烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年12月の振り返り

1日(土) or 2日(日) 春高抽選会
5日(水) 日本ユース合宿、宮城宮城県1年強化合宿スタート(9日まで)
7日(金) 猫又繋護、京都で北宇治生4人と邂逅
8日(土) 親戚の結婚式
10日(月) 報告会 鷲匠鍛治に練習試合の申し込み
15日(土) 伊達工業高校と練習試合
21日(金) 終業式
23日(日) 白鳥沢と練習試合
25日(火) 寮で鍋パーティ
27日(木) 白鳥沢と練習試合
31日(月) 大晦日


2013年1月①

 はっ。意識が戻ってきて、目を開けたら部屋の天井が目に入ってきた。ボヤボヤした感覚から戻ってくる。壁にかかってるデジタルカレンダーが2013年1月1日を示してた。……そうか、2013年になったんだな。なーんもかわんねー。誕生日を迎えた時と同じだ。

 にしても、良い天気だ。雪が積もってるけどそれが逆に良い。……良し。白湯飲んでこよー。ってことで台所に向かう。

 部屋を出て廊下を歩いてると祖母ちゃんに会った。

 

「あ、おはよう、祖母ちゃん。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「繋護おはよう。こちらこそ宜しくお願いね。初夢見た?」

 

 初夢。初夢かぁ。覚えてないな。

 

「いや、ぐっすり寝てたから見た覚えが無い。祖母ちゃんは?」

「私もだね。スッと寝てスッと起きた。それがいいよ」

「うん」

 

 簡単に挨拶して今度こそ台所に到着。ミネラルウォーターをポットに水入れて、温度を設定したらスイッチオン。

 すると寝起きの母さんがやってきた。

 

「繋護~、私にも~」

「今やるー」

 

 相変らず朝弱いな。……どっちかというと夜更かししたって感じか。年越しそばだって食べてただろうし。

 ポットの「できたぜ!」って合図を確認して、グラスに注いでいく。水道水だと煮沸、……煮沸って言うとなんかあれか。沸騰させて冷まさないといけない。

 

「ほい」

「ん~、ありがとー」

 

 グラスを呷って白湯を飲んでいくと身体の中から暖まる気がした。シャキーン。

 母さんもさっきよりはマシになってる。

 

「あー、やっぱり寝起きに温かいものはいいなー。ホットミルクやろうかな。繋護も飲む?」

「飲む!」

「オッケー」

 

 ホットミルクも捨てがたい。

 

 

 部屋に戻ってきてスマホの電源をオンにする。すると通知が凄いことになってた。

 本来〝ピロン〟なのが〝ピロロロン〟って続く感じ。バレーに集中したいです~って予め伝えといたおかげで記事への反応が多かった。昨日の記事への反応だったり、記事のコメントに【あけおめ! ことよろ!】って来たり。

 庵里の2つ上の先輩と2つ下の後輩からも来たし、木兎先輩と黒尾先輩をはじめとする梟谷グループの皆からも。もちろん烏野の皆からも。

 やべー、これは1人1人対応してたら時間すげー取られてた。良かった良かった。

 

「おし」

 

 【明けましておめでとうございます! 皆さんからの反応確認しました! 今年も宜しくお願いします!】って追記しとけば大丈夫でしょ。

 姉ちゃん達のグループ、父さん、おばさん2人、良樹君、良規君、悠花ちゃん、凛花ちゃんにもメッセージ送ってひとまず挨拶は終わりだ。ストレッチして縄跳びやるか。あ、猫の方の祖父ちゃんには後で電話掛けよう。

 

 

 庭で縄跳びをしてると祖父ちゃんが来た。身体を冷やさないようにベンチコートを着てぬくぬく暖まる。

 

「おはよう。明けましておめでとうございます」

「おう、あけおめ。今日繋人とか顔見せに来るらしいからちょっと引っ込んでろ」

「はーい」

 

 インフルとか罹りたくないから勉強でもしてよーっと。と言うか、祖父ちゃんこそフランクじゃん。

 

