烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年12月②

 天気予報通り快晴だ。人生の門出にこれ以上は無いくらいで雲ひとつない。

 そんな日でもストレッチと縄跳びはしっかりやって、いざ結婚式へ。

 

「どう? スーツ似合う?」

「うーん、まだ〝着られてる〟って感じ」

「マジかぁ」

「ピチピチじゃなくて良かったね」

 

 レンタルスーツを着た感想を姉ちゃんと美緒から貰ったけど、まあそんな感じ。……やっぱり動きにくいな、スーツ。借り物だから雑に扱えないってのもあるか。

 

「ほーら、私達への感想は?」

「髪の毛もセットして貰ったんだよー」

 

 ハーフアップって言うんだっけ? 姉ちゃんはウェーブがかかってて、美緒はストレート。

 2人ともワンピースタイプで、姉ちゃんが紺色、美緒が薄い紫。あと薄いのを肩に掛けるみたいだ。肩を出しちゃ駄目だったような……?

 

「可愛い可愛い。レンタル借りて良かったな」

「「ふっふーん」」

 

 ドヤァってすると本当にそっくりだな、この2人。姉妹だからそうなんだけど。あと母さんに似てる。

 

「あとさー、そろそろこういうドレスって持っておいた方が良いのかな。お母さんどう思う?」

「んー? 真緒はともかく繋護と美緒はまだ身長伸びるでしょ。成長期終わってからでいいんじゃない?」

「それもそっか」

 

 伸びろ、俺の身長。180cmまで!!

 最近学ランもきつくなってきたような気がするんだよなー。

 

「そろそろ出発するぞー」

「「「はーい」」」

 

 神社での結婚式。神前式って言うらしい。初めてだ! どんな感じなんだろう。

 

 

 良規君とおじさんの高明さん、悠花ちゃん、凛花ちゃん、おじさんの優弥さんも合流した。

 

「おおー、3人とも良いじゃん」

「「悠花ちゃんと凛花ちゃん可愛い!」」

「良樹の晴れ舞台だしね。ま、ちったぁ奮発しないと」

 

 悠花ちゃんと凛花ちゃんが来て、女性陣で固まってキャイキャイしてる。女3人揃って姦しいとはよく言ったものだ。

 せっかくだから祖父ちゃんに挨拶してるおじさん2人に挨拶しに行く。

 

「高明さん、優弥さんお久しぶりです」

「おお、久しぶり」「久しぶり。身長伸びすぎじゃない? 前より10cm以上伸びてるよね? 今どのくらい?」

「今は174cm近いです」

「ひー、身長抜かされそうだなー」

 

 目指せ180cmだからなー。

 それに、良樹君と結婚する高宮未紗さんの親戚も続々と来てるから挨拶しに行こう。……神前式って友達は来られないのか? 分かんね。

 

 

 袴姿の良樹君と白無垢姿の未紗さんめっちゃ良かった!! 和式の結婚式も良いなあ。色々調べておかないとな。

 あと、祖父ちゃん祖母ちゃんに聞いたらどうやら神前式では親族だけしか参列できないらしい。だからこれから友達を誘っての二次会を開く。

 明日からの部活に備えて俺はここでおしまい。でも、母さん達は明日まで京都を散策するらしい。いーなー。でも3日休むのは流石にやばいのも事実。

 そんなわけで良樹君と未紗さんと軽く挨拶する。

 

「良樹君、未紗さんご結婚おめでとう御座います。すみません、予定通り僕はここで退席させて頂きます」

「おー、春高前なのに悪いな。また落ち着いたらゆっくり話そうぜ」

「うん」

「繋護君、今日は時間あらへん中おおきにな。また時間あるときにゆっくり話そ。あと応援してるさかい。春高頑張ってな」

「はい!」

 

 3人で写真を撮って、俺の出番は終わり。確かに座ってニコニコしてるだけだったわ。

 未紗さんは学生時代は立華高校の吹奏楽部に入っていて、マー……? 行進とかででブイブイ言わせていたとかなんとか。今度演奏して欲しいな。

 さようなら、京都。また来ます。お土産見てこー。

 

 

 仙台席に到着。……さっむ。やっぱり東北は寒いよ。こっち雪降ったっぽいから仕方ないんだけど。寒暖差激しすぎ!!

 皆に頼まれたお土産を買ったせいで行きよりも荷物が多い。ちょっと買いすぎたか?

 

「おおーい、繋護ー」

「っ! 繋人おじさん!」

 

 良かった、早く合流できた。仙台駅の新幹線の改札口を出た所にいるおじさんの方に歩いて行く。

 

「いっぱい買ったな」

「……買いすぎたかも」

「いいだろ。それだけ友達が多いって事だ。夕飯何か買ってくか?」

「ううん。京都で駅弁買った」

「そうか、じゃあ帰るぞー」

「あーい」

 

 部活には参加できそうに無いな。帰ったらまた縄跳びやろう。

 

 

 

 今日で3人の合宿は終わりだ。それまでは選手10人でやっていく。朝早く部室に来て掃除をしていると、徐々に先輩達もやってきた。

 

「おはようございまーす。京都のお土産適当にどうぞ~。合宿組の3人と武田先生と清水先輩とやっちゃんの分は分けてるさかい、ここの分は食べ切っとぉくれやす」

「「「っ!! ありがとう!!」」」「「「京都弁!?」」」

「京都人になるなよ~!!」

「どうしましょうかねぇ」

 

