BLEACHの世界に転生したけど何故かステータス画面があるんだが 作:最強主人公2
翌朝。
神代朔は、いつものように目を覚ますと、寝台の上でゆっくりと身体を起こした。
昨日は兵主部一兵衛から鬼道の基礎を教わった。指先に霊圧を集め、球体を形作るという単純な動作でさえ、思うようにはいかなかった。それでも、最後には何とか形を保てるようになったのだから、進歩したと言っていいだろう。
今日は何を教わることになるのか。
そんなことを考えながら寝台から降りた朔は、ふと、これまでの修行を振り返った。
王悦との剣術修行。天示郎との霊圧制御。千手丸から教わった知識。そして、昨日から始まった鬼道の訓練。
日々の積み重ねによって、自分の力が少しずつ伸びていることは実感していた。以前よりも身体は動くようになり、霊圧の扱いにも慣れてきた。システム上のステータスにも、それに応じた変化が生じている。
――そういえば。
そこで、朔はふと動きを止めた。
ステータスが変化しているのなら、レベルも上がっているのではないだろうか。
これまで、ステータスの数値が変化したときには、その確認ばかりに意識を向けていた。能力値の上昇や、相変わらず正体の分からない未計測領域。その奇妙な項目が気になっていたこともあり、ほかの部分まで細かく確認していなかったのだ。
そして、もうひとつ。
レベルが上がったとき、何かを獲得していたような気がする。
記憶を辿ってみても、はっきりとは思い出せない。そもそも、レベルアップそのものを確認した際に、どこまで表示を見ていたのかさえ曖昧だった。
「……確認してみるか」
朔は意識を集中させ、ステータス画面を呼び出した。
視界の前に、見慣れた半透明の画面が浮かび上がる。
そこに並ぶ数値をひとつずつ確認していく。レベル、各種能力値、そして相変わらず詳細不明のまま変化していない項目。
その途中で、朔の視線が止まった。
「……あれ?」
見慣れないわけではない。
むしろ、以前からそこに表示されていたはずの項目だった。
ただ、これまで意識して見ていなかっただけだ。
【AP:24】
【SP:18】
二つの項目が、ステータス画面の中に存在していた。
朔はしばらく、その文字を見つめた。
「……APって、もしかしてアビリティポイント?」
ゲームなどで使われる用語を思い浮かべる。APはアビリティポイント、あるいはアクションポイントなど、作品によって意味が異なることもある。だが、この状況で考えるなら、能力や技能に関係するポイントである可能性が高い。
では、SPはどうだろうか。
スキルポイント。
こちらは、さらに分かりやすい。
「……えっ。ちょっと待って」
朔は慌てて画面を見直した。
レベルアップによってステータスが上昇していたことは知っている。だが、もしAPやSPまで獲得していたのなら、話は変わってくる。
今まで気づかずに放置していたということは、獲得したポイントを一度も使っていない可能性がある。
つまり――。
「……もしかして、ずっと貯まってた?」
嫌な予感がした。
朔は画面の表示を隅から隅まで確認した。すると、APは24ポイント、SPは18ポイントと表示されていた。
これまでのレベルアップ履歴を思い返す。
最初にステータスを確認したときのレベルから、現在までに上がったレベルは6つ。どうやら、レベルアップ1回につきAPを4ポイント、SPを3ポイント獲得していたらしい。
「APが24で、SPが18……」
朔は指を折りながら数えた。
「レベルアップ1回につき、AP4ポイントとSP3ポイント。合計で6回分か」
今まで自分は、剣術も霊圧制御も、ほとんど地道な修行だけで伸ばしてきた。もちろん、その経験は無駄ではない。だが、システムに成長を補助する仕組みが用意されていたのなら、もっと効率よく強くなれた可能性がある。
いや、そもそも。
「……なんで気づかなかったんだ、僕」
自分で自分に呆れてしまう。
AP24ポイント。
SP18ポイント。
これだけのポイントを、今まで一度も使わずに放置していたのだ。
しかし、落ち込んでいても仕方がない。重要なのは、今からでも使えるかどうかだ。
朔は画面に意識を向け、APの項目を選択するように念じた。
すると、ステータス画面が切り替わった。
【AP:アビリティポイント】
能力の成長や強化に使用できるポイント。
現在、割り振り可能なポイントは24ポイントです。
「おお……!」
どうやら、ただの飾りではなかったらしい。
続けてSPの項目にも意識を向ける。
