BLEACHの世界に転生したけど何故かステータス画面があるんだが 作:最強主人公2
「おぎゃあ、おぎゃあ……!」
産声が部屋いっぱいに響き渡る
柔らかな布に包まれた小さな身体を抱き上げながら、一人の女性が安堵したように息を吐いた
「よかった……本当によかったわ」
その声を聞きながら、神代朔は混乱していた
何が起きているのか分からない
視界はぼんやりとしていて、身体は思うように動かず、手を動かそうとしても小さな指が僅かに震えるだけだった
声を出そうとしても、口から出てくるのは意味のない泣き声ばかり
「……?」
おかしい
そう思った瞬間、眠っていた記憶が少しずつ蘇ってくる
自分の名前は神代朔
その名前を中心に、前世の記憶が次々と浮かび上がってきた
学校へ通った記憶、友人と過ごした時間、家族との思い出、何気ない日常
そして、その人生が終わったこと
「……俺、死んだのか?」
頭の中では確かにそう呟いた
だが、口から出たのは小さな泣き声だった
「うぇ……」
どうやら本当に赤ん坊になっているらしい
首すらまともに動かせず、まともに話すこともできない
そんな状態で状況を理解しようとしていると、先ほどの女性が朔を優しく見つめながら口を開いた
「朔……」
その瞬間、朔の意識が止まった
「この子の名前は、神代朔よ」
「…………え?」
聞き間違いかと思った
だが、もう一度その名前が聞こえる
神代朔
それは、前世の自分とまったく同じ名前だった
「いや、待て待て……」
もちろん声にはならない
それでも頭の中では、疑問が次々と浮かんでくる
転生した
それは、もう受け入れるしかない
前世の記憶を持ったまま赤ん坊として生まれたのだから、そう考えるのが一番自然だ
だが、どうして名前まで同じなんだ?
偶然なのか、それとも何か理由があるのか
「……神代朔」
母親らしき女性が、もう一度その名前を呼ぶ
不思議な感覚だった
前世でも、自分は神代朔だった
そして今も神代朔
身体も、生まれた場所も、両親も違うはずなのに、名前だけは変わっていない
「……まあ、いいか」
今の自分には、それを調べる方法なんてない
それよりも、もっと気になるものがある
朔は視界の隅へ意識を向けた
そこには、先ほどから消えることなく浮かび続けている半透明の画面があった
【システムが正常に起動しています】
「…………」
やはり見える
目を閉じても、意識を向ければそこに存在している
どうやら幻覚というわけでもないらしい
朔は画面をじっと眺める
【対象者:神代 朔】
【Lv.1】
【EXP:0 / 100】
その下へ視線を移す
【HP:100】
【霊圧:10】
【霊圧操作:5】
【斬術:5】
【白打:5】
【歩法:6】
【鬼道:1】
【霊体強度:5】
【精神力:8】
【反応速度:6】
【感知能力:4】
【幸運:10】
「……本当にゲームみたいだな」
前世で見たことのあるステータス画面とよく似ている
だが、ここはゲームの世界ではない
自分は本当に赤ん坊として生まれていて、この世界には自分の命が存在している
そう考えると、画面に表示されている数字の意味も気になってくる
「HPは……まあ、体力とか生命力みたいなものか」
霊圧は、おそらくそのまま霊的な力
霊圧操作は、持っている霊圧をどれだけ上手く扱えるかを表しているのだろう
そして斬術、白打、歩法、鬼道
BLEACHを知っている朔には、それぞれが何を意味しているのかすぐに分かった
斬術は刀を使った戦闘技術
白打は肉弾戦
歩法は移動技術
鬼道はその名の通り、鬼道に関する能力
「でも……なんで斬術が5なんだ?」
朔はそこに少し引っ掛かった
前世で剣道をやっていたわけでもない
今世では生まれたばかりなのだから、刀を握ったことなど一度もない
それなのに斬術が5と表示されている
「初期値……なのか?」
そう考えるのが一番自然だった
恐らく、それぞれの能力には生まれ持った基礎値が設定されている
ならば、この数字は今後変化していく可能性が高い
そう考えながら、さらに下へ視線を移す
【SP:0】
【AP:0】
「これがSPとAPか」
SPはSkill Point
スキルの獲得や強化に使えるポイント
APはAbility Point
基礎能力を強化するためのポイント
つまり、簡単に考えればSPは技や能力を増やすために使い、APは自分自身の基礎能力を底上げするために使うということらしい
「……なるほど」
かなり便利そうだ
ただし、今はどちらも0
何かをするには、まずポイントを手に入れなければならない
問題は、その方法だ
「レベルが上がったらもらえるのか、それとも別の条件があるのか……」
画面を眺めても答えは出てこない
システムは必要最低限の情報しか教えてくれないらしい
ならば、自分で確かめるしかない
朔は次にスキルツリーを開いた
画面が切り替わり、いくつもの項目が表示される
しかし、その大半は閉ざされていた
【未解放】
【???】
【???】
【???】
「……中身は分からないのか」
これは少し気になる
何があるのか知りたくはなるが、今の段階ではどうしようもない
条件を満たせば解放されるのだろう
なら、今は気にしなくていい
そして、もう一つだけ気になる項目があった
【斬魄刀システム】
【未解放】
「やっぱり、まだないか」
少し残念だった
BLEACHの世界に転生したのなら、斬魄刀を持ってみたいと思うのは当然だろう
だが、今の自分は赤ん坊だ
刀を握れるわけがない
そもそも、斬魄刀はただの武器ではない
死神の魂を映し出す存在であり、持ち主によって姿も能力も違う
そんなものが、生まれたばかりの自分にあるはずがない
「まあ、焦る必要はないか」
まずは成長すること
それが今の自分にできる唯一のことだった
歩けるようになる
話せるようになる
身体を鍛える
この世界について知る
そして、ある程度自由に動けるようになったら、自分の力を伸ばしていけばいい
朔はそこまで考えて、ふと重要なことに気づいた
「……待てよ」
そもそも、ここが本当にBLEACHの世界なら、自分にはかなり大きなアドバンテージがある
前世の記憶がある
原作の知識もある
この世界にどんな存在がいるのかも知っている
ただし、それだけで生き残れるほど甘い世界ではない
知識があっても、力がなければ何もできない
だからこそ、このステータス画面は重要になる
「……強くなれる」
まだレベル1
SPもAPも0
斬魄刀すらない
何も持っていない
それでも、この世界で成長できる可能性だけは与えられている
ならば、今はそれで十分だった
「……面白そうじゃん」
そう思った瞬間、母親が朔の顔を覗き込んだ
「ふふっ、どうしたの? 朔」
その声を聞きながら、朔は母親の顔をじっと見つめる
前世と同じ名前
けれど、前世とはまったく違う人生
それなら、この人生は自分だけのものにしてみてもいいのかもしれない
朔は小さな手を握った
今は何もできない
だからこそ、これからだ
【成長システム:稼働中】
【対象者の成長を開始します】
その文字を最後に、ステータス画面は静かに消えた
まだ、生まれたばかり
まだ、何者でもない
それでも神代朔の二度目の人生は、確かにここから始まった