BLEACHの世界に転生したけど何故かステータス画面があるんだが 作:最強主人公2
ついに☆10をもらっちゃいました!
めちゃくちゃ嬉しすぎてやばい!
朝、目を覚ました朔は、しばらく天井を見つめていた。
昨夜、眠りに落ちる直前まで感じていた奇妙な感覚が、まだ身体の奥底に残っている。
何かがいる。
そう考えると、少し違う気もした。誰かの気配を感じるわけではない。声が聞こえるわけでもなければ、姿が見えるわけでもない。ただ、自分の内側に、自分のものとは思えないほど深く、静かな何かが沈んでいる。
意識を向けると、かすかに応えるような感触があった。
朔は眉を寄せ、そっと目を閉じた。
もう一度確かめようとした瞬間、その感触は霧が晴れるように消えてしまった。
「……なんだろ、これ」
幼い声で呟いてみても、答えは返ってこない。
考え込んでいるうちに、腹の虫が鳴った。
今は難しく考えても仕方がない。ひとまず腹を満たそうと、朔は寝台から降りた。
部屋を出ると、ちょうど王悦が廊下の向こうから歩いてくるところだった。
「おっ、起きたか朔! グッドモーニング! 朝っぱらから難しい顔してんじゃないの、少年!」
「……おはよう、王悦さん」
「声が小さい! 朝は元気よくいこうぜ、ポゥ!」
王悦は大げさに胸を張ったあと、朔の顔を覗き込んだ。
「ん? なんかあったか?」
「……ううん。なんでもない」
「そうかい? ま、腹が減ってるときに考え事したって、いいアイデアは浮かばねえからな。先に飯だ、飯!」
王悦に促され、朔は食事の用意された部屋へ向かった。
朝食を取りながらも、昨夜から続く違和感は頭の片隅に残っていた。けれど、今の朔には、それを誰かに説明できるだけの言葉がない。
自分でも正体の分からないものを、どう伝えればいいのだろう。
結局、朔は何も話さなかった。
食事を終えると、王悦が待ってましたとばかりに手を叩いた。
「さあ、腹ごしらえも済んだところで、今日も刀の稽古といこうじゃないか!」
「……今日も?」
「当たり前だろ! 昨日より今日、今日より明日! 積み重ねこそが剣士の道ってもんよ!」
王悦は楽しげに笑い、朔の頭を軽く撫でた。
「ただし、今日はちょいと趣向を変えるぜ。いつもの型をなぞるだけじゃなく、自分で考えて打ち込んでみな」
「自分で……?」
「そう。ちゃんボクが何をするか、いちいち教えてやるわけにはいかねえ。相手の動きを見て、何を狙ってるのか考える。自分ならどう崩すか考える。そいつが今日のテーマだ」
朔は小さく頷いた。
王悦に連れられて稽古場へ向かう。手渡された木刀を握り、いつものように構えを取った。
王悦は刀を肩に担いだまま、気負いのない様子で立っている。
「よし、いつでも来な!」
朔は正面から踏み込んだ。
木刀を斜めに振り下ろす。王悦は半歩だけ身体をずらし、刃筋を逸らした。続けて放った横薙ぎも、木刀の腹で軽く受け流される。
力では敵わない。
ならば、正面から押し切ろうとするのは悪手だ。
朔は一度距離を取り、王悦の足元へ視線を落とした。
上半身は力が抜けている。だが、重心はいつでも動ける位置に置かれていた。こちらの攻撃に合わせて退くのではなく、朔が踏み込むより早く、次の一手を打てる位置を保っている。
ただ刀を振るうだけでは、届かない。
朔は呼吸を整え、今度はわざと踏み込みを浅くした。
木刀を振りかぶると見せかけ、直前で軌道を変える。狙いは王悦の手首だった。
しかし、王悦は動じなかった。
「おっ、フェイントか! 悪くねえ!」
木刀が交差する。
乾いた音が響き、朔の手に衝撃が伝わった。受け止められた勢いを殺しきれず、腕がわずかに流れる。
その隙を、王悦は見逃さない。
木刀の切っ先が朔の胸元へ迫った。
「そこまで!」
寸前で止められた木刀を見つめ、朔は悔しそうに唇を結んだ。
「……また、負けた」
「そりゃ、ちゃんボクを相手にしてんだからな! そう簡単に一本取られてたまるかっての!」
王悦は笑いながらも、すぐに表情を引き締めた。
「けど、今のは悪くなかったぜ。最初の一撃を受けられたあと、ただ押し返そうとしなかった。相手がどう動くか考えて、別の狙いに切り替えた。そこはちゃんと進歩してる」
「……でも、当たらなかった」
「結果だけ見て落ち込むな。大事なのは、なんで当たらなかったのかを考えることだ。手首を狙う判断は悪くねえ。だが、狙いが分かりやすかった。フェイントを入れるなら、相手がそれを本命だと思うくらい自然に見せなきゃな」