 冬だから数日で痛むってことはそうそう無いでしょう。でも早めに食べて貰いたい。生八つ橋とかあるし。

 

「あと、個別でお願いされたものも渡したいので適当に取りに来て下さい」

「「「アザーッス!」」」

 

 例えばあぶらとり紙とかね。

 

「こっちの練習どんなだった?」

「10分間の2対2、落としたらやり直し。延々と走ってた……。

 サーブだったらコートを9分割して狙ったりとか、スパイクのストレート、クロス、インナー、ブロックアウトの練習、二段トス。まあいつもよりも基礎重視って感じ」

「オッケー」

 

 昨日繋心兄ちゃん酔っ払って聞けなかったんだよな。

 

「部活終わったら京都の写真見せてくれ」

「楽しいの無いですよ?」

「京都の空気感じてえんだよ!!」

 

 京都の空気って何だ?

 

◇

 

 月島蛍と日向翔陽は1年生強化合宿を終えて、穴原孝昭、鷲匠鍛治、斉藤明の3人と挨拶する。

 

「「5日間ありがとうございました!」」

 

 2人からのお礼を受けて、まず穴原孝昭が先陣を切った。

 

「5日間の合宿ご苦労様。普段とは違う指導とメンバーで慣れない合宿だったと思う。

 烏野での練習がどんなものなのかを知らないけど、〝常に考えること〟って言うのは勝つために絶対必要だからこれからも意識していって欲しい。

 そして、春高まで1ヶ月切ってるから体調管理には気を付けて下さい。東京でも烏野のバレーをやって欲しいと思います。頑張れ!」

「「はい! ありがとうございました!」」

 

 続いて斉藤明。

 

「僕は君達2人をそこまで見ていなかったからなんとも言えない。それでも言えるとしたら、穴原先輩が言ったとおり、体調管理をしっかりとすること。

 ウチも移動疲れとか連日の連戦で疲労が溜まってベストなパフォーマンスができずに負けたって言うのは何度もあって、そのたびにスタミナって言う課題が反省で挙げられてるからな。

 身体作り、スタミナ作りって言うのはしっかりとやっていって欲しい。春高頑張って!」

「「はい! ありがとうございました!」」

 

 最後に鷲匠鍛治。

 

「繋心がどんなことを重要視してるかは分からねえ。が、おまえ達は1年でまだまだ身体が出来上がってねえ。強いバレーをするには強いフィジカルが必要だ。

 おまえ達はミドルブロッカーだから、相手のエースのスパイクをブロックする回数は多いだろう。その時に押し負けて怪我をしないためにもしっかりと身体を作っていけ、指たてとかな」

「「はい!」」

「月島も日向もこの5日間で得られたものはあったか?」

「「はい! ありました!」」

「そうか。

 春高本番まではもう1ヶ月切ってる。それでも普段の練習からできることをどんどん増やしていけ。以上だ」

「「はい! ありがとうございました!」」

 

 月島蛍と日向翔陽は深く一礼した。

 

◇◇

 

 一方、ユース合宿も全日程終了し、影山飛雄は味の素ナショナルトレーニングセンターを出発した所で猫又明育と合流した。

 

「はーい、影山君、合宿お疲れ様。どうだった?」

「こんにちは! 今回来られて良かったです」

「そっか。そしたら成長した姿を春高で見せてね」

「はい!」

 

 そして、猫又明育と影山飛雄が話している姿を見て古森元也と佐久早聖臣も2人の方へと近付いていく。

 

「猫又さん! こんにちは!」「こんにちは」

「おっ、古森君と佐久早君も合宿お疲れ様。今朝まで京都にいたんだけど、こういうのって渡しても大丈夫? 食事制限とかあるかな?」

 

 そう言って、猫又明育は京都で買った土産の入った紙袋を開いて中身を見せる。

 

「手料理とかが駄目なので、既製品は有り難く受け取らせて下さい」「すみません、ありがとう御座います」

「そう? じゃあ頑張ったご褒美兼春高頑張って祈願ってことでどうぞ」

「ありがとうございます!」「ありがとうございます」

 

 猫又明育は古森元也と佐久早聖臣に紙袋を手渡し、2人はそのまま手で持った。

 

「じゃあ2人も頑張って。対戦しない限りは応援してるから」

「はい! あと繋護にも宜しくって伝えておいて下さい! 影山もまたなー」「お疲れ様です」

「お疲れ様でした!」

 

 そして古森元也と佐久早聖臣の2人は歩き出し、しかし千鹿谷栄吉も通りかかる。

 

「影山ー、お疲れ様。……あれ? 猫又監督?」

「おう。こちらは繋護のお父さんだ」

「あ、猫又監督の」

 

 猫又育史、猫又明育、猫又繋護とコンプリートして、千鹿谷栄吉は思わず「ビンゴ!」と叫びそうになる。

 

「実は音駒での合宿で見たことあるんだよなー。

 音駒高校男子バレー部の顧問をしてる猫又育史の息子です。ちなみに烏野高校の13番の親でもあります。初めまして」

「あ。森然高校1年の千鹿谷栄吉です!」

「森然も春高進出決定したんだよね。佐久早君と古森君にも言ったけど、対戦しない限りは応援してるから」

「森然は山が違うから決勝戦でしか当たらないですね」

「あ、そうなんだ。じゃあ決勝で会おう」

 

