烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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~梟谷学園 ベンチメンバー~

監督 闇路建行
コーチ 滝沢良文
マネージャー 雀田かおり 白福雪絵

01 大湊正義
02 鷲尾辰生
03 猿杙大和
04 木兎光太郎 キャプテン
05 赤葦京治
06 白山譲
07 木葉秋紀
08 片桐蒼太
09 早川聡一郎
10 穴掘秀一
11 小見春樹 リベロ
12 尾長渉
13 藤澤文明 リベロ
14 夏目信典

※
3、7、8、10、12、14は庵里中出身
1、6、8、9、13、14はオリキャラ


2013年1月⑦

 ……はっ。起きたら宿の天井が目に入ってきた。あと誰かのいびきと寝息もより聞えてくる。

 スマホで日付を確認すると2013年1月13日だ。春高決勝の日で間違いない。ストレッチの時間取りたいから起きる時間までには余裕有るけど早めに起きるか。

 誰も起こさないように布団からノソノソ出て、自分の鞄からタオルとコップ、歯磨きセットを持って洗面所へゴー。白湯も飲もうかな。

 

 

 朝の身支度を終えて「ストレッチに使って良いよ」って部屋でストレッチをしていると繋心兄ちゃんがやってきた。

 

「おはよう、朝早いじゃん」

「はよーっす。言われるまでもねえよ」

 

 繋心兄ちゃんもストレッチを始めていく。身体の中心から暖まるようにする動的ストレッチだ。お互いに無言で進めていく。

 ……お。誰かがこの部屋に近付いてきてる。

 

「ふんふんふーん。……うおっ!? コーチに繋護。なんで無言なんですか!?」

「なんとなく?」「左に同じ」

 

 珍しく龍先輩が早く起きたらしい。朝から元気だなー。

 

「田中おはよう」「おはようございます」

「あ、おはざっす!」

「早いな」

「いやー、なんつーかすげー目覚めよくて。ストレッチでもやろうかなと。コーチも早いっすね」

「畑見てた分朝早いんだよ」

 

 そして部活の指導前に寝てから学校に来ると。身体壊しそうだな。気を付けて欲しい。

 龍先輩も俺達2人と同じように動的ストレッチから始めていく。すると、今度は飛雄と翔陽が現れた。

 

「あ、おはようございます!」「おはようございます!」

「「「おはよう」」」

「木兎さん達と試合できるのが楽しみで起きちゃいました!」「俺はいつもこのくらいなので」

「他のメンバーはまだ寝てるから静かにな」

「「オス!」」

 

 いや、大声出すなって今言われたばっかだろうがよー。とまあ思いつつも翔陽と飛雄も動的ストレッチを始めていく。

 ちょっと経ったらスガさんが。次は力先輩が。次は蛍と忠が。次は久志先輩と一仁先輩が。最後に大地さん、旭さん、ノヤ先輩が。15分以内に全員集まった。

 

「失礼します。烏養君?」

「おお? どうした武田センセ」

「寝室に皆いないから。あ、ここにいたんですね。おはよう、皆」

「「「おはようございます!」」」

 

 寝室にいないからどこにいるのー、って探しに来たんだろうな。

 

「宿の方と清水さん、谷地さんが朝御飯の準備をして下さいました。しっかりと食べて東京体育館へ向かいましょう」

「「「オォーッス!」」」

 

 【腹が減っては戦はできぬ】だもんな。しっかりと朝御飯食べていこう。10時半から本番だ。

 

◆

 

 一方、梟谷学園男子バレー部が宿泊しているホテルでも朝食に向けて部員が朝の身支度を始めていた。

 しかし、マネージャーの雀田かおりと白福雪絵が「木兎知らない?」と眼が合う部員に声をかけていて、寝起きの木葉秋紀と会話を始めた。

 

「ねぇ~、木葉さー、木兎知らない?」

「木兎? 自分の部屋じゃねえの?」

「それがさ、赤葦が起きたときにはもうベッド片付いてたって」

「はーん?」

 

 「木兎に限って誘拐されるとかねえよな? ……ねえよな?」と一瞬頭を過ぎった木葉秋紀であるが、体格を考えると2mクラスの成人男性3人や台車などが無ければ寝てる間に誘拐なんか無理だなと結論づける。

 

「あいつのことだから――」

 

 「便所にでも行ってんじゃね?」と木葉秋紀が最後まで言い終わる前に「あ! かおりとゆきっぺじゃん! オッハー!!」と騒々しく挨拶をしたスポーツウェア姿で汗だくの木兎光太郎が現れた。

 

「あ、木兎~、何処行ってたの? 探したんだけど~」

「ていうか何してたんだよ、そんな汗だくで」

「ちょっと早く起きたからコーチと一緒にランニングしてた!」

「「「……そう」」」

 

 誘拐なんて起きていなく、ただの取り越し苦労だったことに脱力する木葉秋紀達だった。加えて、マネージャー2人は大事にしたくなくて闇路建行と滝沢良文の元を訪れていなかったことを後悔する。

 

「これから朝御飯だから早くシャワー浴びてこいよ」

「おお! 待ってろ烏野! うぉぉぉぉ!!」

 

 嵐のように自分の部屋へと戻っていく木兎光太郎を見て、「ああ、こいつに振り回されるのも今日で最後なのか」と3年生達は若干センチメンタルな気分になる。

 

「3年ってあっという間だな。入学式がつい昨日起きたみたいだ」

「ねー」「ね~」

「最後が烏野で良かった」

「ウチが勝つけどな。あと繋護をぎゃふんと言わせてやる」

「転校届準備しろって闇路先生に言われてるから準備しといたよ」

「そりゃいい。さーて、朝御飯行こうか」

「「んー」」

 

 起きていない部員や体調不良の部員がいないか確認しつつ梟谷学園男子バレー部一同はホテルのレストランへと向かっていく。

 決勝戦開始まで約3時間半。

 

◆

 

