監督 猫又育史
コーチ 直井学
01 黒尾鉄朗
02 海信行
03 夜久衛輔 リベロ
04 山本猛虎
05 孤爪研磨
06 福永招平
07 犬岡走
08 長福隆之
09 手白球彦
10 間塗護
11 灰羽リエーフ
12 芝山優生 リベロ
13 野良拾明
14 守口心太
※8、14番がオリキャラ
ま、こうなるよね。おんなじようなタイミングで試合終わったんだし。
「あらあら~、そこにいるのは俺達の次の対戦校の皆さんじゃないですか~。名前は~〝トリノ〟? でしたっけ? イタリアにありそうな地名ですよね~」
「んー? ああ、そういう貴方たちも〝オトコマ〟で良いんですか? 男前っぽい名前だ」
「おい黒尾。それだと漢字読めないバカになるぞ」
「大地もおバカカルテットに加えられるぞー。これからおバカ五人衆に改名かー?」
「「ぐぬぬ……」」
結果的に墓穴掘ったな。黒尾先輩と大地さん。
「ま、そういうことだ――」
黒尾先輩が最後まで言い終わる前に「あっ! 黒尾とサームラじゃん!」って声と一緒に木兎先輩が乱入してきた。めっちゃ声通るんだけど。
「人の話遮るんじゃねえ! ミミズク野郎!」
「え、音駒負けたのか!? だからそんなに泣きそうなんだな!?」
「ち~が~い~ま~す~!!」
他人のフリ他人のフリ。あー、お腹減ったなー。
「はいはい。黒尾さんも澤村さんも他の高校の邪魔になるからそこら辺にして下さい。木兎さんもですよ」
「「「赤葦」」」
物販コーナーでも見てこようかな。あ、鳩サブレー食べたくなってきたぞ。姉ちゃんに頼んどくか。
「繋護ー、現実見ろー」
「見てる見てる。ちょー見てる。せっかくだから鳩サブレー買っていこうぜ」
「その『俺知ーらね』ってやめろー」「鳩サブレーって何!?」
梟谷のメンバーも集まってしっちゃかめっちゃか。ここだけ同窓会かよ。
森然と生川の応援をして、最終的にフルセットの末負けたのを確認して宿に戻ってきた。少し休憩を挟んでミーティングを始める。
「皆、今日は優勝候補で有る稲荷崎高校からの勝利、本当におめでとう御座います。会場中の誰もが稲荷崎高校が勝つことを疑っていなかったでしょう。ですが君達は自らの力で勝利を掴んだ。十分誇って下さい!」
「「「オォーッス!」」」
「そして次の相手は皆も知ってる因縁のライバル学校である音駒高校です。油断せずにいきましょう!」
「「「はい!」」」
続いて烏養コーチ。リモコンを操作して、供え付きのテレビが点いた。更に、ケーブルで繋げたタブレットを烏養コーチが操作するとテレビにその画面が映る。
「そんじゃ、対音駒のミーティングやってくぞー。
次の試合、狙うのは孤爪だ」
「っ!? なんでですか!?」
「発言するときは挙手するようにー」
烏養コーチが翔陽のことを窘めると、今度は挙手をして翔陽が同じ事を聞いた。
「そうだな。東峰と田中。2人の最高到達点はどんくらいだ?」
「えっ? 335cmです」「328cmっす」
「じゃあ孤爪は? 大凡で良いぞ?」
そ。2回戦の早流川工業もやることは一緒。こっちは空中戦でプレッシャーを与えていく。
「多分300cmあるかないかです」
「澤村正解。今までの合宿もそうだし、清川と早流川工業の試合を見た感じ、助走しても孤爪は肘までは出てない。つまり305cmのバスケのリングも届いてないと思う。
だから、高さの真っ向勝負だったら東峰旭と田中に軍配が上がるんだよ。というか、高さで言えば黒尾と灰羽以外にはこっちが有利だ。影山、日向、月島、東峰、田中ってな。
話を戻すけど、今の音駒のスタメンの中だったら孤爪が一番身体能力が低い。つーわけで早流川もやっていたように孤爪から狙う。
