烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

40 / 41
~鴎台高校 ベンチメンバー~

監督 アーロン・マーフィ

01 諏訪愛吉
02 時崎隆雄
03 蒔村啓介
04 野沢出
05 星海光来
06 昼神幸郎
07 乗鞍功
08 別所千源
09 五條健次郎
10 白馬芽生
11 寺口丈弘
12 戸倉リアム
13 上林鯨一郎 リベロ
14 梅原政春 リベロ

※ 2、3、9、11、14がオリキャラ

スターティングオーダー
10 白馬芽生 6 昼神幸郎 5 星海光来
4 野沢出 8 別所千源 1 諏訪愛吉


2013年1月⑤

 運が良いことに俺達は準々決勝までの間に数時間間隔が空く。

 これねー、場合によっては1時間しかないとかあんだよ。インハイでもそう。試合間の休憩が足りなくて優勝候補でもあっさり負ける時もある。練習試合だと8セットとかやるって? やっぱり実戦とは感覚がちがうんだよなー。

 なんとかしろって思うけど、そもそも会場と日数が足りてないんだよなー。バレーボール協会の方達改善して下さーい。

 

「つー訳で、次の試合まで結構間隔空くからしっかりと休憩しとけよ。暖かい格好して補食と睡眠ちゃんとな」

「「「はい!」」」

「今からだと、だいたい1時間半後位から動き始めるって感じだから。単独行動禁止な。絶対に2人以上で行動すること」

「「「はい!」」」

 

 鴎台にしろ高木山にしろデータは確認済みだから、俺はお昼食べて寝る。

 

 

 ……あ。まーたこの夢か。

 目を開けると馬鹿デカい扉だけがある真っ暗な空間に一人いた。

 そして、俺が目を開けたタイミングで扉が重厚な音を鳴らしながら開いていく。中はこっちと違って白い空間だ。

 ……はいはい、入りゃあ良いんでしょう? 分かってますよー。白い空間に向かって歩き出すとだんだんと意識が薄れてきた。

 

 

 ……はっ!

 

「うわっ!?」

 

 声がした方を見ると、忠が俺に手を伸ばしていたところが目に入る。

 

「……寝込み襲われる所だった?」

「違う! 荷物取ろうとしただけ」

「ああ、そう」

 

 良かった。寝込み襲われてたら蹴り飛ばす所だった。

 それに滅茶苦茶調子良い。……なーんか夢見てたような気もするけど。覚えてないなー。トイレ行ってくるか。

 

「トイレ行こうと思うんですけど、誰か一緒に行ってくれる人いませんかー?」

「あ、じゃあ俺も行こうかな」

「俺も行きます」

 

 スガさんと一仁先輩と一緒に行くことになった。歯磨きもしとこうかな、うん。

 

 

 全員で集まって鴎台高校の対策ミーティングに入る。

 

「4月からの座学で鴎台の試合動画も見たことあるから戦い方ってのは分かってるよな? コートの幅を上手く使っていく、だ」

「「「はい!」」」

「伊達工の追分先生も鴎台のブロックを見て取り入れたって言ってるくらいだから、いわばオリジナルと言っても良いだろう。それだけバンチリードでこっちにプレッシャーを与えてくる。しかも2mが何人もいるから相当プレッシャーかけてくんだろうな。

 だから速い平行トスでブロックを散らせて1対1の状況を作る。そしたらこっちの土俵で戦える。これが最低条件だってのを忘れるなよ」

「「「はい!」」」

 

 伊達工業高校に強力なユーティリティプレーヤーってのが鴎台高校だからなー。

 

「2mの白馬も凄いし、昼神も凄いし、星海も凄い。まー、ここに勝ち上がってる時点ですげーんだけど。

 でも、だからといってウチが劣ってるわけじゃない。ブロック3枚に対して最大5枚での攻撃。自分達のバレーをすれば勝てる試合だ。

 しっかりと強いサーブを打って相手を乱す。ブロックでワンタッチを取って確実にチャンスにする。レシーブで相手の攻撃に対応する。

 今回も全員で勝ちに行く。全員出すぞ。いつでも出られるように準備しとけよ」

「「「はい!」」」

 

 俺が寝てる間に、鴎台の試合を見てた翔陽と飛雄に星海先輩から宣戦布告があったらしい。「どっちが〝小さな巨人〟か確かめようぜ」って。

 ……いや? 今の段階だったら星海先輩の方が雲の上の存在じゃね? レフトでオールラウンダーの星海先輩とミドルで交替ありの翔陽。比べものにならないと思うけど。

 ま、全国制覇の為にここにいるんだから負けないけどなー。

 

