一晩経って、朝ご飯とか朝の身支度をしたら宿のチェックアウトの時間が近づいてきた。また金曜日にここに来る。……面倒くさいから帰りたくねー。まあ、宿泊費とかもバカにならないんだけどさ。私立はいいなー。
「忘れ物とか大丈夫そうですか?」
「「「はい!」」」
「分かりました。それでは最後に僕と烏養君で確認してきます。お手洗いなど済ませておいて下さい」
「「「はい!」」」
トイレ行っとこうかな。目指す先はトイレ。ゾロゾロとトイレに向かっていく。
「あ~、学校戻りたくねえなー」
「じゃあ田中よ。全員分の宿泊費出してくれよな?」
「全員分!?」
「お、いいねー、頼むぞー」「俺の分も頼むなー」
朝御飯と夜ご飯付きでどのくらい? 1万5000円とか? かける10日くらいだから1人15万? いや無理だろ。まあね、宿泊費とかはバレー協会で出してくれるんだけど。
宿のおかみさんに挨拶をして、休憩を挟みつつバスで約6時間かけて学校に戻ってきた。3日間位来てないだけなのになんかすっげえ久しぶりな気がする。……それよりもやっぱ寒いな、東北。雪降ってなくて良かった。
「男バレ帰ってきた!!」
「「「っ!!」」」
「ナイファイ!!」「優勝しろよー!!」「月島く~ん!!」「澤村ぁー! 菅原ぁー!」「東峰ぇー!!」「西谷ー!!」
……今日って午前授業だろ? めっちゃ人いんじゃん。お? 俺の名前も呼ばれたな。取り敢えず手振っとこ。
自由登校期間に入ったのに3年生もそれなりに人数いるし。
「見えないところで応援してくれてたんだな」
「月島と影山への女子の声援やべーな。宮ツインズみたいだ」
「「「っ!? 俺には無いのか!?」」」
龍先輩とノヤ先輩は主に男子からですね、翔陽も無いわけじゃ無さそうだけど。
校舎に向かって手を振り続けていると、バスが駐車場で停止した。
「はい、到着です。バスの中に荷物を忘れないようにしましょうね!」
「「「はい!」」」
「武田先生! 烏養コーチ! ありがとうございました!」
「「「ありがとう御座いました!」」」
ここまで運転してくれた大人2人にお礼を言って、降りる準備を進めていく。その前に翔陽と飛雄が挙手をした。
「「コーチ! バレーやりたいです!」」
「……気持ちは分かるけどな。3日間の公式戦に加えてバスの移動で、思った以上にお前らの身体は消耗してる。
武田センセ、体育館も使えるか分からないだろ?」
「そうですね。聞いてみないと分からないです」
「そういうことだ。取り敢えず荷物降ろすぞ」
「「「……はい!」」」
バスの移動は思った以上に疲れが出るからなー。どうなんだろうか。
結論。ほんのちょっと練習することになった。
理由としては女バレが練習試合で遠征するから。「男子に負けてられないし!」って女バレも頑張ってて、新人戦ベスト8を目指して練習してるって聞いてる。
「疲れ溜まってるだろうから長めのストレッチとパス練だけな。17時には終わらせるぞ」
「「「はい!」」」
つまり1時間強だけボールに触る。あと、普段は第一体育館で練習することが無いからなんか新鮮だ。当然だけど、東京体育館に比べてやっぱり小さい。
ボールに触るだけの強度としては全然高くない練習をして家に帰ってきた。
「ただいまー」
「お帰りー、お風呂入っちゃいなさーい」
「あーい」
母さんの声が聞えてきた。祖父ちゃんと祖母ちゃんもどこかにいるはず。
……朝まで東京にいたのに今は宮城だ。新幹線で行き来できたらすっげえ楽なんだけどな。お金無いから無理? それはそう。
さーて、お風呂入ってきますかね。着替えも出さないとな。
お風呂に入ってサッパリ。家のお風呂はまた違う。
畳の上でゴロゴロしてたら、湯飲みを持って祖父ちゃんが来た。
「いつだっけ、最後にベスト4以上に残ったの」
「んー? ……繋心も入学する前だったから13年、14年前。……いや、まだ繋護も産まれてなかったな。だから17年以上前だ」
「そっか、それくらいか」
「けっ。あいつ本当に1年目の指導者かよ、繋心の奴」
悪態をつきながら祖父ちゃんは繋心兄ちゃんをボロクソに言い始めた。でも口元が緩んでるのがしっかりと見える。祖父ちゃん嬉しそうじゃん。
「ま。油断して風邪なんか引くなよ」
「うん」
誰か風邪引きそうだな。翔陽とか。
3学期も始まったことだし明日の準備もしておかないと。課題も明日持っていくから用意しておこう。
彩音ちゃん達にも【応援ありがとう】ってメッセージ送っとこー。
あっされーん。
3年生が自由登校期間に入ったおかげで学校自体は前よりも静かになった気がするけど、全国ベスト4になったこともあって観客が増えた気がする。朝だって言うのに皆早いなー。
「宮ツインズはもっとすごかったよな」
「まあなー。ていうか、生徒数が違うからさ。烏野は30人かける5クラスで1学年150人くらいだろ? 稲荷崎とかは森然みたいに1500人とかじゃん。規模が違いすぎだろ」
