BLEACHの世界に転生したけど何故かステータス画面があるんだが 作:最強主人公2
ちょっとストックが不味くなってきた…
浅打を受け取った翌朝、朔はいつもより早く目を覚ました。
枕元に置いておいた刀へ手を伸ばし、鞘ごと持ち上げる。昨夜は結局、仮の名前を決められなかった。王悦からは「名前が決まったら、ちゃんボクにも教えてくれよ!」と念を押されたが、そう簡単に思いつくものでもない。
そもそも、これから長い付き合いになるかもしれない刀だ。適当な名前をつけるのも気が引けた。
「……おはよう」
ひとまず、声をかけてみる。
当然、返事はない。
「まあ、そうだよな」
朔は苦笑し、浅打を膝の上に置いた。
刀身を抜き、窓から差し込む朝の光にかざす。刃には目立った装飾もなく、特別な力が宿っているようにも見えない。けれど、握っていると、妙に意識が引き寄せられる。
霊圧を流してみても、特別な反応はない。
何かが聞こえるわけでも、刀が勝手に動くわけでもなかった。
「……焦っても仕方ないか」
朔は刀身を丁寧に拭き、鞘へ納めた。
斬魄刀は死神の魂そのもの。原作の知識があるからこそ、その意味は理解しているつもりだった。しかし、実際に自分の刀を持ってみると、知識だけでは埋められない距離がある。
自分の魂と向き合う。
言葉にするのは簡単だが、具体的に何をすればいいのかは分からない。
「まずは、毎日触るところからだな」
そう決めて浅打を腰に差すと、ちょうど扉の向こうから声がした。
「チャン朔ー! 起きてるかい? 朝メシ前にちょいと付き合ってほしいんだけどねェ!」
王悦だった。
朔は思わず顔をしかめる。
「……嫌な予感しかしない」
「聞こえてるぜー!」
「聞こえるように言いました!」
「ポゥ! 元気があってよろしい!」
扉を開けると、王悦は朔の腰に差された浅打を見つけ、満足そうに頷いた。
「おっ、ちゃんと持ち歩いてるじゃないの。感心感心!」
「昨日もらったばかりですからね」
「その気持ちを忘れちゃいけないぜ。刀ってのは、使う時だけ引っ張り出す道具じゃない。持ち主の隣にいる、もう一人の自分みたいなもんだからねェ」
「……王悦さん、たまには真面目なことも言うんですね」
「たまには余計だろがい!」
王悦は大げさに胸を押さえた。
「ちゃんボクの繊細なハートが傷ついた! 慰謝料として朝メシを一品追加してもらう!」
「それ、僕に何の関係があるんですか……?」
「細かいことは気にしない! さあ、行くぜチャン朔!」
王悦に背中を押され、朔は廊下へ出た。
ただし、連れていかれた先は食堂ではなかった。
「……王悦さん。ここ、鍛錬場ですよね?」
「その通り!」
「朝メシは?」
「鍛錬のあと!」
「やっぱり!」
朔の抗議を聞き流し、王悦は鍛錬場の中央へ歩いていく。そこには、すでに麒麟寺天示郎が腕を組んで待っていた。
「遅ェぞ、朔! 朝っぱらから何をちんたらしてやがる!」
「起きてからまだ十分も経ってないんですけど!」
「言い訳すんじゃねェ!」
「理不尽だ……」
天示郎は朔の腰にある浅打へ目を向けた。
「ほう。ようやく自分の刀を持ったか」
「はい。昨日、王悦さんからいただきました」
「なら、今日はそれを使ってみろ」
「えっ、いきなりですか?」
「刀を持ったんだろうがよォ。飾りにするつもりか?」
「そういうわけじゃないですけど……」
朔は浅打の柄に触れた。
これまでの鍛錬では、木刀や訓練用の武器を使うことが多かった。もちろん、刀を扱う基礎は身につけている。しかし、自分の魂と結びつく可能性を持った浅打を使うとなれば、気持ちの上でも勝手が違った。
王悦はその様子を眺め、いつもの調子で笑う。
「ま、今日は難しいことをするわけじゃない。ちゃん朔が、どれくらい自然に刀を扱えるか見てみたいだけさ」
「普通の素振りですか?」
「まずはな。そこから先は、天ちゃんの気分次第!」
「おい、勝手に決めんじゃねェ!」
天示郎が怒鳴る。
「オレは朝から、てめェの思いつきに付き合わされてんだぞ!」
「いやァ、天ちゃんは面倒見がいいからねェ!」
「ぶっ飛ばすぞ、王悦!」
二人のやり取りを横目に、朔は浅打を抜いた。
刀身が朝の光を受け、淡く輝く。
その瞬間、周囲の音がわずかに遠のいた気がした。
風の流れ。床を踏む自分の足裏の感覚。衣服が擦れる音。鍛錬場の外から伝わってくる、かすかな霊圧。
一つ一つが、普段より鮮明に意識へ入ってくる。