◆

 

 鴎台高校男子バレー部一同もまた準々決勝の相手である烏野高校の対策ミーティングを行っていた。監督のアーロン・マーフィが中心となってミーティングを進めている。

 

「見て貰って分かると思いますが、烏野ハイスクールは最大5人で攻撃をしてきます。サーカスみたいデスね。

 こちらのブロック3枚に対して4人、5人と攻撃に参加してくるので、まずはサーブでプレッシャーをかけていくこと。ファーストタッチをしたレシーバーが助走に遅れたら、そのレシーバーに対してマークを外して構いません。これでほんの少しブロックがしやすくなります。

 慣れないうちはブロック1人になってしまうと思いますが、コースをしっかりと塞いで下さい。レシーブで対応しましょう。いいデスね?」

「「「はい!」」」

 

 アーロン・マーフィはタブレットを操作して、東峰旭と田中龍之介の写真を部員に見せた。

 

「サーブとスパイクですが、3番と5番を狙いましょう。2人はまだまだレシーブが甘い。その逆で、リベロの4番と13番は狙わないこと。

 2人とも非常にハイレベルなプレーヤーです。今のワレワレでは彼らからサービスエースを取るのは厳しい。けれど、烏野ハイスクールの守備は1番とリベロの2人で補っているので他の学校よりも穴が多い。攻撃力は高いですが、守備に関してはそこまでです。

 サーブサーブサーブでシンクロ攻撃を封じてブロックで仕留める。これがワレワレの基本的な戦術デス。

 恐れる必要はありません。いつも通りウチのバレーをしましょう」

「「「はい!」」」

「それではしっかりと柔軟とアップをして下さい。ベスト8で満足しないで下さいね」

「「「はい!」」」

 

 ミーティングが終わって、早速鴎台高校男子バレー部一同はウォーミングアップを始めた。決戦まであと数時間。

 

◆

 

 本日2試合目ってことで、皆はオレンジ色のユニフォーム、俺とノヤ先輩は黒のユニフォームを着て鴎台高校に挑む。

 公式ウォーミングアップが終わって大地さんが一番右で俺が1番左になるようにエンドラインに並んだ。そのうち試合開始を知らせる主審の笛が鳴り響く。

 

「「「お願いします!」」」「「「お願いします!」」」

 

 ネット際まで走って行って、鴎台の2番と3番と握手をする。それが終わったらベンチサイドに戻って大人2人の話を聞く時間だ。

 

「数々の強豪を食らって成長してきた君達ならばきっと大丈夫。この試合でも舞う姿を見せて下さい!」

「「「はい!」」」

 

 続いて烏養コーチ。

 

「さっき言った通りだ! 1つ1つ冷静に対処して確実に1点ずつ取っていく。なーんも恐くねえぞ! 殴り合いを制してこい!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 やっちゃんを除いた全員で円陣を組む。

 

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 まずは背番号とポジションの確認だ。

 

◆

 

 一方、鴎台高校男子バレー部一同もまた簡単にミーティングを行っていた。

 

「烏野ハイスクールの対策はしっかりと頭に入っていますね?」

「「「はい!」」」

「それでは君達のバレーをしてきて下さい。アイキチ、初っぱなのサーブ頼みますよ」

「はい!」

 

 円陣を組んでキャプテンの諏訪愛吉がかけ声を掛ける。

 

「鴎高ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 スタメン6人とリベロ2人がオーダーの確認をするためにコートに向かっていく。

 

◆

 

 スターティングメンバーとポジションの確認に入る。俺とノヤ先輩はサイドラインでお腹側の番号を副審に見せた。

 

烏野

10 翔陽 5 龍先輩 9 飛雄

1 大地さん 3 旭さん 11 蛍(俺)

 

鴎台

10 6 5 星海先輩

4 8(リベロ) 1

 

 鴎台はいつも通りって感じだ。星海先輩と6番と2mの10番で一気に流れを呼び込もうって作戦。あと、サーブは鴎台から。つまり。

 

「おっしゃ! 繋護頼むぞ!」

「はい! ノヤ先輩の出番は無いと思って下さいね」

「ああん!?」

 

 稲荷崎でもやった俺がサーブレシーブを担当して、ノヤ先輩がラリー中を担当するってやり方だ。って訳で副審からOKを貰ったからサイドラインで蛍と入れ替わる。

 

「ブロックアウト狙われそうだったら俺の方でも指示出すな」

「うん、宜しく」

 

 ハイタッチして、コートに一礼したらバックライトへと向かっていく。バックセンターの旭さんとライトの飛雄の分広く守らないとな。狙ってくるとしたら旭さんと龍先輩だと思うんだよ。これまでの鴎台の試合見たらエースをマークって感じだったし。

 

「「「諏訪、1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 こっち打ってこないかなー。打ってこいやー!