「「「東峰ー!!」」」
おお、旭さんに黄色い歓声がかけられてる。3年生かな? 旭さんにめっちゃ手を振ってる。
「旭さんもモテモテっすね!」
「モテモテでは無いでしょ」
「いやいや、あれはモテモテだ」
「「「西谷ー!」」」「「「田中ー!」」」
お、多分2年生。……男だけど。バレー部も人気出てきたなー。
「前にも言ったけど、ドーピングとか食中毒の可能性あるから差し入れって言われても食べ物は受け取るなよ。男子バレー部としてはドリンクの粉とタオルだけ受け取るようにしてるからな」
「女子からの手料理もダメっすか?」
「腹壊して良いんならどうぞご勝手に。そうなったら、俺はそいつに今後一切ユニフォーム渡さねえけどな」
「お、オス…………」
残念、バレンタインデーもアウトです。……来月はもうバレンタインデーか。早いな。……高校になって〝早いな〟しか言ってねー。
朝練が終わって、5組に向かっていても「全国頑張れよ!」とか「男バレの猫又君じゃん、ガンバ!」なんて声を貰ったりする。中には差し入れとかも渡してくれそうな人もいた。
でも、ちゃんと彼女がいることと男バレでは差し入れは決まってることを伝えて受け取らないことを徹底した。ごめんね。でもドーピングとか食中毒とかまじ勘弁だから。って言うか、彼女がいるって公言してるのに、それでも渡してくるってやばいでしょ。髪の毛とか入っててもおかしくねえぞ。こっわ。
そういうのもあると受け取らないのがベストだよなー。
「っ!? ねこ!」
「おー。おはよー」
「バレー部やばいじゃん! 全国ベスト4って!!」
「優勝目指してここにいるからなー。あと応援来てくれてありがと」
1年のクラスがある階に到着すると、錦に見つかって一緒に5組に向かっていく。
「次は11日に出発するんだっけ?」
「そう」
「わざわざこっち戻ってこなくて良いのでは?」
「それなー。武田先生が授業あるし、宿泊費もバカにならないから。あと出席日数」
「あー……、そういう問題があるのか」
「そうなのです」
そりゃあ、出来ることなら東京で調整したいよ。移動も負担かかるし、ほぼほぼ練習できないし。でもまあ仕方ないね。授業休めないからさ。
◇
午前中最後の授業を終えた武田一鉄が職員室に戻ってきて自分の席に向かっていると、同じ国語を担当している金山遥から「あ、武田先生、仙台フロッグスの細田春平さんって方からお電話ありましたよ~」と声をかけられた。
心当たりの無い武田一鉄は思わず立ち止まる。
「仙台フロッグス……? どんな要件でしたか?」
「バレー部3年の東峰と澤村の進路を聞きたいって仰ってましたね。『また後でかけ直します』って」
「……分かりました。金山先生、ありがとうございます!」
「男バレ頑張って下さいね! いっその事休まれても――」
金山遥が最後まで言い終わるまえに、教頭の咳払いが2人の耳に届いて表情を取り繕う。
湿度を含んで見てくる教頭の視線から逃げるように、武田一鉄は自分の席に着いて細田春平なる人物へ電話をかけ始めた。
細田春平との電話が終わって、人気のない所まで離れた武田一鉄は興奮が収まらない手つきで烏養繋心へと電話をかけ始める。
電話の内容はV2リーグに所属している仙台フロッグスで東峰旭はウイングスパイカーとして。澤村大地はリベロとしてスカウトしたいというものだった。つまり、2人の活躍がそれだけ目覚ましいものだと理解しての行動である。
ワンコールもたたないうちに、烏養繋心は武田一鉄の電話に出た。
『烏養です。武田センセか?』
「う、う、う、烏養君!!」
『おお? そんな声出さなくても良いぞ。珍しいな、どうしたよ』
「東峰君と澤村君が仙台フロッグスからお声を頂きました! 2月から是非入団しないかと!」
『……なるほどな。そりゃー興奮するか。返事はいつまでだって?』
「1月中と仰ってましたね」
『ま、そうだな。目下の目標は春高で優勝することだ。それは変わりねえ。
だから、その後で2人には知らせよう。澤村はともかく東峰は上京するって聞いてるし。春高が終わって落ち着いたら改めて考えてもらおう』
「……そうですね」
幾分冷静になった武田一鉄は数回深呼吸をして平常時に戻る。
「……僕、4月から驚いてばかりです」
『何言ってんだ。新任1年目で優勝旗とトロフィー持つんだぞ。びびるには早えって』
「……そっか、そうですね。全国制覇するんですよね」
『おう。残り2戦しっかりと備えていこう。俺達がバタバタしちゃ駄目だからな』
「はい!」
そこで、丁度お昼休み終了のチャイムが鳴って、「あ、僕のお昼ご飯!?」と叫ぶ武田一鉄と苦笑する烏養繋心であった。
◇
放課後れんしゅー。……なんか烏養コーチの様子がおかしいな。怪我、ではない。風邪でもない。なんだ?
