烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年5月③

 お昼ご飯後に15分くらい寝たら午後の部が始まった。他県とはいえめちゃんこ仲良くなったと思う。でもそれはそれ、これはこれだ。なれ合いが目的じゃないし。

 簡単にアップを済ませて4セット目が始まる。 

 

「おーし、午後一発目だ。3セット目と同じで菅原をメインとしたローテ、リベロは西谷だ。行って来い!」

「「「はい!」」」

「烏野ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 円陣を組んでかけ声をだす。俺はラインズマンかな。……あ、副審っぽい。

 

 

 一方、音駒高校男子バレー部一同もミーティングを行っていた。

 

「さて、昼を挟んで気持ちも入れ替えたことだろう。武田先生と烏養の孫の様子だとまだ隠し球を潜ませてるそうだ。

 が、そんなの関係ない。ウチはウチのバレーをしてきなさい」

「「「はい!」」」

「間塗と野良も出すからな~。準備しとけよ」

「「はい!」」

 

 ユニフォームを貰ってもなかなか試合に出られない2人に試合に出るチャンスが訪れて、2人は元気よく返事をする。

 

「音駒ー! ファイ!!」

「「「オォーッス!」」」

 

 レギュラー6人がコートに入っていく。

 

 

 案の定副審だった。さーて、パッシングとか積極的に取ってくぞー。ということで背番号とポジション確認。

 

音駒

2海先輩 4 山本先輩 7 犬岡

1 黒尾先輩(夜久先輩) 6 福永先輩 5 孤爪先輩

 

烏野

3 東峰先輩 11 月島 2 スガ先輩

1 キャプテン 8 成田先輩(ノヤ先輩) 5 田中先輩

 

 音駒は変わらず、烏野は俺とノヤ先輩が入れ替わった感じ。サーブ権は音駒、つまり孤爪先輩から。モルテンのボールを音駒のコートに放って笛を口に含む。

 

「「「研磨ー! 1本ナイッサー!」」」

「1本で切るぞ!」

「「「オーッス!」」」

 

 さあ、試合開始だ。

 

 

 4セット目が終わった。【25-22】で音駒の勝ち。

 サーブで崩されて二段トスでレフト、それでブロックに触れられて粘られるってパターンが多かったから、やっぱりレシーブがまだまだだ。

 スガ先輩も多少乱れてもガンガンセンター線を使えるともう少しレフトの2人が戦いやすいかなって感想。

 ちなみにパッシングは1回しか無かった。くそう。

 

「多少乱れても縦のBクイックとかで積極的にセンター戦を使えると、サイドがブロックに捕まりにくくなるな。菅原の今後の課題だ」

「はい!」

「東峰もオープンが打ちやすいのは分かるけど、平行を打てるようになるとわざわざ3枚ブロックと戦う必要は無くなって、自分の首を絞めないで済む。リズムを変えるって言うかな、まあそんな感じだ。速いトスも練習していこう」

「はい!」

「良し。じゃあ次はツーセッターを試してみよう。影山、出すぞ」

「はい!」

 

 ずっと「早く試合出てえ」ってフラストレーション溜めてたからめっちゃ良い返事だった。あと休んで体力も回復してるはず。

こんな風に2人のセッターを使い分けられると継戦能力はぐっと上がる。

 野球でも1人のピッチャーがずっと投げ続ける采配って最近敬遠され始めてるし。……まあ、監督とか学校の実績を取るなら強い選手を酷使させるのも分からなくも無いけど、選手の将来を考えてないよね。

 監督から見たら3年とか6年のつきあいだけど、当事者にとっては50年、60年と付き合っていく自分の身体だし。

 これからも自分の身体を大切にしていこう。

 

「澤村だけがライトからレフトに代わるからちょっと混乱するかもしれない。駄目そうなら田中と交替す――」

「――いえ、行きます!」

「そうか? じゃあ3年の意地見せてこい!」

「「「はい!」」」

 

 「大地さん、俺もいつでも試合出られますからね~!」って田中先輩がウェイウェイしてる。まあ、簡単にあしらわれてるけど。

 

「今回ツーセッターを試すんだけど、2人のセッターを同時に試合出すからスタミナを消耗させられる戦術でもあって、『試したいけど正直あんまり……』っていう戦術でもある。

 ただ、この先を考えると武器は色々あった方が良いし、普段の練習だとなかなか試しづらい。ま、とりあえずやってみよう。

 1セット様子を見て続けるかちょっと考える。リベロも15点あたりで交替させるつもりだからな」

「「「はい!」」」

 

 よーし、試合だー!