 主審の笛が鳴って、1番がジャンフロを打ってきた。狙いは大地さんと旭さんの間。

 

「俺が!」「頼む!」

 

 大地さんが1番のサーブをオーバーで処理して、ボールが飛雄へと返っていく。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 一人だけマイナステンポでレフトの翔陽、バックレフトの大地さん、センターの龍先輩、バックライトに移動した旭さんがトスを呼んで、同時に助走に入った。取り敢えずブロックフォローで前に詰める。

 

「いけっ!」

「「「10番!」」」

「芽生!!」

「ワンチ!」

 

 飛雄はレフトの翔陽にトスを速い平行トスを上げて、翔陽がスパイクを打った。でも、遅れて跳んだ10番の右手の薬指と小指に当たって、ボールは相手コートのライト側のサイドライン近くで落ちる。やっぱでかいなー、2m。ちょいっとジャンプしただけでブロックできんじゃん。

 何はともあれ先制点はこっちだ。【1-0】。

 

「おっしゃ!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 次は飛雄がサーブだから、サイドラインでまずは蛍と入れ替わって、更にノヤ先輩と蛍が入れ替わる。

 

「お願いします!」

「任せとけ! 翔陽ナイスキー!」

「アザーッス!」

 

 振り向いてコートに一礼したら烏養コーチの所へ。

 

「白馬が前衛の時は東峰と田中ライトでアタック打たせても良いかもな」

「試してみますか?」

「まだいい。でも、次コートの中入るときに軽く伝えてくれ」

「分かりました」

 

 烏養コーチと話しながら次のラリーを目で追っていると、ライトから星海先輩が翔陽のブロックの上からクロスにスパイクを叩き込んで、飛雄のレシーブを弾き飛ばした。ワンタッチであっちの点だ。【1-1】。

 

「……340cm越えてるってやべえな」

「あれ、大地さんにもレシーブやって貰っても良いかもしれないですね。ブロック意味ないですし」

「だな。おし、行って来い」

「はい」

 

 サイドラインに向かっていって、パパッとノヤ先輩と入れ替わる。コートに一礼したらペシペシハイタッチしてる5人と合流する。

 

「簡単に。

 相手の2mが前衛の時には旭さんと龍先輩、ライトからスパイク打っても良いかもしれないですってのと、星海先輩がライトでスパイク打つときには大地さんもレシーブ回っても良いかも、です」

「「「オッケ」」」

「めっちゃ高かったよな、さっきの」

「俺も負けません!」

「おう」

 

 おし。連絡事項を伝えたからバックセンターに近いバックライトへ向かう。相手のサーバーは星海先輩だ。サーブも強烈なんだよなー。

 

「「「光来1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、星海先輩がジャンプサーブを打ってきた。狙いは旭さん。だけど軌道が低くてネットに引っかかった。チャンスボールだ。

 

「「「日向!」」」「繋護!」

 

 オッケ、俺がトスだな。

 翔陽がしっかりとアタックライン上に落ちるようにボールを上げて、俺がトスを上げに行く。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトの大地さん、バックレフトの旭さん、センターの翔陽、バックライトの飛雄、ライトの龍先輩がトスを呼んで、同時に助走に入ってきた。俺はタイミングを見計らってアタックラインを踏まないように踏み切る。さーて、どうすっかな。……まあここは。

 

「東峰先輩!」

「「「3ば! ……っ! 5番!」」」

 

 龍先輩でしょー。ってことで、ライトのアンテナまで伸びる速い平行トスを上げた。

 

「だらっせい!」

「ブロックゼロ!!」

 

 おーし。龍先輩はフリーの状態でスパイクを叩き込んだ。ふははー、恐かろー。【2-1】。

 

「オッシャ!!」

「「「ナイスキー!!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「トスどうでしたか?」

「もうちょっと速くても良いぞ」

「分かりました」

 

 次のサーバーは龍先輩だから、パパッとノヤ先輩と入れ替わる。コートに一礼したら烏養コーチの所へ。

 

「サイド使ってスプレッド気味にさせるぞ。そしたらセンター線だな」

「はい」

「ナイストスでしたよ! 猫又君!」「ナイファイ!」

「はい!」

 

 武田先生と清水先輩の2人とハイタッチして蛍の隣に座る。

 

