11月の振り返り
2日(金) ポスターお披露目
3日(土)、4日(日) 烏野高校文化祭
5日(月) or 6日(火) 及川徹にリベルタ・メネムの紹介
11日(日) 青葉城西高校3年生チームと練習試合 東京代表決定戦 埼玉代表決定戦
18日(日) 東京代表決定戦 井闥山、梟谷、音駒の3校が決める
19日(月)以降 パンフレットに記載するための個人データ測定 影山飛雄、ユース合宿に召集(猫又繋護は辞退) 月島蛍、宮城県1年強化合宿に召集
24日(土) 青葉城西高校3年生チームと練習試合
25日(日) 神奈川代表決定戦
26日(月) 2学期期末テスト(~29日まで)
12月に入った。
早速春高の抽選会が行われてトーナメントが決定する。帰ってきた武田先生がめっちゃ緊張してて、その理由を知ると皆同じ表情になる。
「……見て貰ったら分かるけど、ウチと音駒が勝ち上がれば3回戦であたる」
「「「……はい」」」
「【ゴミ捨て場の決戦】実現のチャンスだが、まずは目の前の一戦に集中な。1回戦の相手は神奈川第一代表の椿原学園だ。生川との決勝を見たからどんなチームかは分かる。が、相手だって春高まで必死こいて練習してる。勝つために練習していくぞ」
「「「はい!」」」
「そんで、勝てば第二シードのインハイ準優勝の稲荷崎高校だ。まあ、でもまずは1回戦な。対策はするけど目の前の相手に集中しよう」
「「「はい!」」」
組み合わせを見たら祖父ちゃん達も思うことだろう。今年がチャンスだって。
正直な話、烏野と音駒が決勝戦まで戦える地力があるかって言われたら「No」だ。特にウチは今年の4月から新体制で色々と手探り状態の事の方が多いわけだし。
ま、だからってそんなの関係ない。勝つか、負けるかのどっちか。インハイ準優勝がなんだ、勝つっての。
それにしても椿原かー。
家に帰って来て、夕食後の皿洗いをしていると繋心兄ちゃんがやってきた。
「おばさんいるー?」
「何ー?」
どうやら母さんに用事があるみたいだ。皿洗い続けながら2人の話を聞こう。
「頼みがあるんだけどさ、5日と6日、月島と日向の帰りの送迎頼めねえかな」
「1年生合宿の?」
「そう。白鳥沢からあいつらの家まで1時間以上かかっちまって体調崩させたくねえんだ」
「あんたは行けないの?」
「烏野の方見たいんだよ」
電車とかバスの問題もあるよなー。時間次第で下手すると2時間弱かかる。
「お願いするときの作法、繋心は知ってるよね?」
「宜しくお願いします」
おー、土下座した。繋心兄ちゃん、母さんにも勝てないもんなー。写真撮っとこ。
「ま、いいでしょう。時間教えて」
「助かる!! あと、おじさんにもお願いがあるんだ」
「明育さんにも? 自分で電話しなよ」
「おう、今からする」
……多分飛雄の送迎だな。飛雄1人で味の素ナショナルトレーニングセンターにいけないだろうし。個展開いたばっかりだから父さんも時間空いてると思う、多分。
繋心兄ちゃんはウチの固定電話を使って電話を始めた。……スピーカーモードのままなんだけど。
「あ、おじさん? こんばんは」
『おー、繋心君こんばんは。どうした?』
「お願いがあって。5日に影山の送迎頼めないかなって。あいつ土地勘無いからユース合宿の会場まで行けないと思うんだよ。どうかな?」
『あー、いいよ。今は忙しくない時期だから』
「マジか! 助かります!」
『味の素ナショナルトレーニングセンターだっけ? 東京駅からだとちょっと複雑だよなー』
「そうそう、後で詳細送る」
『皆にも宜しくって言っといて』
「あーい」
連絡事項を伝え終わった繋心兄ちゃんが電話を切った。すんなり決まったな。
「繋心ー」
「なんだよ」
「誠意見せなさいよ?」
「今度何か奢らせて貰います!!」
「宜しい」
