烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

35 / 35
~白鳥沢学園3年生チーム

01 牛島若利
02 添川仁
03 瀬見英太
04 大平獅音
05 天童覚
06 菊池一弘
09 入江謙一
14 山形隼人 リベロ


2012年12月③

 冬休みー! なんてはしゃいでいられない。【春高まであと○日!】って清水先輩とやっちゃんが作ってくれてカウントダウンを始めてる。いやー、春高本番って実感が湧いてくるな。

 そして、今日は白鳥沢との練習試合の日だ。学校バスで到着っと。

 

「おい、ノヤっさん! あれ見ろよあれ!」

「すっげー!! 馬がいるぞ!! 旭さん!!」

「やべー、流石白鳥沢」

「田中! 西谷! 騒ぐな!!」

 

 馬術部か競馬の引退馬を使ったアニマルセラピーか。……馬術部っぽいな。ちなみに、千葉に触れ合い動物園があるから、たまーに行ってた。ポニーも乗ったことあるし、山羊とか羊にスティック野菜をあげたことがある。……八木山動物公園に行ったことある人は多いか。

 

「他校だってこと忘れるなよ。みっともねえとこ見せるなよ」

「「「はい!」」」

「武田先生! 送迎ありがとうございました!」

「「「ありがとうございました!!」」」

「いえいえ。滅多に無いこのチャンス存分に生かしましょう!」

「「「はい!」」」

 

 午後からだから時間的には5、6セットだろう。牛島選手のスパイク拾ってやろー。

 荷物を持ってバスから降りると、バレー部のジャージを着た人が声をかけてきた。

 

「こんにちは!」

「「「っ! こんにちは!」」」

「白鳥沢学園男子バレー部3年のトヤマです! 本日はご足労頂き誠にありがとう御座いました! 体育館までご案内致しますので荷物を持って僕の後に付いてきて下さい。お願いします!」

「ありがとうございます! 行くぞー、荷物持てよ」

「「「はい!」」」

 

 やっぱり白鳥沢となると案内係とか決まってるよな。流石白鳥沢。……ウチ? ウチはここまで学校内の敷地が広くない。それでも清水先輩がたまーにやってくれてる。庵里でもやってたし。

 荷物を持ってトヤマさんの後に着いていく。黒の集団に1人白と紫のジャージがいるとすげー目立つな。

 

 

 体育館に到着して入り口で挨拶をしたら、施設の案内をされる。すげー、めっちゃ綺麗だ。井闥山にもひけを取らない。しかもさー、暖房ついてるよね。暖けえわ。

 

「まずは女性陣から。歩いていくと女子更衣室がありますのでそこを利用して下さい。お手洗いも女子更衣室の隣にあります」

「「はい」」

「男性陣の皆様はあっち側にいくと更衣室とお手洗いがありますので利用して下さい」

「「「はい」」」

「給湯室も使って頂いて構いません。ただ、鷲匠先生や斉藤先生以外の先生方も利用するので順番には気を付けて頂くようお願いします」

「「「はい」」」

「これで簡単な説明を終えます。何かあったら適当に部員を捕まえて下さい。半日宜しくお願いします!」

「「「ありがとう御座いました!!」」」

 

 説明を終えたトヤマさんは一礼して体育館の中へと入っていった。

 

「良し、じゃあ準備しよう。パパッとな」

「「「はい!」」」

 

 試合楽しみだー!!

 

◇

 

 烏野高校排球部一同が準備をしている中、比較的早く準備を終わらせた武田一鉄と烏養繋心は鷲匠鍛治と挨拶していた。

 

「鷲匠先生、本日はお時間頂き誠にありがとう御座います!」

「こちらこそ。

春高本番まで残り2週間、最後の追い上げってとこだろう。2週間とはいえまだまだ伸びる時期だ。時間を有意義に使って欲しい」

「はい!」

「久しぶりだな、繋心」

「はい、お久しぶりです。鷲匠先生」

 

 烏養一繋の孫で有ることやそうでなくても学生時代から関わりがあり、高校当時を思い出しては緊張で強張っている烏養繋心であった。また、コーチングの資格を取得する際にお世話になってもいる。

 

「コーチはどうだ?」

「……難しいですね。自分が『こうしたい、ああしたい』と思っても子供達にちゃんと伝わらない場合もありますし、正直すぐにキャパオーバーになりそうです」

「指導者なら誰もがぶち当たる問題だな。こればっかりは色んな子供と接していくしかねえ。

 ま、高校の時からお前は指導者向きだと思っていたからなんだかんだで上手くいくだろう。でも体罰は絶対辞めろよ。本当にシャレになんねえぞ」

「はい、気を付けます」

 

 昨今、指導と言って教師やコーチが部員への暴力行為が問題視されている。鷲匠鍛治や烏養繋心の知り合いにも体罰が教育委員会に通報されて職を失った人間がいた。

 指導も時代に合わせてアップデートすることが求められている。

 

「話はこのくらいにして、アップを取ったら14時手前から練習試合ってことで良いな? そうすりゃ時間までは6セット位できんだろ」

「「はい! お願いします!」」

「今日は負けねえぞ」

「いえ、ウチが勝ちます!」

 

 鷲匠鍛治と武田一鉄、烏養繋心の間で火花が散る勢いだった。

 

◇

 

 準備を終えて全員で体育館の中へ向かっていると、「よう、日向! 月島!」って翔陽と蛍が声をかけられた。背番号3番の人だ。

 そっか、強化合宿で会ったのか。

 

「っ! こんにちは瀬見さん!」「こんにちは」

「烏野と練習試合やるって聞いてから皆気合い入ってるからなー。今日はストレート勝ちさせて貰うぞー」

「俺達も負けません!!」

 

 割り込んで良いのか迷ってた大地さんに、3番さんが話し掛ける。

 

「『春高頑張れよ』とは言いたいけど、やっぱり悔しいから今日はリベンジさせてもらうな。宜しく」

「ウチだって負けないさ。こちらこそ宜しく」

 

 バッチバチじゃーん。青葉城西高校にしろ白鳥沢にしろウチなんか眼中に無いんじゃ無いのかよー。油断してくれると嬉しいんだけどなー。

 

「宣戦布告されたからには勝たないとな」

「「「オス!!」」」

 

 やる気マーックス!!