【SP:スキルポイント】
スキルツリーの解放に使用できるポイント。
現在、割り振り可能なポイントは18ポイントです。
一定数のポイントを割り振ることで、対応するスキルを習得し、使用可能になります。
「スキルツリー……?」
朔が疑問を浮かべた瞬間、画面の表示が切り替わった。
視界いっぱいに、淡い光で描かれた1本の枝が現れる。
その根元には、1つの項目があった。
【基礎身体能力】
その先には、まだ何もない。
朔が意識を向けると、項目の下に説明が表示された。
【必要SP:5】
【5ポイントを割り振ることで、スキルを解放できます】
「5ポイント……」
朔はSPの残量を確認した。
現在のSPは18ポイント。
必要な5ポイントを使っても、まだ13ポイント残る。
試しに、5ポイントを割り振るよう念じてみる。
すると、画面上の枝が淡く輝いた。
【基礎身体能力】
【解放条件達成】
【スキル《身体強化》を習得しました】
【SP残量:13】
「……本当に、使えるようになった」
朔は思わず息を呑んだ。
スキルの項目を確認すると、先ほどまで暗く沈んでいた表示が明るく変化している。
【身体強化】
身体能力を一時的に上昇させる。
使用時、霊圧を消費する。
「身体強化……」
剣術の修行を続けている今の自分にとって、これほど分かりやすく役立つスキルはないだろう。
だが、朔が驚いたのは、スキルの効果だけではなかった。
解放されたスキルの先から、さらに2本の枝が伸びていた。
片方の先には、淡い文字で表示された項目がある。
【瞬発強化】
もう片方には――。
【持久強化】
どちらも、まだ暗く表示されている。
朔が片方へ意識を向けると、説明が浮かび上がった。
【前提スキル:《身体強化》】
【必要SP:10】
「1つのスキルを解放すると、次のスキルが増えるのか……」
朔はもう一方の項目も確認した。
こちらも同じく、身体強化を前提としている。
ただし、現在のSPは13ポイント。どちらか1つなら解放できるが、両方を同時に習得することはできない。
「1つから2つへ。2つから4つへ……」
朔は画面を見つめながら呟いた。
枝の先には、まだ暗く隠された項目がいくつも存在している。今は見えないものの、条件を満たせば次々と新しいスキルが現れるのだろう。
しかも、すべての枝が同じ方向へ伸びるわけではない。
身体能力を強化する道。
霊圧を高める道。
鬼道を補助する道。
剣術や歩法に特化した道。
それぞれの選択によって、最終的に身につく力は大きく変わるはずだ。
「……これは、慎重に選ばないと」
朔は画面を閉じずに、さらに詳細を確認した。
スキルツリーの根元には、いくつかの系統が存在していた。
【身体強化系】
【霊圧制御系】
【剣術系】
【歩法系】
【鬼道系】
ただし、最初からすべての系統が解放されているわけではない。いくつかの項目は暗く沈み、条件不明と表示されていた。
鬼道系のツリーも存在していたが、こちらは一兵衛から基礎を教わったばかりだからか、最初の項目だけが薄く表示されている。
【霊圧形成】
【必要SP:5】
【霊圧を一定の形に保つ能力を得る】
「これなら、昨日の鬼道の訓練にも役立ちそうだ」
朔は思わず手を伸ばしかけた。
だが、すぐに止める。
SPは残り13ポイント。
身体強化を習得したことで、残りは13ポイントしかない。ここで霊圧形成を習得すれば、残りは8ポイントとなる。そうなれば、瞬発強化や持久強化のどちらかを習得することはできなくなる。
逆に、身体強化の派生スキルを1つ習得すれば、残りは3ポイント。鬼道系の霊圧形成には届かない。
「……どちらか一方しか選べない」
朔は画面を見つめた。
身体強化をさらに伸ばすか。
それとも、鬼道の習得を補助する霊圧形成を選ぶか。
どちらも魅力的だった。
だからこそ、簡単には決められない。
「……まずは、スキルツリーの仕組みをもっと確認しよう」
朔は各項目を順番に調べていった。
スキルを解放するために必要なSPは、枝が進むほど増えていく。最初のスキルは5ポイントで解放できるが、その先のスキルには10ポイント、さらにその先には20ポイントが必要になる。
また、スキルによっては複数の前提条件が設定されていた。
1つのスキルを解放しただけでは進めず、左右に分かれた2つのスキルを両方とも習得しなければ、その先の項目が現れないものもある。
逆に、片方だけを選んだ場合は、もう一方の枝が暗く閉ざされることもあった。
「本当に、選択式なんだ……」
朔は画面を見ながら、慎重に考えた。