従兄だから分かる烏養コーチの変化がやけに気になってしょうが無い。良いことだと思うんだよな。でも内容は分からないねー。
ってことで、早速聞いてみよう。
「烏養コーチー」
「げっ」
ほら、なんかあったよな。その反応さー。
「何かありました? ありましたよね? 何ですか?」
「何でもねえよ。ほら、練習始めるぞー」
「「「はい!」」」
現時点で話す気は無いか。まあいいや。
ネットとか準備が終わって、練習を始められるように集合する。
「今日の放課後練、明日の朝練、明日の放課後練しかここで出来ねえ。11日には出発するし、体育館での練習ももう限られてる。残りの時間目一杯有効活用していくぞ」
「「「はい!」」」
「この時間〝調整〟じゃねえからな。試合で勝つための練習だ。センターコートで緊張しないための練習だ。優勝するための練習だ。しっかりと集中していけ!」
「「「はい!」」」
まだまだコンビの成功率、レシーブの成功率、スパイク効果率と決定率……、まだまだ弱点はあるぞ。
「良し、澤村!」
「はい!」
ここにいない武田先生を除いた全員で円陣を組む。
「烏野ー! ファイ!!」
「「「オォーッス!」」」
準決勝まであと3日。
このメンバーで出来る最後の朝練が終わって、1年でゾロゾロと自分の教室に向かっていく。そんな時に神妙な顔した翔陽がポツリと呟いた。腹痛じゃなかったのか。
「……もっとこのチームでバレーやりたい」
「どうしたの日向。頭でも打った?」
「打ってねえし! 山口ぃ!!」
「日向やめろ!?」
翔陽のいきなり言葉に思わず忠が突っ込んだ。飛雄と蛍も同じような顔してる。
「山口の言う通り。いきなり何? 本当に日向?」
「別にそこまで言わなくても良いじゃん! 月島ぁ!」
「良いから理由言ってみろよボゲェ!」
「中学の時は1人だったから先輩がいなかった。でも、烏野に入ったら先輩がいた。キャプテン、菅原さん、旭さん、清水先輩、田中さん、ノヤっさん、縁下さん、木下さん、成田さん。
あとは影山、繋護、月島、山口、ひーちゃん。武田先生とコーチも。初めてチームでバレーが出来た。楽しかった。だからもっとやってたい。終わって欲しくない」
チームの自覚持てるようになったなー、翔陽。
「私も! もっともっと今の烏野を見ていたいです!」
「ひーちゃんに言われたらやるしかねえな。準決勝、そして決勝」
ここしか無いな。
「【目の前に広がる高い高い壁】」
「っ!?」「「「……?」」」
翔陽が俺の口を塞ごうと手を伸ばしてきて、それを避けながら翔陽が作ったポエムを詠み始める。詠まれたくないなら部室においとくなよー。他の皆は「は?」って顔しながら面白そうだからって翔陽を拘束する。
「何で知ってんの!? やめろ! やめてー!!」
「いやでーす。
【その向こうはどんな眺めだろうか。どんな風に見えるのだろうか。
〝頂の景色〟。俺独りでは決して見ることのできない景色。
でも、独りではないのなら、見えるかもしれない景色】」
「っ!!」
翔陽がショックでビクビクしてる。陸に打ち上げられた魚みたいだ。
「……何それ」
「部室で見つけた。翔陽の字だからいつか目の前で詠んでやろうと思って覚えといた」
「相変らず記憶力やばいな」
「それで? 今の感想は?」
「恥ずかしくて死にそう」
「先輩達にも教えてやろうぜ」
「「「良いね」」」「やめろ!!」
あ、まーたのたうちまわってる。ウケる。大丈夫。翔陽って存在自体が面白いから。そのままでもお笑い芸人に成れるぞ。
翔陽が意図してるかは分からないけど、もうすぐ高校の頂点だからな。うん。
◇
烏野高校男子バレー部2年の田中龍之介、西谷夕、縁下力、木下久志、成田一仁の5人も1年同様に自分達のクラスへと向かっていた。
「……今のチームで出来るのもあとちょっとか」
「優勝して大地さん達には笑って引退して貰おうぜ」
「たりめえだろ? 優勝以外考えてねえよ」
「その〝全国優勝〟ってのが実感湧かないんだよ」
「じゃあ久志は試合出なくて良いんだな」
「いや出てえ! センターコートだぞ! センターコート!!」
「……やるしかねえな」
「俺達問題ばっか起こしてたし」
「「「おう」」」
2年1組の教室の扉に差し掛かって、田中龍之介が自分の教室へと向かっていき、他の4人も自分のクラスへと入っていった。
◇◇
1年、2年と同様に、3年生の澤村大地、菅原孝支、東峰旭、清水潔子の4人も自分達のクラスへと向かっていた。
「次センターコートかー。実感ねえなー。あ、旭なんかどっかのチームからスカウト来てもおかしくないんじゃ無いか? ほら、何といってもウチのエースだしな。な!」
「「「…………」」」
「梟谷も勝ち抜けば決勝で当たるかもしれねえなー。今度こそ勝たねえとなー」
「「「…………」」」
初詣と同じように、緊張して口数が多くなっている菅原孝支が次々と話し始めていて、他の3人は逆に口数が減っている。その状況に菅原孝支が「おい! なんとか言えよ!」と突っ込んで、周りの生徒から「また菅原が突っ込んでるぞー」とか「顔芸カメラで抜かれるぞー」などと茶化されていた。
「ス、スガ、落ち着け」
「落ち着いてるっての!」
「いや、どう見ても興奮してる。遠足前の小学生かよ」
「体調崩しそうだな」
「体調崩したら座薬ってコーチが言ってた」
「「「えっ」」」
清水潔子の言葉を聞いて、思わず3人は括約筋に力を込めた。
◇
放課後になって、このチームがこの体育館で出来る最後の練習が終わった。戻ってきたら勝敗関係なく3年生は引退してる。
「集合!」
「「「集合です!」」」
冷えないようにジャージを着て、烏養コーチの所に集まる。
「おーし。じゃああとは優勝旗とトロフィーを持って帰ってくるだけだ。分かってるな?」
「「「はい!」」」
「ダウンをしてから出発するための準備を始めていくぞ、忘れ物無いようにな。あと冷えないようにちゃんと厚着しろよ」
「「「はい!」」」
準備開始ー!