前衛ならブロックアウトで指先を狙うだとか後衛なら1本目を取らせるとかな。特に1本目を孤爪に取らせるってことをやってほしい。
今までの合宿を通してだけど、孤爪が1本目を触った後ってどんな風に攻撃されてきた?」
「「「…………」」」
基本的には海先輩がレフトの山本先輩か福永先輩に二段トスを上げる、です。
力先輩が挙手をして、烏養コーチが発言を許した。
「海さんがレフトの山本か福永に二段トス、だったと思います」
「そう、ウチみたいにリベロの夜久がコンビを使ってくるとかないんだよ。レフトに二段ってすんげえ単調なバレーをやってくる。そんで、山本にしろ福永にしろ牛島みたいに3枚ブロックを吹き飛ばすほどのパワーはない」
「良く気づきましたね!!」
「いやー、俺も早流川工業の試合見て気づいた」
やべ、烏養コーチが俺を睨んできた。なんだよ。
「ていうか、猫又気づいてたろ」
「「「えっ」」」
一斉に見るんじゃ無い。グリンって恐いんだから。グリングリーン。
「まあいい。
そんで、夜久を狙わないも頭に入れとけよ。稲荷崎もやってたけど、今日の試合で猫又を避けてサーブ打ってただろ? つまり優秀なリベロでもボールに触らなければ出てる意味が無い。チームとしても流れに乗れないし。
夜久のスーパーレシーブはこっちにプレッシャーを与えてくる。でも触らなければいる意味がない。って訳でサーブは山本狙いで良いと思う。できれば孤爪にファーストタッチをさせたいけど。いいな?」
「「「はい!」」」
ブロックも孤爪先輩を狙うってあっちに気づかれたら黒尾先輩と灰羽がスイッチしてストレート塞いでくるだろうし、そうなったらライト側から攻めていけばいい。だって9mの移動って大変だし。ブロックを避けるために速い平行トスをレフトとライトに上げてるんだから。
……とまあ、勝ち筋は見えてるけど、翔陽だけはあんまり釈然としてない様子だ。相手の弱いところを狙うのは定石だけど、やっぱり正面突破したいお年頃なんだろうなー。
「……あの、烏養コーチ」
「フリーで決めたスパイクの1点。サービスエースでもぎ取った1点。ブロックでドシャットした1点。フェイントで相手のカバーできないところに落とした1点……。
バレーって色んな方法で1点ずつ積み重ねていく球技なんだよ。馬鹿正直に戦う必要はねえ。分かりやすく孤爪が弱点なのが悪い。
日向、悔しかったら1点でも多く決めろ。そうすりゃポイントゲッターとしての意見ってことで話を聞いてやる。
……澤村、今のウチの目標はなんだ?」
「全国制覇です」
ゴミ捨て場の決戦の実現も目指してここにいるのは確か。でも音駒とだけ戦うんなら練習試合でも良い。……まー、俺にはゴミ捨て場の決戦の実現の方が比重大きいけど。
でも烏野全体での目標は全国制覇だ。4月からそこを目指してやってきた。おーし。
「だろ?
もちろんゴミ捨て場の決戦に思い入れがあるのは俺も同じなんだけど、お前らに全国制覇して貰うために4年前から勉強してきた。音駒と戦う事だけが春高での最大の目標じゃ無いんだ。
……まあ、とは言ってもそんな簡単に割り切れねえだろうから存分に楽しんでこい。東京体育館でやるゴミ捨て場の決戦をよ。あとOBとして猫又先生の悔しがる姿を見てえ。物心付いたときから辛酸なめさせられてきたからなぁ!」
「「「……はい!」」」
あー、耳が痛い。
今までずっと祖父ちゃん達にゴミ捨て場の決戦を見せることを目標にバレーやってきたけど、明日の試合が終わったら俺どうなんだろう。これからもバレー続けるのか辞めるのか、一体どっちなんでしょーねー?
