BLEACHの世界に転生したけど何故かステータス画面があるんだが 作:最強主人公2
瀞霊廷、護廷十三隊総隊舎。
「それで、虚の出現状況はどうなっている」
一番隊隊長、山本元柳斎重國の問いに、報告役の死神が背筋を伸ばした。
「はっ。流魂街の複数の区域で、通常とは異なる行動を取る虚が確認されております。いずれの個体も、周囲の魂魄を無差別に襲うのではなく、特定の場所を目指して移動していたとのことです」
「特定の場所、ねえ」
二番隊隊長、四楓院千日が口元に笑みを浮かべた。
「虚が獲物を選ぶこと自体は珍しくねえ。だが、ほかの魂魄を無視してまで何かを追いかけるとなると、少しばかり興味が湧くな」
「興味で済ませる問題ではない」
三番隊隊長、厳原金勒が眼鏡を押し上げる。
「出現地点、移動経路、霊圧の特徴。現時点で判明している情報を整理しろ。曖昧な証言だけでは、対策の立てようがない」
「現在、調査を進めております。ただ、現場に到着した隊士が交戦した際、虚は周囲の魂魄には目もくれず、ある一点に執着するような動きを見せたとのことです」
「ならば、そいつを捕まえて聞けばいい」
六番隊隊長、齋藤不老不死が楽しげに笑った。
「どこまで痛めつければ口を割るのか、試してみるのも悪くないでしょう?」
「生きたまま捕らえられれば、の話だがな」
九番隊隊長、久面井煙鉄が手元の鉄棒を鳴らした。
「俺なら、出てきた端から叩き潰す。面倒なことを考える必要もねえ」
「それで何の情報も得られなかったら、ただの無駄死にだ」
厳原が冷たく返す。
「敵の正体も目的も分からぬまま隊士を投入するのは愚策だ。まずは情報を集めるべきだろう」
「俺は強い虚と戦えるなら、それで構わねえがな!」
五番隊隊長、尾花弾児郎が豪快に笑った。
「多少の犠牲が出ようが、戦果を挙げりゃ問題ねえだろう!」
「犠牲を出すこと自体は問題ではない」
山本が静かに口を挟んだ。
「問題なのは、犠牲に見合う成果を得られぬことだ。敵を仕留めることもできず、情報すら持ち帰れぬ者に、戦場へ出る価値はない」
その言葉に、広間の空気がわずかに張り詰める。
「使えぬ駒を守るために、使える駒を失うつもりはない。各隊長、そのつもりで指揮を執れ」
「相変わらず容赦がありませんね、総隊長」
七番隊隊長、執行乃武綱が、皺だらけの顔に笑みを浮かべた。
「ですが、嫌いではありませんよ。役に立たぬ者が消えれば、残る者も少しは必死になるでしょうからな」
「ふふ……」
十一番隊隊長、卯ノ花八千流が小さく笑った。
「虚が強ければ、私も出向いてみたいものです。久しぶりに、心から楽しめる相手と出会えるかもしれませんから」
「お前は何でも斬り合いに結びつけるな」
四楓院千日が呆れたように言う。
「そうでしょうか?」
八千流は穏やかに首を傾げた。
「私にとっては、それが何よりの楽しみですから」
その笑顔に、誰も冗談を返さなかった。
四番隊隊長、志島知霧は無言で報告書を眺め、八番隊隊長、鹿取抜雲斎は静かに腕を組んでいる。十番隊隊長、王途川雨緒時は帽子の角度を直し、十二番隊隊長、善定寺有嬪は喉の奥で不気味な笑い声を漏らした。
十三番隊隊長、逆骨才蔵は、相変わらず気配を薄くしたまま座っていた。
誰もが異なる思惑を抱いていたが、共通していることが一つだけあった。
この十三人の前では、弱さは罪に等しい。
「引き続き調査を――」
山本が言いかけた、そのときだった。
「た、大変です!」
広間の扉が勢いよく開き、一人の死神が駆け込んできた。
隊長たちの視線が、一斉に彼へ向けられる。
「何事だ」
山本の声に、死神は慌てて膝をついた。
「空から……空から、天柱輦が降ってきました!」
一瞬、誰も口を開かなかった。
「……天柱輦だと?」
山本が目を細める。