準備が終わってボール、ボール籠、救急箱、明日持っていく物全ての準備が終わった。武田先生とか若林先生、あとはちらほらとギャラリーがいる。
「確認は済みましたか?」
「はい、後はシューズとかサポーターとか個人で必要な物だけです」
「他は買えば何とかなるけどユニフォームだけはどうにもならねえからな。黒とオレンジの2色しっかりと確認しろよ。まあ、前回から預かってるメンバーが多いけどな」
月曜日に帰ってきて、そのまま内沢クリーニング店に持ち込んだからノヤ先輩と蛍くらいしか自分で持ち帰ってない。13番のユニフォームも確認済みだ。
「猫又さん達も言ってたけど、勝っても負けても次ここに戻ってきた時には3年は引退する。ただ、笑って帰ってくるか、泣いて帰ってくるかのどっちかだ。
ジジイが監督をしてた時でも最高は準優勝だったから、このチームで初めて烏野に優勝旗とトロフィーを持って帰ってきて欲しいと思うし、その為の練習もしてきたつもりだ。
このチームで出来る残り数日のバレーをしっかりと楽しんでいこう。そんで優勝して帰ってこようぜ」
「「「はい!!」」」
3年生4人を笑って引退させてやろうじゃん。じゃんじゃん。
続いて武田先生。
「【遠きに行くは必ず邇きよりす】。以前にも紹介したことわざですね。
4月から毎日毎日コツコツとバレーボールに打ち込んできて、今まさにその成果が出ようとしています。確かに一林高校は強敵です。全体的にハイレベルなバレーボールをしています。ですが君達も4月に比べてとても強くなりました。一林高校、犬伏東高校、そして梟谷学園にも劣ってはいません。このメンバーであればきっと優勝だってできる!
さあ、皆! 頂点からの景色を確認しに行きましょう!!」
「「「オォーッス!」」」
ここまでしてくれたんだ。武田先生にも恩返ししないとな。「若林先生も一言お願いします!」って言われて、若林先生がビックリしてる。
「何言おうかなー」って考えながら、若林先生も続いた。
「そうだね……。武田先生と似たような感じになっちゃうんだけど、4月と比べて皆すっごくバレーボールが上達したと思う。栄養とか食育も自ら進んで勉強したりしてたしね。
その成果はキチンと出てる。だったら、全国制覇まであと2試合。しっかりと勝ち抜いて。烏養先生も成し遂げられなかった全国制覇をして、烏野に戻ってくるように。私達も現地で応援するから。優勝する瞬間を見せて。いいね?」
「「「はい!」」」
若林先生と家庭科部の皆にも「男子バレー部応援して良かった」って思って貰えるように勝って恩返ししないと。勝つことが恩返しだからな。
頑張るぞー、おー!
家に帰ってきてお風呂も入ってゴーロゴロ。勉強も順調だ。明日持っていく教材も確認しとくか。
……お? 彩音ちゃん達からメッセージと写真だ。……何だこれ。【稲荷崎の人みたいに全員分の応援うちわ作ったよ! 繋護のはこれ!!】だって。めっちゃ恥ずかしいじゃん。いや嬉し……、いや恥ずかしいわ。お礼伝えとくか。【中継カメラに抜かれないようにね】とも付け加えておこう。「見るんじゃねえぞ、おおん?」って警戒しないといけなくなるじゃん。
お。祖父ちゃんがやってきた。
「明日の準備終わったか?」
「終わってるよ。後は寝るだけ」
「そうか。夜更かしすんじゃねーぞ」
「あーい」
宿題したら歯磨きして寝ようかな。まだ早いかな。いやでも寝られそう。うーん……。
朝のルーティンと身支度をしたら出発の時間が来た。シューズ、サポーター。ウェアなんかもちゃんと確認済みだ。忘れ物なーし。アイマスクとか耳栓なんかのバスの中での睡眠グッズも大丈夫っと。
玄関で祖父ちゃん祖母ちゃん、母さんに見送られる。
「忘れ物ねえな?」
「うん、確認済み」
「今日はまだこっちにいるから何かあったら連絡してよー。繋心にも言ってあるけど」
「うん」
「頑張ってね、繋護」
「うん、祖母ちゃんも応援宜しく」
祖父ちゃん祖母ちゃん、母さんの順でハイタッチしたら荷物を持ってしゅっぱーつ。
学校に到着して、荷物をバスに乗せていったら出発する時間が近づいてきた。朝早いってのに先生方とか生徒達が見送りに来てくれてる。ざっと50人くらい。頑張らないとな。
「忘れ物はありませんね?」
「「「はい!」」」
「……いやあるだろ」
「「「えっ!?」」」
「優勝旗とトロフィーだよ。次烏野に戻ってきたときには優勝旗とトロフィーを持って帰ってくんだろうが」
「「「……はい!」」」
良いタイミングだとは思うけどちょっと話ややこしくなるから辞めてくれー。これでユニフォームとかの忘れ物あったらどうすんだっての。……さっき全員で確認したから大丈夫だけどさ。
「烏養君の言うとおりですね。東京に行って忘れ物を持って帰ってきましょう!」