「どうだ。緊張してるか?」

「うーん、そんなに。東京体育館で大会あったから皆よりは慣れてる」

「どれだけ〝いつも通り〟を出せるかだからな。繋護に関してはそんなに心配してない。東峰、縁下、成田、木下、日向、山口がやばそうだな」

「チームの半分近くが駄目じゃん」

 

 第三者視点で聞いてると絶対に弱いチームじゃん、それ。否定できないけど。

 

「あとは突発的なトラブルだな。電車とかバスの遅延。何と言っても東京に慣れてるかどうか。武田先生も繋心もそんなにだろ。繋護がいるだけマシだ」

「おばさん2人にガイドお願いするよ」

「それでもな。

 3月から1月開催になって、しかも3年には最後の大会だ。『いつも通りにやらないといけねえ』ってプレッシャーがあるんだよ。俺3月開催しか出てねえから分かんねえけど」

「駄目じゃん」

 

 そうじゃん。1月開催になってから祖父ちゃん春高に出てないや。これやばくない? 大丈夫?

 俺は東京体育館には慣れてるから5倍以上働いてやるよー。

 

「そうだった。これから繋人達が顔だけ見せに来るって言ってるからマスクちゃんとしとけよ」

「あ、分かった」

 

 「風邪貰いたくないから来るなー」は駄目だよね。と言うか、東京の方がやばいし。お年玉ねだってみるか。

 ……ん? 姉ちゃんから電話だ。こんな時間から初詣か。早いな。

 電話に出ると、美緒と彩音ちゃん、父さんの声も聞えた。多分猫又家と込田家で初詣って感じかな。

 

「もしもーし」

『あ、繋護? あけおめー、ことよろー』

『お兄ちゃんおけおめー』

『繋護あけおめー』

 

 姉ちゃん、美緒、彩音ちゃんの順で新年の挨拶をしてきた。

 

「あ、うん皆あけおめ。初詣?」

『そー、人混み凄い。繋護は行くの?』

「え、どうだろ。まだそんな話出てない」

『そう? まあ人混み凄いところ行きたくないよね』

「うん」

『取り敢えずの挨拶だけ。また5日にね』

「応援宜しく」

『『『はーい』』』

 

 美緒が『おみくじ引こー!』って言ったのが聞えて電話は切れた。もうちょっとトレーニングしないとな。初詣。初詣かぁ。あとで繋心兄ちゃんと行こうかな。

 

 

 

 昨日、繋心兄ちゃんの付き添いで烏野神社に行ったら3年生4人とバッタリ遭遇してウェイウェイした。引いたおみくじは吉。良いね、この調子でいきたい。

 そして、世間は新年を迎えてバタバタしてるけど、俺達は練習だ。今日と明日烏野で練習したら、4日の朝には東京へ出発する。

 

「皆! おはよう!」

「「「おはよう御座います!!」」」

「新年を迎えました。いよいよ春高が目前ですね。怪我や体調不良の無いように万全な状態で東京へ向かいましょう!」

「「「はい!」」」

 

 武田先生の次は烏養コーチ。

 

「お雑煮食いすぎてねえな?」

「「「はい!」」」

「今日と明日練習したら、明後日には東京に行く。4日もボールには触れるけど、どっちかというと調整って意味合いの方が強い。

 ちゃんとした練習はこの2日間しかできねえぞ。気合い入れていこう」

「「「はい!」」」

「あと、荷造りはしっかりな。俺の方でも予備持っていくけどサポーターとかアームスリーブなんかもしっかりと準備しとけ。当日あれがねえこれがねえってのはやめろよ」

「「「はい!」」」

「良し! じゃあ残り2日間気合い入れてやっていくぞ! 澤村!」

 

 全員で円陣を組む。

 

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 明日で練習が終わり? いーや、準々決勝も勝ち抜いて来週もこのメンバーで練習する。そして13日の決勝戦を勝って烏野に帰ってこよう。

 

 

 