「はい! 巨大な柱状の物体が空中に出現し、そのまま流魂街へ降下しました! 現在、周辺の住民が騒然としており、現場の隊士たちも状況を確認しているところです!」
「空から柱が降ってきた、か」
四楓院千日が椅子から身を起こした。
「虚の妙な動きに続いて、今度は天柱輦。偶然にしちゃ、出来すぎてるな」
「現場の位置は?」
厳原が尋ねる。
「流魂街の居住区にございます!」
「住民の避難を優先しろ」
鹿取抜雲斎が口を開いた。
「正体も分からぬものが降ってきたのです。周辺に被害が出る可能性を考えるべきでしょう」
「正体が分からぬなら、斬って確かめればよいではないか」
齋藤不老不死が立ち上がり、刀の柄に手をかける。
「中に誰がいようと、私が相手をしてあげますよ」
「勝手に動くな」
山本の一喝に、齋藤は不満そうに頬を膨らませた。
「まずは状況を確認する。各隊、必要な人員を現場へ向かわせよ。相手が敵意を示した場合は、即座に排除して構わん」
山本は、報告に来た死神を見下ろした。
「案内しろ。詳しい状況を、この目で確かめる」
「はっ!」
隊長たちが次々と立ち上がる。
天柱輦が何のために降ってきたのか。その中に誰がいるのか。
この場にいる者たちは、まだ何も知らなかった。
*
――ドォォォンッ!!
「うわっ!?」
神代朔は、轟音と地響きに叩き起こされた。
身体が跳ね、反射的に布団を掴む。壁がびりびりと震え、棚に置かれていた器が床へ落ちた。
「な、何だよ、今の……!」
朔は息を整えながら周囲を見回した。
見慣れない天井。薄い布団。窓から差し込む淡い光。
ここは流魂街の診療所だった。
両親を失ってから、どれほどの時間が経ったのか、朔にはよく分からなくなっていた。
目を閉じれば、父の背中が浮かぶ。
自分を庇った母の姿が浮かぶ。
そして、二人が二度と帰ってこないという現実が、何度でも胸に突き刺さった。
「……お父さん、お母さん」
小さく呟いた声は、誰にも届かない。
そのとき、外から人々の叫び声が聞こえてきた。
「おい、空から何か落ちてきたぞ!」
「柱だ! とんでもなくでかい柱が立ってる!」
「いったい何なんだ、あれは!?」
朔は顔を上げた。
何かが起きている。
そう感じた途端、じっとしていられなくなった。布団を跳ね除け、ふらつく足で床に立つ。身体はまだ重かったが、外の騒ぎが気になった。
朔は診療所の戸を開け、外へ出た。
そして、息を呑んだ。
「……なんだ、あれ」
遠くの建物の向こうに、巨大な柱がそびえ立っていた。
周囲の建物など比べものにならないほどの大きさだった。表面には複雑な紋様が刻まれ、柱の周囲では土煙が舞い上がっている。地面には大きな亀裂が走り、住民たちは遠巻きにその異様な光景を見つめていた。
まるで、空から巨大な建造物が突き刺さったかのようだった。
朔は呆然と立ち尽くした。
こんなものが空から降ってくるなど、普通ではない。
だが、尸魂界で普通ではないことが起きるのは、これが初めてではなかった。
両親を奪った虚のことが、脳裏をよぎる。
胸の奥が冷たくなった。
また何かが起きるのだろうか。
また、自分の知らないところで、取り返しのつかないことが起きるのだろうか。
朔が柱を見つめていると、不意に周囲のざわめきが弱まった。
柱の一部が、ゆっくりと開いていく。
重々しい音が響き、内部の暗闇が露わになった。
その奥に、何かが立っている。
人影だった。
朔は思わず息を止めた。
影は、柱の内部からゆっくりと歩み出してくる。
一歩。
また一歩。
やがて、その姿が外の光に触れようとした瞬間、朔の身体は凍りついた。
誰なのか。
何のために来たのか。
何も分からない。
ただ、その人物がこちら側へ一歩を踏み出したことだけは、はっきりと見えた。