「今日星海先輩のスパイク何本止める?」

「……5本」

「翔陽みたいに『あと23点!』って言えよー」

「日向と一緒にすんなよ」

 

 そう? さっき孤爪君が翔陽と話してたんだけど、「烏野の皆翔陽化してきたな」って言ってたよ。蛍も該当するよな、うん。

 龍先輩のジャンプサーブはギリギリエンドラインの外に落ちたっぽい。【2-2】。よーし、行ってくっか。

 

「ホシウミのスパイクを何本レシーブ出来るか勝負だな!」

「負けませんよー」

 

 パパッとノヤ先輩と入れ替わって、バックレフトで6番のサーブに備える。代わりに8番が前衛に上がってきた。

 

「「「幸郎1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 こっち打ってこないかなー。打ってこいやー!

 主審の笛が鳴って、6番がジャンフロを打ってきた。狙いはライト、龍先輩だ。

 

「「「田中!」」」

「くそ……!」

 

 龍先輩がボールを弾いた瞬間バックライト側に全力ダッシュ。高さはある。間に合う。

 走って走って、スガさん達が何か言ってる様子が見えてる中、ボールに追いついた。アンダーで思いっきり打ち上げる。

 

「カバー!」

「ナイス!」「大地!」

「おし!」

 

 俺が繋いだ2本目を大地さんが思いっきり打ち上げて、ボールが相手コートに返っていった。まーだラリーは終わってない。戻れ!

 バックレフトに到着するタイミングで6番がチャンスボールを処理した。誰で来るかな。

 

「芽生!」

「「「10番!」」」

 

 1番はライトの10番にオープントスを上げて、俺はサイドラインに足がかかるくらい、レフトの旭さんはアンテナから30cmくらい離れた所で基準を作って、翔陽とブロックの態勢を整える。

 

「「せーのっ!」」

「「「ブロック2枚!」」」

 

 ひぃー、高いなー。星海先輩よりも高いから350cm位? だからどうしたって話なんだけど。

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で10番のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――今目があった。

 スイング――ストレート。

 ⇒ストレート!

 

「ふっ!」

「ノー!」「ノー!」

 

 10番から放たれたスパイクが右利き特有の回転で右側に伸びてくる。そこにアンダーの構えを差し伸べてっと。両腕に衝撃が伝わってきた。ほい、完成。牛島選手ほどじゃないな。

 

「「「ナイスレシーブ!」」」「「「カウンター!!」」」

 

 今度はこっちのターンだ。スパイクの助走を出来るように準備していく。

 

「レフト!」「センター!」「バック!」「ライト!」

 

 レフトの旭さん、センターの翔陽、バックライトに移動した龍先輩、ライトの大地さんがトスを呼んで、同時に助走に入る。

 

「いけっ!」

「「「10番!」」」

 

 Dクイックに跳んだ翔陽にトスが伸びていって、翔陽が4番の左手に当ててブロックアウトを誘った。……ブロックアウトでは無いか。

 ボールはそのままコート内に落ちる。【3-2】。

 

「おっしゃ!」

「「「ナイス!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「猫又もナイスカバー!」

「あれくらい上げてくれたら追いつけます。あと10番のスパイクの時のブロックの位置取り、あれで良かったです。きっとノヤ先輩も拾えます。クロスだけ締めて下さい」

「オッケ」

 

 蛍が前衛に上がってくるから入れ替わらないとな。サイドラインに向かっていって蛍とハイタッチ。

 

「ブロック本数出てねえぞー」

「これからするし」

「おーし」

 

 コートに一礼して烏養コーチとノヤ先輩の所に行く。

 

「牛島選手ほどじゃないので十分対応できますね」

「オッケ。西谷も取れるな?」

「任せて下さい!」

 

 翔陽のサーブはしっかりとAパスで返されて、8番にAクイックを打たれた。でも蛍がワンタッチを取って今度はこっちのチャンスボール。

 そのボールを翔陽が拾って、蛍のAクイックが8番の右手に当たって更にはアンテナに当たった。だからこっちの点。【4-2】。

 次は10番のスパイクが決まってあっちの点。【4-3】。おし、いってくっかー。

 サイドラインに向かっていって、翔陽と入れ替わる。

 

「ブロックのタイミングな」

「おう!」

 

 ハイタッチしてコートに一礼したらバックセンターへと向かっていく。このローテはレフトの蛍とバックレフトの飛雄がいるから全体的に左寄り。

 

「「「芽生1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 どこに打ってくるかなー。こっち打ってこいやー!