母さんのあの顔、「何買わせようかなー」って表情だ。南無。今のうちにさっきの写真姉ちゃんに送っておこう。【母さんに屈しました】ってメッセージ付き。
2学期の期末試験のテスト返却の日が続いて、遂に明日から飛雄と蛍、翔陽はそれぞれの場所で合宿に行く。
明日の準備もあるからってことで3人は早退だ。
「3人とも怪我無いようにな。あと色んな人に失礼が無いように。
おまえ達は烏野を代表してるって事を忘れるなよ。おまえ達が何かトラブルを起こしたら、それは烏野全体に影響出るからな。例えば来年以降烏野から選ばれなくなるとか」
「「「はい!」」」
大地さんに続いて烏養コーチ。
「合宿の報告を1人1人させるつもりでいるからメモかなんか残しとけよ」
「報告ですか!?」
「当たり前だろ。おまえ達が合宿で得たものを烏野全体に共有するんだよ。そうすればウチが強くなるだろ。4月から言ってるけど、ただ考えなしにやるだけじゃ駄目だぞ。PDCAサイクルを忘れるな。
何のための練習なのか。どうしたら強くなるのか。そういったもん掴んでこい」
「「「はい!」」」
「影山は全国の上手いやつに揉まれてさらに上を目指す。月島と日向は鷲匠先生の指導を実際に受けて、白鳥沢の強さってものを盗んでこい。いいな?」
「「「はい!」」」
3人頑張れよー。そして、最後に武田先生。
「影山君は猫又君のお父様。月島君と日向君は猫又君のお母様に送迎をお願いしています。何かあったら頼って下さい。あと、必ずお礼を言うようにね。〝~して貰って当然〟って考えは駄目ですよ」
「「「はい!」」」
俺は行かないけどな!!
というのは抜きで、俺の卒業までは色々と手伝ってくれる。それからは知らない。
「残ったメンバーは残ったメンバーで集中していくぞ。人数少ないけど、その分ボールを触る時間は増えるしな」
「「「はい!」」」
俺も京都行っちゃうし。八つ橋食べようそうしよう。
あ、キヨ君とモト君は呼ばれてるんだよな。京都のお土産2人に渡してって父さんにお願いするか。【来ないのかよ!!】ってメッセージ貰ったし。
◇
5日の早朝に新幹線を使って仙台から東京に移動した影山飛雄は東京駅の新幹線ホームで猫又明育と合流した。
「繋護のお父さん、おはようございます!」
「おはよう影山君、1ヶ月ぶりだね。元気だった?」
「はい! 今日は宜しくお願いします!」
「こっちこそ宜しくね。じゃあ行こうか」
「はい!」
影山飛雄と猫又明育は宇都宮線に向けて歩き出す。
「平日だから大丈夫だとは思うけど人混み凄いから。スリとか気を付けてね」
「はい! ……繋護残念すね」
「1年前から決まってたからなー、流石にね。まさかタイミングが被るとは思わなかったけど。繋護の分とまではいかないけど実りある合宿にしてね」
「はい!」
ホームを歩きながら2人はそんな会話をしていく。
40分ほどかけて、影山飛雄と猫又明育は味の素ナショナルトレーニングセンターに到着した。
「はい、到着。帰りもここで良いかな? 9日だよね?」
「ありがとうございました! 帰りもお願いします!」
影山飛雄が猫又明育に頭を下げると、ここに向かってくる誰かの足音が響いてきた。2人がそっちの方を見ると佐久早聖臣が挨拶を始める。
「猫又さん、お久しぶりです。そうか、烏野高校」
「ん? おお、佐久早君。久しぶり。
活躍見てるよ、凄いね。そっか佐久早君も招集かかったんだね」
「はい。元也も一緒です」
「あ、そうなんだ。古森君にも頑張れって伝えといてくれると嬉しいかな。もちろん佐久早君も」
「はい」
そこで、猫又明育は影山飛雄のことを放置していることに気が付いて、慌てて2人の紹介をする。
「あーっと、影山君、放置してごめんね。こちらは井闥山学院に通ってる佐久早聖臣君。繋護とは小学校のバレークラブが一緒だったんだ。聞いてる?」
「『友達だよ』くらいですけど。
初めまして、俺は烏野高校1年の影山飛雄です! 宜しくお願いします!」
