!」
翔陽は俺と同じ車だからこっち。夏ちゃんは女性陣の車。
「烏養元監督! 繋護のお父さん! おはようございます! 宜しくお願いします!」
「おう。そんな肩肘張らなくて良いぞ」「はい、日向君おはー」
座席に座ってシートベルトOK!!
すると、翔陽のお母さんが運転席の父さんに話し掛けに来た。
「猫又さん、烏養さん。翔陽と夏のことお願いします」
「ええ、責任持ってお預かり致します」「お任せ下さい」
挨拶も終わると、翔陽と夏ちゃんのお母さんに見送られてしゅっぱーっつ!!
途中でハンバーガーのチェーン店でポテトとナゲットを買って、遂に青葉山公園に到着した。
日曜日だから結構家族連れが多い。晴れてるし紅葉見に来るって考えは皆同じだよな。女性陣は食べ物類、男性陣、特に俺と翔陽はレジャーシートとかそういうのを持たされた。まあ、いつものこと。
「はい。では最初の目標でーす。レジャーシートを敷いてお昼ご飯を食べられる場所を探しましょう。夏ちゃんお腹空いたでしょ」
「空いたー!」
「と言うことで目を皿のようにして良い場所を探そうね」
「「「はーい」」」
紅葉にはちょっと早かったか。でも色づいてて風情がある。いいね。
「うーん、ちょっと早かったですね」
「だな。残暑長かったからな」
「これはこれで乙なものですから」
父さんと祖父ちゃんがそんな会話をしている一方で、俺達は俺達で適当に雑談していく。
「俺達全国行くんだよな。夢じゃ無いよな」
「大地さん達が引退してないからね」
「……そっか、まだキャプテン達とバレー出来るんだよな。大王様とかウシワカとかはもうできないのか」
「そう。高校バレーって意味ではもう終わり。2人の進路が分からないからなんとも言えないけど、一生バレーやる機会はないかもしれない」
「俺まだキャプテン、菅原さん、旭さん、清水先輩とバレーやりたい」
「となると?」
「勝つしかない。勝って勝って、春高の決勝戦まで残る。そんで優勝する」
「正解。やるしかないぞー」
決勝戦は1月13日。この日が過ぎると強制的に大地さん達は引退して新しいチームでの1年が始まる。笑って卒業して欲しいから優勝するしかない。
「春高までもっと上手くならないと!」
「だなー」
おっと。夏ちゃんが「あそこ空いてるー!!」って指差してるからそこに向かおう。こういう晴れた日にはピクニックは良いよねぇ。風気持いいなー。
日当たりが良い場所を取れて、皆で紅葉をバックに写真を撮ったり、持ってきたボールで円陣パスをしたり、おにぎりとか買ったポテト、ナゲットを食べたり、男性陣4人で昨日の白鳥沢戦の振り返りをしているとあっという間に父さん達が帰る時間になった。
……のは良いんだけど、夏ちゃんがイヤイヤッコになっちゃった。
「こら夏。繋護のお姉さん達も予定あるんだから聞き分けなって」
「う~~~~っ。帰らないでぇ」
「学校とかもあるからねぇ。そいつぁちょっと厳しいぜ」
「う~~っ」
やべえ。翔陽ってお兄ちゃんなんだな。
「ほら、お手紙と電話しよ? 繋護とやってるんだけど、離れてる時に『今日はこんなこと会ったよ』とか『面白いもの見つけた』とかって日記を書いてお手紙と電話で伝え合うの。やったことある?」
「…………ない」
「じゃあやってみよ。私達は私達でそういうの溜めておくから、夏ちゃんも夏ちゃんで『身長が伸びたー』とか『テストで何点取ったー』って日々のことを記録しておいてね。写真撮って私達も送るからね」
「…………うん」
なんとか機嫌直りそうだな。さすがだぜ、彩音ちゃん。
「これからインフルエンザとか恐くなってくる時期だけど、またこっちに来てディズニー行こ?」
「うん」「っ!?」
おいどうしたよ翔陽。「何それ、聞いてない」って顔しやがって。俺達が東京で長期遠征してたときに、夏ちゃんウチに泊まりに来たんだぞ。知らなかったのか?