 主審の笛が鳴って、10番がジャンプサーブを打ってきた。でも、明らかなホームランでエンドラインよりも5mくらい離れた所でボールが落ちた。……つーか、ジャンプサーブであんなの吹っ飛ぶのか。やべーな。【5-3】。

 

「すいません!」

「「「ドンマイ!」」」

「次1本切るぞ!」

「「「オォーッ!」」」

 

 大地さんのサーブだからノヤ先輩とパパッと入れ替わる。烏養コーチからの話も特にない。ってことで翔陽の隣に座って応援だ。

 それで、大地さんのサーブ権は4番に決められて切られた。【5-4】。よーし、俺の出番。

 

「行って来い!」

「はい!」

 

 ノヤ先輩とパパッと入れ替わってバックセンターに向かう。前は蛍だからカバーできるようにっと。あと星海先輩が前衛に上がってきた。

 

「「「野沢1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 セッターの1番が前衛だからツーも警戒しておかないとな。そのうち主審の笛が鳴って、4番がジャンプサーブを打ってきた。狙いはバックレフトの龍先輩。

 

「「「田中!」」」

「オラ!」

「「「チャンス!」」」

 

 崩されて、ボールは直接相手コートに返っていく。素早くバックレフトに移動して相手コートの様子を窺う。

 リベロの13番がチャンスボールをしっかりと処理して、センターの8番とレフトの星海先輩がトスを呼んだ。ツーって感じでは無さそうだ。

 

「光来!」

「「「5番!」」」

 

 ライトの飛雄にセンターの蛍が合流してブロックの態勢を整えた。俺も旭さんにインナーを任せてバックレフトの深いところを守る。

 

「「せーのっ!」」

「「「ブロック2枚!」」」

 

 集中力をぐっと引き上げて気持ちゆっくりになった視界の中で星海先輩のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――蛍の右手を見た。

 スイング――クロス。

 ⇒ブロックアウト狙い!

 

「蛍!」

「ふん! ……っ!?」

「ノー!」「ノー!」

 

 あっははー、ブロックアウトを狙った星海先輩のスパイクは蛍の右手に当たらずにエンドラインよりも後ろに吹っ飛んでいった。アウトでこっちの点だ。【6-4】。

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。

 

「「「ナイジャッジ!」」」

「猫又もナイス!」

「はい!」

 

 星海先輩って露骨にブロックアウト狙ってくるから対処簡単だなー。ま、修正してくるだろうけど。

 旭さんのサーブだからノヤ先輩と入れ替わらないと。ってことでサイドラインに向かっていく。

 

「ブロックアウト狙ってきそうだったら後ろから声かけていきましょう」

「分かった!」

 

 それだけ伝えたらノヤ先輩と入れ替わって、コートに一礼したら烏養コーチの所へ行く。

 

「いいな。どんどん星海にプレッシャーかけていこう。性格的には直情タイプっぽいし。割と感情がプレーにでてくる」

「はい」

 

 武田先生と清水先輩の2人とハイタッチして翔陽の隣に座る。

 

「スパイカーの視線よーく見とけよ。少なくとも星海先輩は分かりやすい」

「俺もやらねば!」

 

 牛島選手みたいに極力サーブレシーブには参加しないっぽい10番に取らせて、リベロがその乱れたボールを星海先輩に二段トスを上げたら蛍にドシャットされた。だから旭さんのサーブ権はまだ続いてる。【7-4】。

 

「ひいっ!?」

「何してんだ」

「月島のブロック恐いじゃん!! 青根さんみてぇ!」

 

 〝アオネさん〟って誰だ? まあいいや、知ーらね。あとお手本いるんだからちゃんとコピーしてくれよー。何事もまずは真似るところから始まりだ。学ぶの語源な。

 2本目の旭さんのサーブはしっかりと取られて、星海先輩がバックセンターの深いところにスパイクを叩き込んできた。【7-5】。

 俺の出番が来たからサイドラインまで向かっていって、パパッとノヤ先輩と入れ替わる。コートに一礼したらバックレフトに向かってと。

 

「「「別所1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 相手のサーバーは8番。多分ジャンフロ。そんでもって6番が前衛に上がってきた。

 主審の笛が鳴って、8番がジャンフロを打ってきた。狙いはバックライトの旭さん。

 

「「旭!」」

「ッシャ!」

 

 旭さんがオーバーで処理して飛雄へと返っていく。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 レフトの龍先輩、バックレフトに移動した大地さん、センターの蛍、バックライトの旭さんがトスを呼んで、同時に助走に入った。……お。