 

 

 5セット目が始まる。背番号とポジションの確認だ。

 

音駒

2 海先輩 4 山本先輩 7 犬岡

1 黒尾先輩(夜久先輩) 6 福永先輩 5 孤爪先輩

 

烏野

3 東峰先輩 11 月島 2 スガ先輩

9 影山 7 成田先輩(ノヤ先輩か俺) 1 キャプテン

 

 音駒は相変らず。それに影山がアップしてたのは分かってただろうから、出てくるのは想像してた、つもりだったらしい。

 

「ツーセッターか!?」

「色々やってくんなー!」

「……監督」

「まだまだいけるだろう?」

 

 見たとおり、孤爪先輩はスタミナがないらしく交替したいって表情に出てる。

 んー、インターハイはともかく、春高の準決勝と決勝は5セットマッチだからスタミナ付けないと厳しそう。そこまで勝ち上がるつもりは無いのかもしれないけど。スタミナ付けましょう、孤爪先輩。

 

「ぐぬぬぬぬ! 俺も試合出たい!」

「みーんな思ってるから。翔陽だけじゃないぞー」

「悔しかったら実力つけようぜ、日向?」

「田中さん……、オス!」

 

 烏養コーチも今まで怪我でバレーを辞めざるを得なかった選手を見たことがあるから指導者として気を配ってる方だと思う。

 ……それに、田中先輩、ノヤ先輩、影山に翔陽と補習受けるだろうって前提で色々出場メンバーを変えてるような気もする。だってねえ、うん。勉強してないじゃん。赤点取ったら補習だぞ?

 

「「「研磨ー! ナイッサー!」」」

「1本切るぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 3年生が3人出ると、やっぱり士気が上がってる。よーし、応援だー。

 

 

 5セット目が終わった。【24-26】でウチの勝ち。

 前衛の攻撃枚数を常に3枚揃えられるし、安定感はあった方だと思う。烏の方の祖父ちゃんとOBに指導されて3年生は守備力もあるし。

 ただ、ツーセッター特有の「どっちが取りに行く?」って問題はあったから改善かな。あと消耗。

 

「良かった良かった。そんなに練習時間を取れなかったにしては割とよかったと思う。

 ただ、同時に菅原の攻撃力ももっと上げないとまずいな」

「……はい!」

「影山は何でも出来るから是非とも影山にもスパイクを打たせたい。

 となると、リベロからのトスがあってバックアタックも打てるようになると、ほとんどの場面で5人攻撃に参加できる。

 想像してみろ、リベロからトスが上がって、レフトの田中、バックレフトの東峰、センターの月島、バックライトの影山、ライトの澤村の5人体制を」

 

 目を瞑って想像してみる。……ウケる。

 皆も同じ考えに至ったらしい。忍び笑いが聞えてきた。

 

「武田先生はどう思う?」

「そうですね! なんかグワッと来そうです!」

「だろ? やっぱり強いチームってのはリベロからでもコンビを使える。常に攻撃意識を持つってのはこういうことだ。

 今後も西谷と猫又にもトス練習させるからなー」

「「はい!」」

 

 正リベロは俺が奪わせて貰いますよー、ノヤ先輩。

 

「とりあえず、俺が思い浮かべてるチームはなんとなく伝わったと思う。インターハイ予選に向けてどんどん詰めていこう。もう1月ねえぞ、集中していこう」

「「「はい!」」」

「よし、じゃあ影山をメインにしたローテに戻す。あと、疲れてだんだん最高到達点が低くなってきてるから月島はここで交替な。良くやった、今日はもう出さない。軽くダウンしといてくれ」

「はい」

「成田も連戦が続いたから一旦休みを挟もう。山口、ミドルで出られるか?」

「……出ます!」

「おし。ひな――」

 

 烏養コーチが翔陽の名前を言いかけると、遮ってまで翔陽が返事をした。

 

「相手もだんだん疲れてきてる。そこにお前の変人速攻だ。かき回してやれ!」

「はい!」

「時間を考えるとあと2セット位だと思う。音駒の方も合宿所に戻って荷物取っていかないといけないだろうし。

 次のセット取ってこい!」

「「「オォーッス!」」」

 

 時間も15時半過ぎってところだから出来て2セット位か。勝たせて貰おうかな。

 

 

 一方、音駒高校男子バレー部一同は日向翔陽の大きな返事を聞いてうんざりした表情を見せる。彼らは若林智子から渡されたゼリー飲料を飲みつつスタミナ回復に努める。

 

「……これ、あの10番出る感じか」

「多分。犬岡、いける?」

「灰羽にスタメン取られたくないんで! 頑張りますよ!」

「1年の中だと体力あるもんなー、お前」

「アザース!!」

 

 ゴールデンウィーク期間をずっとバレーボールに明け暮れていて、慣れない宮城の地と言うことで体力に加え精神力も削られていた。

 生徒達の様子を見て、猫又育史と直井学は今後の練習プランを話し合う。

 

「やっぱり身体作りですね」

「そうだな。3年はともかく2年と1年はまだまだ線が細い。宮城に比べて都内は暑さも段違いだ。夏バテを起こさないようにスタミナを付けさせよう。

 あと、研磨も大分限界そうだ。15点マッチに変えて貰おう。研磨、いけるか?」

「…………はい」

 