「な、夏! 夏休みにディズニー行ったのか!?」
「え、うん。真緒ちゃん美緒ちゃん達が招待してくれたの」
「俺も行きたかった!!」
「だって俺達森然で合宿だったじゃん」
「そうだけどさぁ!! 夏だけずるい!!」
「今度日向君も千葉に来たら? ビーチバレーとか出来るよ」
「……ビーチバレー?」
え、待ってこれも知らない?
「砂浜のバレーだよ。2対2とか4対4でやんの。名前は知ってるだろ?」
「知ってるけど、やったことはない」
「そりゃ烏野からだと海岸までは距離あるしな」
「繋護はやったことあんの?」
「というか海岸まで近いから。トレーニングはよくやってた」
「っ!?」
と言うかさっきまでの空気何処行ったんだよ。流石翔陽。空気読めないな。
「そろそろ出発するぞー」
「「「はーい」」」
夏ちゃんの機嫌は良くなったし、……逆に翔陽のテンションが落ちたけど。まあ、取り敢えず帰る準備を進めていく。
祖父ちゃん祖母ちゃん、母さん、俺、翔陽、夏ちゃんはウチの車。父さん、姉ちゃん、美緒、彩音ちゃんはレンタカー。
まずは父さん達を見送る。
「お義父さんお義母さんありがとう御座いました。家に帰ったらまた連絡します」
「猫又にも宜しく伝えといてくれ」「何も無いけどまたおいで」
「じゃあ日向君も夏ちゃんも風邪には気を付けてね」
「ありがとうございました!」「またね!」
4人を乗せた車が出発したのを確認して、俺達も車に乗り込んでいく。母さんが運転手だ。
「さーて、じゃあ私達も帰りましょ。まずは日向家に行くからね~」
「「お願いします!」」
あー、楽しかった!!
◇
影山美羽が帰省したこともあって、母の影山華、父の影山雄大、影山飛雄の影山ファミリー4人はみちのく杜の湖畔公園へと遊びに行っていた。そして、東京に帰る影山美羽の見送りを仙台駅のホームで行っている。
「じゃあ偶にはこっち戻ってくるんだぞ」「連絡もしてね」
「はいはーい。年末年始は帰省する予定だから」
「美羽ちゃん体調管理しっかりな」
「飛雄もでしょうが。……烏野いいチームじゃん。入学して良かったね」
「ああ。今のチームでもっとバレーやりたい」
影山飛雄の言葉を聞いて、満足げな表情をした影山美羽は散髪した彼の頭を乱暴に撫でつける。昔からされていたこともあって彼は何も言わない。
一頻りなでつけると、影山美羽は影山飛雄の頭から手を離した。
「じゃあそろそろ時間だから行くね」
「ああ、元気でな」「行ってらっしゃい」「美羽ちゃんまたな」
そして、影山美羽は乗車予定の新幹線に乗り込んでいった。5分もしないうちに影山美羽を乗せた東京行きの新幹線は出発して、残された3人は見送る。
「……さて、俺達も帰ろうか」
「あ、どうせならお弁当でも買っていく? 正直今からご飯作るの面倒くさいって言うか」
「飛雄はどうしたい?」
「弁当食べたい」
「良し、じゃあ駅弁コーナーに向かうとするか」
影山雄大の一言で3人は駅弁コーナーへと向かっていった。日曜日であるが、そこまで人の数は多くない。スムーズに回れそうだ。
「飛雄、これで好きなの買ってきな」
「分かった」
軍資金を得た影山飛雄は物販店を回って気になった駅弁を購入し、店を出る。まだ影山雄大と影山華はどれにしようか悩んでいた。
やることがなくなった影山飛雄が誕生日プレゼントにと本日購入したスマホを取り出しておぼつかない手つきで操作する。同時に及川徹からメールが届いた通知にも気が付いた。
「……及川さんから?」
そのままメールを開くと、【にゃんこ君ってめっちゃ身体柔らかいじゃん? どんなストレッチやってるか教えて欲しいんだけど、及川さんの連絡先彼に教えてくれない?】というメッセージが届いていた。
「及川さん、昨日試合見に来てたのか……?」
取り敢えず【分かりました。聞いておきます】とだけおぼつかない手つきで入力して送信する。丁度影山雄大と影山華の2人も店から出てきた。
「おつり」
「電車代にでもしな」
「分かった。ありがとう」
500円ほどのおつりを自分の財布に入れて、ぐんぐんヨーグルトを買おうと決めた影山飛雄だった。
◇
まーた憂鬱な月曜日が来た。
女バスが体育館を使う関係で放課後練習は無い。そんなわけで朝練習だけはある。放課後は皆で整体とかスポドリの粉の買い出しに行く予定だ。2日間ボール触んないのはまずいしね。
更に、校門が見えてくると【祝! 男子バレー部全国大会出場決定!】って垂れ幕が目に入ってくる。春高本番まではあと2ヶ月強。もっと上手くならないと。
「あ! バレー部の! 全国大会頑張ってー!!」
「ありがとうございまーす!」
「「きゃあー!」」
上履きの色からして2年生。誰か知らないけど取り敢えず愛想良くしておこう。応援してくれるのは有り難い。
蛍とか飛雄とか告白ラッシュが始まるだろうなー。それにしてもそろそろ雪降りそうだな。体調管理気を付けないと。
体育館で朝練の準備をしていると、興奮した若林先生が現れた。
「「「おはようございます!」」」
「皆おはよう!!」
「集合!」
「「「集合!!」」」
いつもの流れで若林先生の元に集合する。
「皆ー、一昨日はお疲れ様でした!