朔は木刀を握り直した。
相手を騙すことばかり考えて、動きそのものが不自然になっていたのかもしれない。
「……もう一回、お願い」
「おう、何度でも来な!」
稽古はその後も続いた。
何度打ち込んでも、王悦の守りを崩すことはできない。けれど、同じように弾かれることも少しずつ減っていった。攻撃の途中で相手の足運びを確かめ、狙いを変え、退くべきときには無理をせず距離を取る。
小さな工夫を重ねるたび、朔の身体は少しずつ動きに馴染んでいった。
それでも、奇妙な感覚は消えなかった。
木刀を振るうたび、身体の奥底にある何かが、呼吸に合わせて揺れるような気がする。力を込めた瞬間、胸の奥で何かが目を覚ましかける。だが、意識を向けた途端に、気配は深い場所へ沈んでしまう。
気のせいだろうか。
そう片づけようとするたび、妙な確信が胸に残った。
これは、自分の中にある。
そして、ただの気のせいではない。
稽古が一区切りついた頃、朔は額の汗を拭いながら、手のひらを見つめた。
身体は疲れている。息も少し上がっていた。それなのに、内側から湧き上がる感覚だけは、妙に鮮明だった。
「……王悦さん」
「ん、どうした?」
「僕、前より強くなってる?」
王悦は一瞬だけ目を丸くし、それから口元を緩めた。
「そりゃあな。毎日稽古してんだ。何も変わらねえほうがおかしいだろ」
「でも……」
朔は言葉に詰まった。
強くなっている。それは分かる。木刀を振るう動きも、相手の攻撃を見極める感覚も、以前より確かになっていた。
けれど、自分が感じている変化は、それだけではない気がする。
「……なんでもない」
「おいおい、そこでやめんのかよ。言いたいことがあるなら、ちゃんと言葉にしてみな」
「うまく、言えないんだ」
王悦はしばらく朔を見つめたあと、無理に問い詰めることなく肩をすくめた。
「なら、今はそれでいいさ。言葉にできねえ感覚だってある。焦って形にしようとすると、かえって見失うこともあるからな」
その言葉に、朔は少しだけ気持ちが軽くなった。
王悦は木刀を片づけながら、ふと思い出したように言った。
「ただし、身体に妙な違和感があるなら隠すなよ。痛みでも、息苦しさでも、いつもと違う感覚でもだ。そういうときは、天ちゃんに診てもらえ。あいつなら、身体のことは大抵分かる」
「……うん」
朔は頷いた。
その直後だった。
稽古場の入口から、荒々しい足音が響いた。
「おい、王悦! ちょいと邪魔するぜェ!」
姿を現したのは麒麟寺天示郎だった。いつものように腕を組み、鋭い目つきで二人を見比べている。
「天ちゃん、どうしたよ? ちゃんボクの稽古を見学しに来たって顔じゃねえな」
「誰が好き好んでテメェの稽古を見に来るかよ。……朔、ちょっとこっち来い」
「僕?」
「そうだ。身体の具合を確かめるだけだ。じっとしてりゃすぐ終わる」
朔は戸惑いながらも、天示郎の前へ歩み寄った。
天示郎はまず顔色を確かめ、次に手首へ指を添えた。脈を測るような仕草だったが、その目は朔の身体そのものではなく、もっと奥にある何かを探っているように見えた。
「……おかしいな」
「何がだ?」
王悦が尋ねると、天示郎はすぐには答えなかった。
朔の手首から指を離し、今度は肩口へ手をかざす。霊圧の流れを確かめているのだろう。しばらくすると、天示郎の眉間に深い皺が寄った。
「表面の霊圧は、昨日と大して変わっちゃいねえ。だが……」
「だが?」
「いや、妙な引っかかりがある。流れそのものは乱れてねえのに、奥のほうが妙に掴みにくいんだよ」
朔は息を呑んだ。
昨夜から感じていた、あの気配。
天示郎も何かを感じ取ったのだろうか。
「天示郎さん、僕……」
言いかけて、朔は口を閉ざした。
うまく説明できない。自分の中に何かがいるような気がする、と言ったところで、信じてもらえるのかも分からなかった。
天示郎は朔の顔を見下ろし、少しだけ声を落とした。
「何か変な感覚があるのか?」
「……うん。でも、よく分からない」
「どんな感じだ?」
「身体の奥に、何かがあるみたいで……。でも、見えないし、声も聞こえない。気にすると、すぐ分からなくなるんだ」
天示郎は黙って聞いていた。
やがて、短く息を吐く。
「分かった。今のところ、身体に異常が出てるわけじゃねえ。だが、妙な感覚が続くなら、無理に探ろうとするんじゃねえぞ。下手に刺激して、何が起こるか分からねえからな」
「……うん」