 1月3日。春高まであと2日。

 春高前最後の練習が終わって、ボールとかボール籠、救急箱、ドリンクの粉、縄跳び、……学校から持っていく持ち物を準備し終わった。これでもう明日を迎えるだけだ。

 

「忘れ物ないな? シューズ、サポーター、スリーブ系、各自必要なものもちゃんと確認しとけよ」

「「「はい!」」」

 

 激励に烏養元監督と若林先生が来てくれて、2人の話を聞く。

 

「〝いつも通り〟を出せるかが勝負の鍵になる。周りの応援に負けないようにしっかりと声を出してお互いに意思疎通をする。

 おまえ達は宇内達の春高メンバーよりも強い。大丈夫だ。自信持って暴れてこい」

「「「はい!」」」

 

 続いて若林先生。

 

「写真とか録画を見て貰ったら分かるけど、4月と比べて君達はぐっと成長しました。ヒョロヒョロだった皆は食事を通してマッチョになったよね。

 4月からここまでの食生活や生活習慣は見えない形で皆を支えてくれます。絶対に裏切らないよ。頑張れ!」

「「「はい!」」」

「あと、皆のご家族以外にも有志の先生や生徒が応援に行きます。皆1人で戦ってるんじゃ無いって事は忘れないで。私達も応援頑張るからね!」

「「「はい!」」」

 

 皆に支えて貰った。優勝旗とトロフィーを持って帰って恩返しだ。

 

「澤村君。僕達の目標は何ですか?」

「優勝です!!」

「皆も同じ気持ちですね?」

「「「はい!」」」

「では行きましょう! 〝全国〟という名の大きな空へと!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 やるしかねえ。

 

 

 

 1月4日を迎えた。

 よーし、コンディションは最高だ。今なら18m×36mのコートでもバレーできそうだ。……そこまでのネットはない? それはそう。

 家を出る時間が来て、荷物を持って玄関で、母さん、祖父ちゃん、祖母ちゃんの3人に見送られる。

 

「じゃあ私達もこの後千葉に向けて出発するから。忘れ物あったら早めに言うこと」

「うん」

「ユニフォームはあるな?」

「大丈夫」

 

 リュックの中を覗いてユニフォームが入った袋を取り出した。黒い方とオレンジの上下しっかり揃ってる。シューズとかアームスリーブとかも確認済みだ。うん、大丈夫。……最悪買うから大丈夫。家にも予備あるし、取りに行けるかは分からん。

 

「あとお義姉さん達も付き添ってくれるって言うから何かあったら頼りなさい。繋心も知ってるけどね」

「うん」

「ま、繋護は烏野の中でも東京体育館に慣れてる。そんなに心配はしてねえ。ただ、バタバタするなよ」

「分かってる」

「ビデオ持っていくから頑張ってね」

「うん、応援宜しく」

 

 母さん、祖父ちゃん、祖母ちゃんの順でハイタッチして玄関を出た。まずは学校だ。

 

◇

 

 学校に向かう時間が来て、荷物を持った澤村大地は玄関で母の董に見送られていた。

 

「じゃあ、私達も応援行くから」

「無理しなくて良いよ。インフルとか怖いだろ」

 

 澤村董は気が利かない息子の言葉を聞いてため息をつく。

 

「あのね~。全国大会よ、全国大会。息子が出るってのに応援しない親がいないわけ無いでしょ。そういう所もうちょっと欲出しなさいよ。

大地って一番上だけどこっちはお兄ちゃんやり続けろなんて言ってないんだから」

「……分かった。じゃあ応援宜しく」

「うん、いってらっしゃい」

 

 お互いに拳を出して、ハイタッチならぬグータッチをした。

 

 

 同様に、菅原孝支も父の菅原眞也に見送られていた。弟の智博も一緒だ。

 

「忘れ物ないな?」

「無いよー」

「兄貴、お土産宜しく」

「いやいや。東京観光に行くわけじゃねえっての。こんにゃろ」

 

 菅原孝支が寝癖の付いた弟の髪の毛をぐっしゃぐっしゃにする。

 