4月から新体制になって1年目で全国大会に行けるチームになるとは正直思っていませんでした。でも、だからこそ、君達はもっと強くなれる。是非ね、春高でも君達の強さを全国に知らしめていきましょう!」
「「「はい!」」」
「そして、武田先生と烏養君にはお伝えしたんだけど、家庭科部の活動で【県ベスト8以上の成績を残した運動部への差し入れ】という活動内容が正式に許可されました。
早速お湯を出せるポッドを購入したので、これからの季節にぴったりなホットココアとかハチミツ入りレモネードなんかを提供していくよ!」
「「「っ! ありがとうございます!!」」」
マジか! 温かいのありがたい!!
「武田先生にもレシピは渡してあるけど、清水ちゃんとやっちゃんにも伝えるから朝練の前に1杯飲んでね。スポーツドリンクもお湯で作って下さい!
そしてこれからどんどん気温が低くなってくるから体調管理はしっかりと行いましょう。春高本番まであと2ヶ月とちょっと。体調管理にも気を配りながら頑張って!」
「「「はい!」」」
うおー、ありがたやー。ありがたやー。……ここまでしてもらってんのに1回戦敗退とか許されないぞ。
「良し! 全国制覇するぞ!!」
「「「オォーッス!!」」」
口だけなら何とでも言える。ちゃんと実行しないとな。
朝練が終わって制服への着替えも終わった。教室に向かおうとすると、昨日スマホに買い換えたらしい飛雄が素っ頓狂な声を出す。
「どしたー、影山」
「縁下さん。いえ。……繋護」
ん? 俺?
……どうやら飛雄の目的は俺らしい。
「繋護がやってるストレッチを及川さんが知りたがってて、昨日メールが来た」
はーん? 飛雄のスマホには【にゃんこ君ってめっちゃ身体柔らかいじゃん? どんなストレッチやってるか教えて欲しいんだけど、及川さんの連絡先彼に教えてくれない?】ってメールが表示されていた。
「なんで大王様が!?」
「だからストレッチ教えてくれって書いてるだろ!」
「どうすんのさ」
「バレーのことなら良いんじゃない? これで『合コンとかの数合わせとかで呼びましたー』とかは無いでしょ」
「……及川ならあり得そうだな」
「イメージだけど、及川って自分からは告白しなさそうじゃないか? あと大学でもバレーやりそうだから部活にでてるんじゃないかなーって」
俺もスガさん派。
部活引退して有り余った時間を女子と遊ぶのに使うとかは無いと思うし。青葉城西高校って大学進学率も高いからどっかの大学でもバレーやりそうだよな。推薦貰ってる可能性は高いし。……聞けそうな雰囲気だったら進路聞いてみるか。
「つーか、繋護って4月からオイカワに辛辣だな!」
「どういうことだよ龍!」
「4月の練習試合でオイカワを見た繋護何て言ったと思う? 『うわー、カワイソー』って言ったんだぞ」
「そうなのか!?」
……そんなこと言ったっけ。言ったような気もする。だって正直あの時から及川先輩への考えって変わってないし。
「で、なんでだよ?」
「いやー、ほら、及川先輩が好きになりそうな女子って〝バレーボールを楽しんでる自分を応援してくれる女の子〟だと思うんですよね。多分ここにいる全員がそうだと思うんですけど。
でも、及川先輩を好きになる女子って〝及川先輩の顔とか頭の良さしか見ない女子〟だと思うんです。下手にルックスがいいせいで」
「「「あー……」」」
ピンと来たお勉強があまり得意じゃない4人以外の皆が納得いった表情をする。
「それのどこが悪いんだよ? 見た目は重要だろうが」
「よく考えて下さい。
彼氏に見た目しか要求しない女子は今以上の男が現れたら簡単に別れを切り出しますよ。だって新しく現れた男の方が格好良いですから。
簡単に言えば、その女子にとって彼氏はアクセサリーとかと同じ分類で、〝私を着飾ってくれるかそうじゃないか〟って考えるタイプって事です。別にその男だから好きになるって訳じゃないんですよ。ただ、この人と付き合ってる私カワイーって感じです」
「「「あー、そういうことか」」」
「女子って恐いな!!」