 

「っ! ツーだ!」

「「「っ!?」」」

 

 ジャンプトスをしようとした飛雄が手首だけでツーアタックをして、ボールは相手コートの中央に落ちる。【8-5】。

 

「「「ナイス!」」」

「はい!」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。終わったら、蛍のサーブだからサイドラインで翔陽と入れ替わる。

 

「あと17点!」

「任せろ!」

 

 翔陽とハイタッチして、コートを出たら振り向いて一礼。そして烏養コーチとノヤ先輩の所に行く。

 

「影山が前衛の時に、後衛の東峰か田中をバックライトで守備させてバックライトからもバックアタックできるようにしようか」

「大地さんはバックセンターすか?」

「おう。それかリベロがバックセンターだな。……パイプはあんまり効かねえだろうし。ここはコートの幅を使って攻撃枚数を増やしていく」

「「はい!」」

 

 飛雄にもツーとか、俺が2本目を上げて打たせるとかやってたけど、旭さんか龍先輩がバックライトからバックアタックできればもっと楽になるか。少なくともブロックの分散には良いと思う。

 この間に蛍のサーブ権は星海先輩のスパイクで途切れていた。【8-6】。

 

「繋護行って来い!」

「おす!」

 

 サイドラインに向かっていって、蛍とハイタッチと一礼して早速5人に共有していく。

 

「飛雄が前衛のローテの時に大地さんがバックレフト、バックセンターは俺とノヤ先輩、バックライトに旭さんか龍先輩が入って貰ってバックライトからバックアタックをしてみようって話が出ました」

「じゃあここで旭はバックライトに行ってみよう」

「オッケ」

「影山もいいな? バックセンターはリベロ2人だぞ」

「おう」

「良し、1本1本丁寧にやっていこう」

「「「オォーッス!」」」

 

 お互いにローテーションが一巡して、鴎台のサーバーは1番だ。こっち打ってきてくれないかなー。

 バックライトに移動して、バックセンターの旭さんとライトの飛雄をカバーできるようにする。

 

「「「諏訪1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、1番がジャンフロを打ってきた。狙いは旭さんだけど、若干俺の方に来た。

 

「頼む!」「はい!」

 

 旭さんが引いてオーバーで処理してっと。はいAパスー。取りやすい良いサーブだね。

 ボールは飛雄へと返っていく。

 

「レフト!」「バック!」「センター!」「バック!」

 

 レフトの翔陽、バックレフトの大地さん、センターの龍先輩、バックライトに移動した旭さんがトスを呼んで、同時に助走に入る。旭さんの邪魔にならないようにブロックフォローをしに前に詰めた。

 

「いけっ!」

「「「10番!」」」

 

 レフトの翔陽に速い平行トスが伸びていって、翔陽は1番の右手に引っかけるようにしてブロックアウトを狙った。あっちの10番が前に走るけど追いつかない。……思った以上に身体あって重そうだな。2mもあれば体重もそれなりにあるか。【9-6】。

 

「よっしゃ!」

「「「ナイス!」」」

 

 コート中央に集まってペシペシハイタッチ。終わったらノヤ先輩と入れ替わるためにサイドラインへと向かっていって、パパッと交替。

 コートに一礼したら烏養コーチの方に行く。

 

「『バックアタックもコートの幅を上手く使え』って西谷に伝えさせた。あと完全にアウトだって分かるサーブ以外は取って良いからな。相手に乗って欲しくねえし、応援団にも乗らせたくねえ。確実に触っていけ」

「はい!」

 

 こんな話をしている間に、飛雄がサービスエースを取って【10-6】。ここで鴎台が1回目のタイムアウトを要求した。タオルとドリンクの準備!!

 俺はノヤ先輩にタオルとドリンクを渡して、ミーティングに入る。

 

「おーし、今の所順調だ。だからといって調子乗るんじゃねえぞ。4点差なんてあってねえようなもんだ。俺達のバレーをしてどんどん点差を広げていく。いいな?」

「「「はい!」」」

「ローテが2巡目に入ったから、積極的に交替を取り入れていくぞ。菅原達、いつでも出られるようにしとけよ」

「「「はい!」」」

 

 このまま一気にいくぞー。

 

◆

 

 一方、鴎台高校男子バレー部一同もミーティングを行っていた。

 

「焦ってないデスね?」

「「「はい!」」」

「実感して貰ってると思いますが、烏野ハイスクールは強いです。サーブで崩して二段トスにしないとウチの強みであるブロックが生きてきません。自分達のやることをしっかりと行いましょう。良いデスね?」