 その瞬間、千鹿谷栄吉の顔が青くなる。

 

「1回戦勝てば狢坂と当たるんですよね……」

「そんなこと言ったらウチだってそうだ。稲荷崎。宮さんがいるところだぞ」

「それもそうだし、負けるために春高に出てくる学校なんて一つも無いでしょ。

 自分達のバレーをやらないと駄目なんじゃ無いかなーって思うよ。偉そうにしてごめんね」

「いえ……! 仰るとおりです!! やる前から落ち込んでちゃ駄目ですよね!」

「そうそう、その意気。

 ところで森然って何線だっけ? そろそろ移動しないとね」

「あ、京浜東北です。それでまずは大宮まで出てーって感じです」

「じゃあ赤羽駅まで一緒に行こうか。影山君も大丈夫?」

「はい」

「じゃあ、しゅっぱーつ」

 

 そして、3人は赤羽駅へと向かっていく。

 

 

 千鹿谷栄吉と別れ、猫又明育は東京駅の新幹線ホームで仙台行きの新幹線に乗り込もうとする影山飛雄を見送る。

 

「駅弁持った?」

「持ちました」

「武田先生と影山君のご家族には『何分発の新幹線に乗った、何分に仙台に到着する予定です』って連絡したからね。2時間ちょっと新幹線の旅を楽しんで」

「はい!」

「じゃあ、また1ヶ月後。春高の応援行くからね。

 インフルエンザとか流行ってるから体調管理とか諸々気を付けて。頑張れよ、影山君」

「はい、色々ありがとう御座いました!」

 

 ここで、構内アナウンスが聞えてきて影山飛雄は新幹線へと乗り込んだ。座席に座ったところでお互いに会釈をする。

 そして、影山飛雄が乗った新幹線は仙台に向けて発車した。

 

◇

 

 月曜日が来た。また1週間の始まりだ。

 さあ、合宿組はどんな報告をしてくれるんでしょうか。……ちょくちょく連絡貰ってたから知ってるんだけどさ。俺だけ遊んでてごめんね。

 いつも通りの時間に起きちゃったから部室前で軽く縄跳びでもしよう。

 

「短縮授業始まったら朝練やらないってメール入ってた!」

「はあっ!? 聞いてねえ!!」

「いやいや。言ってたから」

「「っ!!」」

 

 だよな。この2人なら朝来てるだろうなーって思って来てみたら部室棟でギャアギャアしてた。たっく、しょうがねえなー。

というか、短縮授業が始まったら朝練辞めるぞーって知らされたじゃん。午後だけに集中するってよー。

 

「武田先生と烏養コーチに言って、体育館の鍵借りてきたからよー。軽くな」

「っ! ありがと!」「助かる!」

 

 動き足りなかったから朝だけでもボール触っときたい。ってことで3人でやるぞー。

 

「あと京都のお土産」

「っ!!」「俺、繋護のお父さんから貰ったぞ。佐久早さんと古森さん、あと千鹿谷も」

「なにっ!?」「じゃあいらない?」

「いる」

 

 最初っからそう言っとけやー、おおん?

 

 

 「日向と影山明日絶対来ますよ。だからネットそのままで大丈夫っしょ」って龍先輩が言って、朝練では目茶苦茶久しぶりにネットを立てる。

 あと、アップ中に飛雄が星海先輩のことを翔陽に教えた。

 

「そうだ、〝小さな巨人〟がいたぞ。星海さん」

「……宇内さん以外に?」

「おう」

 

 鴎台高校2年の星海光来先輩。

キヨ君とモト君も「最高到達点340cmくらいでやべー」とかって言ってた。あと何回か練習試合もしてるとか。

 身長で足きり食らってもおかしくないのに小柄でもユース合宿に選ばれたんだろ? すげー。

 

「やっぱり全部上手えよ。サーブ、レシーブ、トス、スパイク、ブロック。何でも出来る人だった。烏養コーチも言ってるけど、やっぱり満遍なく上手い人が6人揃ってるチームは強え。その点ウチは歪だ」

「……俺も何でも出来ないと駄目だって分かった。攻撃だけじゃ駄目だ。今のままだと俺はこの先選ばれない」

 

 合宿の効果でてるじゃーん。俺はレシーブが好きだからリベロ狙ってるけど、やっぱりバレー選手としては全部のポジションを出来る人が重宝される。世界的には蛍でも小柄って言われるから、160cm代の翔陽がバレーをやっていくなら、背が高い人以上に何でも出来ないと厳しいと思う。

 

「翔陽も分かってると思うけど、繋心兄ちゃんは順序立てて強化プラン考えてるからな?