知りたいような知りたくないような。迎えて嬉しいはずなのにどこかびびってる自分がいる。
「勝てば明日2試合、つまり最大で6セットやる可能性あるから早めに寝とけよー。明日も総力戦だからなー、全員出すぞー」
「「「オォーッス」」」
風呂入って寝よーっと。…………うーん。
「翔陽ー、勉強するぞー」
「なんで!?」
「こっちが『なんで!?』だよ。冬休みの宿題やったんだよな?」
「「「ほぎゃあ!?」」」
おや、龍先輩とノヤ先輩も駄目でしたか。翔陽ハイテンションすぎねえ? こいつ大丈夫か? 暗記物やらせれば寝るだろ。
◆
一方、音駒高校男子バレー部一同も烏野高校対策のミーティングを始めていた。コーチの直井学がタブレットを旅館のテレビに繋いで説明していく。
「白鳥沢、椿原、稲荷崎とみてきたが、コートの幅を使ってブロックの枚数を減らしてくる。黒尾とリエーフ、最悪ゲスブロックで構わん。『こっちに上げそうだな』って直感大事にしていこう」
「「はい!」」
「それで、ブロックの上から打たれることが多いから、Aパス、Bパスじゃなくて良い。なんとか触って相手にプレッシャーを与える。つまりウチのバレーだ。やることはいつもと同じだ。いいな?」
「「「はい!」」」
「10月の合宿で戦った烏野とはちげえぞ。油断すんなよ」
「「「はい!」」」
下馬評は烏野高校が有利と言われており、猫又育史や直井学をはじめとする音駒高校男子バレー部一同も高さにおいて非常に厳しい戦いが待っていると予想している。
◆◇
同時刻。
稲荷崎高校への祝勝会も兼ねて、田中冴子、嶋田誠、滝ノ上祐輔、宇内天満、そして月島明光の5人が居酒屋の前でとある人物達を待っていた。
「稲荷崎もそうだったけど、明日遂にゴミ捨て場の決戦かー! くっそー、現役生がめっちゃ羨ましい!」
「お互いにあと一歩って所で泣かされてきたもんなー。宇内もそうだったよな?」
「そうですね~。いやホントあと1歩届かなかったです。負けてからも夢に出てきましたし」
「こりゃ応援も捗るね!!」
「「「よっ! 頼むぞ、応援団ダンチョー!!」」」
「まっかせっなさーい!」
そんな風に5人が話していると、複数人の足音と「おっほっほー、さっすが烏野じゃねえの。いつ見ても烏合の衆だねぇ」という言葉が5人の耳に届いてきた。
聞覚えのある声に嶋田誠と滝ノ上祐輔がパッとそちらを振り向くと、2人は思わず彼らの名前を呼ぶ。
「「室岡! 岩尾! ……垣谷さんも!」」
「よっ、久しぶり」「何年ぶりだ?」「懐かしー、久しぶり~! 今名前忘れてなかった! ちなみに結婚して今は中川で~す!」
「「な、なんだってぇ!?」」
まず、嶋田誠と滝ノ上祐輔と同じ代の音駒高校男子バレー部の室岡史人、岩尾聖太郎、そしてマネージャーだった旧姓垣谷由利香の3人が烏野高校OBに声をかける。
「粟村! 行徳!」
「おー、月島と宇内じゃん。久しぶり!」「ツッキーじゃん、久しぶり! 宇内もさっきぶりだな~」
「はい!」
「天満ー、さっきぶりー」
「おう、新郷も」
月島明光と同じ代の粟村僚介と行徳真生の2人。そして宇内天満と同じ代の新郷正啓。更に、行徳真生と新郷正啓は現在宇内天満と同じ大学に通っている。
つまり、今この場にいるメンバーは烏野高校男子バレー部のOBと音駒高校男子バレー部のOBが「ゴミ捨て場の決戦開催を祝して一緒に飲もうぜ!」と連絡を取り合った集まりであった。これ以後も増える予定である。
「そうそう、それでこの女性が烏野高校に通ってる現役生の姉で、宇内と同じ代の田中冴子な」
「田中冴子です。烏野の5番の姉で今日は突然お邪魔しちゃってごめんなさい! 宜しくお願いします!」
「ちなみに和太鼓応援チームの団長やってる」
「「「……あ、うん。いたわ」」」
音駒高校の応援をしている中で、烏野高校と稲荷崎高校の対戦も気になっていた男性数人が記憶の中の何故か見覚えのある女性と田中冴子を照らし合わせては合致させる。
「宜しくね、冴子ちゃん! 私は中川由利香、垣谷でも大丈夫だから!」
「すみませ~ん、お邪魔しまーす!。……垣谷さん、お酒強いですか?」
「私達の代だとベスト3に入る酒壕だよ」
「是非飲みましょう」
「合点」
女性2人が着々と親交を深めている中、室岡史人が「……あの子、酒強いのか?」と聞いて、「合宿の時猫又先生と張り合ったとかって繋心から聞いた」と嶋田誠が答える。
「「「そいつはやべーな…………」」」
「外寒いから中で話そうぜ。色々積もる話あるだろうしよー」
「今日来られそうな人には店の位置情報と〝室岡史人〟で予約したこと伝えてくれ」