だが、浅打そのものから何かが伝わってくるわけではない。
ただ、柄を握る手に力が入りすぎていることに気づいた。
「……力みすぎか」
朔は肩の力を抜き、構えを整える。
天示郎が目を細めた。
「そうだ。刀を振ることばかり考えるんじゃねェ。足元を見ろ。腰の向き、肩の位置、握りの強さ。どれか一つが崩れりゃ、刀筋まで狂う」
「はい」
朔はゆっくりと刀を振り下ろした。
一度。
二度。
三度。
最初は、これまで使っていた木刀との違いが気になった。だが、何度か繰り返すうちに、意識は少しずつ動作そのものへ向いていく。
浅打は、手に馴染まないわけではなかった。
むしろ、不思議なほど自然に扱える。
それでも、完全に一体化しているとは言い難かった。ほんのわずかな違和感が、刀を振るたびに残る。
「……妙だな」
朔は刀を止めた。
「何がだ?」
天示郎が尋ねる。
「この刀、扱いにくいわけじゃないんです。でも、まだ自分のものじゃない感じがして」
「当たり前だろうがよォ」
天示郎は鼻を鳴らした。
「刀を受け取っただけで、いきなり自分の身体の一部になるわけがねェ。これから毎日使って、手入れして、失敗して、少しずつ距離を詰めていくんだ」
「距離を詰める……」
「そういうこった。刀を理解するってのは、刀の重さや長さを覚えるだけじゃねェ。自分がどう振りたいのか、どこで迷うのか、何を恐れるのか。そういうもんまで、いずれ刀に表れる」
天示郎は腕を組み直した。
「ま、今から全部分かれって話じゃねェ。まずは身体に覚えさせろ。考えすぎて動けなくなるのも、よくある失敗だからな」
朔は頷き、再び構えた。
今度は、余計なことを考えない。
踏み込み、振り下ろす。刀を戻し、呼吸を整える。足の位置を確認してから、もう一度。
単純な動作の繰り返しだった。
それでも、しばらく続けていると、柄を握る手の力加減が変わってきた。無理に握り込まずとも、刀が手の中で安定する。振り終えた時の姿勢も、以前より自然に整うようになっていた。
「おっ、いいねェ!」
王悦が手を叩いた。
「さっきより、ずっと素直な刀筋になってるじゃないの! チャン朔、やるねェ!」
「ありがとうございます」
「ただし、褒められたからって気を抜くんじゃねェぞ!」
天示郎の声が飛ぶ。
「次は相手がいると思って振ってみろ。目の前に敵がいる。そいつが一歩踏み込んできたら、てめェはどうする?」
朔は刀を構えたまま、少し考えた。
真正面から斬りかかってくる相手。自分より速い相手。間合いをずらしてくる相手。
状況によって答えは変わる。
「……まずは相手の動きを見て、間合いを測ります。無理に打ち合わず、相手が踏み込んだところに合わせて動くと思います」
「じゃあ、やってみろ」
天示郎が木刀を手に取った。
「オレが相手してやる」
「えっ、天示郎さんが?」
「何か文句でもあんのかよォ!」
「ありません!」
朔は慌てて姿勢を整えた。
天示郎は木刀を肩に担いだまま、気負った様子もなく立っている。隙だらけに見えるのに、どこから踏み込めばいいのか分からない。
朔は距離を測った。
正面から仕掛ければ、迎撃される可能性が高い。ならば、まずは相手の反応を見るべきか。
一歩、前へ出る。
天示郎は動かない。
もう半歩。
その瞬間、天示郎の足が床を蹴った。
「遅ェ!」
木刀が斜め上から迫る。
朔は反射的に後退しかけたが、すぐに考え直した。後ろへ下がれば、追撃に対応できなくなる。
身体強化を短く発動させ、軸足をずらす。
木刀が肩先をかすめた。
避けきったわけではない。衣服の端がわずかに揺れ、頬に風圧が触れた。
それでも、攻撃の軌道からは外れた。
朔は浅打を返し、天示郎の胴を狙う。
だが、届かない。
天示郎は手首を返して木刀を滑らせ、朔の斬撃を横へ流した。力任せに弾いたのではない。刀身の角度を変え、朔の勢いを利用して受け流したのだ。
次の瞬間、木刀の切っ先が朔の胸元で止まった。
「そこまでだ」
朔は動きを止めた。
「……参りました」
「今のは悪くねェ」
天示郎は木刀を下ろした。
「最初に下がりかけたのは余計だったが、途中で修正できたのはよかった。身体強化も、必要な瞬間だけ使えてたな」
「でも、最後は簡単に受け流されました」
「当たり前だろがよォ! オレを誰だと思ってやがる!」
「それは、そうですけど……」
「勝てなかったことばかり気にすんな。今の目的は、勝つことじゃねェ。何を見て、何を判断して、どこで失敗したか。それを次に活かせるかどうかだ」