 バレーは誰かの苦手なことを他の5人で補えるスポーツだから、翔陽の苦手なことは他の5人がカバーしてる。そんで、今はミドルだ。でもこれから翔陽がミドルとして大成するかって言われたら微妙。やっぱりサイドアタッカーだと思う。

 ユーティリティプレーヤーを目指すのはもうちょっと身体ができてからにしないと故障するぞ? レフトにしろライトにしろ、フルで出られるようにスタミナ付けていかないと。あとレシーブ」

「分かってる。もっと上手くなりてえ!」

「俺の方が上手くなってやる!!」

「なんだとっ!!」

 

 まーたギャアギャアやってるよ。この2人ホント好きだなー。その瞬間体育館の扉が開いた。

 

「お、やっぱりやってんな!」

「「っ! 田中さん! おはようございます!」」「おはよう御座います!」

 

 そこに現れたのはシューズを持ったウェア姿の龍先輩。今日朝練ないっていうのは知ってるはずだけど。

 

「目覚ましつけっぱで起きちまったんだ。どうせ日向と影山朝練有ると思い込んでるだろうなーって思って来たら案の定だ。軽くパス練でもやろうぜ」

「「「オス!」」」

 

 そう言って、龍先輩もシューズを履いて動的ストレッチから始めていく。

 鴎台高校。音駒にも勝てば準々決勝で当たる可能性がある高校だ。情報収集はやっといた方が良いだろうな。しかも魔の3日って呼ばれてるダブルヘッダー。きつくなるぞ。

 まずは椿原学園に集中だけどな!

 

 

 放課後、毎度おなじみ視聴覚室に集まって、3人による合宿の報告会だ。「月島は最後な!」って翔陽と飛雄に言われたから、蛍は3番目。ジャンケンして負けたのは翔陽。

 つまり、翔陽、飛雄、蛍の順で簡単に報告会を行う。のは良いんだけど。

 

「で! ででででっ! では! これより!! 日向翔陽による疑似ユース合宿の報告会をおこないましゅ!!」

「大丈夫かー」「目茶苦茶かんでるぞー」

「だ、だだ、大丈夫でしゅ!」

 

 カミカミじゃん。スマホのバイブレーションと同じくらい震えてる。

 

「人前で話すってのも経験しとかないとな」

「そうですね。これから先どうしても面接とかは増えてくるでしょうし」

 

 烏養コーチと武田先生は折り込み済みらしい。集団面接。圧迫面接。そういうのがこれから増えてくるんだろ? やだなー。

 深呼吸を繰り返したら多少マシになったらしく、翔陽が話し始める。

 

「全体の人数は大体15人って所でした。

 1日目は全体で挨拶をしてからアップ。その後はお互いの名前を覚えるように知らない人同士でペアを組んでパス。サーブとかスパイクとかって基本的なことをしました。

 2日目以降は白鳥沢の3年生が来て、1年対3年をやったり、2対2をやったりと試合形式の時間を多めにとった5日間でした。

 今はミドルでノヤっさんか繋護と交替して後衛のプレーは出来てないですけど、サーブ、レシーブ、トス、スパイク、ブロックと全部出来るようになってサイドアタッカーをやりたいです

 その為にももっともっと強くならないといけなくて、視野を開く持てるように頑張ります!」

「「「っ!? 本当に日向か!?」」」

「どういう意味ですか!?」

 

 多分「ドギャーン」とか「ボゴーン」とかって擬音語が多くなる説明だと思ったんだよ。

 

「良いじゃねえか。

 講評って形で日向には伝えてるけど、ミドルには身長があるメンバーを入れてサーブ&ブロックをできるようにって考えてる。やっぱり成田と月島に任せたいし。

 今って日向のブロックが完成する前にクイックを打たれて決まるってケースが多いからな。やっぱり明確な弱点だ。

 まあでもそれが自分で分かるようになったんなら上出来だ。こっちでも2対2とか3対3っていつもよりも少ないメンバーでコートを守る練習をしてたから、せっかくだしこれから取り入れていこう」

「「「はい!」」」

 

 次は飛雄だから、翔陽は自分の席に向かって歩きだして、逆に飛雄がノートを持って前へと向かっていった。

 

「ユースの方は大体20人くらいで、知ってるやつだと森然高校の千鹿谷がいました。

 こっちも最初は自己紹介をして、アップを取ったあとはポジションとかメンバーを変えてずっと練習試合でした。12セットとかです」

 

 そうなんだよな。上手い人が集まってるから実践形式の方が成長できるんだよ。予想はしてた。

 

「烏野でもコーチとか若林先生にして貰ってるように食事の重要性とか睡眠とか、『どんなストレッチやトレーニングが良い』とかって言うのも教えて貰いました。どんなものなのかって言うのは烏養コーチに報告してあります。

 そんで、上手い奴しかいなかったのでやっぱりすっげえ刺激されました。特に井闥山の佐久早さんと古森さん、稲荷崎の宮さん、鴎台の星海さん。この4人がトップクラスだったと思います。

 あと、日向の話では無いんですけど、オールラウンダーしかいなかったです」

 

 皆で拍手。アメリカでコーチの勉強をした人もいたのかな? となるとやっぱりそういうのはこっちでも真似していきたいよね。

 

「4月から、俺は『サーブ、レシーブ、トス、スパイク、ブロックを満遍なく上手にできる6人が揃ってるチームは強い』って言ったと思う。実際そうなんだよ。

 新体制になって1年で全国制覇をするって目標を立てて、俺はある程度ポジションの固定で練習を取り組んできた。

 例えば月島がセッターで、対角は西谷。レフト2人は成田と日向。センター2人は澤村と菅原。リベロは東峰。

 こういうチームで戦えると思うか? 菅原、どう思う?」

 

