初心者ゲーマー、武術チート(現実)で神ゲーを屠る   作:牙螺

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歯車が廻り出す。

「夜襲の…………リュカオーン…………?」

 

その名前は、あの馬鹿から………いや。今の俺に、アイツを非難する資格は無いか――胸の内が、こんなにも熱くなっている、今の俺には。

 

「………久しぶりだな、こんな感覚は」

 

目の前には、狼がいる。とても大きい、狼がいる。

現実で、数多の強者に挑んできた。その中には現(・)代(・)最(・)強(・)を(・)謳(・)っ(・)た(・)剣(・)士(・)もいた。目の前の狼は、その時とそう変わらない威圧を放っている。

 

「(アレだけしぶとかったレッドキャップゴブリン達が一撃で消し飛んだ………当たれば即死亡と考えていい。なら――)っ!!」

 

情報の整理をする暇もなく、黒狼の凶爪が襲いくる。

 

「考える時間は与えない、と?………上等だ。構えろリュカオーン――行くぞ」

 

―――久しく表に出てこなかった、宵無垢(黒鷺白夜)の異常性(戦闘狂)が溢れ出す。

致命の太刀を構えた浪人と、爪を輝かせた黒狼が地面を踏み抜いたのは―――同時だった。

 

ダァン!!!

 

「っぐ………!!重いにもほどがある、ぞ!!」

『グルオォォン!?』

 

抑え込めないことを悟った宵無垢は、わざと全身の力を抜き吹き飛ばされることで距離を取りながら、吹き飛ぶ瞬間に致命の太刀で前足を斬りつけた。リュカオーンもこれは予想外だったのか、初めて聞く悲(・)鳴(・)を(・)あ(・)げ(・)た(・)。

 

「太刀が通る………ということは、サンラクが言っていた"負けイベント"では無いようだな?」

 

この瞬間、宵無垢はリュカオーンを"殺すことの出来る存在"と認識した。それと同時に―――

 

「だが、太刀から伝わったこの感覚………リュカオーン。お(・)前(・)、(・)狼(・)ど(・)こ(・)ろ(・)か(・)獣(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)な(・)?(・)」

 

目の前の敵が、獣でないことも認識した………し(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)

 

ガキィン!!!!

 

「影…………というよりは夜(・)の(・)集(・)合(・)体(・)、夜そのもの。それがお前だろう―違うか?」

 

太刀と牙が、太刀と爪が、またはそれらの逆が。繰り返される攻防の中、宵無垢は語りかける。リュカオーンは何も示さない。示すのであれば、それは餌を狩るための戦いである。

 

「夜そのもの、ということは……お前は夜に溶けることも、夜から分身を作ることもできる筈だ。つまり、お前は俺を"本気を出すに値しない弱者"、もしくは"よく吠える餌"と認識している訳だ―――

 

巫山戯るなよ、犬風情が」

『ガルッ…………!?』

 

それは、夜の帝王(リュカオーン)にとって感じたことのない重圧だった。そして理解した。これが、これこそが………本物の殺意なのだと。

 

「貴(・)様(・)がどう戦おうが貴様の勝手だ。貴様が俺を弱者と思うなら、俺はまだまだなのだろう。それは良い………だが!!全力の殺(・)し(・)合(・)い(・)の場で、相手に"餌"と認識されるなど、俺にとって屈辱以外の何でもない!!貴様が武人のような気高い性格でも、悪魔のような狡猾な性格でも、これだけは聞け!!――俺(・)を(・)見(・)ろ(・)、(・)リ(・)ュ(・)カ(・)オ(・)ー(・)ン(・)!(・)!(・)」

『………!!』

 

言いたいことを言い終えた、その時。リュカオーンが頭(・)を(・)下(・)げ(・)た(・)………そう、下げたのだ。あのリュカオーンが、夜の帝王が。

 

「………謝罪、と受け取って良いんだな?」

『………グルァ』

「………ならば、続きと行こうか!!」

『グルオォォン!!』

 

そうして、止まっていた戦いが、また動き出す。それと同時に――

 

「がっ………!?やはり出来るじゃないか、分(・)身(・)の(・)作(・)成(・)!!」

 

――宵無垢の真後ろを、帝王の尻尾が薙ぎ払った。帝(・)王(・)は(・)、(・)目(・)の(・)前(・)に(・)い(・)る(・)と(・)い(・)う(・)の(・)に(・)。

 

「分身の数に限りはあるのか?いや、それは今どうでも良い―――久しぶりに血が滾ってきた!!さぁ、もっと死合おうか!!【夜凪】!!」

 

夜を凪ぐと名付けられた回転斬りを放つ。が、その刃は空を斬る。そしてそこに、帝王の牙が襲いくる!!

 

「やはり駄目か………【流脚】!!」

 

牙が迫るその瞬間、流水のような蹴り技を放つ―――地(・)面(・)に(・)向(・)か(・)っ(・)て(・)。勿論当たった地面は粉々になり、土塊・土煙が舞う。振り落ちる土塊と煙が収まったその時………宵無垢はそこに居なかった。

 

『!!………グルゥアァ………「悪いが、そこ(地面)に俺は居ないぞ?リュカオーン」グルァ!?』

 

やったことは単純だ。蹴り技で地面が砕け、土塊等が舞い始めるその瞬間。煙と土塊で帝王の目を誤魔化し、宙に跳んだのだ。

 

「やはりこの体格差だとやり難くてな……かわりに、貴(・)様(・)の(・)片(・)眼(・)――貰っていくぞ。【気蜂突】!!」

 