 音駒高校男子バレー部の中でも特にスタミナが無い孤爪研磨は気息奄奄だ。帰りの移動と疲労骨折の危険を考えると無理をさせるべきで無いと猫又育史は判断する。

 

「これから夏も来る。体力付けないと研磨が辛いぞ。な? 日頃から頑張ろうぜ」

「…………クロ、【エリクサー】頂戴。【げんきのかたまり】でも良い」

「そんなもん無えよ。つーかドーピングだろ、それ」

「研磨ー! 根性見せろぉ!」

「トラうるさい」

 

 慣れない宮城の地。連日の違う学校との練習試合。ゴールデンウィーク最終日。

 色々と疲労が積み重なる要因はあり、本人は大丈夫そうでも怪我をする可能性は高そうだ。「球彦も連れてくるべきだったな。セッター経験者か。……いや、いるな?」と猫又育史は孫である猫又繋護の存在を思いだす。

 

「研磨、次休んで良いぞ」

「えっ、でも球彦はいないですよ?」

「ちょっと声かけてくる」

 

 「スガ君にでも声かけてくるのかなー」と黒尾鉄朗は思った。

 

 

 音駒もミーティングが終わったらしく、珍しく猫又先生がこっちのコートに近付いてきた。

 

「武田先生、繋心」

「はい、どうされましたか?」「どうしたんですか?」

「ちょっとウチのセッターがへばって怪我の危険があるから、申し訳ないんだが孫借りて良いか?」

 

 その瞬間、皆の視線が俺を集まる。ひょえ、こういうのビックリするじゃん。

 武田先生はともかく、烏養コーチは猫又先生の意図にすぐ気が付いた。

 

「猫又君を、ですか?」「ま、しょうがねえ。猫又、行って来い」

「分かりました」

「え、良いんですか?」

「このセット、リベロは西谷のつもりだったからな。敵情視察でもしてこい」

「分かりました?」

 

 そんなのしなくても今の音駒の課題とか見れば分かるじゃん。

 まあ、と言うわけで、急遽音駒のセッターをやることになった。

 

「繋護ー、帰って来いよー!」「お前はウチの13番だからなー!」「音駒に魂売るなよー」

「はーい」

 

 皆に惜しまれつつ、猫又先生とあっちのコートに行く。「監督何すんのかなー」って見てた音駒の皆さんが次第に「マジかよ!?」って表情と驚きを口に出してた。

 

「ということで、次のセット出ないらしいから孫連れてきた。はい、挨拶」

「庵里中出身で、烏野高校1年の猫又繋護です。このセットだけよろしくお願いします」

「セッターも出来るからお願いしようと思ってな」

 

 それは良いんだけど……。

 

「間塗先輩と野良は良いんですか? 試合に出るチャンスだと思うんですけど」

「いや、俺達ポジションが違うから大丈夫。セッターやったこと無いし」

「満場一致で大丈夫ですか? 嫌なら辞めた方が良いかなと」

「大丈夫大丈夫。キャプテンの俺が許可する。いいよな?」

「「おう」」「「「はい!」」」

「そういうことなら。じゃあ勝ちましょう」

「「「そうでなくちゃ」」」

 

 こんな機会滅多に無いからねー。俺だって試合でたいし。

 

「前衛でもブロックは跳ばなくて良い。アタックラインよりちょい後ろで触れ」

「分かりました」

「トス合わせようか」

「はい!」

 

 やるっきゃないぜ!

 

 

 音駒高校男子バレー部一同が猫又繋護のトスでスパイク練習をしている一方、烏野高校排球部一同はミーティングを行っていた。

 

「つい勢いで返事しちまったけど、やることは変わらねえぞ。最終セットになるだろうから勝ち抜いてこい」

「「「はい!」」」

「そんで、猫又は唯一のサウスポーだ。球自体に威力は無くても変な回転かけてくるから注意な」

「「「はい!」」」

 

 右利きとは違った回転で打ってくるスパイクやサーブなどの普段の練習の脅威を思い出しつつ、彼らは返事をする。

 

◆◇

 

 昼食を食べた後もゴミ捨て場の決戦(練習試合)を見ている烏養一繋らも一連の動きを見ていた。

 

「……お兄ちゃん、音駒のセッターやるのかな?」

「多分な」

「こういうことってあるの?」

「んー、そうだな。俺が思い出す中でも2回くらいか。『セッター貸して下さい』って滅多にねえな。……あのやろう」

 

 烏養一繋はベンチサイドの猫又育史と眼が合って、彼はにんまりと口を歪ませた。猫又真緒や猫又美緒も確認する。

 