影山飛雄が自己紹介をすると、今度は佐久早聖臣の紹介に移った。
「それで佐久早君。今影山君が言った通りで、繋護と同じ烏野高校のチームメイトの影山飛雄君ね」
「……井闥山学院2年の佐久早です。宜しく」
「僕としては仲良くなって欲しいところだけど、まあそれは2人の問題だから。2人共ユース合宿頑張ってね」
「はい!」「はい」
「じゃあ僕はこのへんで。怪我無いようにね」
「はい!」「はい」
影山飛雄と佐久早聖臣に挨拶した猫又明育は2人の元から離れていった。残された2人も敷地に入って会場まで歩き出す。
「……繋護何か言ってた?」
「『キヨ君とモト君とバレーしたい! 次は頑張る!』って伝えるよう言われてます」
「……そうか」
心なしか佐久早聖臣の機嫌が良くなった気がする。
「ていうかさ、なんかあいつ上手くなってね? 去年の関東大会あんなじゃなかったんだけど」
「あー、10月になんか『調子が良い』って言うようになりました」
「白鳥沢戦見たんだけど、なんで若利君のスパイクあんな取れるんだよ。元也でも厳しいぞ」
「やばいっすよね。負けてらんねえっす」
〝猫又繋護〟という共通の話題のおかげで、2人の会話は弾んでいく。
「くそー、ユース選ばれてるんだろうなって思ってたら結婚式かよ。予想つかなかった」
「1年前から決まってたらしいんで」
「……大人しそうに見えて結構我が強いんだよなー。小学校から変わんねー」
「小学校から上手かったんですか?」
「ああ。ほら、祖父ちゃんが音駒の監督だからさ。小っちゃい頃から音駒の試合見に行ってたって」
「……逆に佐久早さんが音駒に行こうとは思わなかったんですか?」
「ん? ああ、ウチからだと音駒まで2時間はかかるからな。寮があれば別だったけど、選択肢には無かった」
「なるほど」
猫又繋護が千葉県の強豪校に進学しなかった理由に「家から遠くて寮もない」という理由を思い出して、影山飛雄は2人の共通点を見いだした。友達だけあってどこか似たもの同士の2人だとぼんやりと思う。
「佐久早さんと繋護って友達なんですね」
「え、うん。……いきなりなんだよ、気持ち悪いな」
「繋護も似たようなこと言ってたので」
「……そうかよ。ほら、あっちだ、行くぞ」
「はい!」
2人は練習会場へと向かっていく。ユース合宿が始まる。
◇
飛雄、蛍、翔陽の3人が合宿に行って選手が10人。一気に人数減ったな。あと明後日から俺もいなくなる。ひいっ。
「影山と日向がいないとワチャワチャしないですね」
「いっつも張り合ってるからなぁ」
「その分俺らが声出しますよ!!」「だな! ノヤっさん!!」
声出しって意味だと俺達もやらないと。
試合のスケジュールも発表されて、ガッツリ他の学校との同時進行だからなー。声出す練習もしとかないと負ける。応援合戦はマージでやばい。
「おーし、練習始めるぞー」
「はい! 集合!!」
「「「集合です!!」」」
コートの準備とホワイトボードに色々と書き込んでた烏養コーチの準備が終わって、集合がかかった。烏養コートとホワイトボードを取り囲むように並ぶ。
「人数が少ねえのはしょうがねえ。この期間は1人1人が各自の課題をクリアしていくことに使っていくぞ」
「「「はい!」」」
「そんで、全体的な技術向上の為に2対2とか3対3の時間を増やそうと思う。日本代表がやってるようなボールゲームってやつだな。ボールを2つとかボールを触る度にエンドラインをタッチとか。
少ない人数で9m×9mのコートを守るって実践練習をやっていこう。自分の守備範囲を広くするってのとスタミナ作りが目的だ」
「「「はい!」」」
砂浜じゃなくてまだマシだ。きっちいぞー。
◇
同時刻、着替えを済ませた月島蛍と日向翔陽は白鳥沢学園の体育館に足を踏み入れた。