スキルツリーは、単純にポイントを使えば強くなれる仕組みではない。
どのスキルを選び、どの枝を伸ばすか。
その選択によって、自分の戦い方そのものが変わっていく。
剣術を極めるのか。
鬼道を伸ばすのか。
霊圧を高め、純粋な力で押し切るのか。
あるいは、複数の系統を組み合わせ、状況に応じて戦うのか。
「……今すぐ全部決める必要はない」
朔はそう呟いた。
ポイントは消えない。
ならば、まずは自分の得意なことと、足りないものを見極めるべきだ。
今日の修行を終えたあと、王悦や天示郎、一兵衛に相談してみるのもいいかもしれない。システムの存在をどこまで話すかは別として、どの能力を伸ばすべきかについて意見を聞くことはできる。
そう考えたところで、部屋の外から声が響いた。
「朔ー! いつまで寝てんだ! さっさと来やがれ!」
天示郎の声だった。
「ね、寝てません! 今行きます!」
朔は慌てて返事をすると、急いで身支度を整えた。
APとSPのことは気になる。できることなら、今すぐにでも詳しく調べたい。
だが、修行をすっぽかすわけにはいかなかった。
朔は最後に、もう一度だけスキルツリーを見つめた。
現在の残量は、AP24ポイント、SP13ポイント。
1本の枝から始まり、2つへ分かれ、さらにその先で無数の可能性へと広がっていく。
その姿は、これからの自分の成長そのものに見えた。
どの枝を選ぶのか。
どこまで伸ばすのか。
そして、その先で何を手に入れるのか。
「……焦らず、ちゃんと考えよう」
朔はそう決意し、ステータス画面を閉じた。
画面の奥に残された未使用のAP24ポイントとSP13ポイントを気にしながら、朔は部屋を飛び出した。
その胸には、これまでとは違う期待が芽生えていた。
地道な修行だけではない。
自分の選択によって、成長の道そのものを切り開くことができる。
その事実が、朔の足取りをいつもより軽くしていた。
修練を終えた朔は、与えられた部屋へ戻るなり、寝台に腰を下ろした。
今日の修行も厳しかった。
天示郎からは霊圧の制御について何度もやり直しを命じられ、最後には足元の感覚が怪しくなるほど走らされた。身体は疲れ切っていたが、それ以上に、頭の中を占めているものがあった。
スキルツリー。
そして、そこから習得したばかりのスキル――《身体強化》。
「……よし。試してみよう」
朔はステータス画面を呼び出した。
【AP:24】
【SP:13】
スキルツリーを確認すると、《身体強化》の項目は、確かに習得済みとなっている。
説明によれば、霊圧を消費することで身体能力を一時的に上昇させるスキルらしい。
しかし、どの程度強くなるのか。霊圧をどれだけ消費するのか。そして、発動中に何か制約があるのか。詳しいことは分からなかった。
「……使い方は、どうすればいいんだろう」
朔は試しに、スキルの項目へ意識を向けた。
すると、画面が切り替わった。
【スキル:身体強化】
【発動可能】
【発動方法:任意】
「任意って……念じればいいのかな?」
朔は右手を握り、身体の内側へ意識を向けた。
身体を強くする。
その言葉を頭の中で繰り返しながら、スキルの発動を念じる。
次の瞬間。
【スキル《身体強化》を発動しました】
身体の奥で、何かが切り替わった。
「……っ!」
熱が走ったわけではない。突然、身体が大きくなったわけでもない。
それでも、明らかな変化があった。
今まで意識しなければ感じ取れなかった身体の細かな動きが、妙にはっきりと分かる。指を曲げるだけでも、どの筋肉が動き、どこに力が伝わっているのかが普段より鮮明に感じられた。
朔は恐る恐る立ち上がった。
身体が軽い。
いつもなら少し力を込めなければ動かせない部分まで、滑らかに動くような感覚がある。
「これが……身体強化?」
朔はその場で軽く屈伸をした。
膝を曲げ、伸ばす。
次に、軽く跳び上がった。
――思ったより高い。
着地した朔は、慌てて自分の足元を見た。
いつもと同じように跳んだつもりだったのに、身体が予想以上に浮き上がったのだ。
「うわっ……!」
驚いて体勢を崩しかけたものの、どうにか踏みとどまる。
心臓が少し速くなっていた。
これは、単に身体が軽くなったというだけではない。筋力だけでなく、身体の動かしやすさそのものが変化しているように感じられた。
朔は何度か手を握ったり開いたりして、その感覚を確かめた。
力を込めれば、普段より強く握れる。
しかし、力加減を誤れば、必要以上の力を出してしまいそうだった。