「猫の方のお祖父ちゃん、確信犯だね」

「だね~。彩音は疲れてない?」

「ん? 大丈夫大丈夫。ほとんど座ってるだけだし」

「今度は色々遊びに行かないとね」

「そうだな。いつでも遊びに来て良い」

「はい! 是非是非!」

 

 「次の機会にはここに行こう、あそこがオススメだ」などと話し合っていて、早速次の旅行で訪問する観光地をいくつか挙げていた。

 烏養一繋と烏養典子は孫がもう1人増えたように。込田彩音はもう1対の祖父母としてお互いに接する。

 

「あっ、始まるよ」

 

 猫又真緒の言うとおり、コートの中で背番号とポジション確認が始まった。

 

 

 6セット目。

 俺というイレギュラーなセッターに加えて、時間も厳しくなってきたから15点で終わる予定だ。そして背番号とポジション確認に移る。

 

「あー、ユニフォームもう1着持ってくれば良かったぜ」

「誰が着るんだよ」

「そりゃあ繋護でしょうが」

「たまたまですよ、たまたま」

 

 そりゃあ着られるなら着たいけどさー。

 

音駒

2 海先輩 4 山本先輩 7 犬岡

1 黒尾先輩(夜久先輩)  6 福永先輩 13 俺

 

烏野

9 影山 10 翔陽 5 田中先輩

3 東峰先輩 12 山口(ノヤ先輩) 1 キャプテン

 

 翔陽と影山を一緒に運用か。ワイドブロードあるな、面倒くせ。

 副審の月島のOKを貰ってコート中央に集まる。

 

「9番と10番が隣り合ってるので、センターからライトまでの6mフルで使ってきます。AからDみたいに」

「犬岡、頑張れよ!」

「おす!」

「繋護は音駒の方が合ってるってこの試合で思い知らせちゃおうぜ。っていうことで、合宿最後のセットだ。気張っていこう」

「「「オォーッス!」」」

 

 さーて、セッターですよーっと。

 サーブは烏野から。つまりキャプテンからだ。影山からじゃなくて安心する。

 

「「大地、1本ナイッサー!」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 犬岡の右側とライトのサイドラインの間に立って、海先輩には平行、山本先輩にはセミ、犬岡にはDクイックのサインを出しながらサーブを打たれるのを待つ。

 そのうち直井先生が笛を鳴らして、キャプテンがサーブを打ってきた。その瞬間ポジショナルフォールトにならないようにネット際まで走り出す。

 

「「「山本!」」」「山本先輩!」

 

 フロントゾーンを狙った柔らかいサーブで山本先輩が膝をつきながら1本目を上げる。さーて、どうしようかな。

 

「レフト!」「ライト!」

 

 山本先輩は間に合わない。……うーん、ここは!

 

「犬岡!」

 

 さっきのスパイク練習で大体の最高到達点は分かった。そこにバックトスでライトに上げる。

 

「「「ライトだ!」」」

 

 背の高い人にはある程度高く上げておいてくれると適当に処理してくれるから楽だね。ってことで犬岡がフリーで気持ちよく打って先制点はこっちだ。【1-0】。

 

「「「犬岡ナイスキー!」」」

「繋護もナイストス!」

「犬岡もナイスキー」

 

 音駒の場合はコート中央に集まってガッツポーズって感じだ。そのままウェイウェイする。

 

「サーブもな、犬岡!」

「はい!」

 

 ローテーションが1つ回って犬岡がサーブで黒尾先輩が前衛に上がってくる。寝癖1日取れないってすげー。

 

「ひひっ。トス頂戴よ、繋護君よぉ」

「集中しろ、黒尾!」

「分かってるよ、やっくん」

 

 黒尾先輩がコートに入ってくる時に夜久先輩とそんな軽口を交わしてた。相変わらずうさんくさい。

 

「今うさんくさいって思った?」

「いえ?」

「君、結構顔に出てるよ?」

「知ってます」

 

 姉ちゃんと美緒にはしょっちゅうからかわれてるし。

 取り敢えず、黒尾先輩、海先輩と山本先輩の3人が前衛だから攻撃力は高い。

 

「チビちゃんにはデディケートシフトで、下がる、だよな?」

「ええ。バックレフトとバックセンターの2人で対応できます」

 

 コート中央に集まって簡単に打ち合わせをしていると、山本先輩に怪訝そうな目で見られた。

 

「ていうか、いいのか? そんな対応策教えちゃって」

「んー、そもそも新入生の実力を測るって名目でやってますし、目を瞑って打たされてるって状態はこの先の翔陽に良くないので。今は良くてもね」

「まあ、ブロッカーの足に乗って着地ミスとか考えられるよなー」

「公式戦で負けるよりもここでぼっきり折っておきたいなと」

「こえー」

 

 絶対痛い目見ると思うんだよ、翔陽。怪我か負けるか、他のことか。

 あのトスを普通に打ち分けできると翔陽の武器は増えると思う。

 

「すいません、試合に集中しましょう」

「だな」

 