 食堂で朝御飯の配膳が終わって席に着く。今日の朝御飯は梅しそご飯と月見うどん、トマト、バナナ、オレンジジュースだ。油っこいものは駄目だもんな。カツ丼とか。

 前に武田先生と烏養コーチが立って、武田先生が話し始める。

 

「はい。皆行き渡りましたね」

「「「はい!」」」

「数時間後にはもう決勝戦が始まります。しっかりと朝御飯を食べて梟谷学園との試合に臨みましょう。ただし、食べ過ぎは良くないですよ。気をつけて下さいね」

「「「はい!」」」

 

 「ちょっと足りないかも?」くらいで良いからな。食べ過ぎ注意だ。

 続いて烏養コーチが話し始めた。

 

「改めて『ああだこうだ』言うつもりはねえ。全国制覇を目指してやってきたしこのメンバーでなら全国制覇も可能だと思ってる。

 全国制覇まであと1戦だ。全国の高校バレー部員が目指す大舞台で自分達のバレーをやろう。そんで優勝旗とトロフィーを烏野に持って帰る。いいな?」

「「「オォーッス!」」」

 

 勝っても負けても今日でこのメンバーで出来るのは最後。だったら笑って大地さん達4人を引退させてやろうじゃん。おーし。

 

「じゃあ澤村君、一言良いかな?」

「はい!」

 

 大地さんがその場に立って、俺達一人一人と眼を合わせては口を開いた。

 

「【墜ちた強豪 飛べない烏】。たった1年前はこんな風に言われてた。

 でも今はどうだ? 武田先生、烏養コーチ、若林先生、烏野の先生方、烏養元監督とOBの皆さん、俺達の家族、学校の皆、今まで戦ってきた宮城県の高校生、音駒、梟谷、森然、生川の皆……。色んな人に助けられて俺達は今ここにいる。

 だから勝とう。俺達ができる恩返しと言えばそれだけだ。勝って優勝旗とトロフィーを宮城に持ち帰る。その為にもしっかりと朝御飯を食べるぞ!」

「「「オォーッス!」」」

「それでは! 頂きます!!」

「「「頂きます!!」」」

 

 まずはご飯からー!!

 

◇

 

 本日の決勝戦に間に合うように、千葉県の猫又家では猫又明育、猫又美繋、猫又真緒、猫又美緒、烏養一繋、烏養典子が準備を進めていた。

 

「お祖父ちゃん達今日帰っちゃうの?」

「おう。明日成人の日だからな。混むのは避けてえ。……東京はいつも混んでるけどな」

「そっかぁ……」

「また春休みとかいらっしゃい。繋護がばっけ味噌好きで作っとくからね」

「うん!」

 

 ばっけ味噌とはフキノトウを使った宮城県の郷土料理で、春の訪れを告げる料理だ。即ち1年が過ぎようとしてることに他ならない。

 2013年度は猫又真緒が20歳、猫又美緒が14歳になる年でもある。

 

「来年はさー、お父さんとお母さん真緒と彩音ちゃんの振り袖見てってよー」

「そうですよー」

「いや、来年も決勝まで残ってるか分からねえだろ」

「そうなるように応援するんでしょうが」

 

 大人4人の会話に猫又真緒が口を挟む。

 

「烏野に入学を決める中学3年生は多いんじゃないの? お祖父ちゃんの時は1学年15人くらいだったんでしょ?」

「まあそうだな。平均して15人くらいだったな」

「だったら凄い中学生が入学してきてもおかしくないんじゃないの?」

「まあな。……ほら、手動かせ」

「「「はーい」」」

 

 「15人で済めば良いけどよ」と憂う烏養一繋だが、彼もまた帰る準備を進めていく。猫又育史達と込田家の4人と合流する時間は着々と近付いていた。

 

◇

 

 開会式と1回戦があった5日は目茶苦茶騒々しかったのに、女子含めて4校しか来ない東京体育館はがらんとしてる。女子は午後からだから実質2校。いやー、静――。

 

「ヘイヘイヘーイ! 烏野ヘーイ!!」

 

 ――さようなら、静寂。

 声がした方を向くと、木兎先輩を先頭に梟谷の皆さんが荷物置き場兼控え室に来た。

 

「今日〝も〟ストレートで勝つからな!」

「いやいや。今日〝こそは〟烏野が勝つから」

 

 そうだそうだー! もっと言ってやれー!!

 

「木兎さん! 今日は俺達が勝ちます!」

「おおっ! 俺の弟子! でもな、師匠は弟子に負けちゃ駄目なんだぜ!! ってことでウチが勝ーつ!! ツッキーも腕折れないようにな!!」

「……木兎さんも心折れないで下さいね」

「っ!? 赤葦! ツッキーが反抗期だ!!」

「……ほら木兎さん、準備しましょう」

 

 カオスなことになってる中、秋紀先輩、大和先輩、蒼太先輩、淳也先輩、保純先輩、秀一、渉、信典がこっちの方に来た。

 

「今日負けた方が『ぎゃふん』って言う罰ゲームなー」

「だったら先輩達の『ぎゃふん』を録音しておかないとですね。庵里の後輩に音源渡しておきますよ」

「は? 梟谷が勝つからさ」

「いやいや烏野ですって」

「「「ああん!?」」」

 

 駄目だ。多数に無勢。誰かーヘルプー。

 

「約束だぞ、覚えとけー」「いやー、楽しみだなー。はっはっはー」

 

 ……絶対勝つっての!! ベーっだ!