白鳥沢学園の五色工や青葉城西高校の金田一勇太郎、国見英、角川学園の百沢雄大、伊達工業高校の黄金川貫至などのメンバー約15人が既に準備している。
「「こんにちは!」」
「「「こんにちは!」」」
「挨拶しろよ、絶対だぞ。お前ら烏野を代表して参加してるんだからな!」と澤村大地をはじめとする烏野高校排球部メンバーに念を押されて2人は早速実行する。
「……俺達遅かった?」
「烏野から距離有るから仕方ないでしょ。授業だってあるんだから。時間前には来てるし」
「それもそうか!」
「先生方に挨拶しよう」
「おう!」
そんな2人を見て、金田一勇太郎と国見英はコソコソと話し合う。
「影山いないのか」
「ユースの方行ってんだろ。……いて欲しかったのかよ」
「そういうわけでは無いけどさ」
烏野高校に進学して目覚ましい活躍を成し遂げている影山飛雄のことを思うと複雑な胸中である2人。特に、及川徹や岩泉一から烏野高校と練習試合をしていると聞いていた為にどうしても気にしていた。
そして、そんな2人の想いを知らない月島蛍と日向翔陽は穴原孝昭のもとを訪れる。
「「こんにちは!」」
「烏野高校の月島蛍です! 今日からよろしくお願いします!」
「同じく烏野高校の日向翔陽です! 今日からお願いします!」
2人の挨拶を受けて穴原孝昭が話し始める。
「はい、こんにちは。今回の合宿の責任者の1人である穴原です。2人とも怪我の無いようにね、やっていこう」
「「はい!」」
「鷲匠先生は後でお見えになるから、鷲匠先生への挨拶は後で構わないよ。
あと、全体でのアップは後でやるけど、学校でのやり方もあるだろうから時間までは各自でやって貰って構わない。
そして、日向君はサポートメンバーの1人としてサポートして貰うってことは忘れないようにね」
「「はい!」」
「2人ともこの合宿で何かを学ぶことを祈ってます。5日間宜しくね」
「「はい! 失礼します!!」」
一礼して、2人はアップを始めるために空いている場所へと向かっていく。また、2人の様子を見て慌てて数人が穴原孝昭に挨拶しに行った。
1年生強化合宿が始まる。
◇
……うごご。宣言通りめっちゃ走ったなー。
お風呂から上がってストレッチ。なんだろう、休憩以外はずっと2対2とかで走ってた。皆へばってた。ひぃー、きちー。
……ん? 飛雄から電話だ。あっちはどうだったんだろうな。つか、「電話していいか?」位聞けよ。たっくよー。
「もしもーし」
『繋護か? 時間大丈夫か?』
「大丈夫。今お風呂から出てストレッチ中だ。そっちは?」
『こっちも夕飯終わったところ。風呂の順番待ち』
時間的にはそんなもんだもんな。
「で、どうよ感触」
『やっぱ皆上手え。アップと対人やったらチーム変えてひたすら試合だ。今日は10セットだったか』
「報告会楽しみにしてるぞー」
『っ!? 忘れてた!!』
だろうな。
『誰に電話してんの? 彼女?』
『いえ、繋護です』
お、モト君の声だ。久々に聞いたな。
『佐久早ー、影山が繋護と電話してるー』
『……電話くらいするだろ』
おー、キヨ君も。
「飛雄、スピーカーモードにできそう?」
『……どうやんだ? 古森さん、スピーカーモードって出来ますか?』
『ん? オッケー、影山スマホ借りて良い?』
『お願いします』
ガサゴソ音がしたと思ったら、最後にスマホをテーブルに置く音が聞こえてきて、モト君の声がさっきよりも鮮明に聞えてきた。
『イェーイ、繋護聞えてるー?』
「聞えてるー。モト君キヨ君元気そうで良かった」
『おー。次のユース合宿は3月だったっけかな。そん時は選ばれろよー』
「今の所は大丈夫」
今のところ結婚式とかは無い。葬式とかは分からないけど。無いように祈ってる。
「次は選ばれるように頑張るから。ま。まずは春高優勝かな」
『いやいやー、ウチが優勝するから。そこまで言うなら決勝まで上がれよ~。むかえうーつ。なー? 聖臣』