 体育館に入って背番号順に並ぶ。

 

「気を付けー! 今日半日宜しくお願いします!」

「「「お願いします!」」」

「「「お願いします!」」」

 

 強いところは礼儀がちゃんとしてるから心地良い。暖房入ってて暖けえ。

 体育館にはネットが2面張られてて、白鳥沢の皆さんで1面使って練習してた。……そうそうこういうとこ。1面張って片面ずつ練習すれば間に合うのにわざわざ2面用意して1面でアップさせてくれるのマジ強豪校あるある。

 挨拶を終えたら武田先生と烏養コーチの所に向かう。清水先輩とやっちゃんはビデオとかスコアの準備をしてた。

 

「まずは全体の挨拶するからあっち側に集まろう」

「「「はい!」」」

 

 白鳥沢の皆さんもボールを籠に戻して並ぼうとしてたし。

 

「集合!」

「「「集合です!」」」

 

 白鳥沢の1人が防球ネットを邪魔にならないところまで片して、そこに左側は白鳥沢、右側にウチで並んで、更に2列ずつユニフォームの番号順で並ぶ。つまり俺は蛍の後ろ。

 

「気を付けっ! 礼っ!」

「「「お願いします!」」」

 

 牛島選手の号令で挨拶すると、鷲匠先生が一歩前に出て話し始めた。

 

「白鳥沢学園男子バレー部監督の鷲匠だ。遠いところから来て貰って感謝する。

 お互いに怪我の無いように注意すること。そして実りのある練習試合にすること。以上」

「気を付けっ! 礼っ!」

「「「ありがとうございました!」」」

 

 指示をスパッと出すのも相変わらずだ。全体での挨拶は終わったけど、とりあえず鷲匠先生に挨拶しておきたい。烏養コーチも「ちゃんと挨拶してこいよ」って目で見てきたし。

 

「蛍」

「分かってる。日向」

「ん?」

「鷲匠先生に挨拶してこよう」

「あ、うん!」

 

 忘れてたな。

 

「すみません、鷲匠先生に軽く挨拶してきます」

「してこいしてこい。失礼の無いようにな」

「「「はい」」」

 

 ということで、蛍と翔陽、俺の3人で鷲匠先生のところへ。

 

「「「こんにちは!」」」

「鷲匠先生、少しお時間頂いても宜しいでしょうか?」

「おう」

「「「お願いします!」」」

 

 蛍が代表して号令を掛けて、鷲匠先生が話し始めた。

 

「合宿から2週間。変わったかどうかってのは見た方が早え。くれぐれも俺から指摘されるような真似はやめろよ」

「「はい!」」

「今日はリベンジさせて貰うぞ。繋護もな、覚悟しとけ」

「「「はい!」」」

 

 鷲匠先生にしては話長かったな。一礼して烏野が借りるコートの方に向かっていく。さーて、アップだー。

 

 

 アップが終わって、これから練習試合だ。なんだけど、コート2面から体育館中央の1面に張り替えてる。5分もかかんなかったぞ。

 

「……手際良いな」

「流石だ」

「やっぱ強豪校ってこういうもんなんだよ。所作ひとつからして教育されてる。こういうのが応援されるチームって訳だな。4月から言ってきたことになる。挨拶とか礼儀ってのは強豪校であるほど身についてるからよ。俺達も見習っていこう。ダラーッとすんなよ」

「「「はい!」」」

 

 俺たちもまだまだ足りないからね。少しずつやっていこう。

 

「んじゃ確認な。

 知っての通り、牛島は全国でもトップクラスのアタッカーだ。椿原の寺泊や稲荷崎の尾白対策には持って来いの選手となる。慣れていけよ」

「「「はい!」」」

「いつも言ってるが相手のアタッカーには必ず2枚以上ブロックを揃えること。できればコースを絞らせてリベロか澤村に向けて打たせられると良い。トータルディフェンスな。全員バレーだ」

「「「はい!」」」

「今回は手の内も知られてるから代表決定戦みたいに上手くいかねえだろう。だからこそ勝って自信を付けるぞ!」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んで大地さんが号令を掛ける。

 

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!!」」」

 

 さあ、始めようか。

 左利きの牛島選手がいるから今日は先に俺が試合に出る。おっし、ガンバロー。

 

◆

 

 一方、白鳥沢学園男子バレー部も烏野高校同様にミーティングを行っていた。斉藤明は1、2年生の練習を見ているため、鷲匠鍛治が指揮を執る。

 

「烏野は春高に向けての調整だろうが、そんなのウチには関係ねえ。全セット獲ってこい」

「「「はい!!」」」

 

 試合に出るメンバーがコートへと歩いていく。

 

◆

 

 スタメンがコートに入って早速試合開始だ。相手のメンバーは2番と6番が新顔。

 前回でもやったけど、牛島選手に背の高い旭さん、蛍と飛雄をぶつけて少しでもブロックを狙う。

 そしてサーブは相手から。さっきのサーブ練習だと2番と6番はジャンフロだった。

 

白鳥沢

1 牛島選手 6 2

4 5(リベロ) 3

 

烏野

11 蛍 3 旭さん 1 大地さん

9 飛雄 5 龍先輩 10 翔陽(俺)

 

 ボールを持った3番がエンドラインに立った。

 サーブレシーブをするために、前衛の蛍とセットアップに走る飛雄の分レフト側に寄る。大地さんがバックライト、俺はバックセンター、龍先輩がバックレフト。ポジショナルフォールトを取られないように大地さんの前に出ちゃいけないちょっと面倒くさいローテーションだ。

 

「「「瀬見1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、3番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックレフト側。

 

「「「田中!」」」

「ォラ!」

 

 まあ龍先輩狙ってくるよな。でも龍先輩が返球して、ボールはネット際の飛雄へと返っていく。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「ライト!」