「おい、やめろよー、兄貴ー」

「兄貴って言うな。お兄ちゃんと呼びなさい」

「キッショ!」

「今の本気だろ! 智!!」

 

 菅原孝支が靴を履いているのを良いことに、弟の智博は廊下奥まで行ってあっかんべーをした。

 

「たっくよー」

「ほらほら、変なことして怪我なんかしたらどうすんだ」

「「はーい」」

「じゃあ、母さんと一緒に応援行くからな。頑張ってこい」

「ん。いってきます」

「優勝メダル貰って来いよー」

「最初っからそう言えっての!!」

 

 最後までバタバタしている菅原家であった。

 

 

 同様に、東峰旭も母の東峰美知子に見送られていた。

 

「ちゃんとひげ剃りしなさいよー」

「えぇ……、何それ」

「髭のそり残しあったら老けて見られるでしょうが。テレビ映るんだからせめて身だしなみ整えなさい」

「はーい」

「亜矢子も行けたら行くって言ってたから」

「それ来ないやつじゃん」

 

 2人して東峰亜矢子の奔放さを思い出して大笑いする。

 

 

 同様に、清水潔子も母の恵と兄の彰洋に見送られていた。

 

「潔子、東京は恐いぞ。ボケッとしてんなよ」

「分かってる分かってる」

「母さん、潔子が冷たい」

「朝なんだからもうちょっと声抑えて」

「……へーい」

 

 2人の口撃に負けた彰洋は沈黙した。そんな彼を見て清水潔子と恵は笑う。

 

「澤村さん達と一緒に応援行くから」

「うん、お願い。行ってきます」

「行ってらっしゃい」「頑張れよー」

 

 マネージャーである清水潔子はコートには入らない。それでも優勝するという目標は彼女も持ち続けている。

 

 

 同様に、西谷夕も祖父の節男に見送られていた。

 

「いいか、夕。宮城だけじゃねえ。全国には強い奴がいっぱいいんだ。それを肌で感じてこい!」

「ああ! 祖父ちゃん!! 宮ツインズだろうがコモリモトヤだろうが全員ぶちのめしてくるぜ!」

「おうよ! 仲間がいりゃあ戦える!!」

「「うぉぉぉぉ!!」」

 

 「ちょっと父さんと夕! 今何時だと思ってるの!!」と母の裕美に叱られる2人だった。

 

 

 同様に、田中龍之介も姉の田中冴子に見送られていた。

 

「龍~、頑張ってきなよ~」

「……姉貴よ。酒くせえ」

「ああん? 三が日だから良いんだよ」

 

 「三が日。三が日って3日までじゃなかったけよ?」と思いながらも、田中龍之介は墓穴を掘る真似はしない。出発前に余計な体力を使いたくないからだ。

 

「応援頼むぞ。和太鼓」

「分かってる分かってる。酒抜いたら行くから」

「しっかりしてくれよー。時間だから行くぞ。布団戻れよ」

「はぁ~い。いってら~」

 

 上がり框にへたり込んだ田中冴子を見て、田中龍之介はまだ夢の中の母に姉の写真と【姉貴風邪引くから早く回収してくれ】とメールを送った。取りあえず毛布をかけてやる。

 

 

 同様に、縁下力も母の祥子と弟の支咲に見送られていた。

 

「兄ちゃん試合出るの?」

「出る! って言いたいけど、正直状況によってだな。出るつもりだけど出られないかもしれない」

「試合出ないのにわざわざ東京まで行くの? 暖房効いてる中でヌクヌクしてた方が楽しいじゃん」

「行くよ。皆で烏野だから。誰1人欠けちゃ駄目だ。

あと、俺はもう逃げないって決めてるからな」

「ふーん」

 

 小学6年生の支咲は兄の言葉を聞いて理解できないといった表情をするが、母の顔を見て口を噤んだ。

 

「支咲も中学ではバレーやってみたら?」

「痛いじゃん、やだよ」

「痛いよなー。痛いけど、そうやって皆で繋いだ1点を獲るってバレーの楽しさを支咲にも知って欲しいかな。帰ったら教えてやるよ」

「兄貴面すんなし」

「兄貴だからな」

 