天示郎は木刀を肩に担ぎ直した。
「もう一回やるぞ」
「朝ご飯は……?」
「まだだ!」
「ですよね……!」
朔はため息をつきながらも、浅打を構え直した。
今度は、最初から後退することだけを考えない。相手の肩、腰、足の向きを観察し、踏み込みの兆しを見逃さないようにする。
天示郎の動きは速い。
だが、速さだけで戦っているわけではなかった。朔の視線がどこへ向いているか、どちらの足に重心が乗っているか。そうした細かな変化を見て、攻める瞬間を選んでいる。
朔は二度、三度と打ち込まれた。
一度目は受け流しきれず、浅打を大きく弾かれた。二度目はフェイントに引っかかり、反応が遅れた。三度目には、攻撃を避けた直後の足運びを読まれ、体勢を崩された。
それでも、少しずつ分かることが増えていく。
どこを見ればいいのか。
どの距離なら、相手の動きに対応しやすいのか。
身体強化を使うべき瞬間と、使わずに済ませるべき瞬間。
そして、何よりも――自分の判断が間違っていた時、すぐに切り替えることの大切さ。
しばらくして、天示郎が手を上げた。
「よし、今日はここまでだ」
朔は肩で息をしながら、浅打を下ろした。
「ありがとうございました……」
「悪くねェ。昨日までと同じことを繰り返すだけじゃ、身につかねェもんもある。たまには自分の刀を使って、何が変わるか確かめてみるこった」
「はい」
朔は刀身を確かめてから、鞘へ納めた。
その様子を見ていた王悦が、満足そうに頷く。
「いやァ、いい朝だったねェ! んじゃ、今度こそ朝メシにしようじゃないの!」
「ようやくですか……」
「なんだい、チャン朔。もっと鍛錬したかった?」
「いえ、全然!」
「正直でよろしい!」
王悦は豪快に笑い、朔の肩を叩いた。
三人が鍛錬場を出ようとした、その時だった。
廊下の先から、修多羅千手丸が静かに歩いてきた。
「朝から随分と賑やかで御座いますね。天示郎、王悦。そちたちは、朔を朝餉の前に疲れ果てさせるつもりで御座いますか?」
「いやいや、シュタ丸ちゃん! これは刀を持ったチャン朔の門出を祝う、健全な朝の鍛錬でショウ!」
「門出を祝うのであれば、まず食事を与えるべきでは御座いませんか?」
千手丸は淡々と返し、朔へ視線を向けた。
「朔。浅打の具合はいかがで御座います?」
「まだ、よく分かりません。でも、これから少しずつ理解していきたいと思っています」
「それでよいのです」
千手丸はわずかに目を細めた。
「刀とは、持ち主の望む答えをすぐに与えるものでは御座いません。己の心を映す鏡となることもあれば、己が目を背けているものを突きつけることもある。急いて答えを求めれば、かえって遠ざかることもありましょう」
「……はい」
「ゆえに、焦る必要は御座いません。そちが日々の中で何を見て、何を考え、何を選ぶのか。それもまた、刀と向き合うことの一つで御座います」
朔は腰の浅打へ、そっと手を添えた。
刀の真名は、まだ分からない。
自分の力の本質も、霊王宮で果たすべき役割も、答えは出ていない。
けれど、すべてを一度に解決する必要はないのだろう。
朝の鍛錬で失敗したことも、天示郎に教えられたことも、千手丸の言葉も。今は小さな積み重ねにすぎないが、いずれ何かに繋がるかもしれない。
「ありがとうございます、千手丸さん」
「礼には及びません。さあ、朝餉に参りましょう。これ以上、そちたちの相手をしていては、朔の腹が鳴り始めてしまいますゆえ」
「おっ、シュタ丸ちゃん、分かってるねェ! ちゃんボクも腹ペコでショウ!」
「てめェはさっきから飯のことしか考えてねェじゃねェか!」
「腹が減っては仕事ができない! これ、職人の基本!」
「お前の仕事は刀を打つことだろうがよォ!」
三人の言い合いを聞きながら、朔は思わず笑った。
腰にある浅打は、まだ何も語らない。
それでも、こうして周囲の人々と過ごす時間の中で、自分の知らなかったものを少しずつ知っていくことはできる。
朔は刀の柄を軽く確かめてから、千手丸たちの後を追った。
次回!!
「??の先にあるもの」
次回予告ってワクワクするから好き
Q.?に入るものはなんでしょうか!
ヒント
浅打→斬魄刀→蛇尾丸.斬月.氷輪丸etc…
答えは次回のタイトルで!
恋愛要素入れた方がいい?
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