 

◎

 

 梟谷グループの一つである森然高校男子バレー部一同と生川高校男子バレー部一同もまた本日の決勝戦を観戦しに来ていた。

 

「いやー、思いもしない展開になりましたね」

「喜ばしいような悔しいような」

「そこは悔しいって言いましょうよ。ウチらだってここを目指していたんですから」

「来年こそはですね」

 

 笹川良樹、中崎純一、秋田洋介、荒川新平の順で会話を進めている一方で、引退した小鹿野大樹と強羅昌己達3年も口々に発言する。

 

「シンクロ攻撃烏野の方が上手くなったな」

「それ辞めろ! ……影山マジやべえな」

「影山と言うか烏野全員がやべえな。武田先生と烏養コーチも」

「……ホント烏野って雑食性だな」

「で、どっちが勝つと思う?」

 

 「やっぱり梟谷だろ」「まあ、梟谷かな」「関東勢としては梟谷を応援したい」と梟谷学園を応援する声と「ここは烏野かな」「逆張りで烏野を」と烏野高校を応援する声で溢れた。約7対3で梟谷学園を応援する声が多い。

 

「音駒とも合流するんだっけ?」

「その予定だって聞いてるけど」

「楽しみだな」

「ああ」

 

 決勝が始まるまで残り1時間。

 

◎

 

 メインアリーナに入るとカメラとか役員の数とかがすんごい。やっぱ決勝戦だからね。にしても梟谷は全校生徒来てるんじゃないかって位応援団いるなー。ぱっと見1000人は優に超えてると思う。1500人とか? やべー。

 

「お、お、お、おーっし!」

「何だよ、びびってんのか?」

「びびってねえし!!」

 

 翔陽とか忠、っていうか全体的に硬い気がする。平常心なのはノヤ先輩、俺、飛雄位か。まあ全国の決勝だもんな。

 

「観客席は観客席だぞ。コートの中に集中しろよ」

「「「オォーッス!」」」

 

 無理矢理声出して雰囲気に慣れていくしかないな。

 

「じゃあ動いていくぞー。成長したって梟谷に思い知らせていこうぜ」

「「「オォーッス!」」」

 

 あー、楽しみだ。

 

◇

 

 烏野高校側の応援席に到着した猫又真緒達は田中冴子達和太鼓チームに合わせて烏野高校の応援を始めていた。

 

「いっけーいけー!」

「「「いっけーいけー!」」」

「押っせー押せー!」

「「「押っせー押せー!」」」

「「「1番大地ー、2番孝支ー! ガッツで行こうぜ!」」」

「「「オォー!!」」」

 

 1番の澤村大地と2番の菅原孝支から順に応援団は名前を呼んでいく。

 

「いっけーいけー!」

「「「いっけーいけー!」」」

「押っせー押せー!」

「「「押っせー押せー!」」」

「「「3番旭ー、4番夕ー! ガッツで行こうぜ!」」」

「「「オォー!!」」」

 

 次は3番の東峰旭と4番の西谷夕。

 

「いっけーいけー!」

「「「いっけーいけー!」」」

「押っせー押せー!」

「「「押っせー押せー!」」」

「「「5番龍之介ー、6番力ー! ガッツで行こうぜ!」」」

「「「オォー!!」」」

 

 次は5番の田中龍之介と6番の縁下力。

 

「いっけーいけー!」

「「「いっけーいけー!」」」

「押っせー押せー!」

「「「押っせー押せー!」」」

「「「7番久志ー、8番一仁! ガッツで行こうぜ!」」」

「「「オォー!!」」」

 

 次は7番の木下久志と8番の成田一仁。

 

「いっけーいけー!」

「「「いっけーいけー!」」」

「押っせー押せー!」

「「「押っせー押せー!」」」

「「「9番飛雄ー、10番翔陽ー! ガッツで行こうぜ!」」」

「「「オォー!!」」」

 

 次は9番の影山飛雄と10番の日向翔陽。

 

「いっけーいけー!」

「「「いっけーいけー!」」」

「押っせー押せー!」

「「「押っせー押せー!」」」

「「「11番けーい、12番忠ー! ガッツで行こうぜ!」」」

「「「オォー!!」」」

 

 次は11番の月島蛍と12番の山口忠。

 

「いっけーいけー!」

「「「いっけーいけー!」」」

「押っせー押せー!」

「「「押っせー押せー!」」」

「「「13番繋護ー! ガッツで行こうぜ!」」」

「「「オォー!!」」」

 

 そして最後に猫又繋護。烏野高校排球部レギュラー13人の紹介が終了して、和太鼓と篠笛を中心とする応援と部員の紹介が繰り返される。

 眼前のコートでは両校の公式ウォーミングアップが終了した。いよいよ決勝戦が始まる。

 

◇

 

 公式ウォーミングアップが終わって、やっちゃんと別れる。どうやら白福先輩と一緒に見るとか見ないとか。雀田先輩がベンチらしい。

 

「やっちゃん、応援頼むぜ!」

「はい! 優勝するところをしっかりと録画しておきます!!」

 

 バレー部に誘った手前、入部して良かったって思って貰わないとな。やるしかねえぞー。

 

「行くぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 やっちゃんは応援席の方へと向かっていった。俺達は俺達で簡単にミーティングをする。

 

「準備は良いな?」

「「「はい!」」」

「東京体育館のセンターコート。しかも決勝戦だ。この飛びっ切り整えられた大舞台でバレーやれるんだ! 楽しんでこい!!」

「「「はい!」」」

 

 続いて武田先生。

 

「梟谷学園には負け越しています。ですが今の我々ならきっと打破出来るでしょう。

 さあ皆! 大きく育ったその翼でてっぺんからの景色を見るときです!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 やっちゃんを除いた全員で円陣を組む。

 

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審と副審の紹介、決勝を始めるってアナウンスの為にコートへと向かっていく。

 

◆

 

 一方、梟谷学園男子バレー部一同もまた簡単なミーティングを行っていた。監督の闇路建行とコーチの滝沢良文が中心となってミーティングを進めていく。

 

「お前ら、準備良いな?」

「「「はい!」」」

「相手は烏野。初めて会った時とは別のチームだ。油断すんなよ。気を抜いたら一気に流れ持ってかれるぞ」

「「「はい!」」」

「だからってこのチームが劣ってるとは全く思ってない。むしろ上回ってる。俺達の力を思い知らせていこう」

「「「はい!」」」

 