 さ、集中集中。

 直井先生が笛を鳴らして、犬岡がサーブを打った。狙いはネット際の影山の後ろで蝶とアタックライン付近の所。

 

「「旭!」」

「オッケ!」

 

 東峰先輩が犬岡のサーブを処理して1本目が上がる。影山がそのボールの落下地点に素速く移動していった。

 

「ライト!」「影山!」

 

 ライトの田中先輩とセンターからレフトにブロードに走る翔陽。まあ、ここは翔陽でしょう。

 バックライトのアタックラインよりもちょい後ろに位置して翔陽の身体の真正面をキープし続ける。

 

「いけっ!」

「「「10番!」」」

 

 読んだとおり、トスはレフトの翔陽に上がった。

 翔陽のモーションをよく見る。

 

 助走――レフトに流れ気味。

 身体の向き――バックライトを向くように。

 視線――目を瞑ってて分からない。

 スイング――真っ正面。

 ⇒バックライト!

 

 海先輩と黒尾先輩のブロックを置き去りにしてそのまま翔陽が打ってきた。目を開けた翔陽が「あっ!?」って表情をしてるのが見えたけど、ざーんねん。そこには俺がいまーす。ってことではいレシーブ。

 

「「「ナイスレシーブ!」」」

「海!」

「オッケ!」

 

 海先輩が二段トスに入って、黒尾先輩にセミを上げた。

 ライトの影山、センターの翔陽とレフトの田中さんの3人がブロックに跳んだ。俺達もブロックフォローに入る。

 

「せーのっ!」

「「「ブロック3枚!」」」

 

 打つ、と見せかけてのフェイント。

 

「「「前!」」」

 

 バックライトのキャプテンとバックレフトの東峰先輩が走ってくるけど、フライングしても間に合わなかった。こっちの点だ。【2-0】。

 

「ウェ~イ!」

「「「ウェ~イ!」」」

 

 コート中央に集まってペチペチハイタッチしていく。

 

「あとナイスレシーブ」

「代理とは言えしっかりアピールさせて貰いますよー」

「転――」

「しません」

「つれないねぇ」

「犬岡もう1本ナイッサー!」

「おう!」

 

 あっちから転がってきたボールを犬岡に投げてこの話はおしまい。さ、集中集中。

 

 

 試合は若干音駒の方が優勢のまま進んで、【15-12】で勝った。試合崩れること無くて良かった良かった。

 今は16時20分くらい、ダウンと片付けをすると割とギリギリかもしれない。ってことで包括的な講評。

 朝みたいに各校2列で並んで先生達の話を聞く。まずは武田先生から。

 

「はい、烏野高校、音駒高校の皆、今日は1日お疲れ様でした!

 素人目ですがなかなか競った試合をしていたと思います。インターハイ予選に向けて残りの1ヶ月でどんどん強くなっていって下さい!」

「「「はい!」」」

 

 そして猫又先生。

 

「正直予想以上だ。

 武田先生と繋心の新体制になって約1月とはいえ、思った以上に苦戦させられた。攻撃に関しては全国でも通用するだろう。今後の課題はいかにそこまで繋げるかだ。

 あと、今日は主に烏野高校側の応援が多かったと思う。これが全国大会だと両校の応援だとか他校の熱気だとかで包まれる。全国で会おう」

「「「はい!」」」

「じゃ、観客席に挨拶してこい」

「「「はい!」」」「「「はい!」」」

 

 2校合わせて音駒側のエンドラインから挨拶していく。キャプテンの号令に続いた。

 

「気を付け! 応援ありがとう御座いました!」

「「「ありがとう御座いました!」」」

 

 観客席から拍手やら「今年はゴミ捨て場の決戦やれよー!」、「楽しみにしてるぞー」とかって声援がかけられた。祖父ちゃんとか誠兄ちゃんみたいに今日1日ずっと観戦してた人は少なくない。ここら辺娯楽少ないしね。

 音駒のエンドライン側、サイドライン側、烏野のエンドライン側の3回繰り返して体育館の片付けに入る。

 

 

 烏野高校と音駒高校の男子バレー部員が体育館の片付けをしている間、烏野高校の武田一鉄と烏養繋心、音駒高校の猫又育史と直井学の4人が今日の振り返りを行っていた。

 

「猫又先生、直井先生、本日は誠にありがとう御座いました!」

「いえいえ、こちらも有意義な時間を過ごさせて貰いました。それにウチのセッターの体力不足で孫を借りて申し訳ない」

「いや、あの試合には出さないつもりでしたから。まあ、あんまり褒められた事じゃ無いですよ」

「そうだな、気を付けよう」

 

 烏養繋心がチクリと釘を刺して猫又育史と直井学の2人は頭を下げる。

 