「「「オッケー」」」
「じゃ、早速行くぞー」
そして、11人が店内へと入っていく。ゴミ捨て場の決戦・前夜祭が始まった。
◇◇
春高バレー期間中、千葉県にある猫又家に泊まりに来ていた烏養一繋は猫又明育と猫又美繋の3人で晩酌をしていた。烏養典子と猫又真緒と猫又美緒の3人は既に就寝している。
「お父さん緊張してる? 明日の試合決まってから口数少なくなってるよ」
「……うるせえ」
「コーチって飛び入りで出られないもんでしたっけ?」
「出来ねえよ。するつもりもねえ。そんなん逮捕だろ」
酔いもあって3人はゲラゲラと笑う。実際にそうなったら笑い事では済まないが。
「人生70年何があるか分かんねえな」
「何言ってんの。明日のゴミ捨て場の決戦だけじゃないでしょうが。来年の烏野もそうだし、繋護が烏野卒業しても応援してよ」
「そうですよー、真緒も美緒もお義父さんには『結婚式出てー!』って言ってるじゃないですか。今のご時世100歳越えだって普通です。まだまだ人生楽しんでいきましょう」
「……たっくお前らはよー」
照れ笑いからか、烏養一繋はおちょこを一気に呷った。
◇◇
一夜明けて、遂に音駒との試合の日だ。
朝起きたらおばさん2人、父さん、母さん、姉ちゃん、美緒、彩音ちゃん、彩歌ちゃんと事情を知ってる皆から【頑張れ!】ってメッセージが届いてた。皆に返信してっと。
「お、翔陽どうだよ、体調」
「めっちゃ寝た! 風呂の後のベンキョーってすげー眠くなるのな!」
「教科書開いて5分くらい? 影山より寝落ちのスピードやばかったぞ」
「というか補習の時は3分で寝落ちしたって聞いたけど」
「へっ、俺の勝ちだな」
「っ!? 影山には負けーん!」
いや良い風に言ってるけど駄目だろ。進級できなくなるぞー。
春高3日目で知らない間に疲れも溜まってるだろうから怪我のリスクが増えてる可能性も考えて勉強させた。教科書見た瞬間寝たな。面白かった。
とりあえず今日2戦あると考えていこう。勝ち抜けば準決勝は12日だし。さーて頑張り時ですよー。やるしかないな。
「おし、じゃあ朝御飯食べてゴミ捨て場の決戦だ。気合い入れてくぞ!」
「「「シャアーっす!」」」
明確に意識したのはいつだったか。3歳とか4歳だったような気がする。あれから10年強。遂にここまで来た。おし。じゃあ朝御飯食べよう。
東京体育館でアップをしたりと過ごしていたら遂に俺達の試合の時間になった。公式ウォームアップが終わってベンチに戻る。
「さあ、遂にこの時が来ました。多くの強豪校を食らって大きく育ったその翼で今日も舞いましょう。音駒に勝つ瞬間を見せて下さい!」
「「「はい!」」」
「昨日言ったとおりだ。難しいことは何一つない。ただ〝ボールを落とさない〟こと。そんで俺達のバレーをやって来い!」
「「「オォーッス!」」」
やっちゃんを除いた全員で円陣を組む。
「烏野ー! ファイ!!」
「「「オォーッス!!」」」
まずはエンドラインで整列だ。
◆
一方、音駒高校男子バレー部一同も簡単にミーティングを行っていた。
「良し、黒尾」
「はい!」
部員14人が円陣を組んで、キャプテンの黒尾鉄朗がいつもの決まり文句を紡いでいく。
「俺達は血液だ。滞りなく流れろ、酸素を回せ。〝脳〟が正常に働くために。
音駒ー! ファイ!!」
「「「オォーッ!」」」
烏野高校同様に、14人がエンドラインへと向かっていく。
◆
大地さんが1番右で俺が1番左になるように背番号順でずらっと並ぶ。
「「「お願いします!」」」「「「お願いします!」」」
主審の笛でネット際まで走って行って、海先輩と夜久先輩の2人と握手する。
「今日もウチが勝つよ」
「いえいえ。今日は烏野が勝ちますから」
「ウチが勝ったら転校しろよ。リエーフの面倒見てくれ」
「しませんよ?」
おやおや、ご冗談が上手なことで。……ビックリした。海先輩もあんなこと言ってくるんだ。ウケる。
2人と別れてベンチサイドまで戻って早速ポジションと背番号の確認に入った。俺とノヤ先輩はサイドラインの横で副審にお腹側の番号を見せる。
音駒
2 海先輩 4 山本先輩 11 灰羽
1 黒尾先輩(衛輔君) 6 福永先輩 5 孤爪君
烏野
1 大地さん 10 翔陽 5 龍先輩
3 旭さん 11 蛍(ノヤ先輩) 9 飛雄
1セット目はノヤ先輩スタート。俺は分析させて貰いますよー。ってことで、ウォーミングアップゾーンで皆と応援だ。
「おし! しっかりと応援すんぞ! 音駒の応援に負けないくらいにな!」
「「「はい!」」」