「「「オォーッス!」」」
「ではそろそろ出発します。この場に集まって下さってる皆に挨拶しましょうね」
「「「はい!」」」
ギャラリーに対して一番右が大地さん、一番左が俺になるように。そして俺の左には清水先輩とやっちゃん、武田先生、烏養コーチが並ぶ。
「気を付けー! 応援よろしくお願いします!」
「「「お願いします!」」」
一礼したら、その瞬間拍手とか「頑張れよー!」とか「応援行くぞー!」とかって言葉が届く。和太鼓チームも来てくれるらしいから応援負けはしないと思うけど。
「では、バスに乗って下さい!」
「「「はい!」」」
バスに乗るために歩いていく。
サービスエリアで休憩を挟みながら約6時間。以前にも利用した宿に到着した。
その後は予約していた体育館で3時間くらい練習して、また宿に戻ってきた。お風呂と夜ご飯、一林高校対策のミーティングも終わって、あとは明日を迎えるだけだ。
「最後に確認な。
俺達の試合は14時半からだからいつもより遅いスタートだ。朝動いて昼飯食ったら遅くても12時くらいに出発する。時間の感覚が違うと思うけど〝いつも通り〟を発揮できるようにな。昼寝の時間取るから起きる時間はなるべくいつもと同じでいくぞ」
「「「はい!」」」
「夜更かしすんなよー」
……勉強してもう一回風呂入るか。
一夜明けて、遂に準決勝の日を迎えた。コンディションチェーック! ……うん、大丈夫。まあ、いつも通りだ。
「【腹が減っては戦はできぬ】だぞー、起きろー」
「「「……うぃーっす」」」
スガさん元気だなー。その反面大地さんと旭さんはまだ本調子じゃなさそうだ。タライを叩いて起こすとかしないよな。……しないよな?
「……ねこ起きるの早えー」
「まあいつものことですし。ほら、顔洗ってきて下さーい」
「「「あーい……」」」
ぼけーっとしてる旭さん達が洗面所の方へと向かっていった。
朝御飯を食べて、借りていた体育館で軽く動いて、宿でちょっと早めのお昼ご飯を食べて、軽く昼寝をして東京体育館に到着した。
まー、注目されるわ。人数少ない割に旭さん、ノヤ先輩、飛雄、翔陽みたいに注目選手もいるしなー。あと、公立高校からベスト4ってなかなか出てこない印象もあるし。公立高校の星って期待されてるのを聞いた。
白鳥沢、稲荷崎、鴎台と倒してきた烏野がどこまでやるのか楽しみにしてる感じか。まさにダークホース・烏野。
「人すごかったな」
「……僕たちに注目してる人なんかいないでしょ」
「そんな悲しいこと言うなー、月島ー」
ノヤ先輩、飛雄、翔陽位か。平常心って言うかあんまりびびってないの。仙台市体育館も大きい会場だったけど、東京体育館はバレーコート1面以上大きくなるからな。確かバスケの冬の全国大会でも使ってるはずだし。ウィンターなんとか。
「準備終わったらアップ始めていくからな」
「「「はい!」」」
準決勝が始まるまであと数時間か。頑張っていきましょー。梟谷と犬伏東高校はどっちが勝ってるのかな。
◎
梟谷学園と犬伏東高校の対戦は第梟谷学園が第1、第2、第4セットを取得したことで勝利した。つまり、決勝戦には梟谷学園が進出する。
2校の応援団が観客席から移動していく中、観戦兼応援の為に訪れていた音駒高校男子バレー部一同は今の試合についての感想を言い合っていた。
「木兎やばかったな」
「ね」
「狢坂と対戦以降ムラっけがなくなったよなー。マジやべえ」
「赤葦曰く、『絶好調を普通にした』らしいけど」
「『1本指』だっけか。意味分かんねえけど木兎らしいな」
「なー」
黒尾鉄朗、孤爪研磨、夜久衛輔、海信行の順で会話が進み、応援席に礼をしている梟谷学園のメンバーに拍手を送る。
また、黒尾鉄朗、海信行、夜久衛輔の3人は11月の時点で志望校に合格していたため、何の問題も無く梟谷学園と烏野高校の応援に来ていた。
「っ!! ヘイヘイヘーイ!! 見たかー! 黒尾!!」
「「「っ!?」」」
「無視すんじゃねえぞー黒尾!!」
「……めっちゃ呼ばれてるじゃん」
「取りあえず手振っとこうぜ。周りの目がやばい」
「「「それな」」」
「あんにゃろう、後でしばく」と思った黒尾鉄朗達はその怒りを抑えたまま、木兎光太郎達梟谷学園男子バレー部に手を振り続けた。
そして木葉秋紀や赤葦京治にお小言を貰って連れて行かれた木兎光太郎を見てゲラゲラと笑う。
「……次は烏野かー。どっちが勝つかな」
「センターコート自体は白鳥沢戦で慣れてると思うんだよな」
「影山と翔陽と繋護は大丈夫そう。あと夕と月島も」
「……そうなるとサームラ達の方があれか」
「リエーフも見習って欲しいぜ」
丁度聞いていたのか、灰羽リエーフが「黒尾さん! 何か言いました?」と黒尾鉄朗に尋ねて山本猛虎にお尻をはたかれた。