 聞かれたスガさんがちょっと考え込んで、固い声で答えていく。まー、ウチはちょっと厳しいよね。

 

「……厳しいと思います」

「何でだ?」

「役割がある程度決まっているからです。パズルみたいに俺達1人1人の長所と短所を組み合わせているのが今の烏野なので、どうしても凹凸が出来てしまうと言うか。オールラウンダーっていうのはピースも大きくて凹凸が少ないから他のピースとも上手く填まるって事ですよね」

「そういうことだ。

 バレーはコートの中の6人が協力するスポーツだから、誰かの短所を他のメンバーの長所で打ち消せれば良い。それがチーム総合力って訳だな。

 でもやっぱり弱点が無ければない方が良いんだよ。その為にはオールラウンダーが6人いると結果的に総合力も高いって訳。

 そんで、ウチがそういうチームになれるか? って聞かれたら正直無理だ。時間が足りねえ。

 だから1人1人の絶対的な強みを身につけろって言ってきた。1人1人の絶対的な強みを当てはめたバレー。それが俺達の戦い方だ。

 4月と比べてみろ。俺達めっちゃ強くなってるだろ?」

「「「っ!! はい!!」」」

 

 「オールラウンダーになんねえと……!」って雰囲気が消滅した。あのままだと悪いムードに成ってた可能性が非常に高い。

 「あと1ヶ月で全部できるようにならないと!」よりも「できないことは誰かに助けて貰う。できることは自分がやる!」の方が気持ちが楽だよね。

 

「まあ、それでも全部満遍なく出来るようになって欲しいから頑張ってくれよ、特に2年と1年は」

「「「はい!」」」

「じゃあ最後に月島」

「……この雰囲気だとすごい話しづらいんですけど。コーチの結論は出てますよね?」

「おう、だな」

 

 残念だったな。最後を選んだ蛍が悪い。

 飛雄が自分の席に向かって、逆に蛍が席を立って前に歩いて行く。

 

「日向と被ってしまうので手短にいきます。

 今回、『短い助走でもしっかりと跳ぶ』だったり『ブロックの腕を残す』や『乱戦になってる時だからこそより丁寧を心がける』といったことを穴原先生や鷲匠先生に指摘されました。

 2対2をやって、スタミナとレシーブ力ってところがまだまだだと感じたので頑張って身につけていきます」

 

 皆で拍手。蛍は簡潔な説明をしていて分かりやすいね。

 

「まあな、やっぱりまだまだ線が細いからいっぱい飯食って体重を付けていこう。再三言ってるけど85kgはないと駄目だからな。最低85kgだぞ」

「はい」

「身体作りだったり基礎が重要って事は分かったと思う。こればっかりは地道にやってくしかねえ。勉強と同じでバレーも一朝一夕で出来るもんじゃねえからな。千里の道も一歩から、だ」

「「「はい!」」」

 

 ……よくことわざ知ってたな、烏養コーチ。

 

◇

 

 日向翔陽、影山飛雄、月島蛍の合宿の報告会を終え、先に条善寺高校に赴いた武田一鉄は続けて白鳥沢学園を訪れていた。月島蛍の参加に加えて、無理を言って日向翔陽も見学という形で受け入れて貰ったお礼を伝えるためだ。

 前回同様、応接間で武田一鉄は鷲匠鍛治と向かい合う。

 

「鷲匠先生、先日は月島君と日向君の指導をして頂き誠にありがとう御座いました。2人共良い刺激を受けたらしく、合宿前よりもどこか雰囲気が変わったように思います。本当にありがとう御座いました」

「穴原に任せていたから、俺が2人に何かしたわけじゃねえ。まあでもやっぱり普段とは違うメンバーでバレーをするって言うのは色々と学べる機会だ。今回の合宿を生かすも殺すもあいつら次第だ、これからに期待する」

「はい! ありがとう御座いました!」

 

 椅子から立上がって武田一鉄は深く一礼する。礼が終わったら、武田一鉄はそのまま話し始めた。

 

「話は変わってしまって大変恐縮なのですが、是非とも年内に牛島君をはじめとする白鳥沢学園の皆様と練習試合を行って頂けないでしょうか」

「練習試合か」

「はい。

 『男子バレー部の顧問を引き受けるように』と言われて始めたのですが、4月から彼らの頑張る姿を見ていくうちに、もっともっと長く今のメンバーがバレーボールを楽しむ所を見ていたいと思うようになりました。

 彼らに1点でも、1秒でも長くコートで戦って欲しく、その為にも白鳥沢学園の皆様のお力を貸して頂きたいと存じております。

 無理なお願いだとは分かっているのですが、バレーボール未経験の私ではこれくらいでしかあの子達にできることがありません。何卒よろしくお願いいたします!」

 

 そう言って、武田一鉄は再び深く頭を下げる。目の前の彼の様子を見て鷲匠鍛治には合宿の見学の許可を貰うために礼をした日向翔陽と姿が重なって見えた。

 鷲匠鍛治は脳内で12月中のスケジュールを確認し、結論を出す。

 

「頭を上げろ。

 22、23、24あたりはどうだ? それ以後でも冬休みに入ってるから調整は可能だ」

「っ!! はい、ありがとうございます! 是非とも伺わせて頂きます!!」

「半日ならセット数で言うと6セット位か。今度は負けねえぞ」

「はい! いいえ! 是非とも胸を借りさせて頂きます!! 誠にありがとう御座います!!」

 