 

 レフトに回った旭さん、バックレフトの龍先輩、旭さんとは逆にセンターに切り込んでいく蛍、ライトの大地さんが同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。俺も前に詰めてブロックフォローに入る。

 

「お願いします!」

「「「3番!」」」

 

 飛雄はレフトの旭さんに早い平行トスを出して、旭さんはそのまま打ち切った。多分牛島選手の指先にかすったと思う。とりあえず先制点はこっち。【0-1】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。出だしは順調。

 ローテーションがひとつ回って大地さんがサーブだ。【1セット牛島選手のスパイクを3本以上ブロックする】って目標を達成できるようにしないとね。

 

「「「大地さん1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴って、大地さんがジャンフロを打った。狙いは牛島選手に二段トスをさせられるようにとレフト側。でも、ボールが相手コートに入る前に牛島選手はライト側に向かう。

 

「「「獅音!」」」

「オッケイ!」

 

 バックレフトの4番が軽々拾ってボールはネット際の3番に帰っていく。

 

「A!」「ライト!」

「若利!」

「「「1番!」」」

 

 センターの6番、ライトに移動した牛島選手がトスを呼んで、3番はライトにオープントスを上げた。早速来たな。

 俺はレフト側のサイドラインに足がかかるまで。レフトの旭さんにセンターの蛍とライトの飛雄が合流して3枚ブロックの態勢を整えた。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で牛島選手のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――今眼が合った。

 スイング――ストレート。

 ⇒ストレート!

 

「ふんっ!!」

 

 牛島選手から放たれたボールがまっすぐ俺の方に伸びてくる。……いや、回転の分左に曲がるか。でもなー!

 アンダーの構えをボールの進路上に伸ばして面を作る。すんげえ衝撃が両腕に伝わってきた。

 

「おし! ……あっ!?」

 

 完全に勢いを殺せずに、俺の上げたボールはそのまま天井に当たった。アウトであっちの点になる。あばばばば。【1-1】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 あっちのコートでは牛島選手を中心にウェイウェイし始めて、こっちはこっちでコート中央に集まる。

 

「すいません!」

「上がってる上がってる。良いぞ!」「天井考えていこう」「上がるだけですげーぞ」

「おす!」

 

 くそー、もっと膝使わないとなー。ぐぬぬぬぬ。

 

「切り替えろ切り替えろ! やってることはあってるぞ!」

「「「はい!」」」

 

 ここは仙台市体育館じゃ無いぞ。気を付けよう。ってことで、白鳥沢のサーブだからサーブレシーブに備えてバックセンターに移動する。ただがむしゃらに上げれば良いってわけじゃない。考えろ。

 

「「「添川1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

 

 相手のサーバーは2番。さっきはジャンフロを打ってきたけど。ジャンプサーブを打ってくる可能性だってある。

 主審の笛が鳴って、2番がジャンフロを打ってきた。あ、この2番上手い。

 ボールは龍先輩と俺の間に伸びてきて、攻撃には参加できないから俺が。

 

「頼む!」「はい!」

 

 ……こんのっ! 不規則な無回転ボールに合わせてオーバーで処理。よしよし。飛雄がツー打てるような1本目だ。

 

「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 バックレフトの龍先輩、センターの蛍、バックライトの大地さん、ライトの旭さんが同時に助走を始めてシンクロ攻撃に入った。相手は前衛のスパイカーとブロッカーで1対1のマークをしてる。後衛は遅れて跳ぶって感じだ。

 

「いけっ!」

「「「11番!」」」

 

 飛雄が選択したのはAクイックに入った蛍。飛雄がジャンプトスをしているから最短距離でのトスになって、蛍はそのままボールを叩き付けた。6番の指先を掠めたっぽいけど、ボールは床に落ちてバウンドする。【1-2】。

 

「しっ!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチする。

 

「相手前衛3人をマークしてるっぽいからバックアタックも本数増やしてみようか」

「分かりました」

「あと影山もジャンプトスで上げるとツーの警戒になるな。ツーやっていいからブロック釣ってくれ」

「はい!」

 

 連絡事項を簡単に共有して次のラリーに備える。こっちのサーバーは旭さんだ。

 

「「「旭さん1本ナイッサー!」」」

「強打来るぞ! 1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 3年生だけだからなのか、代表決定戦の時よりも雰囲気が柔らかいというか。お互いに信頼してるんだろうなって言うのが見て取れる。

 バックレフトで相手コートの様子を窺っていると、旭さんがジャンプサーブを打った。狙いは前回いなかったバックライトの2番。

 

「「「添川!」」」

「ライ!」

 

 あ、2番上手い。旭さんのサーブ軽々拾ったな。ボールがネット際の3番に返っていく。

 

「瀬見!」「A!」「レフト!」

「一弘!」

 

 ライトの牛島選手、センターの6番、レフトの4番がトスを呼んで、3番はセンターの6番にトスを上げた。

 

「しっ!」

「ワンチ!!」

 

 6番のAクイックを蛍が触るけど、蛍の右手に当たったボールは相手コートのレフト側のサイドラインを大きく越えていった。アウトだ。【2-2】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 あっちコートで6番を中心にウェイウェイし始めて、こっちはこっちで集まる。

 

「すみません、あっちの6番結構力あります」

「こっちはある程度知られてるけど、あっちの2番と6番新顔だから何してくるか分からないって感じだな。白鳥沢でユニフォーム貰ってるわけだし試合出てないからって上手いことには変わらない。

 ウチが対応する側って事は忘れないようにしよう」

「「「はい」」」

 

 連絡事項を共有して、6番のサーブに備えてレシーブ位置のバックレフトへ。あっちは5番が前衛に上がってきて面倒くさくなる。それでも牛島選手を早く後衛に回すんだ。

 主審の笛が鳴って、6番がジャンフロを打ってきた。狙いはライト側。

 

「「旭!」」「「「旭さん!」」」

「オシ!」

 

 旭さんがオーバーで処理して、ボールが飛雄へと返っていく。

 