 雀田かおりを含んだ計17人で円陣を組み、キャプテンの木兎光太郎が声を出す。

 

「お前らとできる最後の試合だ。しかも烏野。こんなに楽しみな試合は初めてだぜ。優勝すっぞ。俺に着いてこい! 梟谷ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 梟谷学園男子バレー部一同もまたコートの中へと向かっていく。

 

◆

 

 副審がこっちコートのフロントゾーン。大地さんがアタックライン付近で俺がエンドライン付近に立つように背番号順で並んでいく。

 梟谷の皆さんも向こう側のコートでおんなじように並んだら、場内アナウンスが流れ始めた。

 

『只今より、2012年度全日本バレーボール高等学校選手権 男子決勝戦 東京第二代表梟谷学園と宮城代表宮城県立烏野高等学校の試合を行います。

 両校の健闘を称え、大きな拍手をよろしくお願いいたします』

 

 会場中が拍手で包まれて、主審、副審、ラインズマン、記録係の紹介も終わった。主審と副審の案内に従ってネット際まで向かっていって、13番の藤澤先輩と14番の信典と握手をする。

 

「繋護とこうして向き合うとは思わなかった」

「それなー。『ぎゃふん』って言う準備は出来てるな? 信典」

「それ、こっちのセリフ」

「「宜しく!」」

 

 いやー、信典達の悔しそうな顔見るの楽しみだわー。

 挨拶が終わって、一旦ベンチサイドまで移動する。次はスターティングメンバーの紹介だ。武田先生、烏養コーチ、清水先輩、忠、一仁先輩、久志先輩、力先輩、スガさん、俺、ノヤ先輩、蛍、翔陽、飛雄、龍先輩、旭さん、大地さんの順でベンチからウォーミングアップゾーンに達するように並ぶ。

 

『これより、梟谷学園のスターティングメンバーの紹介を行います。2番、鷲尾辰生』

「はい!」

「「「辰生ー!!」」」

 

 鷲尾先輩が部員13人、雀田先輩、滝沢先生、闇路先生の順でハイタッチをしてコートに向かっていった。そして、サイドラインで一礼してコートに入る。

 

『3番、猿杙大和』

「はい!」

「「「大和ー!!」」」

 

 大和先輩も同じようにコートに向かっていって、コート内で鷲尾先輩とハイタッチをする。

 

「4番、木兎光太郎」

「はい!」

「「「光太郎ー!!」」」

 

 木兎先輩も同じようにコートに向かっていって、コート内で2人とハイタッチをする。

 

『5番、赤葦京治』

「はい!」

「「「京治ー!!」」」

 

 赤葦先輩も同じようにコートに向かっていって、コート内の3人とハイタッチをする。

 

『7番、木葉秋紀』

「はい!」

「「「秋紀ー!!」」」

 

 秋紀先輩も同じようにコートに向かっていって、コート内の4人とハイタッチをする。

 

『12番、尾長渉』

「はい!」

「「「渉ー!!」」」

 

 渉も同じようにコートに向かっていって、コート内の5人とハイタッチをする。次はリベロ2人だ。

 

『リベロ、11番、小見春樹』

「はい!」

「「「春樹ー!!」」」

 

 小見先輩も同じようにコートに向かっていって、コート内の6人とハイタッチをする。

 

『13番、藤澤文明』

「はい!」

「「「文明ー!!」」」

 

 最後に、藤澤先輩がコートに向かっていって、コート内の7人とハイタッチをする。これで8人の紹介が終わった。

 

『マネージャー、雀田かおり』

「はい!」

 

雀田先輩の紹介をされて、観客席に一礼する。

 

『コーチ、滝沢良文』

「はい」

 

 滝沢先生もおんなじように礼をした。

 

『監督、闇路建行』

「はい」

 

 最後に闇路先生が紹介をされて観客席に一礼する。そうしたら今度は烏野の紹介だ。

 

『続きまして、宮城県立烏野高等学校のスターティングメンバーの紹介です。1番、澤村大地』

「はい!」

「「「大地ー!!」」」

 

 大地さんが旭さん、龍先輩、飛雄、翔陽、蛍、ノヤ先輩、俺、スガさん、力先輩、久志先輩、一仁先輩、忠、清水先輩、烏養コーチ、武田先生の順でハイタッチをしてコートに向かっていった。そして、サイドラインで一礼してコート内に入る。

 

『3番、東峰旭』

「はい!」

「「「旭ー!!」」」

 

 旭さんも大地さんと同じようにコートに向かっていって、コート内で大地さんとハイタッチする。

 

『5番、田中龍之介』

「はい!」

「「「龍之介ー!!」」」

 

 龍先輩も同じようにコートに向かっていって、コート内で大地さんと旭さんとハイタッチをする。

 

『9番、影山飛雄』

「はい!」

「「「飛雄ー!!」」」

 

 飛雄も同じようにコートに向かっていって、コート内で大地さんと旭さん、龍先輩とハイタッチをする。

 

『10番、日向翔陽』

「はい!」

「「「翔陽ー!!」」」「兄ちゃーん!!」

 

 お、夏ちゃんの声めっちゃ聞えてきたな。

 翔陽も同じようにコートに向かっていって、コート内で大地さんと旭さん、龍先輩、飛雄とハイタッチをする。

 

『11番、月島蛍』

「はい!」

「「「蛍ー!!」」」

 

 蛍も同じようにコートに向かっていって、コート内で大地さんと旭さん、龍先輩、飛雄、翔陽とハイタッチをする。

 6人の紹介が終わったからリベロだ。

 

『リベロ、4番、西谷夕』

「はい!」

「「「夕ー!!」」」

 

 ノヤ先輩も同じようにコートに向かっていって、コート内で大地さんと旭さん、龍先輩、飛雄、翔陽、蛍とハイタッチをする。最後に俺だ。

 

『13番、猫又繋護』

「はい!」

「「「繋護ー!!」」」

 

 姉ちゃんと美緒、彩音ちゃんの声めっちゃ聞えてきた。……団扇見せなくて良いから!