「話は変わるが、ポテンシャル自体はとてもあると思う。他の高校にも届きうるな」

「はい」

「宮城は1校しか全国大会に出られないから相当な凌ぎ合いが生じる。特に今年も牛島若利がいる白鳥沢学園が出場してくるだろうと予想されてる。勝ち進めば確実にぶつかるぞ、覚悟しておけよ」

「「……はい」」

 

 ここ2年宮城県内の強豪校をものともせずにインターハイと春の高校バレーに出場している白鳥沢学園高校。牛島若利が3年に上がって、どこまで勝ち進めるのかと期待されている。

 烏野高校が全国大会に出場するためには十中八九白鳥沢学園を打ち破らなければいけない。もちろん他の高校も打ち破らなければいけないが。

 

「あと、さっきウチのキャプテンが話してたように、インターハイが決まればインターハイに向けての強化合宿、そうでなければ春高に向けての強化合宿って言う名目で関東の数校で長期間の合宿を行っている。梟谷グループってな。

 今年はまだやるとは決まってないがきっとやるだろう。他の高校も烏野に興味を持っているからまたその時になれば声をかけようと思ってる」

「「っ! ありがとうございます!」」

「ま、7月に入ってからだからちょっと先だな。まずはインターハイ予選を勝ち上がれるようにお互い5月を過ごそう」

「「はい!」」

 

 宮城県のインターハイ予選はもう1ヶ月切っていて、東京都も6月に入れば隔週で行われる。中間テストの事も考えるとウカウカしてられる時間は無い。

 そこに、千葉県に戻る時間が着々と近づいてる猫又明育や猫又姉妹、込田彩音らと烏養一繋が顔を覗かせた。

 

「げっ、ジジイ。まだいたのか」

「せっかくの従姉妹が顔見せに来たって言うのに繋心君つれないな~」

「お、おう」

 

 猫又育史達の話も一段落したようで、猫又育史が彼らに手招きする。

 

「武田先生、いつも父と息子がお世話になっております猫又明育です。私と娘2人は千葉県に住んでいてなかなかご挨拶に窺えずに申し訳ありません。もし都内に来るようなことがあればお手伝いさせて頂きます。宜しくお願いします」

「あっ、今年度から烏野高校男子バレー部の顧問になりました武田一鉄です! 私の方こそご挨拶できず申し訳ありませんでした! えっと、その――」

 

 長くなりそうだったので、猫又育史が仲介した。

 

「――ほら、明育もその辺にしな」

「挨拶は大事でしょうが。ほら、真緒達も」

 

 猫又明育が促して、猫又真緒達3人が挨拶する。

 

「いつも弟がお世話になってます、姉の真緒です」

「いつも兄がお世話になっております、妹の美緒です!」

「いつも繋護がお世話になっております、彩音です」

「ご丁寧にありがとうございます。武田です!」

「挨拶した早々申し訳ないのですが、新幹線に乗らないといけないのでそろそろお暇させて頂こうと思います。繋心君、繋護呼べる? ちょっとだけでも挨拶しときたいんだけど」

「あ、分かりました。呼んできます」

 

 烏養繋心がその場を去って、猫又繋護を呼びに行く。

 

 

 クールダウンをしているときに烏養コーチに呼ばれた。

 

「繋護ー、そろそろおじさん達千葉に帰るってよ、顔見せてこい。澤村、コイツちょっと借りるぞ」

「あ、はい! 行って来い」

「ありがとうございます!」

 

 父さん達も明日から仕事とか学校有るからそろそろ帰るんだろうなって言うのは分かってた。見送りに行けるかなー、行けないかなーって思ってたから助かった。

 体育館を出てロビーに出ると、大人組がワイワイしてた。早速美緒が俺に気づく。

 

「あ、お兄ちゃん! 久しぶり~!」

「おー、姉ちゃんも美緒も彩音ちゃんも久しぶり。父さんも」

「元気でやってるそうで良かった」

「いつもテレビ電話してるから知ってるでしょ」

「やっぱりちゃんと見るのとは違うからな」

 

 そうか? そういうものなのか? んー、分からん。

 

「ほら、パパッと写真撮りましょ」

「「「はーい」」」

 

 猫又家、烏養家大集合ってことで写真撮影。子供4人を前で右隣に彩音ちゃんと姉ちゃん、左隣に美緒。父さんと母さん、祖父ちゃん達は適当に。

 

「今日1日お疲れ様、繋護」

「彩音ちゃんも楽しかった?」

「うん、今日の練習試合楽しかったよ」

「あと1ヶ月頑張らないと」

 

 「はいはーい、お花咲かさないでね、そこのバカップルー」って母さんに指摘されて黙らざるを得ない。

 通りがかった清水先輩に頼んで、家族で写真っと。はいチーズ。

 写真も撮りおわって別れの挨拶だ。まずは父さんから。

 

「じゃあここで失礼します。武田先生もありがとうございました。繋護、部活も良いけど勉強もしておけよ」

「はーい」

「繋心君も宜しく」

「はい、おじさんも」

 