そういう意味で、及川先輩が本命の子にアプローチしても、まず「コイツは私を遊び道具にしか見てないな」って警戒されるし、最悪「私の〝及川徹〟を取らないでよ!」って考えるヤベー奴に虐められるかもしれない。ちょっと大変そうな匂いしかしない。ストーカーとかされてないと良いけど。
「予想ですけど、『バレーボールより私を優先してよー』って言われたことがあるんじゃないかなーっと。実際は知りませんけどね」
「青城って学力も高いしな。……うわっ、及川に同情してきた」
「そんなわけで『カワイソー』です。言わないで下さいよ?」
「会わないから大丈夫だ!!」
それならそれでいいや。ま、でも恋愛面では苦労してそう、及川先輩。
「えーっと、話を戻すけど、今日の夕方以降にでも連絡取ってみるよ。及川先輩の電話番号とメールアドレス俺に送っといて。あと夕方以降に連絡しますーってメール送っといてくれると嬉しい」
「分かった」
「悪いね」
それにしてもなー、「新体操やればいいですよ」とか言えないからなー。結局地道なストレッチしかないと思う。【及川先輩に連絡!】ってメモ作って筆箱に貼っとこう。
風邪予防のためにマスクをして教室に入ると、早速聡、錦、誠也に囲まれた。
「「「ねこ!」」」
「おはー。どしたの?」
「「「全国おめ!!」」」
「おー、応援ありがと。全国行くぞー」
「なんだよ白鳥沢の1番のスパイク!! マジ凶器じゃん!!」とか「体育のバレーと全然違うのな!!」とか「腕もげそうなんだけど! なんで平気なの!!」とかって同時に話し始めて誰に答えれば良いのか分からない。
「先に荷物置かせて下さーい」
「ウシワカマルって世界でも戦ってんだろ!! マジやべー!!」
おい、人の話聞いてくれよ。
ドギャーン、ボゴーン、ズババーン。語彙力どうした。翔陽以下じゃん。あ、堀内さんと稲松さんも来た。
「「ねこ君おつ~!!」」
「マジやばかった!!」「家庭科部の皆も超はしゃいでさ!!」
「これからもお世話になるから宜しくね。あと応援ありがとう」
「「ヤバヤバなんだけどぉー!!」」
……荷物置かせて。荷物。
結局ホームルームが始まるまで応援に来てくれた皆にお礼を言い続けた。
シエスタシエスタ、シエッスター。
食後の昼寝と言うことで、「バレー部すげー!!」っていつまでも騒がしい教室を離れてどこか暖かい所を求めてふらっと旅立った。太陽が当たる暖かい場所が良い。
そういう訳で適当に歩いていると、前から教頭先生が歩いて来た。このままだとすれ違うから、早速ごますりしよう。
「教頭先生、こんにちは」
「ああ、こんにちは」
あ、これバレー部だって知られてないやつだ。別に関わらなくて良かったわ。まあいいか。好感度アップには知られておいても良さそうだし。
「一昨日は応援に来て下さってありがとう御座いました。自分、男子バレー部1年5組の猫又です。背番号は13番です」
「ん? ……んんっ? ああ!! 申し訳ない、制服姿だと全く気づかなかった。マスクもしてるしな。
うむ、良い試合だった。私自身はあまりバレーボールに精通していないからそれくらいしか言えないが、全国大会でも是非頑張ってくれたまえ」
「はい、ありがとうございます!」
「……君は影山君と日向君に比べてしっかりしているな。
学業との両立は難しいだろうが、『自分が高校生である』という認識は忘れないでくれよ。勉学もしっかりとな」
「はい!」
教頭に一礼して、立ち去るのを待ってから俺も歩き始める。……なんだよ、別に普通の先生じゃん。翔陽と飛雄何やらかしたんだ。……結局4月の入学直後に2人がなにやらかしたか聞いてないんだよな。
整体とか買い出しに行って、家に帰ってきたらお風呂にも入った。あとは夜ご飯待ち。さーて、及川先輩に連絡してみるかー。
あと、武田先生と繋心兄ちゃんに「及川先輩と連絡取るかも」って言ったら、「練習試合組みたいからって交渉に持ち込めると嬉しい」って言われたから頑張りますかね。
メールに電話番号とメッセンジャーアプリのIDを載せてっと。文章はこんな感じ?