「レフト!」「バック!」「バック!」「ライト!」

「お願いします!」

「「「5番!」」」

 

 レフトの龍先輩、バックセンターの大地さん、バックライトの旭さん、ライトの蛍がトスを呼んで同時に助走を始めた。

 そして飛雄はレフトに早い平行トスを上げて、龍先輩が牛島選手の右手にぶつけるようにスパイクを打って、ボールはあっちコートのライト側の壁へと吹っ飛んでいった。【2-3】。

 

「シャオラァ!!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。サイドアウトばっかりだけどそれでもいい。

 ローテーションが回って蛍がサーブだから、俺は翔陽と交替だ。サイドラインに向かう。

 

「あと22点取れよ」

「分かってる!!」

 

 ハイタッチしてコートの外に出たら、振り向いてコートに一礼。烏養コーチの所に向かっていく。

 

「仙台市体育館と違って天井低いから気を付けろ。いや、天井高いんだけどよ……」

「分かりました!」

 

 ただ上げれば良いわけじゃ無いよね。くそー取らないとな。

 

「ナイスレシーブでしたよ! 猫又君!」

「次も上げて」「頑張れ、ねこ君!」

 

 武田先生と清水先輩、やっちゃんの3人ともハイタッチして暫定ウォーミングアップゾーンに向かう。

 

「「「ウェーイ!」」」

「ウェーイ!」

「惜しかったな。めっちゃ良いレシーブだったぞ」

「高く上げすぎたら次触る人への負担になるから改善します」

「「「行ってこーい!」」」

 

 蛍のサーブ権は牛島選手に決められて強引に切られた。【3-3】。

 軽く汗を拭いてサイドラインへ向かう。

 

「今日ブロック5本はやるんだろ?」

「……そんなこと言ってないし」

「1セットにつき5本。頼んだぞー」

「はあっ!?」

 

 ミドルなんだからそれ位本数稼いでみろやー。

 蛍とハイタッチして、コートに一礼してからバックライトに向かう。相手のサーバーは牛島選手。1本で切りたい。

 

「「「若利1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 こっち打ってこいやー。おおん。

 主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。サウスポー特有の回転で左側へと向かっていく。このコースは旭さんだ。

 

「ぐっ……!! カバー!!」

「「繋護!」」

 

 旭さんが牛島選手のサーブを弾いて、バックライト側のエンドラインを大きく越えて吹っ飛んでいく。ベンチサイドの方だ。

 あの高さなら間に合う。走って走って……、間に合った。アンダーで後ろに打ち上げる。

 

「カバー!」

「大地!」「「キャプテン!」」

「チャンス返ってくるぞ!」

 

 どうにか大地さんに繋げたっぽくて、コートの方を振り返って全力ダッシュ。大地さんが相手コートに大きく打ち上げて返す様子が目に入った。急げ急げ。……やべえ!

 

「「「若利!」」」

 

 牛島選手への最高のトスになってしまって、ダイレクトでバックアタックをしようとしてる。

 それを見て、レフトの龍先輩と助走を付けて翔陽と飛雄がブロックに跳ぼうとしてた。

 

「日向! 来い!」

「はい!」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 一呼吸置く間もなくてバックレフトで牛島選手のスパイクに備える。

 

「ふんっ!!」

「ノー!」「ワンチ……!」「ノー!」

 

 牛島選手のバックアタックは翔陽の両腕の間を貫通してこっちコートの中央辺りに落ちた。フライングするけど、俺の立つ位置からだと3mくらい先で当然間に合わない。【4-3】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 牛島選手を中心にウェイウェイするのを見ながら、こっちはこっちで集まる。

 

「悪い! めっちゃ良いトス上げちまった!」

「俺も! 猫又カバーありがとな!」

「はい!」

 

 1本目で打ってくるとは思わなかった。めっちゃ良いトスでもあったけど。

 

「牛島のサーブはAパスじゃなくてもいい! でも高く上げるよう心がけろ! そんでカバーだ!」

「「「はい!」」」

 

 いーや、ここはAパスで返さないと。今日練習試合を組んで貰った意味が無い。

 

「「「若利もう1本ナイッサー!!」」」

「ここ切るぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 ホームだから心なしかイキイキしてるような気がする。いや分からん。

 主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックレフトの方で、大地さんと旭さんの間。

 

「俺が!」「頼む!」

 

 旭さんが退いて、大地さんが態勢を崩しながら牛島選手のサーブを拾った。でも、相手コートに直接返っていってチャンスボールになる。

ボールの行方を確認しながらバックレフト側に移って、もちろん皆もポジション移動をしてる。

 

「「「チャンス!」」」

「オーライ!」

 

 14番のリベロがチャンスボールを処理して、ボールがセットアップに走った3番に返っていった。誰で来る?

 

「バック!」「A!」「レフト!」

「獅音!」

 

 バックライトの牛島選手、センターの5番、レフトの4番の3人がトスを呼んで、3番は平行トスをレフトに上げた。アタックラインに近いバックゾーンまで下がって警戒して、ライトの飛雄にセンターの翔陽がブロックに跳んだ。

 

「ふっ!」

「ノー!」「ワンチ!」

 

 4番のスパイクは飛雄の左腕に当たって鋭い軌道でコート中央に叩き付けられた。【5-3】。

 

「良し!!」

「「「ナイス獅音!!」」」

 

 4番を中心にウェイウエイし始めたのを見て、こっちはこっちで集まる。

 

「すいません!」「悪い!」

「大崩れって訳じゃ無いから食らいついていくぞ」

「日向もリードブロックしっかりな。あと助走」

「はい!」

「良し1本取り返すぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 もう一度牛島選手のサーブに備えてバックライトに移動する。

 

「「「若利もう1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 こっち打ってこいやー!!