「「「はい!」」」

 

 一同が円陣を組んで、キャプテンの諏訪愛吉がかけ声を掛ける。

 

「鴎高ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 レギュラー6人がコートへと向かっていった。

 

◆◇

 

 3回戦で烏野高校に破れた音駒高校男子バレー部一同もまた応援3割観戦7割の為に烏野高校側の応援席に座っていた。中でも猫又育史は烏養一繋と一緒に観戦している。

 また、羽染葵育と下園育音は母校の応援で席を外していた。

 

「影山のトスワークを攻略される前に突き放したいな」

「ああ。二段は確実に3枚付いてくるからな。にしても良いチームだな、鴎台」

「猫又ならどうするよ」

「……うーん、正直烏野以上に手が余るな。黒尾とリエーフの突破力が上回るかどうかだしよ。ウチじゃあちと相性が悪いか」

「2年が中心っぽいから来年が恐いな」

「ああ。星海に昼神に白馬だな。こりゃ優勝もありうるだろ」

 

 このように2人が分析をしている一方で、嶋田誠や滝ノ上祐輔、月島明光、宇内天満達烏野高校男子バレー部OB勢は平日で幾分人数が減った応援団を支えている。

 

◇

 

 第2セット、【28-29】で迎えたこっちのマッチポイントで、旭さんがスパイクを決めた。主審の試合終わりの笛が鳴り響く。

 

「「「うおぉぉぉぉ!!」」」

 

 ベンチからスガさんが先陣を切って走って行くのを見て、俺と翔陽も力先輩達に負けないようにコートに走って行って、コートの中の大地さん、旭さん、龍先輩、ノヤ先輩、飛雄、蛍とハイタッチしまくる。

 1セット目は【27-25】、2セット目は【28-30】で2セット共ウチが取った。つまりウチの勝ち。更に春高ベスト4でもある。

 一頻り騒いで、大地さんが手を鳴らしては「良し! 整列だ!!」って声を出したから、民でエンドラインまで向かっていった。

 

「「「ありがとうございました!!」」」「「「ありがとうございました!!」」」

 

 大地さんが1番右で、俺が1番左になるように背番号順でエンドラインに並んで、主審の笛でネット際まで走って鴎台の2番と3番と握手。

 

「13番君やべーわ。でも、来年はウチが勝つからなー」「同じく。光来達がリベンジすっから」

「受けて立ちます」

 

 一言二言話したら次は観客席の応援団の方々へのお礼だ。ネットを潜って烏野側の応援席へと向かって、ここでもまた背番号順で並ぶ。俺の左には清水先輩とやっちゃん。

 それにしても平日だって言うのに応援団そこそこ人数いるなー。

 

「気を付けー! 応援ありがとう御座いました!!」

「「「ありがとう御座いました!!」」」

「準決勝でも応援宜しくお願いします!」

「「「お願いします!!」」」

 

 その瞬間観客席で歓声やら拍手やらが凄いことになった。「ナイスゲーム!!」だとか「次も勝てよー!」とかって。正直何言ってるか分からん。太鼓の音がすげーし。

 とりあえず祖父ちゃん達に手を振ってと。イェーイ。

 それが終わったら、ミーティングをするように全員で集まる。……武田先生泣きそうじゃん。

 

「おーし。じゃあまずは着替えてダウンな。一昨日、昨日、そんで今日ダブルヘッダーでかなり疲労も溜まってきてると思う。しっかりとダウンしよう」

「「「はい!」」」

「そうしたら宿に戻って飯だ。パッパと準備して戻る準備しろよー」

「「「はい!」」」

 

 解散の流れ、とはならずに翔陽が挙手をして話し始める。

 

「コーチ!! 次はセンターコートですよね!?」

「おう、次は12日の準決勝だな。対戦相手はまだ分かってねえからミーティングは後。取り敢えず着替えろ。ここで体調崩したら洒落になんねえからな。急げよ」

「「「はい!」」」

 

 センターコートか。ふひっ、早く試合してー。

 ボール籠とか救急箱を取りに向こう側のコートに向かって歩き出すと、星海先輩が翔陽に絡んできた。

 

「日向翔陽、影山、次は負けねえ!!」

「次も負けません!」「星海さんからサービスエース取ってみせます!!」

 

 昨日の敵は今日の友。

 う~ん、烏養コーチが気に入りそうなワードだな。長野だっけ。どうにか練習試合組めるようにお願いできないかな。長野までだとどのルートが一番行きやすいんだっけ。ま、いっか。お腹空いたー。

 

「井闥山負けたぞ!!」

 

 は? …………は?