 こうして、白鳥沢学園との練習試合が決まった。

 

◇

 

 午前中の授業が終わって、皆で「寒い寒い」言いながらコートの準備をした。部活始まりのミーティングで凄く機嫌が良い武田先生が話し始める。

 

「早速ですが練習試合のお知らせです。15日に伊達工業高校との練習試合が入りました!」

「「「っ!!」」」

 

 おお、伊達工業高校。……どっかで戦ったことあったっけ? ま、いっか。

 

「これだけではありません。

 23日に白鳥沢学園との練習試合が決まりました!! 相手は3年生チームです!」

「「「っ!?」」」

 

 昨日合宿のお礼しに行っただけじゃ無かったのか。

 ……良し、もっかい牛島選手と戦えるのは嬉しいぞ。今度こそストレート勝ちしてやる。

 

「マ、マジすか!? 武ちゃん!」

「うん、昨日お願いしてきたよ! この機会を貪り尽くそう!」

「「「はい!」」」

「武田センセが必死に頭下げてくれたんだ。お礼言え!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 全部拾ってやる……!!

 

 

 

 朝起きてー、短縮授業受けてー、部活やってー。って日を送ったら、あっという間に週末になった。今日は伊達工業高校との練習試合の日だ。

 市のバスに乗って20分くらい。伊達工業高校に到着して挨拶する。移動に慣れる練習も兼ねてる。特にバス移動。

 

「気を付けー! 今日半日宜しくお願いします!!」

「「「お願いします!!」」」

 

 すると、あっちも挨拶し返してくる。

 

「気を付けー! 今日半日宜しくお願いします!!」

「「「お願いします!!」」」

 

 1、2年だけだってのに人数多いなー。25人はいそう。工業高校だからそんなもんなのか?

 挨拶が終わったら伊達工業高校のマネさんがこっちに近付いてきて、色々と説明してくれるっぽい。

 

「伊達工業高校2年の滑津です。更衣室とかお手洗いの案内をさせて頂きますね」

「「「お願いします!」」」

 

 更衣室有るんだ。「ステージの幕の裏で着替えて下さいね」とか言われるんじゃないかって思ってたけど。

 

「日向! ツッキー!」

「黄金ー!」「ん」「っ!!」

「あ、烏野の13番もいる!!」

 

 ……俺? あなただーれ? あと忠顔顔。その顔辞めろって。

 

 

 準備が終わって一旦全体で集まる。

 

「気を付けー! 礼!」

「「「お願いします!」」」

 

 あっちのキャプテンが号令を掛けたら、あっちの監督が話し始めた。

 

「伊達工業高校男子バレー部監督の追分です。烏野高校の皆さん、今日はわざわざお越し頂き誠にありがとうございます。あと、春高進出おめでとう御座います。宮城を代表して応援しています、頑張って下さい。

 それはさておき、インハイ予選で負けてから【打倒烏野!】を目標にしながら取り組んできました。代表決定戦では対戦が叶わずでしたが、練習試合とはいえこの機会を利用させて頂きます。全セット取るつもりでいるのでどうか宜しくお願いします。

 また、昨晩雪が降ってかなり肌寒くなっているので、体調を崩さないようにして下さい。それでは半日宜しくお願いします!」

「「「お願いします!」」」

「試合開始は14時くらいとしています。それまで各学校でアップをしましょう。あっち側の1面を使って下さい」

「「「はい!」」」

 

 あと40分くらいか。よーし。

 

 

 アップが終わってこれから練習試合に入る。時間的には5、6セットかな。

 

「おーし。じゃあこれから練習試合だ。出てないメンバーはベンチコート着てしっかりと防寒対策しとけよ。でもいつでも出られるようにな」

「「「はい!」」」

 

 最初の3セットはノヤ先輩が出る。俺はビデオカメラ係だ。

 

「白鳥沢とか青城もブロックは整ってる。でも伊達工のブロックはレベルが段違いだ。全国でも通用するだろう。

 ってことで、椿原学園、稲荷崎、暫定音駒、暫定鴎台と戦っていく上でめっちゃすげえブロックを相手してもびびらないことが今日の目的だ。

 菅原、バンチ・リードブロックの時のトスワークはどんな風にする?」

「はい、速いトスでサイドから攻撃していって、スプレッドにしていく、です」

「そうだ。バンチ・リードの弱点はサイドからの速い攻撃に弱いこと。ブロックの枚数を3枚から2枚、2枚から1枚って具合にすれば恐くねえぞ。影山もいいな?  アンテナまで伸びるトスだ」

「はい!」

「でも、普段なかなか凄いブロック相手に練習できてねえから、ブロックを打ち破ったり、ブロックアウト、フェイントなんかの練習とブロックフォローの練習もやっていこう。

 勝敗にはこだわって欲しい。でも勝っても負けても反省もしっかりとやっていく。『ああすれば良かったんじゃ無いか。じゃあ次はこうしよう』って。

 考えることは辞めるなよ。どうすれば1点を穫れるのかって常に考えていけ。いいな?」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んで気合いを入れたら、大地さん、旭さん、龍先輩、飛雄、翔陽と蛍、ノヤ先輩がコートへと向かっていく。ビデオビデオ。やっちゃーん、三脚忘れてるー。