 スガさん、力先輩、久志先輩、一仁先輩、忠、清水先輩、烏養コーチ、武田先生とハイタッチをして、サイドラインで一旦立ち止まって一礼。

そうしたらコートに入って大地さん、旭さん、龍先輩、飛雄、翔陽、蛍、ノヤ先輩の順でハイタッチをして円陣。

 

「この最高の舞台で梟谷に勝つぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 今度はポジションの確認だ。俺とノヤ先輩は一旦コートから出てサイドライン付近でお腹側の背番号を副審に見せる。

 

梟谷

4 木兎先輩 7 秋紀先輩 2 鷲尾先輩

12 渉(リベロ) 5 赤葦先輩 3 大和先輩

 

烏野

11 蛍 9 飛雄 5 龍先輩

3 旭さん 1 大地さん 10 翔陽(俺)

 

 まあまあ、いつも通りだな。

 サーブは梟谷からで、サーブレシーブは俺、ウチからサーブの時はノヤ先輩っていつもの戦法を使う。サービスエース取れるものならとってみろやー。

 

「いつでも出られるからな!」

「ノヤ先輩の出番は無いですよー」

 

 副審からのOKを貰って、いつものやりとりをしたらまずノヤ先輩と別れてサイドラインで翔陽とも入れ替わる。

 

「今日は何点取る?」

「75点!」

「言ったな? やれよ」

「おう!」

 

 翔陽とハイタッチして、コートに一礼したらバックライトへと向かっていく。大和せんぱ~い、こっち打ってきて下さいね~。

 

「「「サル1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 いよいよ決勝戦が始まる。

 

 

 1セット目が終わった。

 【26-28】でウチが先取。うんうん、この調子この調子。

 ベンチサイドで荷物を持って梟谷の応援席側のコートのベンチサイドへと向かっていって、梟谷の皆さんとすれ違う。

 

「2セット目、ウチが取りますよ」

「いえいえ、このまま烏野が取ります!」

 

 珍しいな。闇路先生と滝沢先生が武田先生に話し掛けてる。それにしても、「ぐぎぎ……!」って表情見るのは楽しいなあ。あっはっはー。決勝戦でこんな風に楽しいバレー出来るとか恵まれてるな。終わって欲しくねー。

 コートチェンジをして早速ミーティングに入る。

 

「良いぞ、出だしは順調だ。だからって気を抜くんじゃねえ。油断してると一気に捲られる。

第2、第3と一気に取るぞ!」

「「「はい!」」」

 

 続いて武田先生。

 

「今の君達は梟谷学園とも互角以上に戦える。今まで培ってきた力を信じて次のセットも取りましょう!」

「「「はい!」」」

 

 やっちゃんを除いた全員で円陣を組んで気合いを入れ直す。

 

◆

 

 一方、梟谷学園男子バレー部一同もミーティングを行っていた。監督の闇路建行とコーチの滝沢良文が中心となって話し合いをしていく。

 

「サーブで日和ってたらさっきみたいになるぞ。『猫又からサービスエースとったるわ!』って気持ちで強いサーブ打ってけよ!」

「「「はい!」」」

「シンクロ攻撃に惑わされるのも分かる。が、ボールを見てしっかりと対応していけ。別に消えたり分裂したりするわけじゃねえからな」

「「「はい!」」」

「このセット取り返してこい!」

「「「オォーッス!」」」

 

 円陣を組んで気合いを入れたらレギュラー6人がコートへと向かっていった。

 

◆

 

 第2セットのポジションの確認だ。サイドラインでお腹側の番号を副審に見せる。

 

烏野

3 旭さん 11 蛍 9 飛雄

1 大地さん 10 翔陽(ノヤ先輩) 5 龍先輩

 

梟谷

4 木兎先輩 7 秋紀先輩 2鷲尾先輩

12 渉(リベロ) 5 赤葦先輩 3 大和先輩

 

 サーブスタートだからノヤ先輩が先にコートに入る。

 

「いつでも出られますからね」

「ここは俺に任せろ! 繋護の出番は無え!!」

 

 正リベロの座は俺がもらうぜよー。ぜよぜよ。

 ベンチサイドに戻って応援といこうか。

 

「「「田中1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 2セット目が始まる。

 

 

 2セット目が終わった。

 【24-26】で梟谷が取って、大地さん達と一緒に烏野の応援席側のコートへと向かっていく。いやー、木兎先輩の調子がドンドン上がってきたな。それに伴って梟谷全体のテンションが上がってきてる。ウチもつられてるけど。あー、楽しいな。

 コートチェンジをしてベンチサイドでミーティングに入る。

 

「木兎の調子が上がってきて、梟谷全体のリズムも良くなってきてる。つられてウチもな。

 やってることは正しいぞ。それは得点に出てるから安心して俺達のバレーをやっていこう」

「「「はい!」」」

 

 続いて武田先生。

 

「まだまだこの試合は終わりませんよ。もっともっと君達のバレーを見せて下さい! その上で勝ちましょう!!」

「「「はい!」」」

「ここから2セット取るぞ! 烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 やっちゃんを除いた全員で円陣を組んでポジションの確認に向かう。

 

◆

 

 一方、梟谷学園男子バレー部一同もまた簡単にミーティングを行っていた。

 

「よーし。良いぞ。烏野の速さにも慣れてきただろ。このまま3、4と連取していくぞ」

「「「はい!」」」

「木兎に負けんじゃねえぞー」

「「「オォーッス!」」」

 

 その後、「赤葦ー、全部もってこい!」と叫ぶ木兎光太郎と「俺にも決めさせろー!!」と木葉秋紀や猿杙大和が言い合ってわちゃわちゃする。

 

◆◎

 