 次に姉ちゃんと美緒、彩音ちゃんから。

 

「がんばんなさいよ~」「お兄ちゃん頑張ってね!」「着いたら連絡するね」

「んー、俺も帰ったら連絡する」

 

 そして猫の方の祖父ちゃんと学兄ちゃんから。

 

「またな、頑張れよ」

「ん!」

「スタメン狙ってけよ~」

「はーい」

 

 母さんと烏の方の祖父ちゃん祖母ちゃんは父さん達と音駒の皆の見送りに仙台駅まで行くらしい。皆に着いていくって言ってた。

 

 

 烏野高校との練習試合を終えて、帰り支度が済んだ音駒高校男子バレー部一同は仙台駅に到着していた。通行人の邪魔にならないように端に避けて、2種類の紙袋を4つほど持った猫又美繋に挨拶をする。

 

「気を付けー! 4日間ありがとう御座いました!」

「「「ありがとう御座いました!」」」

「はい、4日間の合宿お疲れ様でした! 少しでも皆の為になれば私も嬉しいです。

 ……せっかく仙台に来たのに観光一つできなかった貴方たちに!」

 

 そう言って、猫又美繋は直井学にお弁当が入った紙袋と商店街の人達から預かったお土産が入った紙袋を渡す。

 黒尾鉄朗を始めとする音駒高校一同はその紙袋に注意をひかれて、直井学もちらりと見えた中身に驚愕した。

 

「こ、こんなに!? 良いんですか!?」

「良いの良いの。ゴミ捨て場の決戦を楽しみにしてる今日の観客席の人達から『これで音駒の子達さ美味えもん食わせでぐれー』って頼まれてるから。音駒生の特権だと思って受け取ってね」

「すみません! 有り難く頂きます!

 ……えーっと、察しの通り、牛タン弁当を頂いた。しかも滅茶苦茶旨いから楽しみにしておけよー」

「「「っ! ありがとう御座います!」」」

「皆のこと応援してるから次は全国大会でお会いしましょうね。対戦したら応援はできないけど、それ以外は応援してるから」

「「「はい!」」」

「まだ宮城さ遊びに来てけさいん!」

「「「はい!」」」

 

 別れの挨拶をして音駒高校男子バレー部一同は猫又美繋と別れて新幹線の改札をくぐる。彼らは東京行きの新幹線が来るホームを目指して歩きだした。

 黒尾鉄朗が珍しくゲームをしていない孤爪研磨に話し掛ける。

 

「いつもならゲームやってんのに。充電切れ?」

「違うよ。……宮城県ではちゃんとしたいというかなんというか」

「……研磨がそんなこと言うの珍しいな。ていうか初めてじゃん。熱でそうなの?」

「違うよ。まあ、それは良いでしょ。

 ……色んな人がゴミ捨て場の決戦を楽しみにしてるのが分かった。ここまで歓迎されて反故をするのはちょっとね。それに――」

「――それに?」

 

 孤爪研磨の言葉の続きを聞こうと黒尾鉄朗が促した。一呼吸置いて孤爪研磨がその理由を語り出す。

 

「ゲームで自分が育てたキャラのパラメータ通りの敵が出てくることが有るんだけど、猫又君ってそんな感じだなって」

「んん?」

「猫又先生に俺達より早く出会って、猫又先生に俺達より長くバレーを教えて貰って。

 猫又先生が現役の時ってあんな感じなのかなって思った。猫又君って音駒にとっての裏ボスって感じがしない?」

 

 言われてようやく納得したのか、黒尾鉄朗が破顔する。

 

「するな。目茶苦茶うまかったもんな。自分達相手にしてるみたいでちょっと恐かったわ。流石〝庵里の化け猫〟、関東大会常連校って感じだった」

「うん。だから翔陽と同じで倒してみたい存在になった。だからちゃんとしたいなって」

「……インハイ予選頑張ろうな」

「うん」

 

 搭乗予定の新幹線が来る間、音駒高校男子バレー部一同は今回の宮城合宿についてああだこうだ感想を伝え合う。

 これにて音駒高校男子バレー部の宮城県合宿は無事終了した。

 

 

 学校に着いてボールとかボール籠を置いてミーティングに入る。まずは武田先生から。

 

「はい! ゴールデンウィーク中の練習と強化合宿お疲れ様でした!