スガさんを中心にしっかりと声だしていこう。東京開催って事でメチャクチャ音駒の生徒数多いから。マジやべえ。
サーブは烏野からで、最初の飛雄がエンドラインまで走ってくる。
「「「影山1本ナイッサー!!」」」
「強打来るぞ! 1本集中!」
「「「オォーッ!」」」
主審の笛が鳴って、飛雄がジャンプサーブを打った。狙いはセンターの山本先輩。
「「「山本!」」」
「くっそ……!」
手前に落ちたっぽくて、深く守っていた山本先輩が飛び込むような形でボールに触った。すると、チャンスボールとなってこっちコートに返ってくる。
「「「チャンス!」」」
「影山!」
「いけっ!」
まさかの飛雄がファーストタッチでレフト側に跳んだ翔陽に縦のBクイックを上げて、翔陽が孤爪君のブロックの完成前にスパイクを決めた。【0-1】。
「「「シャアっ!!」」」
「「「ナイスキー!」」」
翔陽を中心にコートの6人がウェイウェイしてる。あー、早く俺も試合に出たい。
「良いぞー日向!」「もう1本決めろー!!」「影山ももう1本ナイッサー!!」
ぐっすり寝た甲斐があったみたいだな。翔陽も飛雄もメチャクチャ調子良いじゃん。
「「「影山もう1本ナイッサー!!」」」
「1本集中!」
「「「オォーッ!」」」
主審の笛が鳴って、飛雄はジャンプサーブを打った。狙いはライトの灰羽とバックライトの孤爪君がネット際に詰める分穴になりやすいライト側。しかもサイドラインに近いからめっちゃ良いサーブだ。
「「「福永!!」」」
福永先輩がフライングで触ってボールがライトのバックゾーンに上がる。あのボール取るか。ひえっ。
「カバー!」
「研磨! もってこい!!」
「トラ!」
レフトに移動した山本先輩がトスを呼んで、ボールに追いついた孤爪君がアンダーで二段トスをレフトに上げる。ライトの大地さん、センターの翔陽とレフトの龍先輩の3人がブロックについた。
「せーのっ!!」
「「「ブロック3枚!」」」
「ダァ!」
「ノー!」「ワンチ!」「ノー!」
翔陽の右手に当たってチャンスボールになって、そのボールをノヤ先輩がしっかりと処理してこっちの攻撃ターンになった。
「レフト!」「バック!」「A!!」「ライト!」
レフトの龍先輩、バックセンターの旭さん、センターの翔陽、ライトの大地さんがトスを呼んで、同時に助走を始める。さーて、飛雄は誰に上げるかな?
「お願いします!」
「「「田中だ!」」」
飛雄はレフトの龍先輩に早い平行トスを上げて、龍先輩がサイドライン上って言われてもおかしくないくらいストレートにスパイクを打った。
孤爪君が飛び込んで上げるけど、触ったボールはアンテナの外を通ってこっちコートのレフト側に落ちる。アウトだ。【0-2】。
「おっしゃ!」
「「「ナイスキー!!」」」
「良いぞー田中!」「ナイスコース!」「もう1本決めろー!」
夜久先輩を狙わない。孤爪君を集中的に狙って1本目を取らせるって気づいたらどう対応してくるかな。
夜久先輩をバックライト、孤爪君と海先輩をバックレフトにしてきそうだけど、セッターのトスの上げる位置がライトからレフトになるだけで方向感覚狂っちゃうし。
「「「影山もう1本ナイッサー!!」」」
「1本切るぞ!」
「「「オォーッ!」」」
主審の笛が鳴って、飛雄はもう一度ジャンプサーブを打った。狙いはライト側。でもちょっと軌道が低いか。
「「「リエーフ!」」」
「はい! ……いいえ!!」
ボールがネットインして灰羽が自分で処理する。……おい、チャンスボールだろうがよー。乱れてんじゃねえか。
若干乱れたボールを孤爪君が追いかけて、アンダーでレフトの海先輩に上げた。
「「「レフトだ!」」」
ライトの大地さんにセンターの翔陽と龍先輩の3人が合流してブロックの態勢を整える。
「せーのっ!!」
「「「ブロック3枚!」」」
「っし!」
「ノー!」「ノー!」「ワンチ!」
大地さんの右手に当たってこっちコートのライト側のサイドラインを大きく越えていく。でもチャンスボールみたいなものだから走った飛雄が追いついてバックセンターの旭さんがバックアタック出来るようにコートに戻した。
「東峰さん!」
「旭ー! 打て!!」
「バックアタック来んぞ!」
ライトの海先輩とレフトの山本先輩がセンター側に集まって、灰羽を合わせた3人で旭さんのバックアタックをブロックしようとする。
「せーのっ!」
「「「ブロック3枚!」」」
「……田中!!」
おおっ! あれは昨日宮ツインズがやってたバックアタックと見せかけたトスじゃないか!! 言うなればフェイクトス?