 

◆

 

 一方、伊達工業高校男子バレー部一同もミーティングを行っていた。監督の追分拓朗が中心となってミーティングを進めていく。

 

「いつも通りウチのバレーをやっていこう。

 シンクロ攻撃を使ってくるだろうから相手の攻撃に最低2枚はブロックにつく。簡単に諦めるなよ。いいな?」

「「「はい!」」」

「相手はリベロからのトスで最大5人のアタッカーが助走に入ってくるが、ボールは1つだけ。ボールが何処に上がるかを見て対処していけば良い。バタバタするな!」

「「「はい!」」」

 

 追分拓朗の視線が作並浩輔を貫く。

 

「そんで、作並」

「はい!」

「烏野のリベロ2人をよぉーく観察しろ。

 4番は反応、13番は読むのが凄いから、あの2人の様におまえのレシーブ力が上がれば、ウチのディフェンスのクオリティは更に上がる。是非ともウチのフロアディフェンスの要になってくれ。色々見て盗んでいけよ」

「はい!」

「全員そうだぞ。来年全国に行くにはまだまだ上達しないといけないからな。苦手なレシーブってのを見て学んでいけ!」

「「「はい!」」」

「良し、烏野の多彩なコンビにも対応して見せろ。行って来い!」

「「「はい!」」」

 

 スターティングメンバーの背番号1の青根高伸、2の二口堅治、3の小原豊、7の黄金川貫至、8の女川太郎、11の吹上仁悟、11のリベロである作並浩輔がコートへと向かっていく。

 

 ◆

 

 1セット目、【25-23】で勝ち。

 2セット目、【26-28】で負け。

 3セット目、【26-24】で勝ち。ここでノヤ先輩と交替。

 4セット目、【25-22】で勝ち。

 5セット目、【27-25】で勝ち。

 6セット目、【26-24】で勝ち。時間になったから今日はここで終わりだ。

 

「うん、良かったぞ。ブロックやべーって思っても冷静に対処できてた。焦ったりすると全てが単調になっていくから冷静にな。

 プレッシャー感じるのは仕方ねえけど、セッター3人は特に冷静にな」

「「「はい!」」」

「じゃあ、まずはクールダウンをして帰る準備をしよう。ちんたらやってると風邪引くから早めにな」

「「「はい!」」」

 

 まずは着替えようかな。ジャージでいけるかな、どうかな。

 

「……くしゅっ!」

「「「っ!」」」

「日向! 早くジャージ着ろ!!」

「は、はい!!」

 

 風邪引いたらコロコロするぞー。

 

 

 学校で簡単にミーティングをして家に帰ってきた。お風呂にも入ってゴーロゴロ。

 来週いっぱいで冬休みが始まる。4月からここまであっという間だったな。はー、1年って短いようで早いよ。

 

『クリスマスプレゼント繋護に送るからね』

「やべっ、何にも用意してない」

『大丈夫大丈夫。気持ちだけ受け取っておくから』

「でもさー」

 

 毎週恒例の彩音ちゃんとの電話で、来週クリスマスじゃんって改めて気づかされた。仙台の方行く時間あるか? やべー、どうしよう。

 

『あー、ほら、大丈夫だよ? 人混みの中行ってインフル罹ったら私の方がショックで倒れる。部活に集中して。ね?』

「うん……」

 

 明日仙台の方行けないかな。行けるよな。

 去年までは込田家の皆と一緒にクリスマスパーティやってたからなんとかして何かしたい。お小遣いはある。明日行って来よう。

 

『あ。応援と言えば冴子さんの応援団も順調みたいだよ。吹奏楽部の代わりに和太鼓やるって』

「すごいよなー。楽しみ。……ただ実際には集中してるとあんまり聞えない」

『その分私達が聞いてるから大丈夫』

 

 試合同時進行してるからゴチャゴチャしてるんだよな。録音でもして貰おうかな。和太鼓とか篠笛、尺八、三味線楽しみだ。

 あ、そうだ。

 

「そういえば、夏ちゃんにクリスマスプレゼント渡すんだっけ?」

『……ちょっと? せっかく話逸らしたのに』

「良いじゃん良いじゃん」

『……そうだよ。

夏ちゃん、仁花ちゃん、潔子ちゃん、冴子さん、美羽さん。仲良くなった烏野の部員の姉妹に向けて真緒達と一緒にプレゼント送る。もう包装したから送るよ』

「……いつのまに仲良くなったのさ」

『良いでしょー。女子会は女子会で月に1回のペースで開いてるんだー。それに美羽さんの美容院にも行ってみてリピートしようかなって。どうだった?』

「めっちゃ良かった!!」

『もうちょっと伸びたら色々アレンジしてみようかなって』

「また写真送って」

『オッケー』

 

 彩音ちゃんはセミロング位の髪の長さだから女性としてはまあ普通だ。ハーフアップとかうなじが見えると「あっ、あっ、あっ」ってなる。制服でしか会わない人と学校外で私服で会ったりとかする感じ。物心付いたときから一緒だけど、なおさらいつもと変わると気づきやすいというか。何というかいつまでも子供でいられないんだなって実感する。

 

『彩音ー、お風呂ー』

『はーい! じゃあ私お風呂入ってくるね。繋護もゆっくり休んで』

「うん。お休み」

『お休み~』

 

 リップ音が聞えてきて、彩音ちゃんからの電話は切れた。

 お風呂。……消えろ俺の煩悩!!