そして、烏野高校と一林高校のメンバーが会場へと入ってくるところが見えてくる。彼らは少し緊張こそしているものの、固くなりすぎてはいないように見える。
「トイレ行くけど誰か行く人ー」
黒尾鉄朗が部員一同に尋ねるとチラホラと手が上がってトイレへと向かっていった。烏野高校対一林高校の試合は1時間を切っている。
◎◇
烏野高校と一林高校の応援団の入場許可が降りて、猫又姉妹、込田彩音、日向夏などが続々と応援席に向かっていく。選手達はコートでウォーミングアップを始めていた。
「コート一つしかないんだね」
「そうそう。準決勝と決勝は1試合ずつ行われるの。だからコート一つだけで順番にやってくんだよ。午前中は女子、午後は男子。烏野の試合は一番最後」
「ってお兄ちゃんが言ってた」
「そうなんだね! 兄ちゃんはそういうの知らなそう!」
「「「日向君……」」」
猫又繋護からはテスト期間になる度に「翔陽と飛雄にどうやったら教えられると思うー?」とアドバイスを求められていたり、日向夏からは「兄ちゃんの中学校のテスト!」とグシャグシャになった37点の答案用紙を見せて貰ったりしていて、思わず閉口してしまう。「高校卒業したらどうするんだろうね?」「……そもそも卒業できるかな」などと話し合ってもいる。
「……日向君って高校卒業したらどうするか言ってる?」
「オリンピックで金メダル取るって言ってた」
「「「オリンピック」」」
可能性としては2016年のリオ・オリンピック、2020年、2024年、2028年のオリンピックだ。リベロならあるいは、と考えてはオリンピックにおける選ばれるリベロは最大で2人と言うことにも気が付いて、もしかしたら猫又繋護とレギュラー争いをするかもしれないと素直に応援できなくなる3人だった。
「よーし! 烏野応援するよー!」
「「「おぉーっ!」」」
「あ、応援しようか」
「「「うん」」」
田中冴子達和太鼓チームの準備も終わって、烏野高校応援団チームは応援を始める。
そして、応援が始まった中、猫又育史の隣にわざわざ座った烏養一繋が会話を始めた。羽染葵育と下園育音も会場入りして応援席へと向かっているらしい。
「なんでここに座る? 空いてる席は他にもあるだろ」
「いいだろ、別によ。つか練習はどうした」
「午前やってきた。ウチの部員が『梟谷と烏野の応援をしたい』ってな」
「はぁー、東京は良いねえ。気軽に来られてよ」
「おめえも千葉に来るかもしれねえんだろ?」
「どうすっかねえ」
烏野町よりも千葉県の方が医療や通行の利便性が良いため、猫又繋護の卒業に合わせて「千葉に来ないか?」という話が出ている。期限はあと2年だ。
「ま、それは良い。あんまし美繋に負担かけんじゃねえぞ」
「分かってるっつーの。ほら、アナウンス始まるぞ」
烏養一繋の言うとおり、公式ウォーミングアップが終了し2校のスターティングメンバーの紹介に移る様子が目に入ってくる。
◇
公式ウォーミングアップが終わって、いよいよ一林高校との試合が始まる。白鳥沢の時よりも観客数が多くて凄い。当然だけど。
「やっちゃん応援頼むぜ!」
「はい!」
ベンチにマネージャーは一人しか入れないから、俺達全員とハイタッチをしてやっちゃんは烏野側の応援席へと向かっていった。……あ、白福先輩と雀田先輩に捕まった。
そして、俺達は俺達で簡単にミーティングをする。まずは烏養コーチから。
「びびってねえな?」
「「「はい!」」」
「せっかくのセンターコートだ。5セットマッチだぞ。楽しんでこい!」
「「「オォーッス!」」」
続いて武田先生。
「……そうですね。僕は顧問ではありますが、君達のバレーを楽しみにしている一ファンです。もっともっと君達が活躍する所を見せて下さい。
さあ皆! 一林高校との対戦を目一杯楽しみましょう!!」
「「「オォーッス!」」」
挨拶の為に13人でコートに入って、大地さんがアタックライン付近で俺が一番左になるように背番号順でベンチサイドを見るように並ぶ。同じように一林高校の皆さんも並んで少し経ったらアナウンスが始まった。
『只今より2012年度春の高校バレー 奈良県代表一林高校と宮城県代表宮城県立烏野高等学校の準決勝を行います。両校の健闘を称え、今一度大きな拍手をお願いします』
俺達も一緒に拍手をして、それが終わったら向いてる方に礼。振り向いて観客席に礼。ネットに向かっていって、相手の13番と14番と握手をしてベンチに戻る。
次はスターティングメンバーの紹介だ。
ベンチサイドで武田先生、烏養コーチ、清水先輩、忠、一仁先輩、久志先輩、力先輩、スガさん、俺、ノヤ先輩、蛍、翔陽、飛雄、龍先輩、旭さん、大地さんの順番に並んで呼ばれるまで待つ。最初は一林高校から紹介される。