 

 

 宿に戻ってきて、かなり早いけどお風呂にも入った。夜ご飯を食べてまた後でもう1回入るつもりだ。

 チェックアウトは明日の9時らしく、明日の朝御飯を食べて1回烏野に戻って、また11日に東京に来る。

 私立だとなー、結果出せば登校日の日数を大目に見て貰えるけど、あいにく烏野は公立で、武田先生が授業をしないといけない。新学期も始まってるし。

 そんなわけで面倒くさいけど俺達も学校に行かないと。面倒くさいけどー。

 井闥山と犬伏東高校の対戦を見返してると力先輩達に声をかけられた。3年生と龍先輩、ノヤ先輩、俺以外の1年は昼寝中。そろそろ起こさないと夜寝られなくなるな。

 

「ねこ大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」

「さっきすっげえガラ悪かったよなー」

「いやー、まさか井闥山が負けるとは思わなかったので」

「怪我だっけ?」

「みたいですね」

 

 準々決勝で京都府代表の犬伏東高校との対戦中、セッターの飯綱先輩が汗で滑って捻挫したらしい。

 ボールボーイがちゃんと汗を拭かなかったのか、ラリー中で誰かがフライングしたところを通ろうとしたのかはよく分からない。まー、絶対に無いわけじゃ無いよな。当事者は心に来るけど。大丈夫かな。まあ、進学先でもバレーやるって言ってたし大丈夫でしょう。

 

「それにしても全国ベスト4か。夢みたいだよ」

「何言ってんだ、全国制覇しにここに来たんだろ」

「「……だな」」

 

 そうだそうだー、優勝まであと2試合。しかも準決勝からはセンターコートで5セット。まだまだ先は長いですよー。

 

「そういや、次の対戦相手って決まったんだっけ?」

「奈良の一林高校って所ですね」

「……奈良ってなにで有名だ?」

「……鹿?」

 

 あとは東大寺とか法隆寺とかかな。中学の修学旅行で京都と奈良に行ったからまだ記憶に新しい。今度はもっとゆっくり観光したいなー。

 ……お? 一仁先輩が小声で話し掛けてきた。何だろ。

 

「ここだけの話な。1月末に新人戦あるだろ? そこで月島と日向からスタメン奪ってやる」

「俺も。縁下にも田中にも負けねえ!」

「……俺だってもっと試合出たいから負けてやんねえぞー」

 

 力先輩、久志先輩、一仁先輩のやる気がすげーことになってる。ま、俺も正リベロは貰うつもりだ。ふははー。

 

「ほらさ、4月になれば上手い後輩が入ってくるだろ? 俺よりも身体能力も高い奴が入ってくると思うんだよ。でもだからこそ俺も試合出たいからもっと頑張る。……そういう宣言?」

「最後までハッキリ言えよー。俺もだ」

「おう、俺も」

 

 そこに烏養コーチが登場した。ふすま開けてギョロッと。こっわ。

 

「「「っ!?」」」

「そうやって欲出してけよー。春高来て目茶苦茶伸びてるからな、全員」

「「「……はい!」」」

 

 そして優勝旗とトロフィー持って帰らないとな。おーし。

 

 

 晩ご飯の時間となって全員食堂に集まる。寝てたメンツはお風呂に入ったから元気になってて賑やかだ。

 配膳が終わって、武田先生が前で話し始めた。

 

「えーっと、そうですね。音駒高校と鴎台高校の勝利おめでとう、皆!」

「「「はい!」」」

「4月からバレー部顧問になって君達を応援してきて、君達の成長を見届けることが出来て本当に幸せです。

 ……準決勝だよ、準決勝! 夢でも見てるんじゃ無いかって思ってます。

 でも、我々は全国制覇を目指して4月から取り組んできた。全国制覇まであと2勝だからしっかりと準備をしていきましょう!」

「「「はい!」」」

 

 続いて烏養コーチ。

 

「準決勝からはセンターコートで5セットマッチ。簡単に言えば白鳥沢との対戦と同じ方式だ。

 でも、宮城県の代表決定戦よりも会場の規模も観客も全く違う。

 ……だからどうした? 4月から全国制覇を出来るようにコーチをしてきたつもりだし、このチームだったら優勝だってできる。このチームで勝ち抜いて烏野に優勝旗とトロフィーを持って帰ろう。

 体調管理しっかりとしていくぞ。分かってるな?」

「「「オォーッス!」」」

 

 大地さんの「頂きます!」ってかけ声で夜ご飯を食べ始める。うーん、美味しー。

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