 眼前で烏野高校と梟谷学園の決勝戦を見て、黒尾鉄朗はぽつりと呟く。

 

「……くっそ楽しそうじゃん。腹立つわー」

「烏野守備が硬くてイヤになるよね。澤村君と繋護がサーブカットして崩れないし、崩れても影山が強引に仕掛けてくるし。護りの烏野って呼んだ方がいいんじゃない?」

「おい研磨ァ。絶対リベンジしろよ!」

「何とも言えないんだけどさ、代が変わったら繋護オポジットの気しない? そしたら夕と繋護で守備固めてくるよね。やばいんとおもうんだ」

「それでも勝てよ。絶対だぞ。お前副部長なんだからな!」

「いやー、楽しみだな」

「「「……黒尾さん、研磨さん話聞いてないですよ」」」

「分かってるよ!」

 

 「新しいゲームやり始めるときと同じ顔しやがって」と思いながら黒尾鉄朗は自身が引退して新しいチームに生まれ変わろうとしている音駒高校男子バレー部に思いをはせる。

 

「……あと1年遅く産まれてたら良かったぜ」

「殊勝なクロ気持ち悪い」

「そこは聞いてるのな!?」

 

 そして、直井学から「黒尾ー、周りの人に迷惑かかるからもう少し声抑えろー」と注意されてしまった黒尾鉄朗だった。

 

◎

 

 第3セットは【27-25】で取られて、第4セットは【26-24】で取り返した。今日もフルセットだ。蛍が嬉しそうに「フルセットかよ」って呟いててスガさんに突っ込まれてた。

 そして、【13-14】でウチのチャンピオンシップポイントだ。マッチポイントと同じ意味だけど春高の場合は名前が変わる。

 

「東峰さん!」

「「「東峰だ!」」」

 

 ノヤ先輩が木兎先輩のスパイクを拾って、飛雄がレフトの旭さんに平行トスを上げた。あっちはライトの秋紀先輩にセンターの鷲尾先輩が合流してブロック2枚態勢を整えようとするけど、その前に旭さんがスパイクを打って秋紀先輩の左手にボールが当たった。

 当たったボールはすんごい勢いで吹っ飛んでいってあっちコートのエンドラインの更に奥に伸びて観客席のおっちゃんがキャッチする。…………っ!!

 得点板の数字が変わって【13-15】。つまり。……つまり!!

 

「「「うぉぉぉぉ!!」」」

 

 毎度のようにスガさん達が飛び出していったのを見て、ベンチサイドから翔陽と一緒にコートに向かっていく。あ。まーた翔陽躓いた。

 

「何やってんだよー」

「優勝!! やばい!!」

「語彙力」

 

 コートの中でスガさんが大地さんと旭さん、龍先輩、ノヤ先輩、飛雄、蛍に絡んでは大はしゃぎ。まあ、全員か。

 武田先生と清水先輩、あとやっちゃんも涙をポロポロこぼして感無量って感じ。……あー、大地さん、スガさん、旭さんも。やべー。優勝ってマジ?

 

「ほらほら、整列するぞ! 挨拶!」

「「「はい!」」」

 

 エンドラインにライト側から背番号順に並んで主審の笛でネット際まで向かう。そして13番の藤澤先輩と14番の信典と握手をした。

 

「……次は負けねえ」

「あと2年あるからまたやろうぜ」

「……おう。次は合宿かな」

「大分空くなー」

 

 さくらバレーは出られないし。私学の大会で烏野は公立だしね。あと来年の活動は分からないけど、また梟谷グループでの合宿で会うことでしょう、多分。

 ……あ、そっか、今日でこのチームでできる最後の公式戦だったのか。良かった良かった。……いや、でももっとやりたいな。

 

「サームラ! 次は勝つ……!!」

 

 木兎先輩の声めっちゃ響くじゃん。あはは。女子の決勝の間に「ぎゃふん」って言って貰おうかな。

 校歌を歌うために烏野側の応援席の前の方で並んで、さくさくっと校歌を歌う。おバカ4人周はうろ覚えっぽいけど。覚えろって言われてたろー。

 次は梟谷の応援席にお礼、次に烏野側の応援席の前で並んで礼。

 

「気を付けー! 応援ありがとうございました!!」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 その瞬間応援席からの歓声がすごいすごい。さっきの梟谷の応援にも負けないくらい。何言ってるか全然わかんねーぜ。とりあえず祖父ちゃん達に手を振っとこー。いぇーい。

 

「武田先生! 胴上げします!」

「えっ!? 僕!?」

「「「はい!」」」

 

 「囲めー!」って事で武田先生を輪の中心に引きずってきて、選手13人で胴上げ。俺は武田先生の左足の太もも辺りを支えることになった。

 

「お、落とさないでね……!」

「大丈夫っすよ、武ちゃん!」

「いくぞ! せーのっ!!」

 

 わっしょい! わっしょい! わーっしょい!!

 皆で3回胴上げしたら、次は烏養コーチの番だ。

 

「コーチ!」

「……落とすなよー」

「「「はい!」」」

 

 渋々ながら烏養コーチも引きずられてきて、皆で胴上げ。俺は左肩らへんを支える。

 わっしょい! わっしょい! わーっしょい!!