選手6人とリベロ2人の紹介が終わって烏野の番だ。
『続きまして、宮城県立烏野高等学校のスターティングメンバーの紹介です。1番、澤村大地』
「はい!」
「「「大地ー!!」」」
大地さんが旭さん、龍先輩、飛雄……の順でハイタッチをしてコートに向かっていった。準決勝だけあって烏野からもそこそこ応援に来てる人が多い。一林高校の方が5倍くらい多いけどな。私立やべー。
『3番、東峰旭』
「はい!」
「「「旭ー!!」」」
旭さんも同じようにハイタッチをしてコートに向かっていった。
『5番、田中龍之介』
「シャアっす!」
「「「龍之介ー!」」」
龍先輩も同じようにハイタッチをしてコートに向かっていった。
『9番、影山飛雄』
「はい!」
「「「飛雄ー!!」」」
飛雄も同じようにハイタッチをしてコートに向かっていった。
『10番、日向翔陽』
「はい!」
「「「翔陽ー!!」」」
翔陽も同じようにハイタッチをしてコートに向かっていった。
『11番、月島蛍』
「はい!」
「「「蛍ー!!」」」
蛍も同じようにハイタッチをしてコートに向かっていった。
『続いてリベロの紹介です。4番、西谷夕』
「オッシャー!」
「「「夕ー!!」」」
ノヤ先輩も同じようにハイタッチをしてコートに向かっていった。最後に俺の番だ。
『13番、猫又繋護』
「はい!」
「「「繋護ー!!」」」
スガさん、力先輩、久志先輩、一仁先輩、忠、清水先輩、烏養コーチ、最後に武田先生とハイタッチをしてサイドラインでコートに一礼。中に入って大地さん、旭さん、龍先輩、飛雄、翔陽、蛍、最後にノヤ先輩とハイタッチをして円陣を組む。
「良し、準備は良いな? 烏野ー! ファイ!!」
「「「オォーッス!!」」」
ポジションの確認に入るから、俺とノヤ先輩は一旦コート外に出てサイドラインの隣でお腹側の背番号を副審に見せる。さーて、やりますよー。
2セット目は取られたものの、1、3セットを取って、4セット目の【25-26】でウチのマッチポイントだ。
旭さんが飛雄からの平行トスを打ってブロックアウトを狙った。ボールは相手コートのライト側の観客席、つまり烏野の応援席へと吹っ飛んでいっておっちゃんがボールを掴んだところで主審が笛を吹いた。【25-27】でウチの勝ちだ。
その瞬間スガさんがウォーミングアップゾーンから飛び出したのを見て俺と翔陽も続く。
「「「うぉぉぉぉ!!」」」
コートにいる大地さん達6人とハイタッチをして大はしゃぎ。マジかー、決勝進出かよ。しかも梟谷と。いやー、秋紀先輩達もいるとか面白すぎるんだけど。
音駒とはゴミ捨て場の決戦だけど、梟谷とは? ……〝樹上の戦い〟とか? 辞めよ。厨二病になっちまう。
……自然界だと烏と梟って天敵らしいんだよなー。あ、〝樹上の縄張り争い〟とか良いんじゃ無い? いやー、明日が楽しみだ。
「整列するぞ!」
「「「はい!」」」
すぐに一林高校への表彰式が行われるから、始まりと同じように整列していく。
◆
梟谷学園男子バレー部マネージャーの雀田かおりと白福雪絵は谷地仁花と共に烏野高校と一林高校の試合を観戦していた。
「これでウチと烏野だね」
「いや~よもやよもやだよね~」
「そうですね……!」
今年度から烏野高校が梟谷グループに混ざって共に練習して、遂に全国大会での対戦となるが、先日行われたゴミ捨て場の決戦のようにどうしても練習試合の延長のように思えてしょうが無い。
「いや、本当に楽しみだ。ま、ウチが勝つけどね」
「木兎の調子も良いしね~」
「いえ、烏野だって負けません!」
その瞬間、雀田かおりと白福雪絵はお互いに眼を合わせては頷く。
「なーんか、いっぱしのマネージャーになったね、仁花ちゃん」
「っ!? そんなことは……!」
「いやいや。7月の『右から左まで何も分かりません!』って感じじゃ無いじゃん。仁花ちゃんももうすぐ2年生だからね。先輩らしくドドーンといっちゃいな」
その瞬間、谷地仁花の目の前にいる2人が清水潔子と同じく3年生だと言うことを思い出す。
「い、今までお世話になりました! かおり先輩! 雪絵先輩!」
「「まだ明日があるでしょーが」」
「シャチ!」
「でた、よく分からない返事~」
「っ!?」
そして、準備が終わって表彰式を始まるアナウンスが会場内に響いた為、3人は表彰式へと集中する。
◆
梟谷の皆さん――主に木兎先輩だけど――から「明日勝つのはウチだ!」って宣戦布告をされて宿に戻ってきた。
お風呂に入って、夜ご飯までの時間を使って梟谷対策のミーティングをする。まずは武田先生から。
「皆、一林高校との試合お疲れ様でした。そして勝利おめでとうございます!