【烏野高校1年の猫又繋護です。青葉城西高校3年の及川徹先輩でお間違いないでしょうか。
影山飛雄君から及川先輩の連絡先を受け取りました。自分で良ければ色々お話しします。
また、メールで何通もやりとりするより電話の方が好みなので、電話の方が有り難いかなーって感じです。
メッセンジャーアプリのIDを載せておくので、もし良かったらこっちでやりとりして下さると色々と嬉しいです。
連絡お待ちしてます。もしも及川先輩で無ければ無視して下さい。宜しくお願いします】
はい、送信っと。……って早ぁっ!?
早速メッセンジャーアプリに【及川徹】の名前が増えて、【にゃんこ君ヤッホー、俺もこっちの方が有り難いかも。電話して良い?】ってメッセージが来た。…………チャラいな。やっぱりチャラい!!
変なことになったらブロックすれば良いだけだから。良ーし、電話かけよう。……ワンコールも鳴ってないと思うんですけどぉ。出るの早いんですけどぉ。
「もしもし、及川先輩ですか?」
『こんばんはー、にゃんこ君。急にごめんね』
あ、この声は大丈夫だ。
「いえ、大丈夫ですよ。ストレッチとかですよね?」
『そうそう。決勝戦見てたんだけど、ウシワカのボール簡単に拾ってたからどんなトレーニングしてるのか教えて貰いたいなーって』
いやー、気を抜いたら吹っ飛ばされそうだったけどなー。もうちょっと良いレシーブ出来たなって反省中です。
「簡単、では無かったですけど……、まあいいです。
今までやってきたことは主に4つあって、1つ目が目を慣らすこと、2つ目がバランス感覚をつけること、3つ目が身体を柔らかくすること、最後がちゃんと食事とか睡眠にも注意することです」
『……やってること自体はウチでも変わらないか。詳しく聞いて良い?』
「はい。
まず目を慣らす、ですが、例えばバッティングセンターで120km/h以上の速球を見たり、車が見えてから見えなくなるまでにナンバープレートの4つの数字を使って10にする、とかをしてます」
『あー、なるほど。ボールだけを対象にしてないのか』
「はい。卓球とか野球のボール、バドミントンのシャトルは小さいので見失いやすいですし、ナンバープレートの方は判断力が身につくんじゃ無いかなって思ってます。ラリー中でも『何番が何かしようとしているぞ、だからこうしよう』って考える癖を身につけようって」
『でも、そういう練習をわざわざ取り入れる時間がもったいないから普段の生活でやろうって事ね』
「そうです」
『はー、……ちなみに何km/h位見てんの?』
「150km/hは回転とかも分かります」
『はー、そりゃレシーブに余裕あるわ』
「見えれば取れますからね。あとはひたすら練習です」
『かー、にゃんこ君も飛雄と同じでヤベーわ。……次お願い』
次はバランス感覚だけど、ちょっと宮城でできるかは分からない。
「バランス感覚を養う、ですね。以前実家は千葉だって話したの覚えてますか?」
『うん、4月の練習試合の時だよね』
「はい。ウチの学区って海まで20分くらいだったんですよ」
『……つまり砂浜でトレーニング。走ったり、基礎体力の向上』
「はい。いわゆる不整地走って奴です」
『んー、そしたらここら辺でやるのは厳しそうか』
んっふふー、実はそうじゃないんだよなー。
「本当にそうですか?」
『え、だってここら辺から海岸までかなり有るよね?』
「山の中とか芝生の上はどうですか?」
『……あ』
うん、気づいたみたいだな。
『あー、そっか、そうだよなー。ここ山とか近いし。あー、気づかなかった、いや、やったことはあるけど』
「青葉城西高校って設備良いからそっち使うのが普通だと思うんです。自分でもそうするでしょうし。
ただ、宮城って田舎かもしれないけど、逆に言えば自然の中でのトレーニング環境が豊富ですよね? じゃあ利用しようって言うのがウチの考えです。しょっちゅう山の中でトレイルランやってますし。地面が柔らかい方が身体にも負担かかりにくいですしね」
『ちょっとやってみる』
「是非是非!