『ああ。負けねえ。決勝でな』
「んー」
ブロック違うもんな。梟谷とかもそうだけど決勝戦でしか戦えない。1回戦、2回戦、3回戦、準々決勝、準決勝、決勝だから5回勝たないと決勝にはいけない。
『おっと、悪い。風呂の順番だ。また電話かける』
「うん、皆ゆっくり休んで。飛雄は報告会のメモちゃんとやれよー」
『……おう』
「キヨ君とモト君にも手伝って貰いな」
『……お願いします』
『ウチも命令出されてるから一緒にやろうか』
『まず風呂』
『あ、待てよ。悪い、切るぞー』
「はーい」
そのまま電話が切れて、静寂が戻ってくる。
そして、電話を聞いていたらしい祖父ちゃんが俺に声をかけてきた。
「影山からか?」
「そう。あと井闥山の友達から」
「次頑張れよ」
「うん」
合宿の報告楽しみだな。
◇
一方、影山飛雄と同様に合宿1日目が終了した月島蛍と日向翔陽は白鳥沢学園の駐車場へと向かっていた。
「あ、あそこ!」
「……本当?」
猫又家のファミリーカーを見つけた日向翔陽はまっすぐそっちへと向かっていく。月島蛍は半信半疑ながら彼の後ろをついていった。
しかし、猫又美繋も2人に気が付いて車から降りる。
「1日目お疲れ様~、日向君、月島君」
「こんばんは!」「宜しくお願いします」
「寒いでしょ、ほら乗った乗った」
猫又美繋が車の後部座席のドアを開けて、月島蛍と日向翔陽は車に乗り込む。すると、すぐに月島蛍の眼鏡が一瞬にして曇った。
「曇ってるぞ」
「うるさい」
そんな2人をみて笑った猫又美繋は烏養繋心から渡された補食が入った袋を後部座席の2人に渡す。
「繋心から。酔わない程度に飲食しなーって」
「ありがとうございます!」「ありがとうございます」
2人は袋の中に入っていたウェットティッシュで手を拭いて、ウィダーゼリーやおにぎり、リンゴジュースを取り出す。
「まずは月島君家ね。日向君待たせちゃうけどごめんね」
「お願いします」「送ってくれるだけで嬉しいです! お願いします!」
「起こすから寝てても良いよ。それじゃあしゅっぱーつ!」
「「おねがいします!」」」
2人を乗せた車が発進する。
◇
朝練には参加しないけど、朝練終わりに翔陽が体育館に来て、「2mがいました!! 今日も頑張ってきます!!」とか言って6日の練習は終わった。
「じゃあ八つ橋頼むぞー」
「はーい」
「俺も京都行きてえっす!!」
「「「俺も!!」」」
別に旅行に行くわけじゃないよ? 旅行に行くわけじゃないけど、「京都に行くならこれ頼む!!」ってお金を預かって色々と買うものリストを作ることになった。八つ橋くらいは買ってきてやらんことは無い。
……嘘。結構楽しみにしてる。だって京都だよ? 「京都の街並み楽しいから犬伏東でバレーやる!!」って言って京都に引っ越した先輩が3つ上にいるし。いやー結婚式が目的だけど京都の紅葉も楽しみだ。
家に帰って改めて準備する。
良規君が「良樹の結婚式だからなー、レンタル代金は俺が出すぞー」って言ってくれたからレンタルスーツを借りることになってる。ありがとうございます。
俺としては着替えと縄跳びとかボールなんかのトレーニング道具だけで良い。お土産も郵送しちゃうつもりだし。リュックだけで足りる。
「繋護ー、明日の準備大丈夫?」
「大丈夫。ご祝儀とかは母さんにお願いして良いんだよね?」
「うん。あんたは椅子に座ってニコニコしてればいい」
「言い方!!」
いや確かにできることなんか無いけどさぁ!! そういう言い方は傷つきまーす!!
「ま、オフだと思ってリフレッシュしてこい」
「家空けちゃってごめんねー、お父さん、お母さん」
「問題ねえよ、何かあれば繋人か繋至に電話すっから」「せっかくだから楽しんでおいで」
やべー、京都だー。【そうだ 京都、行こう】だもんな。
仙台駅から新幹線に乗ってから約4時間。京都駅にとうちゃーく!