 絶賛反抗期を迎えた支咲は斜に構えるような態度を取り始めているが、烏野高校男子バレー部の中でも屈指のひねくれ者の月島蛍と接したことで、縁下力の対人能力は急激に成長していた。弟の態度も笑って見逃せている。

 

「じゃ、応援行くから。頑張って」

「うん、宜しく」

 

 母と。そして嫌そうな弟ともハイタッチをして、縁下力は家を出る。

 

 

 同様に、木下久志も母の真紀に見送られていた。

 

「一葉と二葉が東京ばな奈買ってきて、だって」

「……俺遊びに行くんじゃないんだけど」

「……そこで怒るようになって安心したわ。去年のあんただったら『金渡せよー』とかヘラヘラしてただろうし」

「何だそれ」

「本気でバレーやってるって事でしょ。ま、頑張りなさい。私達も応援行くから」

「ん、宜しく。……東京ばな奈目当てに?」

「そんなことないわよー? おほほほほー」

 

 「わざとらしい」と悪態をついて、先程よりも心が軽やかになったまま、木下久志は出発した。

 

 

 同様に、成田一仁も父の俊司に見送られていた。

 

「忘れ物ないな?」

「無いはず」

「応援行くからな」

 

 父の言葉を聞いて、成田一仁は少し俯き、「……試合出られない可能性の方が高いよ」と呟いた。しかし、父の俊司は息子の胸に拳を軽くぶつける。

 

「カズ、お前にはもう1年あるだろ。来年の為に勉強してこい。そんですげー後輩からスタメン奪って見せろ。その為の時間だぞ」

「そうだね。……うん、そうだ。行ってきます!」

「おう、行って来い!」

 

 緊張かプレッシャーか。思いのほかナーバスになっていた成田一仁の表情は晴れやかなものへと変わっていた。

 

 

 同様に、影山飛雄も母の華と父の雄大に見送られていた。

 

「応援行くからな、頑張れよ」「美羽も行くからね」

「美羽ちゃんも来れんのか」

「その為に有給貯めてたからね」

「お義父さんにも報告できるように頑張って来いよ」

「ああ。行ってきます」

「「いってらっしゃい」」

 

 影山飛雄にバレーボールを教えた原点でもある祖父の影山一与。彼がいたらどんな声をかけてくれるのかと影山飛雄はふと思った。

 

 

 同様に、日向翔陽も母の七海と妹の夏に見送られていた。

 

「忘れ物無い?」

「無い!」

「兄ちゃんはしゃぎすぎて熱出さないようにね」

「出さねーし!! 夏じゃないんだから!」

「むぅ~~っ!!」

 

 頬をリスのように膨らませた夏は兄を殴ろうと飛びかかるものの、その前に母の七海が押さえた。

 

「そうやってすぐに手を出さない。真緒ちゃん達に怒られるよ」

「はっ! 夏もうお姉さんだもん。喧嘩は無し無し。

あ、ほら兄ちゃん遅れるよ。お父さんの車!」

「そうだった! 行ってきます!!」

「気を付けなさいよ~!」

 

 そして、日向翔陽は「こんな日くらい学校まで送ってってやるよー」と言ってくれた父の翔太のもとへ走って行った。

 

 

 同様に、月島蛍も母の佳乃と兄の明光に見送られていた。

 

「じゃ、行ってきます」

「応援行くからね~」「頑張って来いよ」

「いや兄ちゃん仕事は?」

「蛍の晴れ姿なんだから見に行かないわけ無いだろ?」

「お父さんも行くからね」

「えぇー」

 

 言葉とは裏腹に、月島蛍の表情は柔らかい。

 

「ほら、忠と待ち合わせしてるんだろ? 遅れるぞ」

「ん。行ってきます」

「いってらっしゃい」「おう!」

 

 まずは山口忠との合流を目指して、月島蛍は家を出た。

 

 