 そのうち主審の笛が鳴って、牛島選手がジャンプサーブを打ってきた。狙いは旭さんと俺の間。しかも左に曲がってるから旭さんの方が取りやすい。でも? 俺は何のためにここにいるんだっての。

 

「ふっ……!」

 

 アンダーの構えをボールの進路上に置いて処理。……痛い。でも上がったぞ。ボールは飛雄の方に返っていく。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 レフトの翔陽、バックレフトの大地さん、センターの龍先輩、バックライトに移動した旭さんがトスを呼んで、同時に助走を始めた。

 

「いけっ!」

「「「10番!」」」

 

 飛雄はレフトの翔陽に変人速攻……か? とにかく早くて高いトスを上げて、3番のブロックの上からスパイクを叩き付けた。打点は330cmってところか。いやたっけえわ。【5-4】。

 

「よっしゃ!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチする。

 

「猫又もナイスレシーブ」

「はい!」

「こっちも連続して点稼いでいくぞ」

「「「はい!」」」

 

 ローテーションが一つ回って飛雄のサーブだ。勝負どころ。

 

「「「影山1本ナイッサー!!」」」

「強打来るぞ!」

「「「オーッシ!!」」」

 

 旭さんとの位置関係に気を付けながら相手コートの様子を窺って、そのうち主審の笛が鳴って飛雄がジャンプサーブを打った。狙いは3番がいるレフト側。

 

「「「添川!」」」

「おしっ! 頼む!」

 

 体勢を崩しながら2番が拾って、ボールがネット際の3番に返っていく。

 

「バック!」「B!」

「覚!」

「「「5番!」」」

 

 俺はコート中央に若干寄る。翔陽と飛雄が5番のブロックに跳んだ。

 

「ワンチ!」「ノー!」

「「「チャンス!」」」

 

 5番のスパイクは翔陽の右手に当たってバックライトのサイドラインに落ちるように大きく打ち上がった。そのチャンスボールを大地さんが拾いに行って返球する。

 

「レフト!」「影山!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトの龍先輩、センターの翔陽、バックライトに移動した旭さん、ライトから遅れて大地さん。その4人がトスを呼んで同時に助走に入った。

 

「お願いします!」

「「「3番!」」」

 

 飛雄が選択したのは旭さん。スロットは違うけどパイプ攻撃ってやつで、旭さんのスパイクは5番の左手に当たって思いっきり相手コートのレフト側に吹っ飛んでいった。鷲匠先生がパイプ椅子に座ってる方だ。【5-5】。

 

「オシ!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「俺にもトスくれよ、影山!」

「はい!」

 

 今日皆調子良さそうだな。このまま一気に突き放したい。

 

「影山、サーブ頼むぞ!」

「はい!」

「あと20点取れよ」

「おう」

 

 飛雄のサーブはまだ続いてる。頼むぞー。

 旭さんとの位置関係に気を付けながら、バックセンターで相手コートの様子を窺う。主審の笛が鳴って、飛雄がジャンプサーブを打った。……あら。

 

「「「アウト!」」」

 

 こっからでも分かるほどアウトだった。【6-5】。

 

「っ!? すみません!!」

「ドンマイドンマイ! 強く攻めてけ!!」

「はい!」

 

 弱いサーブ打っても完璧な形で相手に攻撃されるから攻めるサーブでOK。あれで入るように練習しろ、だな。

 飛雄がセットアップに走るからバックライト側でサーブレシーブだ。そして相手のサーバーは4番。

 

「「「獅音1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 この4番崩れないんだよなー。代表決定戦の時からミスする姿全然見ない。メンタル強すぎ。

 主審の笛が鳴って、4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはあさ「猫又頼む!」っ!?

 

「っ! カバー!」

 

 旭さんのボールだと思って反応遅れた。最悪。

 飛び込むような形で左腕に上手く当ててなんとか上げた。微妙な1本目。旭さんが二段トスを上げる体勢を取った。

 

「旭さん! ライト!」

「田中!」

「「「5番!」」」

 

 素早く立上がって、ライトの龍先輩に上がったボールを追いかけるようにしてブロックフォローに入る。相手のブロッカーはガッツリ3人揃えてきた。ライトから3番、5番、2番。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ォラ!」

「ノー!」「ワンチ!」「ノー!」

 

 龍先輩のスパイクは5番の右手に当たってチャンスボールになる。急いでポジションの移動だ。

 ボールの行方を追いながらバックレフトに到着して、14番のリベロがチャンスボールを返すところを確認する。……ツー!!

 

「ツー!」

「「「っ!」」」

 

 3番がボールを落とす手の形にしたのが目に入ったから素早くフロントゾーンに詰めると、案の定3番はツーをしてきてこっちコートのライト側のフロントゾーンにボールを落とした。大地さんがフライングするけどギリギリ間に合わない。【7-5】。

 

「ッシ!」

「「「ナイス瀬見!」」」

 

 3番を中心にウェイウェイするのを見ながら、こっちはこっちで集まる。

 

「悪い! サーブ俺が取る所だった。助かった」

「あのコース取りますよ。攻撃には参加出来ませんし」

「そうしてくれると助かるな」

「分かりました」

「あとよく二段打ち切ったな、田中」

「やっぱ3人揃うとプレッシャーやばいっす」

「良し。ここで切るぞ」

「「「オォーッス!」」」

 

 連絡事項を共有して、再びサーブレシーブに備えてバックライトに移動する。サービスエースは絶対に駄目だ。

 

「「「獅音もう1本ナイッサー!!」」」

「「「サッ、来ーーーーい!」」」

 

 さっきのリベンジじゃ。こっち打ってこんかい!!