言い終わったその時、太刀の鋒が素早い突き技となって帝王の左眼に突き刺さった。

 

『グルァァアァアア!!』

「ぐぁっ……!!流石の貴様でも、眼を潰されれば悶絶するか!」

 

即座に振り落とされようが、こんな程度では止まらない。

先程のレベル上げで身につけたスキルを惜しみなく使い、畳み掛ける。

 

「【返し斬り】、【天昇】、おまけで【流脚】、分身には【風車】ぁ!!」

『ガルァア!!』

 

リュカオーンが吠える。すると突然リ(・)ュ(・)カ(・)オ(・)ー(・)ン(・)と(・)分(・)身(・)が(・)消(・)え(・)、(・)遠(・)く(・)に(・)現(・)れ(・)る(・)。

 

「!?今の感じ………影移動か!!夜そのものなら納得だなぁ!!」

 

リュカオーンは強い。分身、影移動、何よりその身体能力。だが勝てないほどではない。現に今、宵無垢は回避不可の攻撃以外は捌けている。

 

「こんな戦い(もの)じゃ満足出来ん………もっとだ!!もっともっと………死力を尽くして殺り合おうか!!リュカオーン!!」

 

夜は、まだ明けない。

 

ガキィン!!! ダガァン!! ゴガシャア!!!!!

 

 

「ハァ、ハァ…………カハッ!!」

 

アレから2(・)0(・)分(・)を(・)超(・)え(・)る(・)か(・)超(・)え(・)な(・)い(・)か(・)。10分はノーダメージでくぐり抜け、クリティカルダメージも通常の戦闘ではあり得ないほど叩き込んだ。だがそれでも、あの時リュカオーンの左眼に傷を付けた以降は殆ど防戦一方、カウンターで斬りつけることしか出来なかった。途中幸運の女神が微笑んだのか、己の低い幸運で食いしばりが発動したのは良かったが、結局リュカオーンの身体に目立つ傷は眼の傷以外に無く、こちらの身体は傷だらけ。視界の端で捉えるHP表示は随分前から1、スタミナも切れている…………生涯初(・)め(・)て(・)の(・)完(・)全(・)敗(・)北(・)である。

 

「コレだけやって…………殆ど無傷、かぁ………カカッ、ここまで言い訳のしようもなく負けたのは、お前が初めてで――コ(・)レ(・)が(・)最(・)後(・)だ(・)」

 

死にかけのこの身体でも、語ることならば出来る。故に………

 

「リュカオーン……お前の力からして、もしかするとお前も分身なのかもしれない……だ(・)が(・)そ(・)れ(・)が(・)ど(・)う(・)し(・)た(・)。俺が負けたのはお前だ、俺(・)が(・)眼(・)を(・)斬(・)り(・)裂(・)い(・)た(・)の(・)は(・)お(・)前(・)だ(・)け(・)だ(・)。たとえお前の本体が来たとしても、それは変わらない………刻んだ眼の傷、忘れるな。またやろう、強敵(友)よ。次は俺が勝つ!!」

 

言い切った少し後に、リュカオーンが行った行動――それは、宵無垢にとって予想外にも程がある行動で会った。

 

ペロンッ

 

「………んぁ?」

 

――舐めたのだ。先程まで殺し合いをしていた相手の頬を。

 

「………お前なりの労い、なのかね?まぁ良いか――さぁ、やってくれ」

 

宵無垢が願うその瞬間、黒狼の口が開けられた。

 

「(アァ…………コレが悔しいというものなのか………良(・)い(・)な(・)、(・)と(・)て(・)も(・)。コレを糧に、俺はまだ先を歩むことができる…)ありがとう、リュカオーン。」

 

意識が消えるのは、一瞬であった。

 

 

 

 

 

〔リュカオーンの思(・)念(・)(影)が付与されました。〕

〚リュカオーンの影の戦闘記録を参照、条件達成を確認。特例でユ(・)ニ(・)ー(・)ク(・)エ(・)ネ(・)ミ(・)ー(・)ク(・)エ(・)ス(・)ト(・)E(・)X(・)をリュカオーンの影に付与。〛

〚リュカオーンの影からの要望を承認。PN:宵無垢に称号〘夜襲の影の好敵手〙を付与。〛

〚リュカオーンの影がユニークエネミークエストEX〘影狼は昇り、陽狼に転ず〙を開始しました。〛

 




リュカオーンの思念(影):夜襲のリュカオーンは強敵をこそ好む。なれど、己と対等に戦い、己が存在を唯一としてくれた好敵手を、リュカオーンの影は獲物として認識しない。そこにあるのは唯一つ―――今一度、彼の者との再戦を。
この思念は該当する夜襲のリュカオーンの影を打ち倒すことでのみ消すことができる。

・リュカオーンの思念(影)が付与された部位には防具及び武器の装備が不可となる。
・リュカオーンの思念(影)を持つプレイヤー以下のレベルのモンスターは一部を除き逃亡し、プレイヤーよりも高いレベルのモンスターはプレイヤーに積極的に攻撃を仕掛けるようになる。
・リュカオーンの思念(影)を持つキャラは他の呪いやバフに対して完全な抵抗を獲得する。
・リュカオーンの思念(影)を持つキャラはNPCとの会話で補正がかかる。

修羅の道を歩む者は、強さを得るか邪悪となるか………将又、全く違う道を歩むのか。ここに記せるのは唯一言―――夜は、まだ明けない。

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  • 初心者ゲーマー、武術チート(本作)
  • 召喚"獣"って何だっけ
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