 胴上げをしたら武田先生と大地さんはアナウンサーにインタビューをするために呼ばれていった。

 

「烏野旋風起こしたり!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 優勝したぜよ。ぜよぜよ。

 

◇

 

 目の前で大はしゃぎしている烏野高校排球部一同を見て、烏野応援団も大いに沸き立っていた。

 

「優勝! ……1番ってこと!?」

「そう! そうだよ夏ちゃん!!」

「「「キャー!!」」」

 

 部員の姉妹である猫又姉妹、込田姉妹、日向夏、影山美羽だったり。

 

「……夢?」

「夢じゃないですよ!!」

「マジかよ。あいつらやべーな」

「セールやってやろうかな」

 

 烏野高校排球部OBの滝ノ上祐輔、嶋田誠、月島明光であったり。

 

「ま、私達の弟子なんだからこれくらいはやってもらわないと」

「ねー」

「……葵育も育音もありがとな」

「いえいえ。烏野が落ちぶれるのを見るのもごめんでしたし。繋護の才能を無駄に消耗するのも不本意でしたし」

「にしても繋心の指導があんなに良くなるとはなー」

「初見殺しって所も合ったと思うので、これからも烏野にとっての試練だと思いますね」

「だな」

 

 烏養一繋、羽染葵育と下園育音であったり。

 

「小野君。これはつまり?」

「ウチの男子バレー部は全国大会で優勝したってことですよ、教頭先生」

「そうですよ~。彼ら頑張ってきましたからね」

「予算上げましょうか」

「それは武田先生からの申し出があればだね」

 

 カツラをポンポンのように振り回して応援していた教頭や日向翔陽と影山飛雄の勉学に付き合ってきた小野遥や若林智子であったり。

 応援団80人ほどが男子バレー部の活躍に大はしゃぎする。

 

◇

 

 女子の決勝も終わって、閉会式で優勝旗と名簿、優勝トロフィー、金メダル、あと個人としてなんとベストリベロ賞を貰って宿に戻ってきた。やったぜ。

 お風呂に入って夜ご飯の時間だ。……武田先生相変わらず涙ぐんでるんだけど。

 

「センセ、話せるか?」

「あ゛い゛!」

 

 無理そうだな。

 代わりに烏養コーチが話し始めた。

 

「武田先生がこんなだし、先に俺が。

 今日の試合良くやった。最後まで気持ち切らさなかったから粘り勝ちできた。この1年の活動の集大成だったと思う。ナイスゲーム!」

「「「はい!」」」

「で、どうだよ、優勝した気分。澤村」

「はい! ……正直夢みたいです。でも優勝旗を持った時の重みって言うのは一生忘れません」

「おう。間違っても金メダルをフリマサイトで出品すんなよ。13個しかねえからすぐバレるぞ」

 

 しないでしょ。皆もそう思ったのか一笑い起きた。

 

「宮城に戻ったら保護者にもしっかり見せてやれよ」

「「「はい!」」」

 

 烏の方の祖父ちゃん祖母ちゃんでしょー、猫の方の祖父ちゃん祖母ちゃんでしょー、父さん、母さん、姉ちゃん、美緒、彩音ちゃん、慎吾さん、咲良さん、彩歌ちゃん、あと庵里にも顔出すか。

 でも、烏養コーチの話はまだ続く。

 

「それで、〝次〟、来年度の話だ。帰ったらバタバタするから今のうちにやっておきたい」

「「「…………」」」

 

 ……あー、遂にこの話しか。武田先生も幾分落ち着いたみたいだ。

 

「知ってると思うけど、今日の試合がこのチームで出来る最後の公式戦だった。澤村、菅原、東峰、清水は今日引退で、明日以降はまた新しいチームを作っていくことになる。4月になれば新入生も入るしな。

 この1年烏野を引っ張ってくれた4人に拍手をしよう」

「「「はい!」」」

 

 大地さん、スガさん、旭さん、清水先輩の4人が立上がって、俺達で拍手をする。

 

「どうする? 一言でも話すか? 宮城に帰ってからちゃんと引退式はやるけど」

「じゃあ簡単に」

 

 まずは大地さんが口を開いた。

 

「5年前の宇内さん達の春高を見て、烏野に入学して。思ったような活動が出来なかったし【墜ちた強豪 飛べない烏】だなんて言われて。

 それでも、武田先生と烏養コーチの体制になってこの1年間とても充実したバレーをすることができました。最初はただ口だけだった〝全国制覇〟も次第に現実味を帯びてきて、烏野に入学して本当に良かったです。

 もっともっとこのメンバーでバレーをやっていたいのは事実です。でも、今度はOBとして烏野の活躍を見守っていきたいと思います。お前ら、来年はインハイも優勝しろよ!」

「「「はい!」」」

 

 マグレだなんて言われないように頑張っていかないとな。インハイもそうだし。

 続いてスガさん。

 

「えーっと、……そうだな。

 うん、俺も大地とおんなじだ。烏野のユニフォームを着て東京体育館のオレンジコートとセンターコートに立てたこと、優勝トロフィーを持てたこと。言いたいことがありすぎて何から言えば良いのか分かんねえ。

 でも、これだけは言える。このメンバーで1年間頑張ってきて本当に良かった。楽しかった!

 4月になればまた1年が入学してくる。2年はあと2回、1年はあと4回全国のチャンスがあるから全部出場しろ。そんで全部優勝しろ! いいな!?」

「「「はい!」」」

 

 もう2年生だってよ。1年間って早いな。

 続いて旭さん。

 

「そうだなぁ。大地とスガと被っちゃうけどさ、このメンバーでバレーやってきて本当に良かった。皆のおかげで烏野のエースとしてコートに立てた。本当にありがとな。

 2年はあと2つ、1年はあと4つメダルを手にできるチャンスがあるから、全部総取りしちゃえよ。『誰だよ烏野が弱いって言った奴!』って言われるように頑張って欲しい。応援行くからさ。

 本当に皆ありがとう。これからも頑張れよ!」

「「「はい!」」」

 

 メダルもそうだし、ベストリベロ賞を貰える機会もあと4回か。やるしかねえぞー。

 そして最後に清水先輩。

 

「えっと、そうだな……、うん。

 仁花ちゃんにもセンターコートで優勝する瞬間の気持ちを味わわせてあげて欲しい。その為にも病気とか怪我に負けない身体作りとかバレーボールの知識・経験って言うのも今まで以上に身につけていって欲しい。

 『春高2連覇』とか『春高3連覇』、『全国制覇5連覇』した烏野って言われるまでは気を抜いちゃ駄目。これからは私達が分析される立場になるだろうから、他校の分析以上に進化し続けて欲しい。皆、次の新人戦の目標は?」

「「「優勝です!!」」」

「うん、期待しとく。頑張って!」

「「「はい!」」」

 

 あと2週間後に新人戦。気を抜いてる暇なんて無い!