 同様に、山口忠も母の明美と父の亜門に見送られていた。

 

「なんか忘れ物あったら午後までに連絡してね」

「うん。その時はお願い」

「明光君達と一緒に応援行くからな。……ああ、そうだ。春高での目標は?」

「スパイク、ブロック、サーブ3本以上決める!」

「その意気だ。良し、やってこい!」

「うん! 行ってきます!」

 

 明美と亜門から背中をはたかれて、山口忠は月島蛍との待ち合わせ場所に向かうために家を出た。

 

 

 同様に、谷地仁花も母の円と共にマンションを出ようとしていた。佐藤一平の車で烏野高校まで送って貰うためだ。

 

「忘れ物無い?」

「大丈夫!」

「じゃ、行きましょ」

「うん!」

 

 円が家の鍵を閉めて、2人は表へと向かっていく。

 

◇

 

 学校で到着して、バスに荷物も載せた。後は出発するだけ。そして、くそ早いのに教頭とか若林先生、誰かしらの友達がお見送りに来てくれた。俺の場合は聡とか錦とか堀内さん、稲松さん。つまりいつメン。あとは誠兄ちゃん、祐輔兄ちゃんとかのOB。車で学校まで送ってくれた翔陽とかやっちゃんの家族も。

 

「皆! 荷物大丈夫!?」

「「「はい!」」」

「それではこれから東京に向かいます! ここにいる皆さんが我々を見送ってくれますので、お礼を言いましょう! 朝だから声は控えめにね!」

「「「はい!」」」

 

 右からユニフォーム順に並んで、出迎えにかけつけた人達と向かい合う。

 

「お見送りありがとう御座います! まずは1回戦目の椿原学園、2回戦、3回戦、準々決勝と勝ち抜いてまた烏野に戻ってきます!

 気を付け! 応援宜しくお願いします!」

「「「お願いします!!」」」

 

 一礼すると、目の前の皆さんが拍手やらを送ってくれた。

 

「それではバスに乗って下さい!」

 

 ぞろぞろとバスに乗り込んで俺は1人席を確保。外にいる皆に手を振る。

 

「ねこー! 頑張って来いよー!!」「「仁花もー!」」

「おー!」「うん!」

 

 5組の皆に手を降り続けていると、バスが発進した。良し寝よう。

 

 

 サービスエリアで休憩を挟むこと約6時間。俺達は宿へと到着した。

 これから猫又先生が借りてくれた近くの体育館に行って調整するから、宿に荷物を置いたら外へ向かう。すると、葵育おばさんと育音おばさんが到着していて、武田先生と烏養コーチの4人で話してた。

 

「おっ、繋護。こっちおいで~」「ほらほらー」

 

 しょうがないなー、もー。大人4人の所に行って、おばさん2人に肩を組まれた。葵育おばさんは左肩、育音おばさんは右肩。一方で飛雄が固まってる。おやおやぁ? 

 

「「よっ」」

「皆に見られてるんだけど?」

「「ちょっとだけ」」

「はーい」

 

 そして続々と烏野の皆が外に来て、最後に忘れ物が無いか確認した大地さんが出てきた。ここでおばさん2人も俺から離れる。絡まれただけだったな。

 

「忘れ物はありません!」

「全員揃いましたね。体育館に行く前にこの春高期間中サポートして下さるお2人の紹介といきましょう。猫又さん、お願いいたします」

「はい。烏野高校排球部の皆さんこんにちは。いつも甥の繋護と父がお世話になってます。姉の羽染葵育と――」

「――妹の下園育音です。東京に不慣れな皆さんをサポートさせて頂きます。よろしくお願いします!」

「「「お願いします!」」」

「時間も惜しいので早速体育館に向かいましょう」

「「「はい!」」」

 

 ゾロゾロと歩き出すと飛雄がぎこちなく話し掛けてくる。

 

「な、なあ……。あの2人って」

「? 言わなかったっけ? っていうか〝猫又〟で分からなかった?」

「……いや全く思いつかなかった」

「そう?」

 