やっぱり人が多い。特に外国人観光客。平日なのに凄いな。流石京都。空気が違う。
「仙台より暖かいね」
「まあねー。人多いし。さ、こっから在来線で宇治市の方行くわよー」
「はーい」
奈良線に乗って宇治の方へゴー。宇治抹茶とか楽しみなんだよなー。
電車と徒歩でまず旅館に来た。既に到着してた父さん達と合流。猫の方の祖父ちゃんと猫の方の祖母ちゃん、おばさん2人で1つの部屋。父さん母さん、姉ちゃん俺、美緒で1つの部屋だ。
「お母さん、繋護お疲れー」
「お疲れー、新幹線4時間はきつかったなー」
「早速温泉入っちゃう?」
「そうしようかな。せっかく京都に来たんだし」
「結婚式もだけどー、やっぱり京都楽しみたいよねー」
女性陣がキャイキャイしててやばい。いや、でも俺も温泉入りたいかも。
「繋護ー、俺達は俺達で温泉入りに行くか。昼間っから入る温泉は気持いいぞー」
「うん。祖父ちゃんも誘おう」
「そうだな。着替え持ってけよ」
「はーい」
やばい。休み楽しい。温泉だー!!
祖父ちゃんと父さん、俺の3人で温泉に入りに来た。髪の毛と身体を洗って湯船に入る。
「「「あ゛ぁ゛~~」」」
熱めの温泉で思わずため息が出る。いい湯ですなー。
「温泉入りながら晩酌も良いよな」
「ここは出来ないぞー、父さん」
「知ってるよ」
これは夜中晩酌するな。おばさんもいるし。皆お酒強いし。はぁー、気持ちいい。ずっと入ってられるー。
温泉から上がったら、せっかくの京都ってことで平等院とか宇治上神社、宇治市を中心に散策した。それからはトレーニングだ。春高まで1ヶ月切ってるし。サボってられない。
旅館の近くにある宇治公園に来て縄跳びとボールを使ったトレーニング。周りが川だからボール落とさないようにしてやってたら、俺を見てる女子高生4人と眼が合った。
焦げ茶色のセーラー服に緑のリボン。女子からは人気が出そうなセーラー服だ。あと多分吹奏楽部かオーケストラ部。楽器ケース持ってるし。
1人はトランペット、2人はサックス。最後の1人は……チューバ? いや違う、ユーなんとか。ユーフォーだっけ? とにかくチューバの小っちゃい奴。
……ん? サックスってオーケストラに無いよな。じゃあ吹奏楽部か。京都も千葉と同じで吹奏楽強い地域って聞いたことがある。……強かったって表現あってるっけ? 大阪が強いのは知ってんだよ。甲子園でやべー応援してるし。
「「「…………!」」」
いやなんで見られてんだ? まあいいか、時間だし。そろそろ終わろう。そんでもう1回温泉入ろう。温泉楽しみだなー。
ストレッチをしたら、ベンチコートを着て女子高生の方に近付いていく。いやだってそっちが出口だし。
「何か用ですか?」
「あ、すんまへん! 私達北宇治生で、この公園に良う来るんどすけど、〝烏野〟って見慣れへんな思て」
お下げの女の子が返事をしてくる。
やばい、京都弁だ。俺は仙台弁で対抗するか? ……しないけど。北宇治って宇治市の高校? 中学じゃないよな? 多分高校生のはず。うん。4人中3人が結構身長あるし。清水先輩くらいか?
「ああ、親戚の結婚式で宮城から京都に来たんです。京都にいるのも今日明日だけですけどね」
「宮城! 牛タン有名どすなぁ!」
「そうですね、ずんだ餅も美味しいので良かったら遊びに来て下さい。……寒いですけど」
おさげを垂らした女の子と会話が始まった。京都弁ってなんか圧有るよなーとか思いながら。
今日は良く晴れた1日だった。その分あって京都暖けえ。日射時間が短いと体調にも悪影響が出るとかなんとか。秋田が1番日照時間短いとか聞いた。
「やっぱしこっちよりもどすか?」
「そうですね、雪も大分積もるようになってきてますよ。なのでオススメとしては5月から8月かな」
「今度皆で行ってみますね!」
「是非是非!」
今度はパントマイムで使うような箱を持ったショートヘアーの女子が話し掛けてくる。大きさ的にはトランペットっぽい。
「結婚式やのにバレーボール持ってきてるんどすなぁ」
「ああ、はい。1月に行われる全国大会に出場が決まってるので少しでもボールに触っておきたいんです」
「全国!? 凄おすなぁ!」
「いえいえ、全国制覇が悲願なので全国出場は通過点です。これで満足できません」
「「「……え」」」