 俺の願いは虚しく、4番のジャンプサーブは大地さんと旭さんの間に落ちる軌道を取る。

 

「俺が!」「頼む!」

 

 大地さんが4番のサーブを拾って、ボールが飛雄に返っていく。その瞬間翔陽がレフト側に向かって走って行った。

 

「影山!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトにBクイックを呼ぶ翔陽、逆にセミを呼ぶ大地さん、バックライトよりから旭さん、ライトの龍先輩がトスを呼んで翔陽はマイナステンポ、他の3人はファーストテンポで助走に入った。

 

「いけっ!」

「「「10番!」」」

「「くそ……!」」

 

 平行トスじゃないけど結構横の距離が長いBクイックに跳んだ翔陽がフリーでスパイクを叩き込んだ。3番と5番が反応するけど間に合わない。【7-6】。

 

「よっしゃ!!」

「「「良いぞ日向!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。コート幅を生かすって意味で今のはよかったと思う。多分大地さんは間に合わなかっただろうし。

 

「日向が点稼がないと負けるんだからな。どんどんやれ!」「良い判断だったな」

「オスッ!」

 

 ローテーションがひとつ回って龍先輩がサーバーだ。バックレフトに移動して、そのまま相手コートの様子を窺う。……牛島選手もサーブレシーブするのか? なんであの位置にいんだ。

 

「「「田中1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 主審の笛が鳴って龍先輩がジャンンプサーブを打った。狙いはセンター。

 

「「「若利!」」」

「ふっ!」

 

 普通に取られてるじゃん、龍先輩。

 牛島選手が上げたボールはネット際の3番に返っていく。

 

「C!」「瀬見!」「レフト!」

「仁!!」

「「「2番!」」」

 

 3番はレフトの2番に平行トスを上げて、大地さんと遅れて翔陽がブロックに向かう。旭さんは間に合わないからアタックライン付近まで下がってきて、俺旭さんの邪魔にならないようバックレフトの深い所を守るように下がった。

 

「日向!」

「はい!」

「「「ブロック1枚!」」」

 

 2番は的確に翔陽と大地さんのブロックが合流する前にスパイクを叩き込んできて、ボールはコート中央に落ちた。【8-6】。

 

「おし!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 2番を中心に集まってるところを見ながら、こっちはこっちで集まる。

 

「2番と6番普通に上手いからブロックしっかり跳ぼう。トス散らせてくるからボールを見てしっかりとリードブロックな」

「「「はい!」」」

 

 連絡事項を共有してバックレフトでサーブレシーブに備える。相手のサーバーは5番。やりづらい相手だ。

 

「「「天童1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、5番がジャンフロを打ってきた。狙いは龍先輩。ミスっても良いようにバックライト側に寄る。

 

「ォラ! ……っ!? カバー!」

「猫又!」

「はい!」

 

 最後手元でぶれたっぽくて、龍先輩は後ろに思いっきり弾いた。ま、でも予想してたから大丈夫だ。走って走って、旭さんがどこにいるかを確認したらレフトへの二段トスを上げる。

 

「3番打ってくるぞ!」「旭! ラスト!!」

 

 走れ、まだ笛は鳴ってない。ブロックフォローしないとだろ!!

 今度はコートに向かって全力ダッシュ。シャトルランかよー!!

 

「「「ブロック3枚!」」」

 

 ……あ。

 打つタイミングをずらすテクニックを今旭さんが試して、旭さんのスパイクはセンターの6番の指先に当たってエンドラインよりも更に奥へと吹っ飛んでいった。ありゃーカバーできない。ワンタッチでこっちの点数だ。【8-7】。

 

「おし!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。次のサーバーは翔陽だから、蛍が前衛に上がる。ってことでサイドラインに向かっていった。

 

「トス散らしてくるからボールよく見ようって話になってる」

「分かった」

 

 蛍とハイタッチしてコートを出たら、振り向いて一礼。終わったら烏養コーチの所に。

 

「さっきのは東峰が任せたのか?」

「そうみたいです」

「猫又が取れるなら取った方が良いな。どうしても東峰はでずっぱりになって消耗するし。楽させてやれ」

「はい!」

 

 武田先生、清水先輩、やっちゃんの3人ともハイタッチしてウォーミングアップゾーンへ。

 

 

 1セット目が終わった。【29-27】でウチの負け。

 

「内容自体は凄くよかったと思う。あとはその上で勝っていこう」

「「「はい!」」」

「良し、じゃあペナルティやってこい!」

「「「はい!」」」

 

 サイドラインからサイドラインまでのフライング2往復やってきまーす。

 

 

 2セット目は【25-27】でウチの勝ち。

 3セット目は【23-25】でウチの勝ち。ここでノヤ先輩と交替。

 4セット目は【26-24】でウチの負け。

 5セット目は【25-22】でウチの負け。

 6セット目は【25-27】でウチの勝ち。結果的には3勝3敗。

 

「集合!」

「「「集合です!」」」

 

 全体の挨拶って事で、最初みたいに各学校2列ずつで並ぶ。

 

「気を付けっ! 礼っ!」

「「「お願いします!」」」

 

 鷲匠先生が口を開いた。

 

「……そうだな。

 烏養のジジイが監督業を引退してからの近年烏野は弱くなった。それがどうだ? また拮抗するだけの力を持った。

 烏野は強い。宮城の代表として春高で勝ち抜いてこい。以上」

「気を付けっ! 礼っ!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 クールダウンで良いのかな。それとも片付け?

 そんな風に思ってたら2番がこっちの方に近付いてきた。

 

「まだ練習するのでネットはこのままで大丈夫です。烏野の皆さんはダウンして下さい」

「「「ありがとうございます!!」」」

 

 寮だから夜21時までとかできるんだろー、良いよなー。

 全員で武田先生達の方に戻ってミーティングに入る。

 

「ネットはどうするって?」

「まだ練習するからこのままで良いそうです」

「オッケ。じゃあダウンしろー」

「「「はい!」」」

 

 おお、この時間でコート2面に張り直してるよ。俺達も手伝った方が良さそうとは思うけど、多分白鳥沢の皆さんでやった方が早く終わるはず。

 

◇

 

 烏野高校排球部一同がクールダウンや帰る準備を進めている間、武田一鉄と烏養繋心は鷲匠鍛治と挨拶をしていた。

 

「鷲匠先生。本日は誠にありがとうございました!」「ありがとう御座いました!」

「ん。こっちも良い練習試合になった。感謝する」

 

 感謝の言葉と共に一礼した2人に合わせて鷲匠鍛治も軽く頭を下げる。

 