……それで、身体を柔らかくするのと、食事とか睡眠はしっかりって言うのはそのままですね」
『あー、そうだ。烏野って専属の管理栄養士さんとか雇ってんの? チビちゃんとか眼鏡君って、目に見えて体格良くなったよね』
やっぱり青城って金有るんだなー。〝雇う〟とはならないだろ、普通。なんだ〝雇う〟って。そんな金無いっての。
「いえいえ。家庭科の先生とか看護師の方に話を聞いてるだけです」
『あー! 家庭科の先生! そっか!!』
……うるせ。スマホを耳から離す。あと音量もちょっと下げる。
「家庭科の先生って学校の中でも特に食に詳しい人じゃないですか。趣味が料理って家庭科の先生多いですし」
『そうだね』
「だからお願いして食育をして貰ったり、レシピを教えて貰ってます。普段料理をしない男子高校生でも簡単に作れるアスリート向けの料理とか、日常的に買える食材で作れるレシピとか。スポーツ栄養学の座学とか」
『あー、くそ。聞けば聞くほど強くなって当然じゃんって思うわ。そりゃ全体的に体格良くなるか。くそー』
スマホ越しに及川先輩が頭かきむしる音が聞こえてきてしてやったり顔になる。
「及川先輩も仰ってましたけど、やってることはいたって普通のことです。ちょっと一手間加えてますけどね」
『使えるものは何でも使えってか』
「そうですそうです。なんせ自分ら〝烏〟なので」
『なるほどなー。いや、ありがと。すっごく勉強になりました。これから気を付ける』
ここだ。今〝使えるものは何でも使う〟って言ったでしょう? それは及川先輩もなんですよー。ふははっ。
「いえいえ、役に立てたのなら良かったです。
……ところで、及川先輩って進路どうするんですか? 大学とか実業団から声かかってますよね?」
『ん? アルゼンチン行ってバレーやって来る』
……ん? アルゼンチン?
アルゼンチンについて知ってることを思いだす。南米にあって、バレーボールは強豪、アンデス山脈とかイグアスの滝なんかの自然が豊か。いやいや、今はそんな事考える必要ないから。え、すげえ。マジか。
「え、すごいですね。どっちかと言うとイタリア行ってそうな印象でした」
『オシャレってこと? いやー、嬉しいなー』
そこまでは言ってない。
「いや、まさか国外挑戦とは思いませんでした」
『存分に褒めろー、まあいいや。
にゃんこ君、ホセ・ブランコってバレー選手知ってる?』
「はい、現在はV1の立花レッドファルコンズの監督で、以前は40歳近くまで現役で活躍されてましたよね、10年くらい前でしたっけ。
来年以降はアルゼンチンに帰国される予定だった気がします」
『そうそう。バレー始めた時くらいにたまたま出会ってさ、セッターってかっけえなって思わせてくれた人なのよ。
そんで、あの人にバレー教えて貰いたいなって思ってアルゼンチンに行ってバレーやる』
行動力やば。ウケるんですけど。
「凄いです。スペイン語とかあっちでの生活とか応援してます」
『……そうなんだよ。スペイン語って身近に全然話せる人いないからちょっとさ。独学でも勉強してるけどなかなか難しくて』
……そうだよな。日本語って平仮名、片仮名、漢字の3つの言語があって他の外国語に対応すんの難しいし。英語の習得もままならないのにスペイン語もなんて厳しいよな。
……ただ、姉ちゃん達なら力になれるかもしれない。ぬか喜びさせるだけだから何も言わないけど。
「ゆくゆくは日本代表に?」
『いや、ウシワカも飛雄も全員倒したいからアルゼンチン代表になりたい。そしたら帰化かなーって』
「……やべー、流石大王様」
『大王様?』
「翔陽が及川先輩のことをそう呼んでるんです」
『あのチビちゃんさー、金田一の事も〝らっきょヘッド〟とか変なあだ名付けてたよね。あ、12番のミドルね。
まったく失礼しちゃうね』
あー、飛雄と同じ中学の。
「見た目通り猪突猛進なタイプなので、うん、まあ」