「王悦。こいつの稽古は、今日はここまでにしとけ。疲れが出てるところに、余計な負担をかける必要はねえ」
「了解、天ちゃん。ちゃんボクだって、無茶をさせるつもりはねえよ」
王悦は軽い調子で返したものの、その目にはわずかな警戒が浮かんでいた。
天示郎は最後にもう一度、朔の身体を確かめた。
「痛みが出たり、急に気分が悪くなったりしたら、すぐオレに言え。遠慮はいらねえからな」
「分かった」
朔が答えると、天示郎は大きな手で頭をひと撫でした。
「よし。今日は休め。身体を休めるのも修行のうちだぜ」
そう言い残し、天示郎は稽古場を出ていった。
残された朔は、しばらくその背中を見送っていた。
天示郎でさえ、はっきりとは掴めなかった。
自分の内側にあるものは、一体何なのだろう。
考えれば考えるほど、答えは遠ざかっていく。
*
その日の午後、朔は一兵衛に呼ばれた。
大内裏へ向かう道すがら、胸の奥に不安が膨らんでいく。天示郎が何かを報告したのだろうか。それとも、別の理由があるのだろうか。
部屋に入ると、一兵衛はいつものように穏やかな表情で座っていた。
「来たか、朔。まあ、そこへ座るがよい」
「……はい」
朔が腰を下ろすと、一兵衛はしばらくその顔を眺めた。
「天示郎から話を聞いた。どうやら、おぬし自身も説明できぬ感覚があるようじゃな」
朔は小さく頷いた。
「身体の奥に、何かがある気がするんです。でも、よく分からなくて……」
「無理に説明せずともよい。自分でも分からぬものを、言葉にするのは難しいからのう」
一兵衛は穏やかに笑った。
「大切なのは、分からぬものを恐れて、無闇に手を伸ばさぬことじゃ。何かを感じたからといって、すぐに正体を暴こうとする必要はない」
「……でも、知りたいです」
「うむ。知りたいと思うのは悪いことではない。じゃが、知ることと、今すぐ知ろうとすることは別じゃ」
朔は膝の上で拳を握った。
確かに、自分の中にあるものが何なのか分からないのは怖い。いつか突然、制御できなくなってしまうのではないか。知らないうちに、誰かを傷つけてしまうのではないか。
そんな想像が頭をよぎる。
一兵衛は、その不安を見透かしたように静かに続けた。
「今のおぬしに必要なのは、焦ることではない。よく食べ、よく眠り、身体を鍛え、己を知ることじゃ。日々の積み重ねが、いずれ答えへと繋がることもあろう」
「……はい」
「それまでは、妙な感覚があっても無理に追いかけるでない。身体に異変があれば、天示郎か王悦に伝えよ。分かったな?」
「分かりました」
一兵衛は満足げに頷いた。
「よい返事じゃ。では、今日はもう戻って休むがよい」
朔は一礼し、部屋をあとにした。
結局、何かが分かったわけではない。
それでも、今すぐ答えを出さなくてもいいのだと思うと、胸の奥にあった重苦しさが少しだけ薄れた。
*
夕刻、朔は自室へ戻る途中で王悦と顔を合わせた。
「おっ、朔! 和尚との話は終わったか?」
「うん」
「そりゃよかった。難しい顔して戻ってきたら、ちゃんボクが特製の気分転換を用意してやろうと思ってたところだぜ!」
「……特製って、何?」
「それは秘密だ! チェケラ!」
王悦は楽しげに笑った。
朔も、つられて小さく笑みをこぼす。
その様子を見て、王悦は少しだけ目を細めた。
「ま、何か気になることがあったら、いつでも言えよ。ちゃんボクは刀を打つのも、振るうのも得意だが、話を聞くくらいはできるからな」
「……ありがとう、王悦さん」
「おう!」
王悦は朔の頭を軽く叩くと、何事もなかったかのように歩き去った。
朔はその背中を見送りながら、胸の奥へ意識を向けた。
あの奇妙な感覚は、まだ消えていない。
けれど、無理に探ろうとはしなかった。
今は、焦らずに自分を鍛える。それしかできないのなら、できることを一つずつ積み重ねていけばいい。
そう考え、朔は自室へ戻った。
寝台に横になり、目を閉じる。
静寂の中で、意識がゆっくりと沈んでいく。
その深い場所で、何かがかすかに揺れた。
朔は気づかない。
ただ、眠りに落ちる直前、胸の奥に不思議な温かさを感じた。
まるで、遠い場所から自分を見守る何かが、ほんの一瞬だけ応えたかのように。
あと10話くらいストックあります!
一応言っとくと結構スローテンポで話が進むのでご注意!
けど逆に一気に話が進むのもあるのでスローテンポが嫌な人は頑張ってそれまで耐えてください!
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