「……つかぬ事をお伺いするのですが、今回コンビ多かったですよね?」

「まあな。

 俺が好きなのはシンプルなバレーだが、高校を卒業して新しい環境でバレーをやるとなったらコンビを使うチームだってある。寧ろそっちの方が多いだろう。その時に『コンビあんまりやりませんでした』はまずいからな。

 そう言った意味で烏野のコンビは見させて貰ってる。リベロが上げて最大5枚のアタッカーが攻撃態勢に入るってのはそう簡単に真似できねえし」

「「ありがとう御座います!!」」

 

 思った以上に高い評価をされている事に気が付いた武田一鉄と烏養繋心は何度も頭を下げた。

 

「さっきも言ったが、烏養のジジイとは何度も決勝戦で戦ったし、インハイだとか春高が決まってもこうして練習試合を組んでた。そういう意味では嬉しくもありつつ、同時に厄介な学校が出てきたとも思う。

 距離的にも負担がかかるわけじゃねえから、こっちも良い練習試合の相手だと思わせてもらうぞ」

「「っ!! ありがとうございます!!」」

 

 思わぬ言葉に、早速武田一鉄は次の練習試合を申し込んだ。そして、4日後の12月27日に練習試合を行うことが決まる。

 

◇

 

 ダウンが終わって、帰る準備を進めていると白鳥沢の皆様が絡みに来た。うそうそ、応援しに来た。

 3番、4番、5番、14番の4人。

 

「澤村君、菅原君、東峰君」

「うん? ああ、瀬見君達か、今日は練習試合ありがとう」

「おかげで色々改善点が見つかったよ」

「1年生合宿でお宅の10番止められなかったからネ~、今日はスカッとしたヨ」

「だってさー、日向」

「ぐぬっ……!」

 

 見学だから練習試合には出られなかっただろうし。あと変人速攻をできるセッターがいたとは聞いてないし。

 

「ぶっちゃけ『烏野ってどこ?』って印象だったんだけど、甘かったわ。普通に強え。俺達の分って訳では無いけど、宮城を代表して頑張って欲しい」

「前回のインハイで稲荷崎に負けたからネ。リベンジしてヨ」

「ああ、優勝して勝ってくる。応援頼んでも良いか?」

「「「もちろん」」」

 

 昨日の敵が今日のライバル! これぞ少年ジャンプ!! ……俺ジャンプあんまり読まないけど。でも繋心兄ちゃんは喜びそう。〝友情・努力・勝利〟が涙腺に来るとか言ってたし。アラサーだもんなー。

 そこに牛島選手が通りかかって、5番が引留めた。

 

「あ、若利君。烏野に何か言うことない? 激励、みたいにサ」

「…………。健闘を祈る」

 

 武士みたい。「健闘を祈る」って言葉すらっと出てくるか?

 あー、でももっと牛島選手と練習試合やりたかったなー。もう1回くらいできないかな。

 

 

 

 12月24日って何の日でしょう。そう、クリスマスイブでーす。

 世間はクリスマス一色で特集記事が色々と出てる。俺達? 春高前にそんなウキウキしてられないでしょうが。

 そんなわけで、午前練習と昨日の白鳥沢戦の振り返り、ドリンクの買い出しをして帰ってきた。

 

「ただいまー」

「おかえりー。真緒達からプレゼント来てるわよー」

「っ!!」

「洗濯物出してお風呂入っちゃいなさい」

「あーい」

 

 夜ご飯の準備をしてた母さんとそんな会話をして、部活で着てたウェアとかサポーターが入った洗濯ネットをバッグから取り出して脱衣所に置いてから自分の部屋に行く。

 母さんの言うとおり、俺の部屋の前に100サイズの段ボールがあった。お風呂入ってから開けよう。

 

 

 お風呂に入ってから段ボールを開封していく。中を覗くとー? ……お、おお!!

 俺が愛用してるメーカーのバレーシューズとかスポーツタオル、ウェアが入ってた。そろそろ買い換えようとしてたから嬉しい。……いや、これ母さんが伝えたな。

 スマホでプレゼントの写真を撮って、【受け取った! ありがとう!!】って姉ちゃんと美緒、彩音ちゃんにメッセージを送る。あっちはあっちでクリスマスパーティでもしてんだろ。

 

「ん?」

 

 ほーら。

 すぐに返信が返ってきて、慎吾さんと咲良さん、彩歌ちゃんの3人も混ざってウチでパーティしてる写真が送られてきた。……さ、寂しいなんて思ってないし! ぐぬぬ。

 ……ま、仕方ないね。取り敢えず明日から使っていこう。インソール変えないと。

 そう思ってシューズの箱からシューズを取り出すと、新品なんだけど新品じゃ無い。メッセージが書いてある。

 左のシューズには姉ちゃんから【頑張りなさいよ!】、美緒から【頑張って!】って。

 右のシューズには彩音ちゃんから【頑張って!】、彩歌ちゃんから【応援してるよ!】って。

 

「おーし」

 

 これはもうやるしか無いね、うん。

 

「繋護ー! 私達もクリパやるよー!」

「あーい!」

 

 お腹空いたぁー!!

 

 

 

 「お願いします! 家にいるとクリスマスが〝クルシミマス〟になるんす!」って龍先輩とノヤ先輩が懇願したことで、25日は本来オフだったけど軽めの半日練習に変わった。

 そして、OBの皆さんが買ってきてくれた具材で鍋パーティ。1つはトマト鍋。もう1つは豆乳鍋。更にもう1つが味噌鍋。他にもしゃぶしゃぶとかも出来る。

だって、運動後の男子高校生が13人も集まってるんだもん。食欲舐めるな。しかもお昼時だし。

 

「切って入れたら『はい完成』って手頃な料理だ。具材にもよるけど運動後にも目茶苦茶良い。

 ただ、火の元だけは注意してくれ。片付け大変だから零すなよ」

「「「はい!」」」

 