僕ね、何度も自分の頬を叩いてもただ痛いだけなんですよね。つまり夢では無く現実だと。ここまで来たからには、とびきり最高の舞台で梟谷学園から勝利を勝ち取りましょう。このチームならばできると信じています。頑張りましょう!」
「「「はい!」」」
さっき秋紀先輩と大和先輩から「どっちが顧問を胴上げするかだよなー」って煽られたから「日中はカラスの方が強いんですよ」って答えといた。実際に明日の試合開始は10時半からだからこっちの方が有利か……?
嘘嘘、この時間も練習してるだろうから梟谷の方が何十倍も有利だ。応援もそうだし。
「おーし、優勝旗とトロフィーを受け取る準備は出来てるな?」
「「「はい!」」」
「梟谷は相変らず強い。それは確かだ。木兎も今まで調子70~150だったのが調子120をキープできるようになって、今までの絶好調が普通、みたいな感じになってるからな。多分牛島みたいに苦戦すると思う。
今までやってきたように、サーブで崩した上で赤葦のトスワークを単調にして、ブロックとレシーブで対応、ってのが基本的な戦術だ。穴無えし、意地と意地のぶつかり合い、コンセプトの戦いだ。
明日も全員で勝ちにいくぞ!」
「「「オォーッス!」」」
「このチームで出来るのはこれで最後だからな」って言葉が聞えてくるようだった。ていうか、新体制1年目で決勝まで残るんだから、コーチの引き抜きとかも考えられそうだな。これからどうすんだろうね、繋心兄ちゃん。
「ちゃーんと晩飯食って栄養補給しろよー」
「「「オォーッス」」」
晩ご飯楽しみだなー。あともう一回お風呂入りたい、入れるかな。
◆
一方、梟谷学園男子バレー部一同も烏野高校の対策ミーティングを行っていた。監督の闇路建行とコーチの滝沢良文が中心となって進めている。
「さっき見たとおりだ。明日の対戦校は烏野。おまえ達も十分知ってるだろ。
最後に合宿した10月とは別のチームだ。あの時と思ったまま舐めてかかったら負けるぞ。ウチが負けた稲荷崎も倒してんだからな。油断すんなよ」
「「「はい!」」」
「シンクロ攻撃は前衛3枚に1人1人コミットで構わねえから積極的にワンタッチを取っていく。触れなくてもコースを絞っていけ。
そんで、サーブは東峰と田中を狙ってリベロの西谷と猫又には打たない。崩したと思っても影山がいるからな。強引に速攻を入れてくるぞ。
この1年の総決算だと思ってやってくぞ、いいな?」
「「「はい!」」」
その後、解散命令が出て部員は各々フリー時間を過ごす。
◆
二度目のお風呂を終えて部屋に戻っていると、3年生4人がバルコニーで集まってた。集中していてこっちには気が付いてない。厚着はしてるから大丈夫でしょー。
「にしてもさー、決勝だぞ決勝。全国の決勝」
「「「…………」」」
スガさんの言葉に他の3人は何も話さない。まーだ緊張してるのかよ。
「おい、また緊張してんのかよ」
「いやだって全国の決勝だぞ? 去年まで全然思いもしなかった」
「……気持ちだけだったな。『全国に行くんだ』ってただの目標だけって言うか。もっと何か出来たんじゃないかって思うよ」
真面目だなー、大地さんと旭さんは。
「今更そんなこと言ったってしょうがないだろー? 烏養さんも言ってんじゃん。勝つことが恩返しだって。俺なんか担任から『大学でもバレーやれよ』って言われるようになったよ。そんで――」
「――〝次に繋ぐ〟でしょ?」
「そう! 清水の方がよっぽど分かってんじゃん。これからの烏野が強豪校でいられるように背中見せてやろうぜ。『嗚呼、偉大なるスガさん達』ってさ」
「……言い方はアレだけど気持ちは分かる。烏野男バレ第二次黄金期の立役者になるんだよな、俺達」
「その為にも梟谷に勝たないと」
「「「だな」」」
……あー、もっと大地さん達とバレーやりたいな。1年あっという間だった。3年生引退したら翔陽ギャン泣きしそうだな。
金山遥 国語教師
細田春平 仙台フロッグスの広報マン
インハイなり春高のトーナメントですが、○○第1代表と○○第2代表(神奈川、東京、大阪、北海道)は決勝でしか対戦しないように作られています。
ですので、現実のルールを適用すると、第1シードである井闥山学院(東京第1代表)は左上のブロックなので、梟谷学園(東京第2代表)は右上か右下のブロックのはずです(開催地枠はまた別のルールが適用されているので除外します)。
烏野と音駒が右下(第2シードの稲荷崎と一緒のため)なので、第2シード枠の右上のブロックかなと思っています。
本来なら準決勝で梟谷学園と当たるはずなのですが、連載中にトーナメントが修正されてしまっているのでよく分かりません。
「そういうルールもあるんだなー、ほーん」とでも思ってください。