「……すごい。でも、慣れないと危ないな」
強くなれること自体は嬉しい。
けれど、使いこなせなければ意味がない。
朔は部屋の中を見回し、家具などにぶつからないよう注意しながら、ゆっくりと歩いてみた。
一歩目は問題ない。
二歩目も大丈夫だ。
だが、少し速度を上げると、足が思った以上に前へ出た。
「おっと!」
朔は慌てて壁に手をついた。
危うく転びそうになったことに、思わず苦笑する。
「力が上がるだけじゃなくて、動きも変わるのか……」
王悦との剣術修行で、朔は何度も自分の身体の動かし方を教わってきた。相手の重心を読むこと、無理に踏み込まないこと、攻撃のあとに体勢を崩さないこと。
身体強化を使えば、今までより速く動けるかもしれない。
だが、速く動けることと、正確に動けることは別だ。
力に振り回されれば、かえって隙を生むことになる。
朔は壁から手を離し、今度はゆっくりと構えを取った。
木刀はない。そこで、素振りをするつもりで腕を動かしてみる。
正面への斬り下ろし。
横薙ぎ。
切り返し。
普段の動作を一つずつ確かめる。
すると、身体強化の効果によって腕の振りが速くなっていることに気づいた。特に、振り下ろした腕を次の動作へ移すまでの時間が短い。
ただし、速く振ろうと意識しすぎると、肩に余計な力が入ってしまう。
「……いつもの修行と同じだな」
力が増えたからといって、基本が不要になるわけではない。
むしろ、今まで以上に丁寧に身体を動かす必要がある。
朔は動きを止め、スキルの状態を確認した。
【身体強化:発動中】
【霊圧消費:継続】
「……えっ、継続?」
表示を見て、朔は目を瞬かせた。
どうやら、このスキルは発動している間、霊圧を消費し続けるらしい。
つまり、必要もないのに使い続けていれば、霊圧が無駄に減ってしまうということだ。
「それは困るな……」
朔はスキルを解除するよう意識した。
【スキル《身体強化》を解除しました】
身体を覆っていた奇妙な感覚が、すっと薄れていく。
直後、軽く息を吐いた。
疲労が急激に襲ってくるようなことはなかったが、発動中と解除後では身体の感覚がはっきりと違っていた。
朔はしばらく、その違いを確かめた。
「ずっと使うんじゃなくて、必要なときだけ使うのがよさそうだ」
戦闘中、攻撃を仕掛ける瞬間や、相手の攻撃を避ける瞬間。そうした場面で短時間だけ使えば、霊圧の消費を抑えながら効果を活かせるかもしれない。
もっとも、実際の戦闘でどの程度役立つのかは、まだ分からない。
まずは安全な場所で、何度か使って慣れておく必要があるだろう。
朔はステータス画面を開き直し、今度はスキルの詳細を確認した。
【身体強化】
身体能力を一時的に上昇させる。
発動中は霊圧を継続的に消費する。
解除することで、霊圧の消費を停止する。
現時点では、具体的な上昇率や消費量までは表示されていなかった。
「……細かいところは、自分で確かめるしかないか」
朔は画面を閉じた。
次に試すべきことは決まっていた。
王悦との修行で、身体強化を使ったらどうなるのか。
普段なら見切れない攻撃を避けられるのか。あるいは、今まで届かなかった一撃を当てられるのか。
考えるだけで、少し胸が躍った。
ただし、スキルに頼りきるつもりはない。
今まで積み重ねてきた修行があってこそ、身体強化も活かせるはずだ。
朔は寝台から立ち上がり、拳を握った。
「明日、王悦さんにお願いしてみよう」
実際に打ち合いながら使えば、もっと多くのことが分かるだろう。
そう考えていたとき、朔はふと、もう一つの疑問を思い出した。
身体強化を習得するために使ったSPは5ポイント。
残りは13ポイント。
スキルツリーには、まだ解放していない項目がいくつも残されている。
身体強化の先にある瞬発強化や持久強化。鬼道系の霊圧形成。それ以外にも、条件を満たせば解放されるスキルがあるのかもしれない。
「……もっと調べたら、いろいろ分かりそうだな」
しかし、今日はもう遅い。
明日の修行に備えて休むことも大切だ。
朔はステータス画面を閉じ、寝台へ戻った。
身体強化という新たな力を手に入れたことで、これまでの修行にも新しい可能性が見えてきた。
だが、今の自分はまだ、その力の入り口に立ったばかりだ。
本当に使いこなせるようになるには、これから何度も試し、失敗し、身体に覚え込ませていく必要がある。
朔は明日の修行を思い浮かべながら、ゆっくりと目を閉じた。
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