『澤村君も大変そー。……あ』
その瞬間、及川先輩のお母さんかな? 「徹、早くお風呂入りなさーい!」って聞えてきた。俺もそろそろ夜ご飯だ。
『ごめん、今日はありがとう。アルゼンチンだったらビーチでの練習もしやすいかもしれないから参考にさせて貰うね』
「はい、アルゼンチン代表になった姿を是非見せて下さい、応援してます。またどこかでバレーしましょう」
『にゃんこ君も日本代表目指して頑張ってよ。俺はにゃんこ君にも勝ちたいんだから』
「そうですね、頑張ります」
『んじゃ、まったね~。俺の進路のこと言わないでよ。特に飛雄にはさ』
「今日のことはここで忘れますね」
『そうしてくれると助かるかな』
そのまま及川先輩との通話が切れて、一息つく間もなく今度は姉ちゃんと彩音ちゃんの連絡先を見つけて3人のグループを作った。文章を打ち込んでいく。
【夜遅くごめん。
青葉城西高校の及川先輩が高校卒業後アルゼンチンでバレーに挑戦するらしいんだけど、スペイン語の勉強と食事とかの勉強に困ってるんだって。2人ならなんとかならない?】
こんな感じか。送信したらすぐに既読マークがついた。2人とも丁度スマホ触ってる時間だからな。
ボールを触ってると、まず彩音ちゃんから返事が来た。
【分かった、東京外大に入学した同級生に声かけてみる。食材もかな? 食事とレシピの方は教授に聞いて色々纏めておくからちょっと時間ちょうだい。真緒はどう?】
【あ、私が聞いておくから彩音はそっちに集中して。候補って綾乃とか真矢でしょ?】
【そう。先輩も含めれば10人以上はいるかなって。
うん、じゃあ、そっちは真緒に任せるね。繋護もそれで大丈夫?】
【大丈夫、2人共ありがとう、助かる】
そしたら、「任せなさい!」的なスタンプが返ってきて、俺はスマホを置いた。あとはあの2人に任せれば大丈夫だ。
また練習漬けの生活に戻った。戻ったのは良いんだけど。
「「「きゃあ~!!」
「「「影山くぅ~ん!!」」」「「「月島くぅ~ん!!」」」「「「田中ー!!」」」「「「西谷ー!!」」」
めっちゃギャラリーが増えた。特に飛雄と蛍が女子から人気で、龍先輩とノヤ先輩は男子から応援されてる。第二体育館は窓も多いからめっちゃ見られててなんとなーくやりにくそうにしてる。俺? 俺は別に彩音ちゃんしか興味ないし。
一旦集合がかかった。
「春高ってサブアリーナとか第7、第8試合を除けば基本的に試合は4コートで同時進行だ。めっちゃガヤガヤする。
そう言った意味でこうやってギャラリーから見られること、声をかけられるってことに慣れていけ。最初は難しいと思うけど、これはもう慣れていくしか無い。
しっかりと声を出して仲間と意思疎通を図る練習だ。いいな?」
「「「はい!」」」
「……そんなんじゃ周りの応援に負けるぞ。分かったな?」
「「「はい!!」」」
井闥山も梟谷も白浜も応援すげーからなー。正直当たりたくないってのが本音。
続いて武田先生。
「はい、聞いて下さい。
今週末の文化祭でバレー部の部活説明会をして欲しいと教頭先生にお願いされました。実際に中学生や保護者の方からお問い合わせが殺到しています。『是非練習を見学したい』とね。
残念なことなのですが、皆にはそっちの方を優先して貰う可能性が出てきてしまっています。クラスでは無く部活の説明会の進行ですね。
僕からも担任の先生にお願いしましたが、こういう事情があるからと皆の方でもクラスの方に融通を利かせて貰って下さい」
「「「はい!」」」
5組は大丈夫。部活優先しろーって言われてるし。3年生はどうなんだろ。文化祭ちょっとだけでも楽しめれば良いんだけどなー。
あ、そういや、武田先生と烏養コーチがやっちゃんのお母さんのところに行ってポスター作成のお願いしたんだっけか。どんなポスターになるんだろうな。
10月ももう終わる。……早いな。
【登場人物まとめ】
影山雄大 影山飛雄と影山美羽の父