 そこに翔陽もやってくる。

 

「何の話ー? っていうか、女装した繋護とそっくりだな」

「話に割り込んでくるんじゃねえ!」「血縁関係だしね」

「別に良いだろ! それで?」

「繋護のおばさん2人、88年と92年のオリンピックメンバーだぞ」

「「「マジかよ!?」」」

 

 ありゃ、皆聞いてたんだ。

 

「昔のことなのによく知ってるね、影山君」

「有名だったので!! あの! 今度バレー教えて下さい!」

「春高期間でしょー」「集中しなさいなー」

「う、うす!」

「ほらほら、通行人の邪魔になるからもう少し静かにな」

「あっ、うす!」

 

 やーい、怒られてやんのー。

 

 

 練習から帰ってきて、宿でダラダラ。各自「ORE SUGEE DOUGA」やら勉強やらリラックスタイムだ。椿原学園の内容も頭に入ってる。ここまで来たらやるしか無い。

 

◆

 

 一方、神奈川県第一代表である椿原学園男子バレー部一同も1回戦の相手である宮城県立烏野高等学校戦に備えてミーティングを行っていた。監督の大佐渡巽が中心となってミーティングを進めていく。

 

「えーっ、そうだね。遂に明日から春高本戦が始まる。緊張しているとは思うけど、練習でやってきたことを行えば大丈夫。何しろ烏野高校は東京に疎い、はず」

「〝庵里の化け猫〟を除いてですけどね……」

「猫又君が何故井闥山では無く宮城県の、ましてやここ数年は結果を残していない烏野に進学したのかは分からないけど、保護者の転勤とかがあったんだろう。考えても仕方ないことだ。

 僕達の目的は庵里中を卒業した猫又君にリベンジすることじゃ無いよ。そこはき違えないように」

「「「はい」」」

 

 大佐渡巽はテレビのリモコンを操作して、春高予選宮城県代表決定戦の白鳥沢学園戦の中継を録画し、編集したものを流し始める。

 

「まず、だけど、烏野高校はセッターである影山君が上手だから多少乱す位じゃ牽制にもならない。特に10番との連携は実際対峙すればまた違った印象を持つことだろう。ただ、10番自身は体格もあってそこまでパワーは無いみたいだからしっかりとスパイクレシーブでも対応できる。まずは慌てないことだね」

「「「はい!」」」

「3番の東峰君と5番の田中君だけど、パワーはあっても身長はそこそこだ。身長も最高到達点も寺泊の方が高い。しっかりとブロックで対応すること。但しパワーがある分ブロックアウトされやすいから後ろがフォローする。

 ワンタッチしてレシーブで繋ぐ。いつもやってきただろ?」

「「「はい!」」」

「烏野は1人1人では足りない攻撃力を同時に助走することでブロックを分散させる方法を採ってる。確かに攻撃力は白鳥沢にもひけを取らない。でも東京体育館に慣れていないこととレシーブ面を1番の澤村君とリベロ2人に頼ってる学校だからつけいる隙は大いにある。

 しっかりと声を出して雰囲気にも慣れていこう。

緊張してるのはあっちも同じだ。俺達は関東私学大会で東京体育館に来て試合したしね。いつも通りを出せるようにしていこう」

「「「はい!」」」

 

 そして、引き続きミーティングを続けていく椿原学園男子バレー部一同であった。

 遂に春の高校バレーが始まる。

 

◆




【登場人物まとめ】
3年の家族
 澤村董 澤村大地の母
 菅原眞也 父
 菅原智博 弟
 東峰美知子 母
 東峰亜矢子 姉
 清水恵 母
 清水彰洋 兄

2年の家族
 西谷裕美 母
 西谷節男 祖父
 田中冴子
 縁下祥子 母
 縁下支咲 つかさ 弟 小6
 木下真紀 母
 木下一葉 長女
 木下二葉 次女
 成田俊司 父

1年の家族
 日向翔太 日向翔陽の父
 山口明美 山口忠の母親
 山口亜門 父
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