「「「田中ー! いけー!!」」」
「……オラ!!」
ノーブロックの状態で龍先輩がスパイクをあっちコートに叩きつけた。ボールはコートど真ん中に落ちる。【0-3】。
「シャオラァ!!」
「「「良いぞー田中ー!」」」「「「旭さんナイストスー!!」」」
「良いぞー! 後輩に負けるなー!!」
「さっき旭さん宮ツインズのトスやってたよな!?」って2年生が盛り上がってる。いいぞー、もっとやれー。
おっと? ここで猫又先生がタイムアウトを要求したぞ。早いんじゃないの、大丈夫かよ。まあいいや。タオルとドリンクの準備!!
◆
1回目のタイムアウトを要求して、音駒高校男子バレー部一同は早速ミーティングに入った。白鳥沢学園や稲荷崎高校を破った烏野高校の強さを実際に感じて、雰囲気が重くなっている。
「烏野研磨のこと狙ってきてますね」
「あとやっくんを避けてるよね」
「俺がバックライトに行くか?」
「そうなったらバックレフト側を狙われるじゃん? あと研磨もレフトからのトスってあんま経験無いよな。ちょっと博打じゃね?」
山本猛虎、黒尾鉄朗、夜久衛輔、黒尾鉄朗の順で意見を言い合って、何か考え込んでいた孤爪研磨が口を開く。
「……最悪犬岡が海君と替わって対応かな?」
「そこで『はい』とは言わないけどね。でもまあなんとしてもワンチはするさ」
「あと球彦も準備しとけよ。サルカワみたいに研磨潰しだ、しかも直接」
「レフトからの攻撃増えるだろうから最悪ブロックもライト側に詰めて良い。澤村君の――」
「澤村君と影山の攻撃は俺がなんとかする」と続けようとする夜久衛輔であったが、猫又繋護の存在を思い出した。攻撃5枚となったらこの作戦も通用しなくなるからと思わず口をつぐむ。
「やっくん?」
「いやー、繋護もいるんだなってさ」
「「「…………っ!!」」」
夜久衛輔の言葉に全員がはっとし、そのまま烏野高校側のベンチサイドで烏養繋心とバインダーを持ったまま何やら話してる猫又繋護を見る。そう、オーバーでのトスが苦手な西谷夕が出ていて、影山飛雄の様に自在にトスを上げられる猫又繋護はまだ試合に出ていない。
試合は始まったばかりだというのに、音駒高校男子バレー部一同にプレッシャーが襲いかかった。
「で、でもさ。やるしかねえから。な!」
「動揺してんじゃねえ、黒尾!」
「やっくんのせいじゃん!!」
3年生3人が率先して場を盛り上げようとしたおかげで、幾分音駒高校の雰囲気が良くなる。
◆◇
烏野高校の黒をメインとするユニフォームとリベロ2人が着ているオレンジをメインとするユニフォーム。
音駒高校の赤をメインとするユニフォームとリベロ2人が着ている白をメインとするユニフォーム。
9 m × 9mの半コートの中で、その2色ずつが自由自在に動き回る。50年夢見てきたこの光景を見ることができて、烏養一繋は満足げに頷く。
「……『練習では本番を想定して。本番では練習でやってきたことを出すように』って私達自身も選手によく言ってますけど、なんだか練習試合みたいですね、この試合」
「こういう試合、なかなか出来ないんだよね~。良いじゃん良いじゃん」
「なんか音駒の方バタバタしてるけど」
本日も羽染葵育と下園育音の2人は甥である猫又繋護の応援に来ていた。
「今日こそはウチが勝つぞ。猫又」
そんな呟きが漏れるものの、このゴミ捨て場の決戦がいつまでも続いて欲しいとも願う烏養一繋らであった。
◇
第1セットは順調にいって、【18-25】で先取した。ふははー、強いだろ。
音駒の応援席側のコートに移動してミーティングに移る。
「おーし、1セット目良くやった。このままストレート勝ち狙っていくぞ。集中していけ」
「「「はい!」」」
シンクロ攻撃をやってくるとは思ってなかったけど、全部セカンドテンポで飛雄のトスを見ていたから対応できた。ファーストテンポのシンクロ攻撃を上げられる飛雄やばすぎだろ。……俺も出来るんだから練習すればできるか。
さーて、2セット目やってやんよー。
◆
一方、音駒高校男子バレー部一同もコートチェンジをしてミーティングを行っている。第1セット丸々狙われ続けた孤爪研磨はベンチでぐったりしながらミーティングに参加していた。