 

 

 

 冬休み前最後の1週間が終わって、遂に終業式の日になった。

 俺達男子バレー部は春高に出ると言うこともあって激励の為にステージに並ばされてる。ユニフォームの番号順で、右から大地さん。そんで俺の左には清水先輩、清水先輩の左にはやっちゃん。龍先輩とノヤ先輩だけじゃなくて清水先輩を知ってる男子からの圧が凄い。見るな見るな。しょうがねえだろ。

 それはともかく、校長先生が俺達の案内を始めた。早く終われーって蛍も思ってそう。実際寒いし。早く終われ。

 

「えーっ、ほとんどの生徒が知っている通り、来年1月5日から男子バレー部が全国大会に出場します。有志の先生方と生徒は応援に行きますが、行けない方もいますので改めてここで応援したいと思います。男子バレー部の皆さん、頑張って下さい!」

 

 若林先生とか5組の皆、女子バレー部の人達、あとはちらほら関わりのある先生を中心に先生と全校生徒が拍手を思いっきりしてくれて「あぁー、いよいよか」って気持ちになってきた。絶対勝てる試合、絶対負ける試合なんか一つもないから精一杯やっていこう。体調管理はしっかりと。

 

「それでは、キャプテンの澤村君から一言お願いしましょう」

「えっ?」

 

 ……あれ? そんな段取りだったっけ? いや、忠と清水先輩が戸惑ってる表情をしてるからやっぱりなかったっぽい。まあ大地さんなら大丈夫でしょ。

 急ごしらえで何を言おうか考えながら大地さんが校長先生からマイクを受け取った。

 

「えっと、そうですね……。男子バレー部キャプテンの澤村大地です。

 昔は強豪校と知られていたのですが、我々男子バレー部はここ数年結果を残せていませんでした。しかし、今こうして再び全国大会へと進出できるくらい強くなりました。それでもここで満足はしていません。なぜなら、我々は全国制覇を目標にしているからです。

 その為にも皆さんの応援が必要不可欠です。どうか応援宜しくお願いします!

優勝旗とトロフィーを持って帰ります! 烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッ!!」」」

 

 流石大地さんって思いながら聞いてたら巻き込まれてた。いやいや、ついね、癖なんだよ。大地さんの「ファイ!」は。

 教師陣にも受けたらしく、また体育館が拍手喝采で包まれた。

 

 

 ホームルームも終わって放課後になった。やっちゃんと部活に行こうとしたら若林先生に引留められる。俺達を見て5組の皆がぞろぞろと集まってきた。

 

「冬休み中も会うけど猫又君とやっちゃん頑張ってね、応援しに行くからね!」

「「はい!」」

「仁花ー、ウチらも行くから~」「『仁花ー、ファイトー!』って」

「私より選手達をね?」

「「分かってる分かってる」」

「分かってなーい!」

 

 堀内さんと稲松さんがやっちゃんに絡み出して、俺もいつメンに絡まれた。聡とか錦とか誠也とか。

 

「ウェーイ、せめて1回戦は突破しろよー」

「絶対勝てる試合も絶対負ける試合も無いでしょーが。風邪とか怪我をしない、それでコンディション整えていかないとなー。やることはいっぱい有る」

「ねこは大丈夫そう。でも浮かれ具合見てると1組の日向はやばそう」

「んー、まあ翔陽だけじゃないよ、皆そう。俺と飛雄も関東と東北大会止まりで全員全国は経験無いからな。〝いつも通り〟を出せるようにしていけるかが勝敗の鍵だ」

「初詣とかも厳しいよな?」

「2日から練習有るからさ、今回は辞めとく。誘ってくれてありがとう」

「まあ徹夜だしな。オッケー、頑張って来いよ。応援行くから」

「そんで東京観光もしてくる」

「バレー部はついでかよ」

「「「ふひひっ」」」

 

 いやまあ、ずっと試合やってるわけじゃ無いから良いんだけど。あと東京ってここら辺の一からするとやっぱり特別らしい。新幹線で2時間強なのにねー。

 教室の壁時計を見るとそろそろ行かないとまずい。

 

「やっちゃーん、そろそろー」

「あ、うん! じゃあ来年ね!」

「うん、初詣で~」「甘酒飲もう甘酒」

「猫又君もやっちゃんもまた後で!」

「「はい、お願いします!」」

「若林先生~、俺達も差し入れをー!」

「結果残してね。そしたらOKできるから」

「「「うっす」」」

 

 そうだぞ、県ベスト8以上な。……さーて、優勝してくるぞー。春高まであと2週間。上手くならないと。




【登場人物まとめ】
羽染家(猫又育史の娘 長女)
 羽染葵育
 羽染高明
 羽染良樹 高宮未紗と結婚
 羽染良規

下園家(猫又育史の娘 次女)
 下園育音
 下園優弥
 下園悠花
 下園凛花

2012年12月8日は仏滅の日で、一般的に結婚式を挙げてはいけない日と考えられています。
本作ではOKとさせて下さい。
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