……あれ、固まっちゃった。変なこと言ったかな? ま、いっか。
今度は幾分真剣な顔になった眼鏡の女子高生が話し掛けてきた。
「もし、なんどすけど、全国大会を目指すと謳うてるのにバレーボールをするのにあまりええ環境やなかったらどうするのん?」
「んー? 俺なら辞めますね。転校なりクラブチームに入るなりします」
「……簡単に言うんどすなぁ」
「え、だって全国大会を目指してるのにそういう環境はまずいですよ。高校の3年間はあっという間だから時間の無駄です。少しでも良い環境で上を目指さないと」
「その原因顧問やったら?」
なんだ? グイグイ来るな。まー、吹奏楽部みたいに大所帯だったら色々あるよな。4月の1年みたいにギスギスすることもあんだろ。女子社会だし。うん。
「……その顧問、大人の責任果たしてますかね? 全国目指すなら顧問が生徒に集中できる環境を積極的に作っていかないとなーって思います。顧問は大人で、俺達は子供なんですから。ということで俺なら顧問を辞めさせるって方法を取るかもしれません。いわゆる反乱ですね」
「……そうどすか、おおきに」
「まあでも、他人を変えるより自分が変わった方が早いので、自分から動くかな」
それにちゃんと下調べして入学しないといけないんだと思うけどね。それは入学した後に言っても遅いから言わない。多分高校の部活うまく行ってないんだろうな。ま、頑張って欲しい。
あ、やべえ。スマホの時間を見ると予定してた移動の時間に差し迫ってた。このままだと冷えて風邪引く。戻らないと。
「すみません、そろそろ行きますね。もし良かったら烏野高校も応援してくれると嬉しいです。皆さんなら今年出場を決めた犬伏東高校と立華高校を応援するかもしれないですけど」
「あ、いいえ! 全国大会おきばりやす!」
「はい、ありがとう御座います!」
一礼した後にその場を去る。その4人の女子高生は手を振って見送ってくれた。〝北宇治高校〟ってことしか知らない多分2度と会わない4人。高校の部活に思い入れがあるかは分からないけどやるんだったらちゃんとやって卒業して欲しい。
♪
猫又繋護が立ち去った後に沈黙が訪れる。田中あすか、小笠原晴香、中世古香織、斎藤葵は各々考え始めた。
「うちらの目標は全国大会金賞で~す! キャハハ!」なんて軽い気持ちで言ってる訳では無いのが雰囲気で分かる。
府大会1回戦、2回戦負けの北宇治高校男子バレー部の部員とは全く雰囲気が違う。猫又繋護を見ていた理由もなんか凄い奴がいたからだ。
いつになく真剣な表情の田中あすかが口火を切った。
「……革命起こそう」
「あすかがそんなやる気出すなんて珍しいね」
「彼みたいに部活に打ち込んでみたいから。やるからには納得できるようにしたい、今なら新年度に間に合うはずだし」
田中あすかの言葉に中世古香織が1番に同意した。
「……私も手伝うよ。今のままじゃ嫌だもん」
「ボイスレコーダーとかカメラで証拠残そう。それで校長とか教育委員会に突き出す」
「梨香子先生には悪いけどね」
「彼も言ってたけど、大人の責任を果たしてないよね」
「……恨まれるだろうなぁ」
「じゃあこのまま腐ってく? それなりの思い出だけ残してさ。楽しくやるのも吹奏楽だよね。たかが部活、履歴書でちょっと有利になるくらい?」
「それはやだ!」
「じゃあやろう。もう3年間の1年無駄にしてるんだし。あと2年無いんだから」
「「「うん」」」
小笠原晴香、中世古香織、斎藤葵の3人も同意する。そんな3人に向けて田中あすかは決意を込めて頷いた。
♪
「優秀な指導者が離れて弱小校に成り下がった高校の部活を立て直す」というポイントで共通点があったことや稲荷崎高校などで吹奏楽の話題が出たので掛け合わせてみたら楽しいよなーと。
習志野高校の吹奏楽部は昔から有名ですしね。【レッツゴー習志野!】は春高でも聞き馴染みがある方もいると思います。
ただ、年代がずれてたのは誤算でした。本作の設定では田中あすか達も96年生まれとしています。(イベントが全て1年前倒しになっています)
「猫又繋護に触発された田中あすか達がこれからどうするのか?」という物語【お祭り高校 KI・TA・U・JI!!】も投稿するのでどうかお楽しみ頂けると幸いです。