「研磨ー、大丈夫かー」
「根性見せろ、根性!」
「……根性でどうにかなると思ってんの?」
「なるだろ!!」
「これ以上は疲れるだけだ」と思った孤爪研磨は口を閉じてベンチに寝っ転がる。けれど、思った以上にベンチが硬くてすぐに起き上がった。
「球彦に替えますか?」
「そうだな、球彦、2セット目もいつでも出られるようにな」
「はい!」
手白球彦が元気よく返事をして所でセット間のミーティングが終わった。
◆
円陣を組んだら、ポジションと背番号の確認をするためにスタメン6人がコートに向かっていく。俺とノヤ先輩はサイドライン近くでお腹側の背番号を副審に見せた。
烏野
5 龍先輩 10 翔陽 9 飛雄
1 大地さん 11 蛍(俺) 3 旭さん
音駒
2 海先輩 4 山本先輩 11 灰羽
1 黒尾先輩(衛輔君) 6 福永先輩 5 孤爪君
こっちは飛雄のサーブから始まるようなローテーションで、稲荷崎の7番みたいに点を稼ぐ戦術。音駒は1セット目と同じ。
「いつでも出られるからな!」
「ノヤ先輩はお休みしていて下さいね」
「はぁ~ん!?」
オーダーの確認が終わってノヤ先輩とそんな会話をしたら、今度は蛍と入れ替わる。
「……大丈夫?」
「何が?」
何が〝大丈夫〟なんだ? 訳分かんねー? 何言いたいんだっての。
セット始めの蛍の「大丈夫?」って意味が分からなかった。でも、1点1点こっちが点数を取っていく度にこのゴミ捨て場の決戦が終わりに近付いていくことにも気が付いた。
勝ちたい。でもそれは音駒が負けるって事だ。
音駒にも勝って欲しい。でもそうすると烏野が負ける。
烏野が勝ったら猫の方の祖父ちゃんに顔見せできる?
音駒が勝ったら烏の方の祖父ちゃんに顔見せできる?
ああ、どうなんだろな。試合が進行するにつれてグルグルと思考に余計なものが混ざっていった。
「東峰さん!」
「「「旭君来るぞ!!」」」
飛雄からレフトの旭さんに速い平行トスが上がって、旭さんが孤爪君のブロックの完成前にスパイクを打った。そのボールは海先輩を弾いて後ろに吹っ飛んでいく。吹っ飛んで吹っ飛んで、遂に落ちた。【25-19】でウチが2セット目も獲った。
「「「ナイスキー!!」」」
……そうか。もう終わりか。どこかぼんやりとしながら旭さんにハイタッチしに行く。
「っ!? 猫又どうした!?」
「え?」
「「「どうした!?」」」
大地さんだけじゃない。皆に心配されてんだけど。しかも黒尾先輩達にも。
「あー、澤村君泣かせたー」
「泣かせてない! 大丈夫か?」
「大丈夫ですよ、うん。ほら、整列しないと」
エンドラインに向かっていくまでに自己分析っと。原因はこのゴミ捨て場の決戦しか考えられない。
猫と烏の祖父ちゃん達の学生時代から始まって、この50年実現できなかった2人の夢。全国大会での烏野高校と音駒高校の対戦。それが【猫対烏! ゴミ捨て場の決戦!】。
いつか実現させて祖父ちゃん達に見せたかった。そして今日やっと叶った。でもまだ終わらないで欲しかった。多分そういうこと。
「次はー。ゴールデンウィークとかじゃね?」
「3月にも合宿出来るかもな」
……何言ってんだよ、翔陽と飛雄は。
「だーかーらー、俺達あと2年あんじゃん。まだゴミ捨て場の決戦のチャンスはあるって」
「わかんねえけど、また東京で遠征あんだろ」
「珍しく頭回ってないね。日向以下だよ」
「おい月島!!」
ほーん。……ほーん? 確かに? 今年で終わったわけじゃ無いか。
「来年度はまだ分からないけど、今年度みたいにいっぱい音駒と合同練習出来るといいな」
「そうそう。日向も言ってるけどねこ達にはあと2年あんだし」
「俺らもまだあと1年ある」
「準々決勝のリベロは俺がでてやるー!」
「いやいや、そこは俺が出ますよ」
「おっ、復活したな」
2年生から励まされてようやく立ち直った。そうだ、まだ2年あるし。うん。
「「「ありがとうございました!」」」「「「ありがとうございました!」」」
エンドラインに並んだら、主審の笛でネットまで向かっていって、海先輩と衛輔君と握手。
「やっぱり強いなー、ちゃんと勧誘しとけば良かった」「めちゃくちゃ悔しいから大学かVリーグか、そこでリベンジするわ。高校で辞めんじゃねえぞ」