 

「おーし、4人共ありがとう。

 清水の言うとおりだ。こう言っちゃなんだけど、〝まだ〟1回目の全国制覇をしたばっかりだ。2週間後には新人戦もあるし、4月以降には来年度のインターハイと春高もある。再来年の活動、3年後以降の活動もある。

『烏野サイキョー!!』って言って貰えるように精進していく必要があるよな?」

「「「はい!」」」

「俺達の挑戦はまだまだこれからだ。それ踏まえた上で明日からもバレーをやろう」

「「「オォーッス!」」」

 

 続いて復活した武田先生。

 

「色々こみ上げてきたものがありまして……。醜態をさらしてしまって申し訳ない。

 改めて皆、春高優勝おめでとう! 監督の席から君達のバレーをとても楽しませて頂きました!

 梟谷の闇路先生と滝沢先生から『今度はウチがリベンジします』と。猫又先生や笹川先生、中崎先生から『また合宿でお会いしましょう』と言付けを頂いていて、早速ゴールデンウィークの予定を確認しています。

 その時には新入生も混じった新生・烏野で強敵と戦っていきましょう!」

「「「はい!」」」

 

 そして、武田先生が3年生4人に向き直った。

 

「澤村君、菅原君、東峰君、清水さん。3年間お疲れ様でした、そしてこの1年君達4人にはとてもとても助けて頂きました。本当にありがとう。

 烏野高校のユニフォームを着てバレーボールをするのは今日で最後かもしれない。でも、君達の挑戦はこれからもまだまだ続きます。高校3年間で培った経験や知識を生かして次のステージでも頑張って下さい!」

「「「はい!」」」

 

 3年生4人が返事をして、また大きな拍手で包まれた。

 

「宮城に帰ってから保護者も交えて引退式を行うからよ、もうちょっとこの体制でいくけど、先に次のキャプテンと副キャプテンの襲名だ。澤村」

「はい!」

 

 ドキドキ。俺は呼ばれるかなー?

 

「次のキャプテンは縁下。副キャプテンは田中。新入生の人数次第ではあるけど山口も。今の所は学年代表って形だな。

 3人とも、引き受けてくれるか?」

「「「……はい!」」」

 

 力先輩、龍先輩、忠の3人が大きく返事をした。俺? 俺はリベロだからゲームキャプテンには成れないし、あと烏養コーチとの癒着を疑われるというか。ちょっと扱いづらい人材なのだよ。ふはは。

 飛雄はセッターだから試合に集中させたいし、蛍はあんまり向いてないし、翔陽は飛雄と蛍が嫌がった。って訳で忠が学年代表。ぶっちゃけ再来年のキャプテン候補だと思う。

 

「俺の時は1学年15人とかだったし、今の烏野の選手は13人で1、2年は10人。

 全国制覇をしたって事も踏まえると、来年新入生の数が20人を超えてもおかしくないと思う。ぶっちゃけどうなるか分からねえ。

 ただ、今の雰囲気は継続させていくし、先輩であるお前らが積極的に後輩を助ける。後輩は奴隷じゃねえぞ。信頼される先輩であるように心がけろよ!」

「「「はい!」」」

 

 パワハラ禁止! いじめ駄目! 絶対!!

 

「まあ、それは新入生が入ってくるまでおいといて良い。明日からは新人戦をどうするか考えよう。

 分かってると思うけど、新人戦本番は2週間後。3年4人が抜けた穴ってのはすげえ大きいぞ。覚悟しろよ」

「「「はい!」」」

 

 代表決定戦から2ヶ月強あったから白鳥沢ですらそれなりにチームとして固まってそうだしな。新チームの発足としてはウチが1番遅いからホントにやばい。笑えないくらいやばい。やばばばばば。

 ……まあ? 今までの練習を通してこれからのチームってのは形ができてるんだけど。分かってないの翔陽位じゃない?

 

「とまあそれはそれだ。しっかりと晩飯を食って、明日宮城に帰るぞ。晩飯の準備にとりかかれー」

「「「オォーッス」」」

 

 今日の夜ご飯は何だろなー。




Youtubeで「バレーボール 強豪校 潜入」と調べてもらうとバレーボールYoutuberが色んな強豪校の練習動画を上げてるよーと紹介したと思います。
そこで、強豪校故に部員数が多く、練習中に何も出来ていない部員がいることに気が付きませんでしたか?

スリーメンで例えます。
3学年合わせて30人の学校が1ペア3分での練習をします。となると10ペアできますよね。
30分の練習時間で、単純計算で1人1回、コート片面(9m×9m)でも2回しか回ってきません。

しかし本作の烏野は13人で、烏養繋心と澤村大地の2人が球出し(澤村大地がレシーブの際には菅原孝支か東峰旭が)とすれば12÷3で4ペア出来て、30分の練習時間だけでもよりボールを触る時間が多くなります。

確かに部員数が少なくて出来る練習メニューは限られてしまうかもしれません。
しかし、結局ユニフォームを着られるのはインハイで12人、春高で14人なので、そのメンバーだけに練習をさせられる、というのは大きなアドバンテージと言っても良いでしょう。

……まあ、全国に出られるような学校はスポーツ科や体育科がほとんどなので、午後の授業でその部員が所属しているスポーツを出来る場合があるんですけどね。

何が言いたいかと言うと、やっぱり学校選びは滅茶苦茶重要だということです。

特に、最近部活が外部委託に移行しつつあるとかで気軽に挑戦出来る環境では無くなってきてしまっているので、近い将来「○○県からは代表校がありません」とかになってもおかしくないような気もします。

いやー、どうなることやら。。。
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