 外から見ていると、この期間だけでも皆が成長してると実感しました。この調子で練習を続けていってインターハイへの出場を勝ち取り、全国大会でゴミ捨て場の決戦を実現させましょう!!」

「「「はい!」」」

 

 続いて烏養コーチ。

 

「約9日間ご苦労さん。

 今日の練習試合で個人の課題とチームの課題が分かったと思う。インターハイ予選はもう1ヶ月切ってる。が、たった1ヶ月、されど1ヶ月で1人1人が成長を感じてる事だと思うし実際に数値に出てる。

 全員4月当初から確実に上手くなってるぞ。だがまだまだ全然足りねえ。もっともっと上手くなる必要がある」

「「「はい!」」」

「そんで、これからの練習メニューと1人1人の強化プランを考えたいって言うのもあるから明日は完全オフだ。疲れも相当溜まってるだろうしな。1日じっくり休んでくれ。

 あと勉強もしとけよ?」

「「「っ……!?」」」

 

 主に田中先輩、ノヤ先輩、影山と翔陽の4人が硬直した。合宿期間でもやってる様子無かったし普段の勉強の様子が想像に易い。ま、俺には関係ない、頑張れー。

 ……「勉強教えてくれー」とか言ってきそうだな。俺しーらね。

 

「あー、うん。前にも言ったけど、進級・卒業できるように勉強しとけよ? 補習受けてスタメン取られたって普通にあったし。気を付けろよ~」

 

 「そんで、もう1個」と烏養コーチが更に続ける。

 

「今日の観客席を見て貰ったら分かると思うけど、烏野高校男子バレー部を応援してくれてる人は結構いる。だから、これからはより〝応援されるチーム〟を目指していくぞ」

「「「…………?」」」

 

 まあそうだよね。って言うか何で分からないんだ。

 

「簡単に言えばバレーが強くなるだけじゃ駄目ってことだ。強くなれば強くなるだけ周りから注目される機会が増える。全国決まればテレビ局とか新聞社からインタビューもあるしな。

 その時に『マジでぇ~』とか『ぱねーッス』みたいな言葉遣い、いかにもやる気無さそうな態度。そんなの『こいつら公共の場で何やってんだ……』ってなるだろ」

「「「……はい」」」

 

 そのシチュエーションを想像したのか、皆神妙に烏養コーチの言葉を聞き漏らさないようにする。

 

「『おはようございます』とか『こんにちは』、『お願いします』、『ありがとうございました』。『失礼します』とかの挨拶だったり、バスとか電車、会場でのTPOを弁えた立ち振る舞い。

 そういったものは日頃から気を付けていかねえと上手くいかねえんだ。

 嫌だろ? せっかく勝ったのに『烏野なんかに負けちまうとかさー』みたいなこと言われるの。全国決まっても『いや、烏野のバレー部ってめちゃくちゃ態度悪いですよ。ヤンキーしかいないです』とかって全国進出を祝われないチームになるの」

「「「……はい!」」」

 

 そりゃそうだ。

 

「〝応援されるチーム〟ってのはそういう挨拶とか言葉遣い、礼儀作法、周りに感謝の気持ちを伝えたりをしっかりと出来るチームだと思ってる。

 その為には日頃から気を付けていかないといけない。そうだな?」

「「「はい!」」」

「いまはまだ『烏野の男バレって昔は強かったらしいよ』だと思うんだよ。でも、結果も出して烏野の顔として認識されるようになれば『烏野の男バレって強いんでしょ? じゃあ応援行くね!』って言って貰えるようになる。

 そうなれば保護者とかOBだけじゃなくて烏野の生徒とか教職員、町内に住んでる人達から俺達の活躍を見に来てくれるようになるはずだ。そういう意味で是非とも〝応援されるチーム〟になっていこうぜ」

「「「はい!」」」

 

 おーし。頑張らないと。

 

「ってことで、まずは保護者とか親戚、友達に応援してくれるように立ち振る舞いを変えていく。いいな?」

「「「はい!」」」

「良し。ま、最初からできる訳がねえんだ。少しずつやっていこう。

 じゃあ今日はこのへんで。帰ったらしっかりと休めよ。澤村」

「はい! 気を付けー! 礼!」

「「「ありがとうございました!」」」

 

 帰ったら「応援来てくれてありがとう」って伝えようかな。

 

 

 家に到着。疲れが一気に出た気がする。

 

「お帰り繋護。お風呂入っちゃいな」

「はーい」

 

 祖母ちゃんに挨拶してユニフォームとかウェア、タオル、サポーターとか脱衣所前に置いて、着替えを取りに自室に行く。

 

「おー、お帰り。風呂入っちゃいな」

「あーい」

 

 続いて母さんに挨拶したら自室でバッグを置く。おっといけない。

 スマホを操作して、家族のグループメッセンジャーを表示させた。

 

「【家に帰ってきました。応援来てくれてありがとう。インハイ予選まで頑張ります】っと」

 

 すぐに姉ちゃんから【大宮を超えた辺り~。また宮城行くから】って返事が返ってきた。もう埼玉辺りか。早いなー。

 ……あ、月島と山口にDVD焼かないと。繋心兄ちゃん早く今日の練習試合のDVD焼いてくれないかな。早く見直したい。

 まあ、何はともあれ、合宿が無事に終わって良かった。明日からも頑張るぞっと。

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