「転校届けは出しませんよ?」
「俺達卒業しちゃうからな。だから上の舞台で待ってる」
「でも、高校卒業したらイタリアとか行ってそう」
なんだ、そのイメージ。
あと、音駒の皆さんがこっちコートに入ってきてはちゃめちゃなことになった。
「来年はリベンジするからな!!」
「鼻水汚えぞー、リエーフ!」
「夜久さんジョーチョ! ジョーチョってのがあるでしょうが!!」
あっちで山本先輩と龍先輩、ノヤ先輩が集まってるし。
「〝次〟は音駒が勝ーつ!」
「いやいや、烏野が勝つからな!」
「俺達が勝つっての!」
「はぁーん!?」
あっはは。何だこれ。しっちゃかめっちゃかなってんだけど。あ、孤爪君が翔陽と来た。
「ホンット繋護ってラスボスだよね。強すぎ」
「分かる! 俺も全然敵わない!」
「俺も敵わないんだからおめーには無理だろ」
「影山てめえ!」
ふらっと来た飛雄にも〝ラスボス〟判定された。なんでやねん。
「あー、黒尾。こういう時って一緒に挨拶して良いと思うか?」
「いいんじゃね? おーし、応援してくれた人達に挨拶すっぞ! 並べ!」
「「「はい!」」」「「「はい!」」」
音駒の応援席側のコートにいるから、烏野のメンバーも一緒に音駒の皆さんと並ぶ。
前列に音駒、後列に俺達。大地さんと黒尾先輩が1番右で芝山と俺が1番左。あと清水先輩とやっちゃん、猫又先生と直井先生、武田先生、烏養コーチも一緒だ。
「気を付けー! 応援ありがとう御座いました!!」
「「「応援ありがとう御座いました!!」」」
「ナイスゲーム!!」「次は勝てよ!!」「またゴミ捨て場の決戦やれよー!!」
次の瞬間には拍手とか指笛とかがすげーことになった。やっぱり応援多いと凄いな。やっておいてなんだけど俺達アウェー過ぎない?
……お。史人兄ちゃん達だ。応援しにきてたのか。
「良し、烏野側行くぞー」
「「「はい!」」」
今度は反対の烏野の応援席側のコートに向かっていって、前列が烏野、後列が音駒で並ぶ。
「気を付けー! 応援ありがとう御座いました!!」
「「「応援ありがとう御座いました!!」」」
「ナイスゲーム!!」「準決勝も勝ち上がれよ!!」「またゴミ捨て場の決戦やれよー!!」
そう、今日はダブルヘッダー。次は鴎台高校か高木山高校。順当にいけば鴎台高校だと思う。
それはともかく祖父ちゃん達に手を振っとこ。イェーイ、やったぜー。
「繋護」
「ん?」
烏養コーチに呼ばれて大人4人の方へ向かい、手を出してる猫又監督と握手する。
「今からでも転校していいんだからな?」
「しないよ。しないからね?」
「繋心の指導が合わなくなったら音駒に来いよー」
「直井てめえ!」
あー面白。
祖父ちゃんと手を繋いだまま観客席の方を見ると、父さん母さん、姉ちゃん、美緒、彩音ちゃん、慎吾さん、咲良さんと彩歌ちゃん、伯母さん2人、誠兄ちゃんと祐輔兄ちゃんをはじめとするOB、俺の事を知っている人は全員笑ってる。ああ、良かった。
「今回はウチの負けだ。でも次は音駒が勝つからな、これで終わらせられるかっての」
「うん、そうだね。今回はウチの勝ち」
「次も頑張れよ」
「うん。応援してて」
「ああ」
今度は学兄ちゃんと握手。
「バレー辞めるなよ?」
その質問を聞いて、新しく出来た目標を口に出していく。
「ゴミ捨て場の決戦を夢見て今までやってきて、実際に叶ったらどうなるんだろうって思ってたんだけど、自分がどこまで出来るのか知りたくなってきた、みたいな。高校やりきって大学以降はまた考える」
「そっか。頑張れよ。いつでも転校してきて良いからな」
「しないからね?」
皆同じことしか言わないのな。全く。来年も再来年もゴミ捨て場の決戦やりたいな。
「お。梟谷の試合も終わったぽいな」
「よーし、撤収するぞー、急げー」
「「「はい!」」」
次の対戦相手はどっちかな。
【登場人物まとめ】
音駒高校男子バレー部OB
室岡史人
岩尾聖太郎
中川由利香 旧姓垣谷由利香 ※3人は烏養繋心達と同い年 86年生まれ
粟村僚介
行徳真生 ※2人は月島明光と同い年 89年生まれ
新郷正啓 ※宇内天満と同い年 90年生まれ