 畳の大部屋でコンセントを繋いで3つの鍋を温めているちゃぶ台が1つ。ここでよそってちゃぶ台で食べる方式だ。

 8人が座れる大きなちゃぶ台が2つあって選手は適当に。武田先生、烏養コーチ、清水先輩、やっちゃんは1つのちゃぶ台で食べる。つまり4つのちゃぶ台があるってこと。

 俺は豆乳鍋を選んで、大地さん、一仁先輩、力先輩、忠、飛雄、俺の6人でちゃぶ台を囲む。もう一つのちゃぶ台にはスガさん、旭さん、龍先輩、ノヤ先輩、久志先輩、翔陽、蛍の7人。席は移動できるから大丈夫でしょ。

 全員自分のお椀によそい終わって、武田先生が簡単に話す。

 

「OBの方々にお願いしてこうして準備して頂きました。決起会と言うわけではありませんが、せっかくのクリスマスなので皆で楽しみましょう!」

「「「おーっす!」」」

 

 続いて烏養コーチ。

 

「冷蔵庫見たら分かるけど目茶苦茶具材有るから。足りなくなったら自分達で適当に入れてくれ」

「「「はい」」」

「それじゃあ澤村君。一言頂こうかな」

「はい! えーっと、そうですね。年越しまで1週間を切って春高もいよいよ目前に迫ってきました。

 それはひとまず置いといて、今は皆でクリスマス鍋を楽しみましょう。風邪なんか引くなよ。ということでしっかりと食べてスタミナ付けていこう。頂きます!」

「「「頂きます!!」」」

 

 何から食べ様かなー。おーにくーっ!

 

 

 

 練習、白鳥沢と2度目の練習試合、たまにOBが来て練習試合って日々を重ねていって、遂に今日は12月31日。2012年が終わる大晦日だ。

 お昼は食べるけど、一日練習よりは短い練習が終わる。大晦日で家の手伝いだってあるだろうし。少なくともウチはそう。

 

「よーし、今年はここまでだ。家帰って手伝いなりしろ」

「「「はい!」」」

「大晦日だが、同時に春高までもう5日だ。ハメ外しすぎないように。紅白とか年越しそば食って生活リズム崩したりとかな。

明後日から練習あるから気を付けろよ」

「「「はい!」」」

「じゃあ暖かくしてからストレッチして片付けだ」

「気を付け! 礼!」

「「「ありがとう御座いました!!」」」

 

 4月から今日まであっという間だったなー、1年って早い。そして春高は5日後。いやー、楽しみだなー。

 

 

「お疲れー」

「じゃあ明後日ー、良いお年をー」

「春高に持ってく荷造りしとけよー」

「「「はーい」」」

 

そんな会話をして家に帰っていく。全然大晦日って実感湧かないな。やべー。

クリスマスが終わったこの1週間で門松とか正月の準備をした家に到着すると、祖父ちゃんが玄関の前の掃除をしてた。

 

「ただいまー」

「おう」

「何かやることある?」

「風呂入って来い。……本当は福を落としちまうってことで駄目なんだけどな。

あと、今もしてるけど、明日から数日人と接する機会多いだろうからマスクしとけよ。インフルとかマジで笑えねえからぞ」

「うん」

 

 正月ってマジやべえ。祖父母がインフルエンザに罹るのは遊びに来た子供からってケース多いし。親戚の皆も集まるだろうけど俺は引っ込んでよう。……あー、でもお年玉。ま、いっか。ほしい物特にないし。

 まずはお風呂じゃあ。うぉぉぉぉ!!

 

 

 お風呂から上がってちょっと早めの夜ご飯を食べてゴーロゴロ。今年最後の姉ちゃん達との電話だ。去年は受験だったからしなかったけど、毎年姉ちゃん達は一緒に年を越してる。今年から3年はちょっと例外。……になるのかな? 大学はどうしようかな。

 

『ほらー、繋護そろそろ寝なさーい』

「分かってまーす。姉ちゃん、美緒、彩音ちゃん、彩歌ちゃん。1年ありがとうございました。来年もお願いします」

『『『こちらこそありがとうございます。来年も宜しくね』』』

『早く寝なさーい』

「あーい」

 

 姉ちゃん達はもう少し夜更かしするんだろ。そういう意味だとあんまり変わらない。だってねー、しょっちゅうお泊まり会してるし。

 紅白とかスポーツ王に興味はあるけど、俺はもう寝る。明日も自主練するし。体調管理には気を使ってきたし。

 そんなわけで、メッセンジャーアプリの機能の一つである記事の投稿をする。予め考えて作っておいた文章だ。

 

【皆さんこんばんは。猫又繋護です。

 あっという間に大晦日ですね、今日で2012年が終わるなんて全く実感ありません。

 皆さんはどんな風にお過ごしでしょうか。年越しそば、紅白とかバラエティー番組、スポーツ王なんかを見てるのかな。

 

 1月5日から開催される春高まであと5日です。年末年始といえど、今日夜更かしをして体調を崩しては溜まらないので僕はもう寝ます。

 明日もまたトレーニングをする予定ですし、春高に向けて最後の追い込みの時期なので僕から1人1人に向けて「あけおめ、ことよろ」メッセージを遅れません。皆さんからメッセージを頂いても返信できない可能性の方が高いです。

 本当にごめんなさいなんですけど、春高が終わって落ち着いたら改めて挨拶をさせて下さい。ご協力宜しくお願いします。

 

 烏の方の祖父ちゃんが烏野の顧問を離れて、繋心兄ちゃんと「俺達で烏野を全国レベルにしようぜ」と話したのが2008年。まさか1年目で全国大会に行けるとは思いませんでした。

 家族や親戚だけでなく、烏野排球部の皆、学校の友達、庵里の先輩、同輩、後輩、バレーきっかけで出来た関係。

色々な人に助けて貰った1年でした。本当にありがとう御座いました。

 

 恩返しという意味だけではありませんが、春高を優勝して優勝旗とトロフィーを烏野に持って帰ります。どうか応援宜しくお願いします!

 

 最後になりますが、2012年、猫又繋護と関わってくれてありがとう御座いました! 来年もどうかよろしくお願いします!!】

 

 送信っと。

 良し、寝よう。布団に横になり、掛け布団を掛けて目を瞑ったら秒で意識が……………………。ぐぅ。

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